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第二章
第七話 無限回路賞②
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~タマモ視点~
先頭に立っていたピックが最初のギミックに躓いている間に、あたしも無限芝の霧の中に突入した。
この霧に包まれている間は、立ち止まることは許されない。しかも周囲が霧しか見えないので、もしかしたら誰かが先を越しているのではないかと言う不安も煽られる。
このギミックでは、焦りが失敗へと繋がる。どんな時でも、冷静に自分のペースを維持することが最も重要とされる。
「さぁ、早く問題を出しなさい」
早急に問題を提出するように要求すると、どこからか声が聞こえてきた。
『問題、クラウン路線の三冠とは? 全て答えよ』
クラウン路線の三冠? 舐めているの? こんな問題、走者であれば、誰だって答えられる問題のはずよ。
「テイオー賞、マキョウダービー、KINNG賞!」
『正解! では、次の問題、走者には様々な脚質があるが、逃げ、先行、差し、追い込み、簡潔に全て説明せよ』
またしても基本中の基本じゃない。こんな問題、簡単だわ。
「逃げは真っ先に先陣を切ってそのままゴール! 先行は先頭集団を維持し、最後の直線で追い抜く。差しは中段を維持し、後半に速度を上げて最後の直線で追い抜く。追い込みは後方に位置取りをして徐々に速度をあげ、最後に差し切る!」
『正解、では次の問題』
まだ次があるのね。この程度の問題なら、いくらでも答えて上げられるわ。
一度呼吸を整えながら、次の問題が言われるのを待つ。
意外と声を出しながらの走りは、何かとキツくなるものがあるわね。でも、この程度で音を上げるなんて馬鹿げている。
『問題! この世界には様々な種族がいますが、走者として参加している種族を全て答えよ』
走者として参加している種族? えーと、確か。
「人族、亜人、ケモノ族、獣人、魔族、神族」
『正解。では、次の問題』
まだ問題を出されるの? さすが無限回路賞の目玉となるギミック。いつ終わるのか分からない状況の中、ひたすら走って問題に答え続けなければならない。考えたくはないが、もしかしたらあたしは最下位になっているかもしれないと言う、焦りすら感じてくる。
本当にいい加減にしてほしいわね。
あいつなら、こんな状況でも楽しんでいるのかしら?
脳内にシャカールのことを浮かべるも、直ぐに頭を横に振る。
こんな時にあいつのことを考えている場合ではないわよ。一刻も早く、この無限芝から脱出して、次のギミックに向かわなければ。
『問題、あなたは何のために走者として走っている?』
霧の中から出された問題が耳に入り、目を大きく見開く。
何なのこの問題? あたしが何のために走っているかですって?
そんなこと決まっている。スカーレット家の令嬢として生まれたからには、走者となる運命だったから。名門貴族として恥じない走者となるべく、走っている。
「そんなこと決まっている――」
言葉を言おうとするも、途中で詰まってしまう。
でも、本当にこれで合っているの? 霧の中での問題よ。何か裏がありそうな気がしてならない。
そもそも、この問題自体がふざけているわよ。何のために走っているですって?
何だか試されているような気がする。まるで、自分自身に問いかけているかのような問題だわ。
先程答えようとしたものも、間違ってはいない。でも、本当にあたしは家のために走っているの?
何のために走っているのか? もう一度考え直すために瞼を閉じて呼吸を整える。すると僅かだが、どこからか声援のようなものが聞こえたような気がした。
この声は、恐らく観客たちによるもの。そうだ。あたしは小さい頃から走ることが好きだった。あたしの走りを見て、褒めてくれる。あたしの走りを見た人が笑顔になってくれる。もっと、あたしの走りで観客たちを笑顔にしたい。
あたしは! レースを見に来た人たちを笑顔にするために走っている!
心の中で叫んだ瞬間、閉じていた瞼越しに光を感じた。
そっと瞼を上げると、視界には永遠と続く霧ではなく、霧の中に突入する前のレース場だった。
『さぁ、ここで無限芝をいち早く攻略したのはタマモ・スカーレット! 今、先頭を奪ってレース場を駆け抜ける!』
レース場の芝の上を走っていることに気付くと、実況のアルティメットさんの声が聞こえてきた。
やった! やったわ! あたしが1位になっている。このまま一気に、次のギミックへ向かうわよ。
急いで次のギミックへと駆ける。最初の無限芝を攻略した以上、残りは500メートル。もう、折り返し地点に到達しているようなもの。
このまま速度を上げ、一気に芝の上を駆け抜けようとしたその時、背後に何者かの気配を感じ、思わず後方を見た。
嘘! どうしてあんたがあたしの背後にいるのよ!
