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第八章
第六話 サインの入手は大変①
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「はい、シャカール君。アーンしてください」
クリープがオムライスとか言う、異世界転生者が伝えた料理を一口分掬い、俺の口元に持って来る。
「アーン」
彼女の好意を素直に受け、俺は口を開ける。すると、口内にオムライスの乗ったスプーンが入り、口を閉じるとするりと抜かれる。
咀嚼してオムライスを味わうと、彼女の作った特性ソースの味が口に広がっていく。
「ママのオムライスは美味しいですか?」
「ああ、美味い。さすがクリープだ」
「それは良かったです。シャカール君がもっと良い子になれるように、いっぱい愛情を込めたのですよ」
ニコッと笑みを浮かべながら、クリープはおっとりとした口調で言葉を連ねる。
はぁー、彼女なら素直に協力してくれると思ったのにな。俺は彼女を信頼しすぎていたようだ。
若干後悔をしつつ、俺はウサギのケモノ族の女の子に視線を向ける。
「なぁ、もう良いだろう? 約束は果たしたんだ。そろそろお前のアレを俺にくれよ」
「ダメです。初めてをシャカール君に上げるのですから、もっとママを甘やかさせてください」
「良いだろう。俺は我慢できないんだ」
「ダメなものはダメです。ママのサインはもっと甘やかせたら上げます。ご飯を食べたのだから、今度は歯磨きですよ。さぁ、ママのお膝に頭を乗せてください」
「はぁー、どうしてこうなってしまったのだろうか」
俺は走者たちのサインを手に入れるために、学園中を駆け回っていた。手っ取り早く済ませるために、最初はシェアハウスにいるメンバーからサインをお願いしようと考え、一番協力しそうなクリープにお願いをした。
しかし彼女は無償ではダメだと言い、彼女の満足するまで俺は甘やかされると言う試練を受けることを条件に、サインを書いてもらう約束を取り付けたのだ。
くそう。料理を食べさせられると言う羞恥を受けたのに、今度は膝枕での歯磨きかよ。どこまで俺を辱めれば気が済むんだ。
正直に言って、もうやめたい。だが、この試練を乗り越えれば、アイビスと接触する機会を得られるかもしれないんだ。どこまで辱めを受けようと、耐えるしかない。
幼児プレイのようなこと受け入れ、クリープの膝の上に頭を乗せる。そしてゆっくりと口を開けた。
「はーい。では今から始めますね。シャカシャカ」
口内に歯ブラシを入れられ、歯磨きが行われる。
「気分は悪くないですか?」
心の気分は最悪だよ! そう言いたいが、言葉に出すことができない。それにここで彼女の気分を害するようなことをしてしまっては、サインを書いてもらえないかもしれない。
彼女の問いに、頭を小さく動かして問題ない意思を伝える。
「もし、何かありましたら、遠慮しないで手を上げて教えてくださいね。シャカシャカ」
不満なところがあれば、教えろと言っているのかもしれない。だが、彼女の歯磨きは、正直に言えば心地良かった。丁寧に1本1本磨かれているようで、丁寧でとても真剣にやっていることが伝わって来る。
こんなので文句を言えば、きっと天罰が下ると思えて来るほどの気遣いさえ感じてしまった。
「はい。終わりましたよ。グチュグチュペイをしましょうね」
歯磨きが終わったことを告げられ、ゆっくりと上体を起こす。
すると今度は、水の入ったコップを俺に手渡してくる。それを受け取り、水を口に含んで口内にある歯磨き粉を濯ぐ。すると今度は洗面器を俺の前に持って来た。
これに吐き出せと言っているのだろう。
言われた通りに洗面器の中に、口内で粉と交わって白く変色した水を吐き出す。
「よくできました。えらい、えらい」
濯ぎをしただけだと言うのに、子どもに教育をした母親の如く、丁寧な手付きで頭を撫でられる。
もう許してくれ。こんな屈辱、これ以上は耐えられない。
「なぁ、もう良いだろう? 早くお前のサインをくれよ」
「えー、まだいいじゃないですか。ママはもっとシャカール君を甘やかしてあげたいんですよ。あ、そうだ! 今度はお背中を流してあげましょう! さぁ、一緒にお風呂に行きましょう。ママが脱がせてあげますね」
生き物の欲とはエグいものだ。ひとつが満たされればまた別の欲を満たそうとする。俺はクリープから解放される時が来るのだろうか?
「もう勘弁してくれ! 俺の心が擦り減る! クッ殺状態だ!」
こうして俺とクリープの羞恥プレイは夜まで行われた。その日は疲れて直ぐに眠りについていたのだが、目を覚ますと隣にクリープが添い寝をしていたのだ。
俺、寝ている間に彼女から変なことはされていないよな?
