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第十五章
最終話 最後の狩
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落雷を受けてもダメージを受けていない様子を見せつけてられ、ユリヤたちは戦意喪失しかけていた。
無理もない。サウザーが雷雲から逃げ惑う姿を見せつけられれば、誰だって勘違いをしてしまう。
だけど俺にはやつの行動に違和感を覚えていた。
やつはどうして雷雲から逃げようとする? 雷のダメージを無効化させることができるのなら、別に逃げ惑う必要はない。
一度希望を持たせて後で絶望の底に叩き落とす作戦だったのだろうか?
でも、それだけではないような気がする。
上空を飛翔するサウザーを見ていると、あることに気付く。
あいつの動き、俺が突き刺した剣に雷が当たらないように動いていないか。
目を凝らして観察していると、突き刺さった剣にだけ、落雷が当たらないようにしている。
やっぱりそうだ。やつは俺が突き刺した剣に落雷が当たらないように動いている。
つまり、肉体に突き刺さった剣を通して体内に電流を流し込めば、ダメージを与えることができると言うことだ。
「ユリヤ、テレーゼ、エリーザ姫! まだ諦めるには早い!」
彼女たちに声をかけ、風の属性玉に意識を集中する。
すると落雷の動きが早くなり、サウザーを追いかける。
雲は気圧の変化によって動く。
風の属性玉の力で気圧を操作し、サウザーの動きに合わせて雷雲を動かす。
『なんだと! 雷雲がワシを追って来るとは!』
サウザーが驚きの声を上げる。彼にとってこの不自然な自然現象には、驚きを隠せないみたいだ。
「これで終わりだ!」
俺の声に合わせて落雷が落ちる。
『グアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!』
突き刺さった剣に落雷が落ち、サウザーは悲鳴を上げると塔へと落下していく。
剣に雷が落ちたことで、鉄を通して電流が体内へと流れたようだ。
塔に巨大な龍が落ち、近付いて様子をみる。
「まだ息がある。サウザーはまだ死んでいない」
その場から離れ、サウザーの心臓がある場所へと移動する。
「サウザー、これでお前の野望も終わりだ!」
太刀をサウザーの胸に突き刺す。その瞬間、サウザーは短い悲鳴を上げたかと思うと、瞼を閉じる。
「サウザー討伐完了だ!」
「リュシアンさんやりましたね!」
「さすがあたしのリュシアン!」
「リュシアン王子、素敵です!」
千年龍サウザンドドラゴンの討伐完了宣言をした途端に、ユリヤたちが駆け寄り、抱きついてきた。
さすがに三人を受け止めることができずに、そのまま押し倒されてしまう。
「気持ちは分かるが、まだ終わっていない。祭壇にある暗黒龍の魂が封印された宝玉を取り戻さないと」
まだ終わっていないことを告げると、彼女たちはハッとなり、俺から離れる。
立ち上がって祭壇の方見ると、いつの間にか眼帯をしている男が立っていた。
「セシリオさん!」
彼の名を呼ぶと、セシリオさんは祭壇から三つの宝玉を取り出した。
「やっぱりお前は最高のハンターだったぜ」
称賛の言葉を言いながら、彼は後ずさって塔の端っこの方に向かっていく。
「セシリオさん、まさか!」
「俺は元々暗黒龍を復活させ、そして討伐するつもりだった。だけどリュシアンたちの奮闘を隠れて見て考えが変わったよ。暗黒龍を復活させずに済んで良かった。この宝玉たちは、俺が一緒に地獄に連れていく。雷雲で暗黒龍が復活する条件が満たせなくなった今、二度と悪用されないようにしなければな」
「セシリオさん! 何を言っているんだ! サウザーが死んだ今、もう悪用するモンスターは現れない。また封印すれば良いじゃないか」
彼が今から行おうとしていることを悟ってしまい、慌てて考え直すように言う。
「悪いがそれは無理だ。ラープロテクションが死んでいる以上、封印することはできない。だから、俺が連れて行くしかないんだ。リュシアン、お前はLハンターだ。何せ、伝龍であるサウザーを倒したのだからな。これからの活躍を、あの世で見守っているぜ」
「セシリオさん!」
憧れの人の名を叫んだ瞬間、彼は背を向けることなくそのまま塔を落下していく。
サウザー討伐から一ヶ月が経った。
あの塔にはレンナルト王様の規制が入り、今では近付くことができなくなっている。
不思議なことに、塔の周辺にはセシリオさんと暗黒龍の魂の入っている玉は見つかっていなかった。
セシリオさんはきっと生きている。そして三つの宝玉を誰の手にも届かない場所に持って行っているはずだ。俺はそう信じている。
「それじゃあこの依頼はリュシアン君、ユリヤ、テレーゼ、それにエリーザ姫にやってもらうわ」
エレーヌさんから依頼を受け取り、俺たちは顔を見合わせる。
「さぁ、今日も困っている人たちのために働こう! 一狩り行こうぜ!」
終わり
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の話しでこの物語は完結しました。
最後の話しまで読んでくださった貴方は、私にとって神様のような人です。
貴方が居てくれて本当に良かったと心から思います。
長い間、本当にありがとうございます。
作者からのお願いですが、宜しければ完結記念のご祝儀として、エールを送っていただけたら助かります。
何卒よろしくお願いします。
無理もない。サウザーが雷雲から逃げ惑う姿を見せつけられれば、誰だって勘違いをしてしまう。
だけど俺にはやつの行動に違和感を覚えていた。
やつはどうして雷雲から逃げようとする? 雷のダメージを無効化させることができるのなら、別に逃げ惑う必要はない。
一度希望を持たせて後で絶望の底に叩き落とす作戦だったのだろうか?
