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第七章
第二十一話 ツインターボステークス⑦決着
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~アイリン視点~
先頭を走っていたはずのわたしの視界に、突如別の走者の姿が入りました。
全身が黒い影のようなもので覆われているけれど、ツインテールの女の子だと言うことが分かります。
あんな子、出走走者の中にはいなかった。第三者の介入なの? でも、それなら運営側が中止を呼びかけるはず?
『現在1番手を走るアイリンが、最終ギミックに入った! 走者たちに待ち受けるのは、古の大逃げ娘、ツインターボの幻影だ!』
私が人形の黒い影に接近した瞬間、彼女も同時に走り出す。最後の最後で大昔の走者との勝負? これにいったい何の意味があるの?
疑問に思っていると、突如体に重みを感じた。まるで重力系の魔法で妨害されているかのようで、気を抜いてしまえば、そのまま転倒して芝に這いつくばりそうになる程の強力なものだ。
『このギミックでは、幻影のツンターボよりも先に走ることが出来なければ、重力の魔法で速度を落とされてしまいます。伝説のツインターボの大逃げを再現したギミックですね』
体に起きた突然の現象を解説が答えます。
なるほど、今回はそのようなギミックになっていたのですね。なら、ここで彼女を追い越せば、デバフの効果はわたし以外が受けることになります。そうすれば、更にリードを広げることができる。
「直接矢を放つのは気が引けますが、幻影なら別に良いですよね」
体内の魔力を練り上げ、魔力回路全体に行き渡らせると、魔法を発動して矢を生成します。そして弓に装填して狙いを定め、古の走者に放ちました。
ですが、放った矢は重力の影響を受けて瞬く間に下降し、彼女に当てることはできません。
重力のせいで、矢が届く前に落下してしまう! これじゃ、いくら攻撃しても意味がないわ!
「そこを退いてくれ!」
目の前を走る幻影に気を取られている間に、後を走っていたオグニさんが追い付いて来ました。
「くそう。早くレースを終わらせたいと言うのに、この妨害は面倒だ。ウインド!」
オグニさんが魔法を発動して風を生み出します。
気圧の変化により生み出される風であれば、重力の影響を受けることはありません。
風が発生して前方を走る黒い影の女の子を襲います。ですが、影は風で揺らいだ蝋燭の火のように、一瞬だけ消えそうになりましたが再び現れました。
「風で掻き消すことが出来ない! 物質による遠距離攻撃では重力で落とされてしまう。でも、だからと言って気体での攻撃では効果がない。ここはやはり、走者としてのセオリー通り、己の足で攻略するしかないな」
追い抜かれないように必死に走っている中、オグニさんの独り言が耳に入って来ました。
やっぱり、このギミックを攻略するには、彼女よりも早く走って、重力の影響を無くすしかありません。
魔法禁止エリアに到達すれば、魔法は使用できなくなる。なら、使える今だけ、ありったけの魔力を使って加速してみせます。
加速の魔法を発動してオグニさんよりも前に出ますが、重力の影響で思った程の速度を出すことができていません。
加速の魔法を使っても、これくらいしか距離を縮められないのですか! これってもう、負けイベントのようなものじゃないですか!
どんどんギミックの女の子から引き離されていきます。
当時の彼女が再現されている以上、古の大逃げ娘、ツインターボがどれほど偉大な走者だったのかが痛感させられました。
『アイリンがギミックのツインターボを追い越そうと加速するも、彼女を追い越すことが出来ない。どうやら今年も彼女を追い越すことが出来なさそうだ』
『レースにおいて強力な重力操作をする魔法。それを解除するのは並大抵の魔法では太刀打ちできませんからね。やはり大昔の伝説は凄かったと言うことでしょう』
『誰もツインターボをクリアできないまま、ここでギミックエリア外にでたツインターボの幻影は姿を消しました。重力の影響が解除された今、走者たちが一気に動き出します』
「これ以上、ワタクシの前を走る走者を増やしませんわ。食らいなさい! 盲目の太陽光!」
『3番手のアイネスビジンが、勝負服を利用した光の反射で後続を走るヒッキーハウスたちの目を眩ませる! しかし前方を走るアイリンとオグニには効いていないぞ!』
どうやら、アイネスビジンさんは優勝を諦めたみたいですね。なら、彼女の想いを背負って、わたしが1着でゴールをしなければ。
「何ですって! どうして前の2人は、ワタクシの攻撃が効いていませんのよ!」
前には光の影響を受けていない事実に、アイネスビジンさんは憤慨しているようです。どうやらわたしの勘違いだったようですね。彼女は勝負を諦めていませんでした。
「お待ちなさい! 優勝するのは、このワタクシなのですから!」
『3番手のアイネスビジンがここで加速魔法を使った! 一気に距離を縮めて来るが、果たして間に合うのか!』
アイネスビジンさんが加速の魔法で接近しているようです。縮められた分、わたしも加速をしてリードを広げたいところですが、魔法禁止エリアに足を踏み入れてしまいました。なので、ここから先は、己の足を信じてひたすら走り切るしかありません。
『先頭アイリン、いや、ここでオグニが並んだ。そして、僅かに前に出たか?』
『ほぼ同じ位置にいるように見えます。リードしているとしても、鼻の差でしょう。いくらでも差し返せれます』
隣を走るオグニさんがとても気になる。でも、ゴール目前で勝負相手に気が逸れてしまったら、それが隙を生むことになる。ここは我慢して、ひたすらゴールを見続けるのよ。
視界の奥にゴール板が見えてきた。もう、ゴールは目の前。
隣のオグニさんが気になる! でも、ゴールから目を離す訳にはいかないわ。
『3番手のアイネスビジン、魔法禁止エリア内だが、速度を上げて来た! これはワンチャンあるか!』
ゴール目前の中、実況がアイネスビジンさんの存在を告げて来た。
今、彼女はどの辺にいるの? もしかして、もう並んでいたりする?
