薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第六章

第十三話 マキョウダービー⑥

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 ~シャカール視点~





『苦戦を強いられていた第2のギミックエリアでしたが、遂に動いた! 見えるようになった足場を走り、ウイニングライブが現在先頭ハナを走る! 続いて2番手はシャワーライト。湖を泳いでサイレントキル。その後ろをカルディアとユキノタマが追いかけております』

『湖を泳ぐ3名は、まだ半分泳いだところですね。果たして岸が上がった頃には、どのくらいのスタミナと魔力が残っているのでしょうか?』

『そして殿を走りますシャカールが、雷撃の魔法を発動し、起死回生を狙う! 徐々に近付く雷撃に驚き、6番手以降の走者たちが慌てて湖の上にある足場を飛び始めたぞ!』

『ギミックの効果が失われたことにより、次々と他の走者が渡っていますね。鍛え上げられた運動力を屈指して、次々と突破をしていきます』

 どうやら、俺がギミックの効果を失わせたことで、ようやく前を走る奴らが動いてくれたか。

 これなら、まだ一定の距離を保ったまま次のギミックで勝負をすることができる。

 俺が本気を出すのは、ウイニングライブたちが最後のギミックを突破してからだ。

 湖に落ちた奴らは魔力とスタミナを奪われ、完走できるか危うい状況となっている。仮に途中で追い越したとしても、後方から魔法を使われるようなことはないだろう。

『さぁ、ここでシャカール走者が第2のギミックに辿り着いた』

 雷撃の魔法により、上空には雷雲が広がって太陽を遮っている。そのお陰でギミックは効果を失い、見えない床が姿を表している。けれど、魔法効力がなくなって雷雲が消えれば、再び床は透明になって視認することができなくなるだろう。

 その前にさっさと向こう岸に渡らないとな。

 見えるようになった足場を跳躍しながら前へと進む。そして前方を遮るようにして配置されてある壁に辿り着き、急いで登った。

 そして頂上に上り詰めた時、俺はフッと思う。

 わざわざここから降りて下の足場に着地するよりも、ここから思いっきり跳躍をして向こう岸に渡った方が、時間のロスを少なくできるんじゃないか。

 どっちにしても、湖を泳いでいるあいつらから反撃を受けることはない。なら、ここから向こう岸に飛び降りた方が良いに決まっている。

 一度深呼吸を行い、神経を集中させて向こう岸に向かって全力で飛び降りる。

 だが、予想通りに展開が起きるほど、人生は甘くはなかった。予想よりも跳躍力が足りない。このままでは湖の中に落ちてしまう。

 くそう、俺もここまでか。湖に落ちたら最後、俺の魔力は湖に奪われ、魔法を使用することができずに負けてしまう。

 まぁ、俺が選んだ選択の結果だ。どんなことが起きても、それは自己責任となる。

 優勝を諦めようとしたその時、片足に固いものが触れた感触を感じた。

 これはなんだ? 俺の着地地点には、足場はなかったはず。しかもこの足場、踏んだ瞬間に沈み始めている。

 何が起きたのか分からないが、足元を見ている暇はない。このまま跳躍すれば、向こう岸に渡ることができそうだ。

 一瞬の判断の元、俺はもう一度足に力を入れて跳躍した。すると今度は芝の上に足が乗り、湖を越えたことが分かった。

『なんと! 湖に落ちたかと思ったシャカール走者ですが、泳いでいたユキノタマ走者の頭を踏んで向こう岸に渡った!』

『なんと言う偶然でしょうか。運悪くその場にいたユキノタマ走者には酷い仕打ちですが、妨害もありなので、この行為は不問となります。自ら奇跡を生み出すシャカール走者、さすがとしか良いようがありませんね』

 実況を担当するアルティメットの言葉が耳に入り、俺は何を踏んでいたのかを理解した。

 まぁ、わざとではないから許してくれ。

 心の中で彼に謝る中、第2のギミックをクリアした俺は、急いで次のギミックへと向かって行く。

『シャカール走者が15位に上がったところで、ここで順位を振り返って行きます。現在先頭はウイニングライブのまま、その後方をシャワーライト、5メートル差をカマカマが走り、それを追いかけるようにしてアマソンが走る。おっと、ここでパワームテキが追いついて並走する。その2メートル後方をサンシャイン、アストン、ミスターブラウンが並走しています。その3名から2メートル離れて内側をサイリス、その左をピッキーハウス、その内側を走りましてサザナミですが、表情が苦しそうだ。そして1メートル差でアックス、カゲノキシが走っています』

『第2のギミックで3番手から5番手の順位が入れ替わった以外は、そのままの順位が上がっただけと言った感じですね。全員がまだ余力を持っている状態と言えましょう』

『サイレントキルとカルディア、それにユキノタマは、シャカールから5メートルほど差が開いて、ここで岸に上がることができました。ですが先頭との距離を考えると、ここで逆転するのは絶望的と言ったところか』

『スタミナと魔力を失っている今の状況では勝てないかと思われます。彼ら3人でワーストスリー争いをすることになるでしょう』

『さぁ、ここで現在1位のウイニングライブが最後のギミック、心臓破りの坂ブレークユアハートに入った!』

『名前は物騒ですが、見た感じ普通の緩やかな坂です。果たしてどんなギミックが待ち受けているのか』

 ウイニングライブが最後のギミックに入ったか。なら、そろそろテンポアップと行くとするか。

『先頭を走るウイニングライブ、そして彼女を追いかけるシャワーライトがエリアの3分の1を走ったところで、後続がギミックエリアに入った! な、なんと! エリア内に入った人数が増えた分、坂の勾配が増す! 現在50度の急斜面と言ったところか!』

『最後のギミックエリアは、走る走者の人数に比例して坂の傾斜が変わって来ます。多くの走者がエリア内に走れば走るほど、坂が急斜面となって走者たちの行方を妨げます。ここに来てこの斜面は走者たちにとってはきついですね』

『先頭を走るウインングライブ、そして2番手のシャワーライト、表情が苦しいぞ! 果たして最後まで走りきれるスタミナは残されているのか!』

 先頭を走っている奴らが苦しんでいるな。作戦通りだ。マキョウダービーのギミックの内容は既に把握しており、その対策は既にしていた。敢えて殿を走り続けることで、俺は他の走者からは狙われにくくし、更にスタミナを温存。そして後方から攻撃をして前方を走る走者たちに余計なスタミナ消費をさせるこができた。

 ここまでは作戦通りだ。後は、俺が最後の最後で爆発的な末脚を出せるかどうかが勝敗を決める鍵となるが、後はタイミングを見計らうだけだ。

 今後の方針を決めると、俺は勝負を仕掛けるタイミングを伺う。
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