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第五章
第三話 久しぶりだな。シャカール
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「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
店員からお決まりの挨拶を送られ、俺は店を出た。
タマモとクリープと共同生活をするようになったせいで、色々と買い揃えなければならないものがあり、今回は俺が買い出し当番をするはめになったのだ。
まぁ、料理を担当するよりかはマシか。
早く学園に戻って自分の部屋で休もう。そう思いながら道を歩いていると、後方から馬車が走る音が耳に入ってきた。
道の端に移動して馬車に道を譲ると、後方からやって来た馬車は俺の横で停車をする。そして窓が開けられ、男性のケモノ族が顔を出した。
青い髪は女性のように長く、きめ細やかに手入れがされてある。頭に犬の耳が付いている容姿は、端正に整っているイケメンだ。彼は黄色い瞳で俺のことをジッと見て来る。
「シャカールじゃないか。久しぶりだな」
「お前はフェイン」
馬車から顔を出した人物は、タマモの兄であり、名門スカーレット家の後継だ。彼とはテイオー賞と戦い、俺が勝った。そのせいでフェインは、クラウン路線の3冠王の夢を諦めることになったのだ。
彼は俺のことを恨んでいる。例え道端で見かけたとしても、声をかけることはしなさそうなのだが。
まぁ、もしかしたら恨み言のひとつでも零すつもりなのかもしれない。さっさと彼に言葉言ってもらい、この場から去って行ってもらおう。
「もしかして学園に戻るのか?」
「そうだが?」
「そうか。その荷物を持ったまま学園に戻るのは一苦労だろう。学園まで送ってやる。馬車に乗ってくれ」
送迎するから馬車に乗れと言う意外な言葉に、戸惑ってしまう。
一瞬体が硬直する中、御者の人が運転席から降りると扉を開けてくれた。
先手を打たれたか。これでは断る訳にもいかない。
「分かった。ならせっかくの好意に甘えよう」
開けてくれた扉から馬車の中に入り、フェインの対面の席に座る。すると扉が閉められ、御者が運転席に戻ってから、馬車が再び動き出す。
馬車が動き出してから約1分経過するが、俺たちは無言のままだった。重苦しい空気が、馬車の中に漂う。
だけど、俺の方から話しかけるつもりはない。そもそも、こいつとは争った。彼も俺のことを好ましくは思っていないはず。
早く暴言を吐くのなら吐いてくれよ。そっちの方が、今の空気よりもマシだ。
「スカーレット家たる者、過ちは即謝罪すべき……だよな。せっかくシャカールと会えたんだ。この機会を逃せば、俺はこれからも逃げ続けることになる」
フェインがブツブツと何かを言っている。しかし声が小さすぎるので、何を言っているのか聞き取ることができなかった。
「なんだよ。俺に何か言いたいのなら、はっきりと言ってくれ。まぁ、俺に対する罵倒とは思うがな」
胸の前で両手を組み、フェインから視線を外す。
「いや、別にお前を罵倒するつもりではない……この前のことは済まなかった。お前に迷惑をかけた」
軽く謝罪の言葉を述べ、フェインは俺に向けて頭を下げる。
おい、おい。なんだよ、この展開は? フェインが俺に頭を下げただと? 天変地異の前触れか?
「お前のお陰で、どうにか軽い賠償金で済むことができた。本当に感謝している。ありがとう」
今度は礼を言うフェインの姿に、俺は察した。
なるほど、あの件で彼は謝罪と礼を言っているのか。
フェインが搬送された後、俺はルーナと一緒に魔競走を総括するお偉いさんたちで結成された委員会に呼ばれ、色々と事情聴取を受けることになったのだが、そこで委員長のハゲデブおっさんと一悶着があった。
「別に気にしなくていいさ。俺は真実を信じようとはしない頭でっかちの輩が嫌いなだけだ。その結果、偶然的にもスカーレット家の味方をすることになったってだけだ。良かったな。俺が頭でっかちなやつが嫌いで」
「本当にシャカールのしてくれたことは、スカーレット家を救ったことになる。感謝してもしきれないくらいだ。そして、少しでも捜査のヒントになればと思い、俺の身に起きた出来事を話そうと思う」
フェインは両手の指を絡め、その上に顎を置く。そして過去を思い出すように、自身の身に起きた出来事を話し始める。
「数年前のことだ。年末最大のイベントレースであるホースイエス賞のレースで、俺はルーナと競い、そして大差で負けた。彼女の実力は知ってはいたが、とても悔しかった。涙を流して芝の上に膝を付いていると、どこからか声が聞こえたんだ『可愛そうなやつ、誰もお前のことは見ていない。優勝できない敗者のお前をな。憎いだろう? これまで努力してきたと言うのに、優勝しなければ意味のないこの世界が? さぁ、憎め、そして憎悪を糧に負のエネルギーを寄越せ。憎め! 憎め! 憎め!』その言葉が耳に入った後、俺の前に黒い煙のようなものが俺の体内に入った」
黒い煙のようなものは、フェインが暴走した際に見たあのオーラのようなものを差しているのだろう。
「その後、俺は俺ではなくなった。様々なものを憎み、最愛の妹であるタマモにも強く当たるようになった。俺ではルーナには勝てない。それならタマモを最強の走者として導けば良い。そう思い、俺は引退してタマモの教育に励むことにした。その結果がシャカールも知っている通りのことだ」