背後を振り返ると、そこには黒い騎士の形をした影がいた。
『これはどう言うことだ! 後続にいたはずのシャドーナイツが、タマモ走者の背後にいきなり現れた!』
『どうやらタマモ走者の影から現れたみたいですね。シャドーナイツのスキルは【影移動】影から影へと移動することが可能です。おそらくこの力を使ってタマモ走者の陰に侵入し、無限芝を回避した模様、ずる賢いですが、これも戦略の一つとして適応されます』
『ここで背後に居たシャドーナイツが陰の剣を振り下ろす! 果たしてタマモ走者はどう出る!』
先頭に立っていたピックが最初のギミックに躓いている間に、あたしも無限芝の霧の中に突入した。
この霧に包まれている間は、立ち止まることは許されない。しかも周囲が霧しか見えないので、もしかしたら誰かが先を越しているのではないかと言う不安も煽られる。
このギミックでは、焦りが失敗へと繋がる。どんな時でも、冷静に自分のペースを維持することが最も重要とされる。
「さぁ、早く問題を出しなさい」
早急に問題を提出するように要求すると、どこからか声が聞こえてきた。
『問題、クラウン路線の三冠とは? 全て答えよ』
クラウン路線の三冠? 舐めているの? こんな問題、走者であれば、誰だって答えられる問題のはずよ。
「テイオー賞、マキョウダービー、KINNG賞!」
『正解! では、次の問題、走者には様々な脚質があるが、逃げ、先行、差し、追い込み、簡潔に全て説明せよ』
またしても基本中の基本じゃない。こんな問題、簡単だわ。
「逃げは真っ先に先陣を切ってそのままゴール! 先行は先頭集団を維持し、最後の直線で追い抜く。差しは中段を維持し、後半に速度を上げて最後の直線で追い抜く。追い込みは後方に位置取りをして徐々に速度をあげ、最後に差し切る!」
『正解、では次の問題』
まだ次があるのね。この程度の問題なら、いくらでも答えて上げられるわ。
一度呼吸を整えながら、次の問題が言われるのを待つ。
意外と声を出しながらの走りは、何かとキツくなるものがあるわね。でも、この程度で音を上げるなんて馬鹿げている。
『問題! この世界には様々な種族がいますが、走者として参加している種族を全て答えよ』
走者として参加している種族? えーと、確か。
「人族、亜人、ケモノ族、獣人、魔族、神族」
『正解。では、次の問題』
まだ問題を出されるの? さすが無限回路賞の目玉となるギミック。いつ終わるのか分からない状況の中、ひたすら走って問題に答え続けなければならない。考えたくはないが、もしかしたらあたしは最下位になっているかもしれないと言う、焦りすら感じてくる。
本当にいい加減にしてほしいわね。
あいつなら、こんな状況でも楽しんでいるのかしら?
脳内にシャカールのことを浮かべるも、直ぐに頭を横に振る。
こんな時にあいつのことを考えている場合ではないわよ。一刻も早く、この無限芝から脱出して、次のギミックに向かわなければ。
『問題、あなたは何のために走者として走っている?』
霧の中から出された問題が耳に入り、目を大きく見開く。
何なのこの問題? あたしが何のために走っているかですって?
そんなこと決まっている。スカーレット家の令嬢として生まれたからには、走者となる運命だったから。名門貴族として恥じない走者となるべく、走っている。
「そんなこと決まっている――」
言葉を言おうとするも、途中で詰まってしまう。
でも、本当にこれで合っているの? 霧の中での問題よ。何か裏がありそうな気がしてならない。
そもそも、この問題自体がふざけているわよ。何のために走っているですって?
何だか試されているような気がする。まるで、自分自身に問いかけているかのような問題だわ。
先程答えようとしたものも、間違ってはいない。でも、本当にあたしは家のために走っているの?
何のために走っているのか? もう一度考え直すために瞼を閉じて呼吸を整える。すると僅かだが、どこからか声援のようなものが聞こえたような気がした。
この声は、恐らく観客たちによるもの。そうだ。あたしは小さい頃から走ることが好きだった。あたしの走りを見て、褒めてくれる。あたしの走りを見た人が笑顔になってくれる。もっと、あたしの走りで観客たちを笑顔にしたい。
あたしは! レースを見に来た人たちを笑顔にするために走っている!
心の中で叫んだ瞬間、閉じていた瞼越しに光を感じた。
そっと瞼を上げると、視界には永遠と続く霧ではなく、霧の中に突入する前のレース場だった。
『さぁ、ここで無限芝をいち早く攻略したのはタマモ・スカーレット! 今、先頭を奪ってレース場を駆け抜ける!』
レース場の芝の上を走っていることに気付くと、実況のアルティメットさんの声が聞こえてきた。
やった! やったわ! あたしが1位になっている。このまま一気に、次のギミックへ向かうわよ。
急いで次のギミックへと駆ける。最初の無限芝を攻略した以上、残りは500メートル。もう、折り返し地点に到達しているようなもの。
このまま速度を上げ、一気に芝の上を駆け抜けようとしたその時、背後に何者かの気配を感じ、思わず後方を見た。
嘘! どうしてあんたがあたしの背後にいるのよ!
背後を振り返ると、そこには黒い騎士の形をした影がいた。
『これはどう言うことだ! 後続にいたはずのシャドーナイツが、タマモ走者の背後にいきなり現れた!』
『どうやらタマモ走者の影から現れたみたいですね。シャドーナイツのスキルは【影移動】影から影へと移動することが可能です。おそらくこの力を使ってタマモ走者の陰に侵入し、無限芝を回避した模様、ずる賢いですが、これも戦略の一つとして適応されます』
『ここで背後に居たシャドーナイツが陰の剣を振り下ろす! 果たしてタマモ走者はどう出る!』
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