様々な情報が耳に入り、焦りを感じつにはいられなかった。こんな時、エルフの耳はデメリットにしかならない。
「ふふ、終わったな。どうやら君の勝ちのようだ。3番手のアイネスビジンの存在を気にかけた段階で、負けが決まったようだ。私もまだまだだな」
「え?」
一目散に駆ける中、オグニさんの声が耳に入ります。
そして気が付くと、既にゴール板を超えていることを知り、減速して立ち止まります。
『1着は3番人気のアイリンだ! 頭の差で2着は1番人気のオグニ! そして3着は2番人気のアイネスビジン!』
「わたし……勝った……の?」
歓声が上がる中、わたしは本当に優勝できたのか、その自覚がありません。
「おめでとう。君の優勝だ」
「まさか、あなたに負ける日が来るとは思いませんでしたわ。ですが、あなたが勝てたのはシャカール様の教えがあったからこそ。ワタクシはあなたに負けたのではなく、シャカール様に負けましたのよ」
呆然としている中、オグニさんとアイネスビジンさんが、わたしが勝ったことを告げます。その瞬間、やっと勝ったと言う自覚が起き、嬉しさが込み上げて来ました。
「やったー! わたし、勝てたんだ! やーた、やーた、やったった!」
嬉しさのあまりに両手を上げて左右に振ります。
「ププ、何ですの? そのおかしな踊りは?」
「まぁ、初めてレースに勝てたみたいだし、とても嬉しいのだろう。初めてレースで勝った時のことを思い出す」
歓声が聞こえる中、こうしてわたしの初めてのG Iレースは優勝と言う形で幕を閉じました。
先頭を走っていたはずのわたしの視界に、突如別の走者の姿が入りました。
全身が黒い影のようなもので覆われているけれど、ツインテールの女の子だと言うことが分かります。
あんな子、出走走者の中にはいなかった。第三者の介入なの? でも、それなら運営側が中止を呼びかけるはず?
『現在1番手を走るアイリンが、最終ギミックに入った! 走者たちに待ち受けるのは、古の大逃げ娘、ツインターボの幻影だ!』
私が人形の黒い影に接近した瞬間、彼女も同時に走り出す。最後の最後で大昔の走者との勝負? これにいったい何の意味があるの?
疑問に思っていると、突如体に重みを感じた。まるで重力系の魔法で妨害されているかのようで、気を抜いてしまえば、そのまま転倒して芝に這いつくばりそうになる程の強力なものだ。
『このギミックでは、幻影のツンターボよりも先に走ることが出来なければ、重力の魔法で速度を落とされてしまいます。伝説のツインターボの大逃げを再現したギミックですね』
体に起きた突然の現象を解説が答えます。
なるほど、今回はそのようなギミックになっていたのですね。なら、ここで彼女を追い越せば、デバフの効果はわたし以外が受けることになります。そうすれば、更にリードを広げることができる。
「直接矢を放つのは気が引けますが、幻影なら別に良いですよね」
体内の魔力を練り上げ、魔力回路全体に行き渡らせると、魔法を発動して矢を生成します。そして弓に装填して狙いを定め、古の走者に放ちました。
ですが、放った矢は重力の影響を受けて瞬く間に下降し、彼女に当てることはできません。
重力のせいで、矢が届く前に落下してしまう! これじゃ、いくら攻撃しても意味がないわ!
