薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第八章

第十四話 どうしてこんなに繁盛している!

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 ~アイビス・ローゼ視点~

「さて、そろそろ。取り立てに向かうとするか。今日こそ、愛しのマーヤちゃんを我がものにしてくれる」

 ワシは重い腰を上げて椅子から立ち上がると、そのまま部屋を出てヴァンシーの経営する店に向かう準備を始める。

  あの子を初めて見たのは去年の魔走学園で行われる感謝祭だ。あの日のことは決して忘れることはない。






 ワシは足を捻ってしまい、動くことができない状態に陥っていた。すれ違う奴らは全員が見て見ぬふりをする中、セイレーンの女の子が声をかけてきた。

「お爺さん大丈夫?」

 初めて声をかけられ、ワシは俯いていた顔を上げる。

 この娘はこの学園の生徒か? 見た感じは小等部くらいには見えるが、この学園には中等部からしかない。つまり中等部の生徒と言うことになる。

「すまないな。ちょっと足を捻ってしまったみたいだ」

「足を捻った! 大変じゃない!」

 足を捻ったことを伝えると、セイレーンの女の子は大袈裟に驚き、声を上げる。

「待っていてね。すぐにクリープちゃんを呼んでくる。あの子が居れば、お爺さんの足もきっと良くなるはずだから!」

 言葉を捲し立てると、彼女はこの場から去って行く。

 本当に元気な子だ。もし、ワシに孫がいたのなら、こんな感じなのだろうか?

 そんなことを思いながらしばらく待ってみると、女の子が戻ってきた。両手で救急箱の取手を掴み、少々息を切らしている。

「待たせてごめんね。クリープちゃんが見当たらなくって、マーヤで悪いのだけど手当するね」

 救急箱の蓋を開け、ワシの靴と靴下を脱がすと、セイレーンの女の子はワシの足に触れる。

「どう? ここ痛い?」

「ッツ! ああ、そこが痛いな」

「分かった。ここね」

 女の子は手当に慣れていないのか、応急処置に時間がかかってしまった。しかもただ捻っただけにも関わらず、しっかりと包帯を巻かれ、ガチガチに固定されたのだ。

「お、お嬢ちゃん。何もそこまで大袈裟にすることはないのだよ。ただ捻っただけだからね」

「何を言っているの! 足はとても大事なんだからね! 足がなければ普段の生活も大変なんだから。お爺さんには関係ないかもしれないけれど、走者にとって足は自分の命と同等なんだから」

 真剣な眼差しで足の大切さを語る女の子に、ワシは驚く。

 なんて強い意志を持った子だ。それに怪我人を心配する優しさを持っている素晴らしい子だ。ワシが後50歳若ければ、告白していただろう。

 女の子のことを考えていると、心臓の鼓動が早鐘を打ち出す。すると早い速度で血管内の血液が押し出される速度が早まっているからか、ワシのムスコにも変化が起きた。

 まさか。ワシは興奮しているのか? この幼女のような見た目の女の子に?

「一応応急処置をしたつもりではいるけれど、ちゃんとお医者さんに足を見せてよね。そのまま放って置いたら、歩けなくなるかもしれないから」

 捨て台詞を吐くと、女の子はこの場から去ろうとしているのか、踵を返す。

「ま、待ってくれ! な、名前を教えてくれないか?」

「マーヤの名前はマーヤだよ。じゃあね、お爺さん」

 自分の名前を告げると、マーヤと名乗った女の子はこの場から去って行った。





 あれからワシは、マーヤちゃんのことを考えるだけで、胸が引き裂かれそうになるほど心に痛みを感じる。この感情は若い頃にも体験した。恋の病だ。ワシはあの子に恋をしている。

 もっとあの子のことを知りたい。マーヤちゃんの全てを知りたい。

 そこでワシは、魔競走委員会の権力を使ってマーヤちゃんのことを調べた。マーヤちゃんの実家は経営難で、潰れるのは時間の問題だと。

 そのことを知ったワシは、妙案を思いついた。彼女の実家に金を貸し、後で莫大な利子を請求する。当然、その利子は違法とも言える利子だ。当然そんなことが公になれば、ワシは捕まってしまうだろう。だが、ワシの背後にはあの方がいる。あのお方が居ればどんな事件ももみ消してくれるだろう。

 その後、ワシは行動に移し、ヴァンシーと接触して金を貸すことに成功した。そして莫大な利子を突き付けることにも。そして利子を返せなければ、マーヤちゃんを嫁にする契約を強引に成立させた。

 実際、金などどうでも良い。ワシの目的はマイスイートエンジェルのマーヤちゃんを嫁にすることだ。

 ああ、目を瞑ると脳内に彼女のあどけない容姿が思い浮かんでくる。

 大きく可愛らしい目に未成熟な身体。しかも年齢的には合法だ。合法ロリ万歳!

 早くあの娘を嫁にして、穢れを知らないあの幼児体型をワシのムスコでワシの色に染めたい。グフフフフ。

 歳のこともあり、ゆっくりと歩くことしかできないが、それでもどうにか家を出る。そして馬車を手配し、訪れた馬車に乗って目的地へと向かって行く。

 さぁ、あの店は今頃どうなっている? どうせ客も居ない寂れた風情が残る、いたたましい店となっているだろう。

 馬車にある窓を開け、外の風景を眺める。

「早くヴァンシー亭に行こうぜ!」

「ああ、今度こそウイニングライブちゃんのサインを当ててやる」

 通りすがりの中、擦れ違った町民の言葉が耳に入る。

 あの者たち、今ヴァンシー亭と言ったか? いや、気のせいだよな。あんな寂れた店に行こうとする客などいないはずだ。

 疑問に思っていると、馬車は店から離れた位置で停車した。

「おい、どうした? 何かトラブルか?」

「いえ、人が多すぎて道が塞がれているので、ここから先は進めません」

「人が道を塞いでいるだと!」

 馬車から降りて外の様子を伺う。すると、多くの人々が列を作り、とある店への入店を待っていたのだ。

 しかもその店はヴァンシー亭である。

 いったい何が起きたと言うのだ! どうしてあれほどの賑わいを見せておる!
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