クリープからどうにか複数枚のサインを入手し、次のターゲットを探す。
手っ取り早くシェアハウスのメンバーからサインを手に入れようとしたのが間違いだった。もっと確実に交換条件など出さずに好意でサインをくれる人物に当たろう。
次のターゲットはアイネスビジンだ。彼女はどうやら俺を走者として慕っているようだ。俺のお願いを素直に聞いてくれるかもしれない。
アイネスビジンを探すために学園中を探していると、第2競技場で彼女の姿を目撃する。
「本当に鬱陶しほどいやらしい攻撃をしますわね」
「やーい! わたしの矢を交わして前に出られるのなら出てみてください!」
どうやらアイリンも一緒のようで、2人で模擬レースのようなものを行っているようだ。
いつの間にか2人は模擬レースをするまで仲が良くなったみたいだな。
タイミングを伺い、彼女たちの勝負が決着するのを待つ。結果はアイリンの逆転負けだった。
「どうして負けるのですか!」
「オーホホホ! 今回も勝たせてもらいましたわ。公式戦であなたが勝てたのは、偶然ってことですわね。オーホホホ!」
「2人ともちょっと良いか?」
彼女たちの勝負が終わり、息を整えている段階で話しかける。
「シャカール様!」
「あ、シャカールトレーナーじゃないですか。何か用ですか?」
「ああ、実はお前たちのサインが欲しいんだ」
「サインですか? まぁ、良いですが、その代わりにシャカール様のサインもくださいませんか?」
「俺のサイン?」
まさかアイネスビジンまでもが要求してくるとは思ってもいなかったが、まぁ、サインの交換ならマシな方か。
「ああ、良いぞ。それくらいならいくらでも書いてやる」
「では、鑑賞用と保存用、それに添い寝用と実用する分など、全部で100枚……と言いたいところですが、それではシャカール様の負担になりますので、50枚で手を打ちます」
彼女の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。
観賞用や保存用なら分かる。だが、添い寝用や実用に使うってなんだよ。それに50枚って。
部屋一面に飾られた俺のサインを想像すると気分が悪くなった。
だが、こちらも同程度の枚数を請求すれば良いか。
「分かった。なら、同じ枚数分だけお前も書いてくれ!」
「50枚もワタクシのサインが欲しいのですの! いったいどのような用途にお使いになられるのです! まさか! ワタクシと同じことを考えておられるのですか? シャカール様のエッチ!」
いったい俺のサインを何に使うつもりでいるんだ! お前は!
声に出して言いたいところをグッと抑える。心の中で叫ぶだけでも、それなりに疲れているのだ。実際に声に出せば、疲労はもっと凄いかもしれない。
彼女が変なものに使用しないことを心の中で祈りつつ、どうにか交渉成立させると、今度はアイリンに視線を移す。
「アイリン、お前のサインもいくつかくれ」
「へー、シャカールトレーナーはそんなにわたしのサインが欲しいのですか? どうしようかな?」
アイリンが頬に人差し指を当て、ないやら考え事をしている様子を見せる。そしてニヤリと口角を上げた。
なんだか嫌な予感がしてきた。
「別に良いですが、その代わりにわたしのお願いを聞いてください。そうですね。まずは購買に行って、パンとミネラルウォータを買って来てください。もちろん、シャカールトレーナーの奢りです」
ただのパシリか。それくらいでアイリンのサインがもらえるのなら、安いものだな。
「分かった。買って来る」
「あ、その後にはわたしの肩を揉んでマッサージをしてください。走って足が痛いので、足のマッサージもお願いします。あ、やっぱりそれだと中途半端になりますね。この際背中などの全身マッサージもお願いします。そして今後はわたしに敬意を持って、敬語で話してくださいね」
「調子に乗るな! もうお前のサインなんかいらない!」
調子に乗ったアイリンに腹を立て、その場から去ろうとする。
「待ってください! シャカールトレーナー! ごめんなさい! わたしが調子に乗りすぎました! サインを書きます! シャカールトレーナーがまた私にトレーニングをしてくれると約束してくれるのなら、いくらでも書きます! これ以上アイネスビジンさんに負けたくはないのですよ!」
この場から去ろうとすると、アイリンが涙声で声をかけてきた。
どうやら俺を服従させ、なんでも言うことを聞く存在になれば、また命令してトレーニングを受けさせることができると考えての行動だったらしい。
