ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
159 / 171
第十四章

第六話 レンナルト王の依頼

しおりを挟む
 俺はユリヤたちに声をかけ、四人で天空の塔に行くことにした。

 今は馬車に乗って、目的地に向かっている途中だ。

「遂にこの時が来ましたね」

「あたしたちを騙したあの男、絶対に許さないんだから。あたしの声で、ブーブー無様に泣かせてやるわ」

「わたくしもあの方だけは許せません。もし、次に取り逃したら王族の力を使って。国際指名手配して差し上げます」

 三人がセシリオさんに怒りを燃やすも、俺はベルトラムさんの言葉が気になり、本気で怒ることができない。

 彼も彼なりに考えて行動している。単に悪の味方をしているわけではないと分かった以上は、彼女たちのように怒りを燃やす訳にはいかなかった。

 外を眺めると、もう少しで王都が見えてきそうな位置にいることに気付く。

「みんな、そろそろ降りる準備をしてくれ。王都で別の馬車に乗り継ぎだ」

 彼女たちに降りる準備をするように伝え、俺も馬車の中に忘れ物を残さないようにする。

 しばらくすると馬車は王都の門の前で止まり、門番に通行の許可をもらってから中に入る。

 なんか、兵士たちの様子が慌ただしくないか? まるで何かを探しているようだ。目をギラギラとさせて、注意深く辺りを見回している。

 王都に入ると馬車は止まり、御者が扉を開けてくれた。

「お客さん、着きましたよ」

「ありがとうございます。なんだか王都内が物騒な感じになっていますね?」

「ええ、どうやら牢から罪人が逃げ出したそうです。それで王都の兵が探しているそうですね。お客さんは王都で乗り継ぎとのことでしたので、あんまり関係はないかと思いますが、あんまり王都には長居しない方が良さそうですよ。皆さんが降り次第、私も町に引き返しますので」

 なるほど、それでこの騒ぎなのか。彼の言うように、長居はしないほうが良さそうだな。

「ご忠告感謝します」

 御者の男に礼を言い、俺たちは馬車から降りる。俺たちを王都まで運んでくれた御者は、運転席に乗ると手綱を操作して馬をUターンさせ、王都から出て行く。

「さて、早いところ次の乗り継ぎまでの馬車を探すか。

 城下町を歩き、馬車を運転してくれる店を探す。

「もしやあなたは!」

 道を歩いていると、俺に気付いた男性が声をかけてきた。

 鎧に身を包んでいることから、この国の兵士であることが分かる。

「いやー、久しぶりですね。リュシアン殿、お元気そうで何よりです」

 兵士が声をかけてくるも、正直に言って覚えていない。この国で一番関わっているのはレンナルト王くらいだ。一般の兵とはあまり関わっていないので、全然顔を覚えていない。

 だけど彼の方は俺を覚えているようだし、ここは傷付けないように適当に話を合わせるか。

「私を覚えていますか? 城門で待機していた兵士ですよ」

 ああ、城門の兵士か。それならなんとなく覚えている。これで曖昧にするハードルが下がったな。

「久しぶりですね。覚えていますよ」

 俺が覚えていることを言うと、彼は顔を綻ばせた。そんなに嬉しいことなのだろうか?

「それは本当ですか! いやーこの国の英雄に顔を覚えていただけるなんて光栄ですよ」

「ははは、大袈裟だな」

「そうだ。リュシアン殿が王都を訪れて来てくれたことには、きっと何かしらの運命的な出会いだったのかもしれません。お忙しいことは重々承知していますが、一つ王様のお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

「王様のお願い? もしかして脱獄犯のことですか?」

「おお、さすがリュシアン殿! 察しが良い!」

 やっぱり脱獄犯のことだったのか。でも、俺たちにはあまり時間が残されていないのも事実。さて、どうしようか。

「分かりました。まずはレンナルト王様と謁見して、詳しい話を聞かせてもらいます。その依頼を受けるかどうかは、その後に決めます」

「分かりました。では参りましょう。本来王様との謁見には時間がかかりますが、リュシアン殿なら直ぐに王様もお会いしてくださるでしょう」

 門番の兵士が先を歩き、俺たちは彼の後を歩いて城に向かう。

 しばらくして城が見えて来た。

 数ヶ月前に見たときと、何も変わった様子はなさそうだな。

 門の前に辿り着くと、俺たちは顔パスで城の中に入らせてもらう。いくら兵士と一緒でも、本来なら城の中に入るのにも正式な手続きがいる。そのことを考えると、やっぱり俺は結構レンナルト王様から気に入られているのかもしれないな。

 その後、レンナルト王様の準備が終わるまでの間、俺たちは客間に案内された。海外の王族が泊まる部屋に案内され、高級感のある家具家財が置かれているが、椅子に座っても落ち着かなかった。

「なんだか落ち着かないですね」

「そう? あたしはセレブになった気持ちになるけど?」

「わたくしは特別にすごいとは思いませんわね。いて言えば、懐かしいでしょうか?」

 それぞれ思ったことを口にする中、兵士が戻って来るのを待つ。

「お待たせしました。王様の準備ができましたので、どうぞ謁見の間までお越しください」

 王様の準備ができたと聞き、俺たちは謁見の間へと移動する。

 扉を開けて中に入ると、王冠を被った男性が玉座に座っている。

「おお、リュシアン! 久しぶりに会えて嬉しいぞ」

「レンナルト王様、ご無沙汰しております」

「固い挨拶はなしだ。私とリュシアンの中ではないか。おや? そちらのお嬢さんはもしや?」

 レンナルト王様がエリーザ姫に気付いたようで、彼女に視線を向ける。

「ご無沙汰しておりますレンナルト王、バーンズ王の娘、エリーザです」

「おお、話は聞いておる。ハンターになったらしいな。しかし、本当にびっくりだ。あのバーンズ王がハンターになることを認めるとはな」

 レンナルト王様が瞼を閉じて何度も頷いてはいるが、俺たちにはあまり時間がない。早く王様から詳しいことを聞かないと。

「話の間に入ってすみません。正直に言って、俺たちがこの王都に来たのは乗り継ぎです。なので、依頼内容を確認して可能であれば手伝う形にしようかと思っているのですが」

「おお、そうであったな。では、依頼内容を話そうではないか。リュシアンたちに話したいのは、牢獄から脱獄したチャプスの討伐、もしくは捕獲だ」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...