フェインがルーナに敗退したホースイエス記念を調べる必要があるな。あのハゲデブと約束した期限は、今年のホースイエス記念の日までだ。
俺は窓から見える景色を見ながら、あの時のことを思い出す。
店員からお決まりの挨拶を送られ、俺は店を出た。
タマモとクリープと共同生活をするようになったせいで、色々と買い揃えなければならないものがあり、今回は俺が買い出し当番をするはめになったのだ。
まぁ、料理を担当するよりかはマシか。
早く学園に戻って自分の部屋で休もう。そう思いながら道を歩いていると、後方から馬車が走る音が耳に入ってきた。
道の端に移動して馬車に道を譲ると、後方からやって来た馬車は俺の横で停車をする。そして窓が開けられ、男性のケモノ族が顔を出した。
青い髪は女性のように長く、きめ細やかに手入れがされてある。頭に犬の耳が付いている容姿は、端正に整っているイケメンだ。彼は黄色い瞳で俺のことをジッと見て来る。
「シャカールじゃないか。久しぶりだな」
「お前はフェイン」
馬車から顔を出した人物は、タマモの兄であり、名門スカーレット家の後継だ。彼とはテイオー賞と戦い、俺が勝った。そのせいでフェインは、クラウン路線の3冠王の夢を諦めることになったのだ。
彼は俺のことを恨んでいる。例え道端で見かけたとしても、声をかけることはしなさそうなのだが。
まぁ、もしかしたら恨み言のひとつでも零すつもりなのかもしれない。さっさと彼に言葉言ってもらい、この場から去って行ってもらおう。
「もしかして学園に戻るのか?」
「そうだが?」
「そうか。その荷物を持ったまま学園に戻るのは一苦労だろう。学園まで送ってやる。馬車に乗ってくれ」
送迎するから馬車に乗れと言う意外な言葉に、戸惑ってしまう。
一瞬体が硬直する中、御者の人が運転席から降りると扉を開けてくれた。
先手を打たれたか。これでは断る訳にもいかない。
「分かった。ならせっかくの好意に甘えよう」
開けてくれた扉から馬車の中に入り、フェインの対面の席に座る。すると扉が閉められ、御者が運転席に戻ってから、馬車が再び動き出す。
馬車が動き出してから約1分経過するが、俺たちは無言のままだった。重苦しい空気が、馬車の中に漂う。
だけど、俺の方から話しかけるつもりはない。そもそも、こいつとは争った。彼も俺のことを好ましくは思っていないはず。
早く暴言を吐くのなら吐いてくれよ。そっちの方が、今の空気よりもマシだ。
「スカーレット家たる者、過ちは即謝罪すべき……だよな。せっかくシャカールと会えたんだ。この機会を逃せば、俺はこれからも逃げ続けることになる」
フェインがブツブツと何かを言っている。しかし声が小さすぎるので、何を言っているのか聞き取ることができなかった。
「なんだよ。俺に何か言いたいのなら、はっきりと言ってくれ。まぁ、俺に対する罵倒とは思うがな」
胸の前で両手を組み、フェインから視線を外す。
「いや、別にお前を罵倒するつもりではない……この前のことは済まなかった。お前に迷惑をかけた」
軽く謝罪の言葉を述べ、フェインは俺に向けて頭を下げる。
おい、おい。なんだよ、この展開は? フェインが俺に頭を下げただと? 天変地異の前触れか?
「お前のお陰で、どうにか軽い賠償金で済むことができた。本当に感謝している。ありがとう」
今度は礼を言うフェインの姿に、俺は察した。
なるほど、あの件で彼は謝罪と礼を言っているのか。
フェインが搬送された後、俺はルーナと一緒に魔競走を総括するお偉いさんたちで結成された委員会に呼ばれ、色々と事情聴取を受けることになったのだが、そこで委員長のハゲデブおっさんと一悶着があった。
「別に気にしなくていいさ。俺は真実を信じようとはしない頭でっかちの輩が嫌いなだけだ。その結果、偶然的にもスカーレット家の味方をすることになったってだけだ。良かったな。俺が頭でっかちなやつが嫌いで」
「本当にシャカールのしてくれたことは、スカーレット家を救ったことになる。感謝してもしきれないくらいだ。そして、少しでも捜査のヒントになればと思い、俺の身に起きた出来事を話そうと思う」
フェインは両手の指を絡め、その上に顎を置く。そして過去を思い出すように、自身の身に起きた出来事を話し始める。
「数年前のことだ。年末最大のイベントレースであるホースイエス賞のレースで、俺はルーナと競い、そして大差で負けた。彼女の実力は知ってはいたが、とても悔しかった。涙を流して芝の上に膝を付いていると、どこからか声が聞こえたんだ『可愛そうなやつ、誰もお前のことは見ていない。優勝できない敗者のお前をな。憎いだろう? これまで努力してきたと言うのに、優勝しなければ意味のないこの世界が? さぁ、憎め、そして憎悪を糧に負のエネルギーを寄越せ。憎め! 憎め! 憎め!』その言葉が耳に入った後、俺の前に黒い煙のようなものが俺の体内に入った」
黒い煙のようなものは、フェインが暴走した際に見たあのオーラのようなものを差しているのだろう。
「その後、俺は俺ではなくなった。様々なものを憎み、最愛の妹であるタマモにも強く当たるようになった。俺ではルーナには勝てない。それならタマモを最強の走者として導けば良い。そう思い、俺は引退してタマモの教育に励むことにした。その結果がシャカールも知っている通りのことだ」
フェインがルーナに敗退したホースイエス記念を調べる必要があるな。あのハゲデブと約束した期限は、今年のホースイエス記念の日までだ。
俺は窓から見える景色を見ながら、あの時のことを思い出す。
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