それならそうと最初から言えば、俺が腹を立てることもなかった。
まぁ、ともあれ。これで3人からのサインを確保したことになる。まだまだ先は長そうだな。
クリープがオムライスとか言う、異世界転生者が伝えた料理を一口分掬い、俺の口元に持って来る。
「アーン」
彼女の好意を素直に受け、俺は口を開ける。すると、口内にオムライスの乗ったスプーンが入り、口を閉じるとするりと抜かれる。
咀嚼してオムライスを味わうと、彼女の作った特性ソースの味が口に広がっていく。
「ママのオムライスは美味しいですか?」
「ああ、美味い。さすがクリープだ」
「それは良かったです。シャカール君がもっと良い子になれるように、いっぱい愛情を込めたのですよ」
ニコッと笑みを浮かべながら、クリープはおっとりとした口調で言葉を連ねる。
はぁー、彼女なら素直に協力してくれると思ったのにな。俺は彼女を信頼しすぎていたようだ。
若干後悔をしつつ、俺はウサギのケモノ族の女の子に視線を向ける。
「なぁ、もう良いだろう? 約束は果たしたんだ。そろそろお前のアレを俺にくれよ」
「ダメです。初めてをシャカール君に上げるのですから、もっとママを甘やかさせてください」
「良いだろう。俺は我慢できないんだ」
「ダメなものはダメです。ママのサインはもっと甘やかせたら上げます。ご飯を食べたのだから、今度は歯磨きですよ。さぁ、ママのお膝に頭を乗せてください」
「はぁー、どうしてこうなってしまったのだろうか」
俺は走者たちのサインを手に入れるために、学園中を駆け回っていた。手っ取り早く済ませるために、最初はシェアハウスにいるメンバーからサインをお願いしようと考え、一番協力しそうなクリープにお願いをした。
しかし彼女は無償ではダメだと言い、彼女の満足するまで俺は甘やかされると言う試練を受けることを条件に、サインを書いてもらう約束を取り付けたのだ。
くそう。料理を食べさせられると言う羞恥を受けたのに、今度は膝枕での歯磨きかよ。どこまで俺を辱めれば気が済むんだ。
正直に言って、もうやめたい。だが、この試練を乗り越えれば、アイビスと接触する機会を得られるかもしれないんだ。どこまで辱めを受けようと、耐えるしかない。
幼児プレイのようなこと受け入れ、クリープの膝の上に頭を乗せる。そしてゆっくりと口を開けた。
「はーい。では今から始めますね。シャカシャカ」
口内に歯ブラシを入れられ、歯磨きが行われる。
「気分は悪くないですか?」
心の気分は最悪だよ! そう言いたいが、言葉に出すことができない。それにここで彼女の気分を害するようなことをしてしまっては、サインを書いてもらえないかもしれない。
彼女の問いに、頭を小さく動かして問題ない意思を伝える。
「もし、何かありましたら、遠慮しないで手を上げて教えてくださいね。シャカシャカ」
不満なところがあれば、教えろと言っているのかもしれない。だが、彼女の歯磨きは、正直に言えば心地良かった。丁寧に1本1本磨かれているようで、丁寧でとても真剣にやっていることが伝わって来る。
こんなので文句を言えば、きっと天罰が下ると思えて来るほどの気遣いさえ感じてしまった。
「はい。終わりましたよ。グチュグチュペイをしましょうね」
歯磨きが終わったことを告げられ、ゆっくりと上体を起こす。
すると今度は、水の入ったコップを俺に手渡してくる。それを受け取り、水を口に含んで口内にある歯磨き粉を濯ぐ。すると今度は洗面器を俺の前に持って来た。
これに吐き出せと言っているのだろう。
言われた通りに洗面器の中に、口内で粉と交わって白く変色した水を吐き出す。
「よくできました。えらい、えらい」
濯ぎをしただけだと言うのに、子どもに教育をした母親の如く、丁寧な手付きで頭を撫でられる。
もう許してくれ。こんな屈辱、これ以上は耐えられない。
「なぁ、もう良いだろう? 早くお前のサインをくれよ」
「えー、まだいいじゃないですか。ママはもっとシャカール君を甘やかしてあげたいんですよ。あ、そうだ! 今度はお背中を流してあげましょう! さぁ、一緒にお風呂に行きましょう。ママが脱がせてあげますね」
生き物の欲とはエグいものだ。ひとつが満たされればまた別の欲を満たそうとする。俺はクリープから解放される時が来るのだろうか?
「もう勘弁してくれ! 俺の心が擦り減る! クッ殺状態だ!」
こうして俺とクリープの羞恥プレイは夜まで行われた。その日は疲れて直ぐに眠りについていたのだが、目を覚ますと隣にクリープが添い寝をしていたのだ。
俺、寝ている間に彼女から変なことはされていないよな?
