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第六章
第六話 モンスターの襲撃再び
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ウイニングライブたちが乗っていた馬車がまだ到着していない。この事実から、何かしらのトラブルに巻き込まれたと判断した俺は、急いで街を出た。
来た道を引き返すが、普通に走っていてはマキョウダービーが開始される時間に間に合わない。
「スピードスター!」
体内にある魔力回路全体に練り上げた魔力を循環させて、瞬足の魔法を発動する。
この魔法を発動し続ければ、馬車並みの速度で走ることができる。きっと直ぐに追い付くだろう。
しばらく走っていると、爆発音が聞こえてきた。
爆発が聞こえた位置は、来た道とは違う。でも、もしかしたら何者かの襲撃を受け、逃げている内に道から外れてしまった可能性だって考えられる。
何も手がかりなしで闇雲に走るよりも、手がかりになりそうな場所に向かった方が時間の節約になるかもしれない。
そう判断した俺は、爆発音が聞こえた場所に向かって走る。
爆発音が聞こえた場所は、森の中だ。森だけあって、周辺には草木が生い茂っており、若干薄暗くなっている。
さて、それじゃああいつらを見つけるための魔法を発動するとするか。
「エコーロケーション!」
両手を前に出し、意識を集中して探査魔法を発動する。
この魔法は、手から音波を放ち、その反射から対照の位置を割り出す魔法だ。
超音波を前方に飛ばした際に、前方がただの虚空なら、音はそのまま消えていく。しかし何かに触れると音波が跳ね返ってくる。
つまり、何かに触れて跳ね返ったことで、奥に誰かがいることを知ることができる。
だけどこれが非常に難しい。跳ね返った音を正確に捉えないといけないから、音の角度を正確に測定しなければ、相手のいる方向がわからなくなる。さらに、音を発信してから反射するまでの時間を測定しないと、相手までの距離がわからないのだ。
正直、並大抵の人物では、まともに扱えない。
しかしこれさえクリアすれば大きな情報量になる。反射の強さから、相手の大きさも判断できる。それに音波の発生源と観測者との相対的な速度の存在によって、音と動く物体の波の周波数が異なって観測できる。
こうすることで、相手が遠ざかっているか、近づいているかも知ることが可能だ。
レースでは使用しても意味ない魔法だが、まさか使う日が来るとは思わなかったな。
放出した音波が跳ね返って来る。しかし跳ね返った音波の時間から計算する限り、近くにある木に接触して跳ね返ったものだと推察できる。
この音波じゃない。他にも時間をかけて跳ね返って来る音波を把握するんだ。
神経を集中して跳ね返って来る音波を把握していると、今まで把握した音波の反射よりも強く、音と動く物体の波の周波数が異なって観測することができた。
この感じ、複数の何かがこちらに向かっている。
「とりあえずは、観測した場所へと向かって行くか」
手がかりを得た俺は、違う反応を見せた音波の反射位置へと向かって行く。
木の間を抜けるように走って行くと、学園を出発した馬車を発見した。
運転席には御者の人が、そして助手席には引率の先生が乗っている。
そして馬車を追いかけるように複数の人型の生き物が追いかけていた。
野盗……ではないな。背丈は大人の半分くらいだし、肌の色も緑色だ。そして手には剣や棍棒などの得物を握っている。
緑色の肌に裂けた口、そして獲物を狩るのに隠そうともしない殺気なども考える限り、あれはゴブリンと呼ばれるモンスターで間違いないだろう。
確か異世界の転生者が居た時代では、ゴブリンは主に異性を襲い、繁殖のための家畜として捕えるとか。
馬車はこちらに向かっている。一度木の上に登り、タイミング良く飛び降りて馬車の上で戦うとするか。
作戦を決めると、俺は近くにあった木を登る。そして太い枝の上に立ち、タイミングを見計らって飛び降り、馬車の屋根の上に立った。
「シ、シャカール君! どうしてこんなところにいるの!」
突然屋根に何かが落下して心配したのだろう。ウイニングライブが、窓から顔を出して驚いた表情を浮かべている。
「お前たちが道草を食っているから探しに来たんだよ。とにかく余計な話しをする時間はない。俺がゴブリン共を足止めしているから、そのまま馬車を動かしてくれ」
引率の先生にも聞こえるように声を上げ、追い掛けて来るゴブリンたちに視線を向ける。
『またオスが現れた』
『馬車を動かしているやつよりも良い顔のオス』
『きっとイケメンのべイビーが生まれるでしょう。あのオスの子種は私たちが貰い受ける』
ゴブリンたちの声が聞こえ、背筋に悪寒が走る。
こいつら、メスだったのかよ!
