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第十四章

第六話 レンナルト王の依頼

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 俺はユリヤたちに声をかけ、四人で天空の塔に行くことにした。

 今は馬車に乗って、目的地に向かっている途中だ。

「遂にこの時が来ましたね」

「あたしたちを騙したあの男、絶対に許さないんだから。あたしの声で、ブーブー無様に泣かせてやるわ」

「わたくしもあの方だけは許せません。もし、次に取り逃したら王族の力を使って。国際指名手配して差し上げます」

 三人がセシリオさんに怒りを燃やすも、俺はベルトラムさんの言葉が気になり、本気で怒ることができない。

 彼も彼なりに考えて行動している。単に悪の味方をしているわけではないと分かった以上は、彼女たちのように怒りを燃やす訳にはいかなかった。

 外を眺めると、もう少しで王都が見えてきそうな位置にいることに気付く。

「みんな、そろそろ降りる準備をしてくれ。王都で別の馬車に乗り継ぎだ」

 彼女たちに降りる準備をするように伝え、俺も馬車の中に忘れ物を残さないようにする。

 しばらくすると馬車は王都の門の前で止まり、門番に通行の許可をもらってから中に入る。

 なんか、兵士たちの様子が慌ただしくないか? まるで何かを探しているようだ。目をギラギラとさせて、注意深く辺りを見回している。

 王都に入ると馬車は止まり、御者が扉を開けてくれた。

「お客さん、着きましたよ」

「ありがとうございます。なんだか王都内が物騒な感じになっていますね?」

「ええ、どうやら牢から罪人が逃げ出したそうです。それで王都の兵が探しているそうですね。お客さんは王都で乗り継ぎとのことでしたので、あんまり関係はないかと思いますが、あんまり王都には長居しない方が良さそうですよ。皆さんが降り次第、私も町に引き返しますので」

 なるほど、それでこの騒ぎなのか。彼の言うように、長居はしないほうが良さそうだな。

「ご忠告感謝します」

 御者の男に礼を言い、俺たちは馬車から降りる。俺たちを王都まで運んでくれた御者は、運転席に乗ると手綱を操作して馬をUターンさせ、王都から出て行く。

「さて、早いところ次の乗り継ぎまでの馬車を探すか。

 城下町を歩き、馬車を運転してくれる店を探す。

「もしやあなたは!」

 道を歩いていると、俺に気付いた男性が声をかけてきた。

 鎧に身を包んでいることから、この国の兵士であることが分かる。

「いやー、久しぶりですね。リュシアン殿、お元気そうで何よりです」

 兵士が声をかけてくるも、正直に言って覚えていない。この国で一番関わっているのはレンナルト王くらいだ。一般の兵とはあまり関わっていないので、全然顔を覚えていない。

 だけど彼の方は俺を覚えているようだし、ここは傷付けないように適当に話を合わせるか。

「私を覚えていますか? 城門で待機していた兵士ですよ」

 ああ、城門の兵士か。それならなんとなく覚えている。これで曖昧にするハードルが下がったな。

「久しぶりですね。覚えていますよ」

 俺が覚えていることを言うと、彼は顔を綻ばせた。そんなに嬉しいことなのだろうか?

「それは本当ですか! いやーこの国の英雄に顔を覚えていただけるなんて光栄ですよ」

「ははは、大袈裟だな」

「そうだ。リュシアン殿が王都を訪れて来てくれたことには、きっと何かしらの運命的な出会いだったのかもしれません。お忙しいことは重々承知していますが、一つ王様のお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

「王様のお願い? もしかして脱獄犯のことですか?」

「おお、さすがリュシアン殿! 察しが良い!」

 やっぱり脱獄犯のことだったのか。でも、俺たちにはあまり時間が残されていないのも事実。さて、どうしようか。

「分かりました。まずはレンナルト王様と謁見して、詳しい話を聞かせてもらいます。その依頼を受けるかどうかは、その後に決めます」

「分かりました。では参りましょう。本来王様との謁見には時間がかかりますが、リュシアン殿なら直ぐに王様もお会いしてくださるでしょう」

 門番の兵士が先を歩き、俺たちは彼の後を歩いて城に向かう。

 しばらくして城が見えて来た。

 数ヶ月前に見たときと、何も変わった様子はなさそうだな。

 門の前に辿り着くと、俺たちは顔パスで城の中に入らせてもらう。いくら兵士と一緒でも、本来なら城の中に入るのにも正式な手続きがいる。そのことを考えると、やっぱり俺は結構レンナルト王様から気に入られているのかもしれないな。

 その後、レンナルト王様の準備が終わるまでの間、俺たちは客間に案内された。海外の王族が泊まる部屋に案内され、高級感のある家具家財が置かれているが、椅子に座っても落ち着かなかった。

「なんだか落ち着かないですね」

「そう? あたしはセレブになった気持ちになるけど?」

「わたくしは特別にすごいとは思いませんわね。いて言えば、懐かしいでしょうか?」

 それぞれ思ったことを口にする中、兵士が戻って来るのを待つ。

「お待たせしました。王様の準備ができましたので、どうぞ謁見の間までお越しください」

 王様の準備ができたと聞き、俺たちは謁見の間へと移動する。

 扉を開けて中に入ると、王冠を被った男性が玉座に座っている。

「おお、リュシアン! 久しぶりに会えて嬉しいぞ」

「レンナルト王様、ご無沙汰しております」

「固い挨拶はなしだ。私とリュシアンの中ではないか。おや? そちらのお嬢さんはもしや?」

 レンナルト王様がエリーザ姫に気付いたようで、彼女に視線を向ける。

「ご無沙汰しておりますレンナルト王、バーンズ王の娘、エリーザです」

「おお、話は聞いておる。ハンターになったらしいな。しかし、本当にびっくりだ。あのバーンズ王がハンターになることを認めるとはな」

 レンナルト王様が瞼を閉じて何度も頷いてはいるが、俺たちにはあまり時間がない。早く王様から詳しいことを聞かないと。

「話の間に入ってすみません。正直に言って、俺たちがこの王都に来たのは乗り継ぎです。なので、依頼内容を確認して可能であれば手伝う形にしようかと思っているのですが」

「おお、そうであったな。では、依頼内容を話そうではないか。リュシアンたちに話したいのは、牢獄から脱獄したチャプスの討伐、もしくは捕獲だ」
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