クリープからどうにか複数枚のサインを入手し、次のターゲットを探す。
手っ取り早くシェアハウスのメンバーからサインを手に入れようとしたのが間違いだった。もっと確実に交換条件など出さずに好意でサインをくれる人物に当たろう。
次のターゲットはアイネスビジンだ。彼女はどうやら俺を走者として慕っているようだ。俺のお願いを素直に聞いてくれるかもしれない。
アイネスビジンを探すために学園中を探していると、第2競技場で彼女の姿を目撃する。
「本当に鬱陶しほどいやらしい攻撃をしますわね」
「やーい! わたしの矢を交わして前に出られるのなら出てみてください!」
どうやらアイリンも一緒のようで、2人で模擬レースのようなものを行っているようだ。
いつの間にか2人は模擬レースをするまで仲が良くなったみたいだな。
タイミングを伺い、彼女たちの勝負が決着するのを待つ。結果はアイリンの逆転負けだった。
「どうして負けるのですか!」
「オーホホホ! 今回も勝たせてもらいましたわ。公式戦であなたが勝てたのは、偶然ってことですわね。オーホホホ!」
「2人ともちょっと良いか?」
彼女たちの勝負が終わり、息を整えている段階で話しかける。
「シャカール様!」
「あ、シャカールトレーナーじゃないですか。何か用ですか?」
「ああ、実はお前たちのサインが欲しいんだ」
「サインですか? まぁ、良いですが、その代わりにシャカール様のサインもくださいませんか?」
「俺のサイン?」
まさかアイネスビジンまでもが要求してくるとは思ってもいなかったが、まぁ、サインの交換ならマシな方か。
「ああ、良いぞ。それくらいならいくらでも書いてやる」
「では、鑑賞用と保存用、それに添い寝用と実用する分など、全部で100枚……と言いたいところですが、それではシャカール様の負担になりますので、50枚で手を打ちます」
彼女の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。
観賞用や保存用なら分かる。だが、添い寝用や実用に使うってなんだよ。それに50枚って。
部屋一面に飾られた俺のサインを想像すると気分が悪くなった。
だが、こちらも同程度の枚数を請求すれば良いか。
「分かった。なら、同じ枚数分だけお前も書いてくれ!」
「50枚もワタクシのサインが欲しいのですの! いったいどのような用途にお使いになられるのです! まさか! ワタクシと同じことを考えておられるのですか? シャカール様のエッチ!」
いったい俺のサインを何に使うつもりでいるんだ! お前は!
声に出して言いたいところをグッと抑える。心の中で叫ぶだけでも、それなりに疲れているのだ。実際に声に出せば、疲労はもっと凄いかもしれない。
彼女が変なものに使用しないことを心の中で祈りつつ、どうにか交渉成立させると、今度はアイリンに視線を移す。
「アイリン、お前のサインもいくつかくれ」
「へー、シャカールトレーナーはそんなにわたしのサインが欲しいのですか? どうしようかな?」
アイリンが頬に人差し指を当て、ないやら考え事をしている様子を見せる。そしてニヤリと口角を上げた。
なんだか嫌な予感がしてきた。
「別に良いですが、その代わりにわたしのお願いを聞いてください。そうですね。まずは購買に行って、パンとミネラルウォータを買って来てください。もちろん、シャカールトレーナーの奢りです」
ただのパシリか。それくらいでアイリンのサインがもらえるのなら、安いものだな。
「分かった。買って来る」
「あ、その後にはわたしの肩を揉んでマッサージをしてください。走って足が痛いので、足のマッサージもお願いします。あ、やっぱりそれだと中途半端になりますね。この際背中などの全身マッサージもお願いします。そして今後はわたしに敬意を持って、敬語で話してくださいね」
「調子に乗るな! もうお前のサインなんかいらない!」
調子に乗ったアイリンに腹を立て、その場から去ろうとする。
「待ってください! シャカールトレーナー! ごめんなさい! わたしが調子に乗りすぎました! サインを書きます! シャカールトレーナーがまた私にトレーニングをしてくれると約束してくれるのなら、いくらでも書きます! これ以上アイネスビジンさんに負けたくはないのですよ!」
この場から去ろうとすると、アイリンが涙声で声をかけてきた。
どうやら俺を服従させ、なんでも言うことを聞く存在になれば、また命令してトレーニングを受けさせることができると考えての行動だったらしい。
それならそうと最初から言えば、俺が腹を立てることもなかった。
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