でも、それだけではないような気がする。
上空を飛翔するサウザーを見ていると、あることに気付く。
あいつの動き、俺が突き刺した剣に雷が当たらないように動いていないか。
目を凝らして観察していると、突き刺さった剣にだけ、落雷が当たらないようにしている。
やっぱりそうだ。やつは俺が突き刺した剣に落雷が当たらないように動いている。
つまり、肉体に突き刺さった剣を通して体内に電流を流し込めば、ダメージを与えることができると言うことだ。
「ユリヤ、テレーゼ、エリーザ姫! まだ諦めるには早い!」
彼女たちに声をかけ、風の属性玉に意識を集中する。
すると落雷の動きが早くなり、サウザーを追いかける。
雲は気圧の変化によって動く。
風の属性玉の力で気圧を操作し、サウザーの動きに合わせて雷雲を動かす。
『なんだと! 雷雲がワシを追って来るとは!』
サウザーが驚きの声を上げる。彼にとってこの不自然な自然現象には、驚きを隠せないみたいだ。
「これで終わりだ!」
俺の声に合わせて落雷が落ちる。
『グアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!』
突き刺さった剣に落雷が落ち、サウザーは悲鳴を上げると塔へと落下していく。
剣に雷が落ちたことで、鉄を通して電流が体内へと流れたようだ。
塔に巨大な龍が落ち、近付いて様子をみる。
「まだ息がある。サウザーはまだ死んでいない」
その場から離れ、サウザーの心臓がある場所へと移動する。
「サウザー、これでお前の野望も終わりだ!」
太刀をサウザーの胸に突き刺す。その瞬間、サウザーは短い悲鳴を上げたかと思うと、瞼を閉じる。
「サウザー討伐完了だ!」
「リュシアンさんやりましたね!」
「さすがあたしのリュシアン!」
「リュシアン王子、素敵です!」
千年龍サウザンドドラゴンの討伐完了宣言をした途端に、ユリヤたちが駆け寄り、抱きついてきた。
さすがに三人を受け止めることができずに、そのまま押し倒されてしまう。
「気持ちは分かるが、まだ終わっていない。祭壇にある暗黒龍の魂が封印された宝玉を取り戻さないと」
まだ終わっていないことを告げると、彼女たちはハッとなり、俺から離れる。
立ち上がって祭壇の方見ると、いつの間にか眼帯をしている男が立っていた。
「セシリオさん!」
彼の名を呼ぶと、セシリオさんは祭壇から三つの宝玉を取り出した。
「やっぱりお前は最高のハンターだったぜ」
称賛の言葉を言いながら、彼は後ずさって塔の端っこの方に向かっていく。
「セシリオさん、まさか!」
「俺は元々暗黒龍を復活させ、そして討伐するつもりだった。だけどリュシアンたちの奮闘を隠れて見て考えが変わったよ。暗黒龍を復活させずに済んで良かった。この宝玉たちは、俺が一緒に地獄に連れていく。雷雲で暗黒龍が復活する条件が満たせなくなった今、二度と悪用されないようにしなければな」
「セシリオさん! 何を言っているんだ! サウザーが死んだ今、もう悪用するモンスターは現れない。また封印すれば良いじゃないか」
彼が今から行おうとしていることを悟ってしまい、慌てて考え直すように言う。
「悪いがそれは無理だ。ラープロテクションが死んでいる以上、封印することはできない。だから、俺が連れて行くしかないんだ。リュシアン、お前はLハンターだ。何せ、伝龍であるサウザーを倒したのだからな。これからの活躍を、あの世で見守っているぜ」
「セシリオさん!」
憧れの人の名を叫んだ瞬間、彼は背を向けることなくそのまま塔を落下していく。
サウザー討伐から一ヶ月が経った。
あの塔にはレンナルト王様の規制が入り、今では近付くことができなくなっている。
不思議なことに、塔の周辺にはセシリオさんと暗黒龍の魂の入っている玉は見つかっていなかった。
セシリオさんはきっと生きている。そして三つの宝玉を誰の手にも届かない場所に持って行っているはずだ。俺はそう信じている。
「それじゃあこの依頼はリュシアン君、ユリヤ、テレーゼ、それにエリーザ姫にやってもらうわ」
エレーヌさんから依頼を受け取り、俺たちは顔を見合わせる。
「さぁ、今日も困っている人たちのために働こう! 一狩り行こうぜ!」
終わり
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の話しでこの物語は完結しました。
最後の話しまで読んでくださった貴方は、私にとって神様のような人です。
貴方が居てくれて本当に良かったと心から思います。
長い間、本当にありがとうございます。
作者からのお願いですが、宜しければ完結記念のご祝儀として、エールを送っていただけたら助かります。
何卒よろしくお願いします。
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第六話 レンナルト王の依頼
誤字報告
リュシアン! 久しぶりに敢えて嬉しいぞ → 会えて
Kuni-maru様、いつも誤字報告ありがとうございます。
早速訂正させていただきました。
第二話 リュシアン、お前の力を俺に貸してくれ
誤字報告
もしかしら町に戻れば、綺麗なお姉さんが → もしかしたら
Kuni-maru様
誤字報告ありがとうございます。
助かりました。
早速訂正します。
第十二話 暗黒龍の伝説
誤字報告
ベルトラムさんの何台も前のご先祖様の時代に → 何代も
満月って、狼男と関連が・・・?
kuni-maru様、今回も誤字報告ありがとうございます。
助かりました。早速訂正させていただきます。
満月の件ですが狼男とは関係がないですね。