薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第六章

第八話 マキョウダービー①

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 モンスターの襲撃からウイニングライブを助けた俺は、馬車に揺られながらマキョウダービーが行われる街へと向かっていた。

 窓から外の様子を覗くと、視界の先に小さいが建物のようなものが見えてきた。

 街が見えてきたな。これならどうにかギリギリ間に合いそうだ。

 街中に辿り着くと、馬車はレース会場前に到着して馬車の扉を開ける。そして一番に俺が出ると、美少女たちが待ち受けていた。

「「シャカール君!」」

「シャカールちゃんが来たってことは、シャワーライトちゃんたちを見つけてくれたのだね!」

「まったく、心配をかけさせやがる。お説教はレースが終わった後だ。今は受付を先に進めよう」

 タマモたちが俺の姿を見てホッとした様子を見せると、ルーナが受付を済ませるために、急いで会場入りをするように促す。

 ルーナの後を歩き、俺たちは走者専用の出入り口から会場内へと入って行く。

「魔走学園の学園長です。今回の走者を連れて来ました。遅れてしまい申し訳ありません」

 受付の前に行くと、ルーナは謝罪の言葉を言い、たった今到着したことを告げる。

「いえ、大丈夫ですよ。近頃モンスターの襲撃が多くなっているようで、ギリギリに来る走者たちが増えています。なので、受付の方もギリギリまで承っております」

 どうにか受付時間に間に合ったようだな。モンスターの襲撃が多くなっているのは喜ばしいことではないが、そのお陰で俺たちはレースに出場することができる。

 廊下にある掛け時計を見ると、本来の受付時間を5分過ぎていた。

「そうですか……受付はワタシがしておくから、お前たちは早く控え室に行って着替えを済ませておけ」

  先に控え室に行くように促され、俺は男子控え室へと向かって行く。

 目的地に辿り着くと、扉を開けて中に入る。

 マキョウダービーに参加する様々な種族の走者が、着替えながら談笑したり、互いに闘志を燃やしていたりしている。

 本当に暑苦しいよな。まぁ、男の走者なのだから仕方がない。

 ざっと見て15人がいるな。俺も含めて16人。と言うことは、女性走者はウイニングライブたちだけか。

 18人フルゲートで行われるレース、この中でダービーを制覇できるのはたった1人だけ。

 そんなことを思いながら、拳を強く握る。今回のダービーだけは何がなんでも勝たなければならない。負けて土下座を晒してたまるかよ。

 空いているロッカーを探して、漆黒の勝負服に着替える。

「なぁ、今回のレース、あのウイニングライブが出場するんだろう? 俺、彼女の大ファンなんだ」

「実は俺もだ。レース中はルール内であれば何が起きても許される。なんでもありな以上、事故と見せかけて、乳を掴めないかな」

「なんだよそれ、お前、もしかして発情期か?」

「かもしれないな。あはははははは!」

 なんともオスらしい会話と言えば言いのか、下ネタ混じりの会話が耳に入って来る。

 あいつ、逃げの脚質なのか? ウイニングライブはきっと、今回も逃げの脚質で走る。彼女を事故と見せかけて接触しようとするのなら、ある程度の速さが要求されることになる。

 まぁ、あいつは簡単には捕まるようなことにはならないだろう。そもそも、ウイニングライブをマークするように、近くにシャワーライトがいるはず。きっと彼女が近付く男共を蹴散らすだろう。

 着替えを終え、準備を整えると俺は控え室から出てコースへと向かい、そして芝を踏み締める。

 足から伝わるこの芝の感触、不良ではないが稍重ややおもだな。前日雨が降っていたし、今日は曇り空だ。芝が乾き切っていないとなると、走る際にパワーが要求されることになる。

 力強い走りをしなければ、前に進むのが難しくなりそうだ。

『ファ~ン、ファ~ン、ファファ~ン、ファン、ファ、ファ~ン! ファン、ファン、ファン、ファ~ン! ファ~ン、ファ~ン、ファファ~ン、ファン、ファ、ファ~ン! ファン、ファン、ファン、ファ~ン!』

 芝の状態を確認していると、始まりのファンファーレが鳴り響く。

 どうやらレース開始時刻が迫ったようだ。次々と走者たちがコース内に足を踏み入れる。

『さぁ、今年のマキョウダービーの開催時刻となりました。実況は私、魔走学園3年のアルティメット』

『そして解説は同じく、魔走学園3年のサラブレットが務めます』

『ファン人気の現段階の集計では、一番人気はやはりこの走者、ウイニングライブです倍率オッズの方は1.1倍と非常に高い人気を誇っています』

『彼女はチェリーブロッサムで敗れたものの、ティアラとシュウカの2冠覇者ですからね。注目度もかなりのものでしょう』

『そして2番人気は同じく女性走者のシャワーライト。倍率オッズの方は2.8倍となっています』

『彼女はウイニングライブの3冠を遮った実力を持っていますからね。その実力を見込んでいるのでしょう。チェリーブロッサム覇者の実力が、今回のレースでどう動くのか、今から楽しみです』

 アルティメットとサラブレットが人気投票の順位を語る。人気投票=観客が賭けた券の枚数となるため、今回のレースはウイニングライブかシャワーライトが優勝することを期待しているのだろう。

 俺はあの時観客たちからヘイトを集めた。きっと人気は下の方だろうな。

『続いて3番人気はシャカールです。倍率オッズの方は5.2倍となっています』

『彼は前回のテイオー賞であのフェインを破り、テイオー賞の覇者となっていますからね。その実力は1番人気、2番人気と引けを取りません。恐らくですが、この3人が優勝争いをするかと思われます』

 意外と俺は3番人気だったな。まぁ、人間性はともかく、実力はある。そこを評価されての結果かもしれないな。

「さすがシャカール君ね。3番人気を勝ち取るなんて。でも、負けないのだから」

「クラウン路線のレースにはあまり興味がないですが、あなたにだけは負けません。人気順通りに、シャカール君には3位を取ってもらいます」

 そろそろゲート入りをしようかと思った頃、2人の女性走者が俺のところにやって来る。

「ウイニングライブ、それにシャワーライト。馬車の中でも言ったが、お前たちは俺が優勝するための駒に過ぎない。最終的には俺が勝つが、それまで1位は譲ってやる」

 宣戦布告をしてきたので、俺もそれなりの言葉を返す。

 すると、ウイニングライブは無言でゲートの方に向かい、シャワーライトはあっかんべーをすると彼女に続いてゲートに向かう。

 さて、俺もゲートに入るか。俺のゲート番号は5番だったな。

 自分のゲートに入ると、扉が閉まる。

『今年のダービーを制覇するのはいったいどの走者なのか。芝2000メートルの中距離戦、マキョウダービーの開始です』

 アルティメットが宣言をしてから数秒後、閉じていたゲートが開く。

 さて、それじゃ始めますか。最初はのんびりと行かせてもらう。
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