「そこを退いてくれ!」
目の前を走る幻影に気を取られている間に、後を走っていたオグニさんが追い付いて来ました。
「くそう。早くレースを終わらせたいと言うのに、この妨害は面倒だ。ウインド!」
オグニさんが魔法を発動して風を生み出します。
気圧の変化により生み出される風であれば、重力の影響を受けることはありません。
風が発生して前方を走る黒い影の女の子を襲います。ですが、影は風で揺らいだ蝋燭の火のように、一瞬だけ消えそうになりましたが再び現れました。
「風で掻き消すことが出来ない! 物質による遠距離攻撃では重力で落とされてしまう。でも、だからと言って気体での攻撃では効果がない。ここはやはり、走者としてのセオリー通り、己の足で攻略するしかないな」
追い抜かれないように必死に走っている中、オグニさんの独り言が耳に入って来ました。
やっぱり、このギミックを攻略するには、彼女よりも早く走って、重力の影響を無くすしかありません。
魔法禁止エリアに到達すれば、魔法は使用できなくなる。なら、使える今だけ、ありったけの魔力を使って加速してみせます。
加速の魔法を発動してオグニさんよりも前に出ますが、重力の影響で思った程の速度を出すことができていません。
加速の魔法を使っても、これくらいしか距離を縮められないのですか! これってもう、負けイベントのようなものじゃないですか!
どんどんギミックの女の子から引き離されていきます。
当時の彼女が再現されている以上、古の大逃げ娘、ツインターボがどれほど偉大な走者だったのかが痛感させられました。
『アイリンがギミックのツインターボを追い越そうと加速するも、彼女を追い越すことが出来ない。どうやら今年も彼女を追い越すことが出来なさそうだ』
『レースにおいて強力な重力操作をする魔法。それを解除するのは並大抵の魔法では太刀打ちできませんからね。やはり大昔の伝説は凄かったと言うことでしょう』
『誰もツインターボをクリアできないまま、ここでギミックエリア外にでたツインターボの幻影は姿を消しました。重力の影響が解除された今、走者たちが一気に動き出します』
「これ以上、ワタクシの前を走る走者を増やしませんわ。食らいなさい! 盲目の太陽光!」
『3番手のアイネスビジンが、勝負服を利用した光の反射で後続を走るヒッキーハウスたちの目を眩ませる! しかし前方を走るアイリンとオグニには効いていないぞ!』
どうやら、アイネスビジンさんは優勝を諦めたみたいですね。なら、彼女の想いを背負って、わたしが1着でゴールをしなければ。
「何ですって! どうして前の2人は、ワタクシの攻撃が効いていませんのよ!」
前には光の影響を受けていない事実に、アイネスビジンさんは憤慨しているようです。どうやらわたしの勘違いだったようですね。彼女は勝負を諦めていませんでした。
「お待ちなさい! 優勝するのは、このワタクシなのですから!」
『3番手のアイネスビジンがここで加速魔法を使った! 一気に距離を縮めて来るが、果たして間に合うのか!』
アイネスビジンさんが加速の魔法で接近しているようです。縮められた分、わたしも加速をしてリードを広げたいところですが、魔法禁止エリアに足を踏み入れてしまいました。なので、ここから先は、己の足を信じてひたすら走り切るしかありません。
『先頭アイリン、いや、ここでオグニが並んだ。そして、僅かに前に出たか?』
『ほぼ同じ位置にいるように見えます。リードしているとしても、鼻の差でしょう。いくらでも差し返せれます』
隣を走るオグニさんがとても気になる。でも、ゴール目前で勝負相手に気が逸れてしまったら、それが隙を生むことになる。ここは我慢して、ひたすらゴールを見続けるのよ。
視界の奥にゴール板が見えてきた。もう、ゴールは目の前。
隣のオグニさんが気になる! でも、ゴールから目を離す訳にはいかないわ。
『3番手のアイネスビジン、魔法禁止エリア内だが、速度を上げて来た! これはワンチャンあるか!』
ゴール目前の中、実況がアイネスビジンさんの存在を告げて来た。
今、彼女はどの辺にいるの? もしかして、もう並んでいたりする?
様々な情報が耳に入り、焦りを感じつにはいられなかった。こんな時、エルフの耳はデメリットにしかならない。
「ふふ、終わったな。どうやら君の勝ちのようだ。3番手のアイネスビジンの存在を気にかけた段階で、負けが決まったようだ。私もまだまだだな」
「え?」
一目散に駆ける中、オグニさんの声が耳に入ります。
そして気が付くと、既にゴール板を超えていることを知り、減速して立ち止まります。
『1着は3番人気のアイリンだ! 頭の差で2着は1番人気のオグニ! そして3着は2番人気のアイネスビジン!』
「わたし……勝った……の?」
歓声が上がる中、わたしは本当に優勝できたのか、その自覚がありません。
「おめでとう。君の優勝だ」
「まさか、あなたに負ける日が来るとは思いませんでしたわ。ですが、あなたが勝てたのはシャカール様の教えがあったからこそ。ワタクシはあなたに負けたのではなく、シャカール様に負けましたのよ」
呆然としている中、オグニさんとアイネスビジンさんが、わたしが勝ったことを告げます。その瞬間、やっと勝ったと言う自覚が起き、嬉しさが込み上げて来ました。
「やったー! わたし、勝てたんだ! やーた、やーた、やったった!」
嬉しさのあまりに両手を上げて左右に振ります。
「ププ、何ですの? そのおかしな踊りは?」
「まぁ、初めてレースに勝てたみたいだし、とても嬉しいのだろう。初めてレースで勝った時のことを思い出す」
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