ゴブリンは本当におかしな種族だ。オスとメス両方いるのに、なぜか同族同士では交配をしようとはせずに、異種族の異性を狙う性癖を持っている。
つまり、狙われていたのはウイニングライブたちではなく、引率の先生だったと言う訳だ。
『子種を! わたしたちの繁殖の家畜になれ!』
恐るべき跳躍力を見せ、1体のゴブリンが馬車の屋根の上に飛び乗ろうとしてきた。
「来るな! 俺はゴブリンなんかに好かれる趣味はねぇ! ファイヤーアロー!」
魔法を発動し、炎の矢を生み出すとゴブリンに放つ。
『ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!』
魔法が直撃したゴブリンは、火だるまとなってそのまま地面に落下。その後反動で転がっていたが、しばらくすると動かなくなった。
どうやら倒したみたいだな。死因が焼死なんて酷い殺し方だが、襲ってきたお前たちが悪い。
『仲間がやられたわ!』
『良い顔に加えて強いなんて、益々興奮してくる。絶対にあの人間の子種をゲットする』
仲間が殺されたと言うのに、ゴブリンたちは寧ろ戦意を上げてきた。鼻息を荒くして顔を赤め、目は血走っている。
こいつら、もしかして発情期なのか? だから必死になって俺を捕らえようとしている。
「本当にモテる男は辛いな。モンスターにまで好かれるなんて。悪いな。俺には期間限定だが既に彼女がいるんだよ! シャクルアイス」
魔法を発動すると、ゴブリンたちの足首付近の空気中にある水分子が集まり水を形成。その後その水に限定して気温が下がって氷へと変化すると、ゴブリンたちはその場に転倒した。
これで奴ら全員の身動きを封じた。後は倒すのみ。
「ウォーターカッター!」
続けて魔法を発動すると空気中の水分が集まり、知覚できる量にまで拡大する。そして今度は水の塊が加圧により、直径一ミリほどの厚さに形状を変えると、俺の合図と共に飛ばす。
勢いのある水が敵の頭部にヒットすると、水流が当たった部分を吹き飛ばし、切断された箇所から鮮血が噴き出していた。
これで全員を倒した。
「エコーロケーション!」
念のためにもう一度探査魔法を使ってみる。しかしゴブリンらしき反応はなかった。
とりあえず、敵の増援は来ないだろう。
敵の増援が来ないことに安堵していると、馬車は森から脱出したようで、日差しが降り掛かってきた。
さて、どうにかウイニングライブたちを助けることができたな。でも、その結果大量の魔力を消費した。
残った魔力でマキョウダービーを走らないといけないが、俺が決めたことだ。どんな結末になろうと、受け入れるしかない。
来た道を引き返すが、普通に走っていてはマキョウダービーが開始される時間に間に合わない。
「スピードスター!」
体内にある魔力回路全体に練り上げた魔力を循環させて、瞬足の魔法を発動する。
この魔法を発動し続ければ、馬車並みの速度で走ることができる。きっと直ぐに追い付くだろう。
しばらく走っていると、爆発音が聞こえてきた。
爆発が聞こえた位置は、来た道とは違う。でも、もしかしたら何者かの襲撃を受け、逃げている内に道から外れてしまった可能性だって考えられる。
何も手がかりなしで闇雲に走るよりも、手がかりになりそうな場所に向かった方が時間の節約になるかもしれない。
そう判断した俺は、爆発音が聞こえた場所に向かって走る。
爆発音が聞こえた場所は、森の中だ。森だけあって、周辺には草木が生い茂っており、若干薄暗くなっている。
さて、それじゃああいつらを見つけるための魔法を発動するとするか。
「エコーロケーション!」
両手を前に出し、意識を集中して探査魔法を発動する。
この魔法は、手から音波を放ち、その反射から対照の位置を割り出す魔法だ。
超音波を前方に飛ばした際に、前方がただの虚空なら、音はそのまま消えていく。しかし何かに触れると音波が跳ね返ってくる。
つまり、何かに触れて跳ね返ったことで、奥に誰かがいることを知ることができる。
だけどこれが非常に難しい。跳ね返った音を正確に捉えないといけないから、音の角度を正確に測定しなければ、相手のいる方向がわからなくなる。さらに、音を発信してから反射するまでの時間を測定しないと、相手までの距離がわからないのだ。
正直、並大抵の人物では、まともに扱えない。
しかしこれさえクリアすれば大きな情報量になる。反射の強さから、相手の大きさも判断できる。それに音波の発生源と観測者との相対的な速度の存在によって、音と動く物体の波の周波数が異なって観測できる。
こうすることで、相手が遠ざかっているか、近づいているかも知ることが可能だ。
レースでは使用しても意味ない魔法だが、まさか使う日が来るとは思わなかったな。
放出した音波が跳ね返って来る。しかし跳ね返った音波の時間から計算する限り、近くにある木に接触して跳ね返ったものだと推察できる。
