薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第八章

第五話　ソウーシャーイーツ

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　マルゼンの放った離婚届切り札が炸裂し、どうにかマーヤの父親に話を聞かせる状況に場を持って行くことができた。

「それで、どうやって莫大な利子の返済の目処を立たせるって言うんだ。つまらないことを言ったら直ぐに追い出すからな」

「あなた」

「ヒッ！　ご、ごめんなさい謝るから、どうか離婚だけは」

　ぶっきらぼうに言葉を吐き捨てるマーヤの父親だったが、妻のマルゼンが声をかけると萎縮してしまった。そしてビクビクしながら俺に謝罪の言葉を言って来る。

　相当あの離婚届が効果を発揮しているようだな。まぁ、逆に言えば、彼はそれほどマルゼンのことを愛しているのだろう。彼女からしたら、現在どれくらい愛が残っているのか怪しいものだが。

「ごほん。それでは、話を始める。単刀直入に言うが、俺が計画している借金返済方法、それはソウシャーイーツだ」

「ソウシャーイーツ？　何だそれ？」

「簡単に言えば、走者が料理などの食べ物を届けてくれるサービスだ。わざわざ客が店に来なくとも、注文さえしてくれれば、料理を持って来てくれると言うサービス」

「何だ。宅配サービスのことか。それなら、宅配をしてくれるやつを雇わないといけない。俺の店に、そんな余裕はないぞ。ワハハハハ！」

　俺の策が現実的ではないと判断したのか、マーヤの父親は胸を張って堂々と言葉を連ねる。

「そんなこと堂々と言えたものではないでしょうに、本当に恥ずかしい。この人と婚姻を結んだのは、私の人生の汚点ね」

「シャカールちゃんが無謀な策を言う訳がないじゃない。そんなことも見抜けないから、ママから愛想を尽かされるのよ。娘として恥ずかしい」

「ガハッ！　た、頼むから、それ以上俺の心を抉らないでくれ。お前たちに嫌われたら、俺はショックで命を絶ちそうだ」

「なら、さっさと絶ってください。そしたらシャカール君を新しい旦那様として迎えます」

「シャーカールちゃんはマーヤの彼氏だよ！　そんなことはマーヤがさせないのだから！　あ、でも、パパが居なくなってくれれば、障害となるものがないから、婚姻がスムーズに進むね。だからパパ、自分で命を絶つのなら好きにして」

「いや死なないから！　今の冗談で言っただけだから！　だから間にうけないでよ！　パパの心の体力が風前の灯になっている！」

　中々エグい家族の会話に、俺は苦笑いを浮かべることしかできない。

　でも、話を先に進めるには、マルゼンやマーヤが横槍を入れないようにしなければ。

「マーヤ、マルゼン。頼むから、しばらく大人しくしてくれ。あまり時間を無駄にしたくはない」

「分かりました。シャカール君」

「はーい！　マーヤはシャカールちゃんのお願いは何でも聞く素敵な彼女だから、言う通りにしまーす！」

　２人に大人しくしているように言うと、彼女たちは黙りだす。これで話が進んでくれれば良いが。

「話が中断してしまったが、知り合いの走者にボランティアとして協力してもらう。数は少ないが、俺が頼めば協力してくれる走者に心当たりがある。そしてここで更にガチャ機能を搭載しようと思っている」

「ガチャ機能？　何だそれは？」

「俺もうまくは説明できないが、まぁ、どんな感じなのかを言うと、ランダムで与えられるオマケを配るサービスも付ける。そのおまけは走者の直筆サインだ。走者ファンは多い。特に人気の高い走者を求めるファンなら、サインのために大金を叩はたくだろう」

「確かに魔競走ブームでレースを見に行く人は全国にいる。だけど国の端まで届けには行けないだろう。料理も冷めてしまう」

「さすがの俺も、国の隅々まで料理を運ぶと言うような馬鹿げたことは言わない。とりあえずはこの近辺から始めて、遠方の方にはこの店に来てもらうように促すさ」

　簡潔に説明をすると、マーヤの父親は胸の前で腕を組み、顔を少し下げて瞼を閉じ、何やら考え事をしているポーズを取る。

「分かった。そこまで言えば俺と賭けをしよう」

「良いぜ。もし、俺の策で利子の返済ができなければ、あんたも下で一生タダ働きをしてやる。もし、俺の策で利子の返済を終えたのならその時は――」

「その時はマーヤとの婚姻を認めよう。店を救ってくれたやつなら、安心して娘を任せられるからな」

「あ、いや、別にそこまでしなくて――」

「やったー！　マーヤも死に物狂いで頑張るから！　そして莫大な利子を返済して、暖かい家庭を築こう！　シャカールちゃん！」

「私も全力でお手伝いするわね。この際、時々相手にしてくれるのなら、２号さん愛人でもいいわ」

　マーヤの父親が勝手に決め付けた瞬間、マーヤとマルゼンが俺に抱き付いてくる。

　マーヤはともかく、どうしてマルゼンまで俺に抱き付く！　まさか、本当に俺を狙っているなんて言わないよな。あんたには目の前に、大切な旦那がいるだろうが！

　こうして俺とマーヤの父親との間に賭けの勝負が行われた。

　その後、俺が勝った時の報酬の件を変えてもらうように、マーヤの父親に話を持ち込んだのだが、嫁の件があってか、まともに話を聞いてくれなくなった。

　俺ってもう、詰んでいないか？　賭けに勝っても負けても、本当の意味でのハッピーエンドにはならないような気がしてきた。

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