この音波じゃない。他にも時間をかけて跳ね返って来る音波を把握するんだ。
神経を集中して跳ね返って来る音波を把握していると、今まで把握した音波の反射よりも強く、音と動く物体の波の周波数が異なって観測することができた。
この感じ、複数の何かがこちらに向かっている。
「とりあえずは、観測した場所へと向かって行くか」
手がかりを得た俺は、違う反応を見せた音波の反射位置へと向かって行く。
木の間を抜けるように走って行くと、学園を出発した馬車を発見した。
運転席には御者の人が、そして助手席には引率の先生が乗っている。
そして馬車を追いかけるように複数の人型の生き物が追いかけていた。
野盗……ではないな。背丈は大人の半分くらいだし、肌の色も緑色だ。そして手には剣や棍棒などの得物を握っている。
緑色の肌に裂けた口、そして獲物を狩るのに隠そうともしない殺気なども考える限り、あれはゴブリンと呼ばれるモンスターで間違いないだろう。
確か異世界の転生者が居た時代では、ゴブリンは主に異性を襲い、繁殖のための家畜として捕えるとか。
馬車はこちらに向かっている。一度木の上に登り、タイミング良く飛び降りて馬車の上で戦うとするか。
作戦を決めると、俺は近くにあった木を登る。そして太い枝の上に立ち、タイミングを見計らって飛び降り、馬車の屋根の上に立った。
「シ、シャカール君! どうしてこんなところにいるの!」
突然屋根に何かが落下して心配したのだろう。ウイニングライブが、窓から顔を出して驚いた表情を浮かべている。
「お前たちが道草を食っているから探しに来たんだよ。とにかく余計な話しをする時間はない。俺がゴブリン共を足止めしているから、そのまま馬車を動かしてくれ」
引率の先生にも聞こえるように声を上げ、追い掛けて来るゴブリンたちに視線を向ける。
『またオスが現れた』
『馬車を動かしているやつよりも良い顔のオス』
『きっとイケメンのべイビーが生まれるでしょう。あのオスの子種は私たちが貰い受ける』
ゴブリンたちの声が聞こえ、背筋に悪寒が走る。
こいつら、メスだったのかよ!
ゴブリンは本当におかしな種族だ。オスとメス両方いるのに、なぜか同族同士では交配をしようとはせずに、異種族の異性を狙う性癖を持っている。
つまり、狙われていたのはウイニングライブたちではなく、引率の先生だったと言う訳だ。
『子種を! わたしたちの繁殖の家畜になれ!』
恐るべき跳躍力を見せ、1体のゴブリンが馬車の屋根の上に飛び乗ろうとしてきた。
「来るな! 俺はゴブリンなんかに好かれる趣味はねぇ! ファイヤーアロー!」
魔法を発動し、炎の矢を生み出すとゴブリンに放つ。
『ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!』
魔法が直撃したゴブリンは、火だるまとなってそのまま地面に落下。その後反動で転がっていたが、しばらくすると動かなくなった。
どうやら倒したみたいだな。死因が焼死なんて酷い殺し方だが、襲ってきたお前たちが悪い。
『仲間がやられたわ!』
『良い顔に加えて強いなんて、益々興奮してくる。絶対にあの人間の子種をゲットする』
仲間が殺されたと言うのに、ゴブリンたちは寧ろ戦意を上げてきた。鼻息を荒くして顔を赤め、目は血走っている。
こいつら、もしかして発情期なのか? だから必死になって俺を捕らえようとしている。
「本当にモテる男は辛いな。モンスターにまで好かれるなんて。悪いな。俺には期間限定だが既に彼女がいるんだよ! シャクルアイス」
魔法を発動すると、ゴブリンたちの足首付近の空気中にある水分子が集まり水を形成。その後その水に限定して気温が下がって氷へと変化すると、ゴブリンたちはその場に転倒した。
これで奴ら全員の身動きを封じた。後は倒すのみ。
「ウォーターカッター!」
続けて魔法を発動すると空気中の水分が集まり、知覚できる量にまで拡大する。そして今度は水の塊が加圧により、直径一ミリほどの厚さに形状を変えると、俺の合図と共に飛ばす。
勢いのある水が敵の頭部にヒットすると、水流が当たった部分を吹き飛ばし、切断された箇所から鮮血が噴き出していた。
これで全員を倒した。
「エコーロケーション!」
念のためにもう一度探査魔法を使ってみる。しかしゴブリンらしき反応はなかった。
とりあえず、敵の増援は来ないだろう。
敵の増援が来ないことに安堵していると、馬車は森から脱出したようで、日差しが降り掛かってきた。
さて、どうにかウイニングライブたちを助けることができたな。でも、その結果大量の魔力を消費した。
残った魔力でマキョウダービーを走らないといけないが、俺が決めたことだ。どんな結末になろうと、受け入れるしかない。
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