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第十四章
第五話 暗黒龍復活の地へ
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~リュシアン視点~
戦闘中に運悪く急所の攻撃を受けたフェルディナンが蹲り、苦悶の表情を漏らす彼を見て、俺は近付く。
正直に言って、俺も笑いを堪えるのに必死だ。だけど彼のことを思うと、笑う訳にはいかない。
「だ、大丈夫か? フェルディナン」
「だ、大丈夫な……訳が……ない……だろう。お前……も……この苦しみ……が……わかっている……はず」
ああ、だからこうして必死に笑いを堪えているんだ。
股間を両手で抑えているフェルディナンに救護班が近付くと、彼を担架に乗せて運び出した。
こんな展開になることなど、予想することすらできなかった。いや、誰もが予想していなかっただろう。
勝負が終わると、暴れ出したモンスターたちは急に大人しくなり、闘技場関係者に連れていかれる。
だけどまぁ、どんな形とはいえ勝利したことには変わりない。これでフェルディナンも諦めてくれるだろう。
闘技場のステージから出て控え室に戻る。すると、扉の前で三人組の女の子が待ち伏せしていた。
「お疲れ様ですリュシアンさん」
「さすがリュシアン。あんな骨のモンスターに臆しないなんて、本当に最高ね」
「リュシアン王子、お疲れ様です。素晴らしい戦いでしたわ」
「みんな迎えに来てくれたのか」
ユリヤたちに近づき、彼女たちの前に立つ。
「それにしても、なんとも締まらない終わり方でしたね」
「まさか、股間にモンスターの骨が当たって戦闘不能になるなんて笑えるわ」
「まったくですわ。リュシアン王子を引き抜こうとした罰が当たりましたわね」
「「「あははははは!」」」
三人は思い出したようで、一斉に噴き出すと大笑いをする。
「笑ってやるなよ。あれは俺でも耐えられないほどだ」
「そうですの?」
「ああ、特にクリティカルヒットした場合が、途轍もなく痛みがエグい」
男の急所はとんでもなくデリケート。
幼女の手が不意に当たるくらいで下腹部に鈍い痛みが継続的に続く。
具体的には肘をぶつけたときのジーンとした痛みや脛を強打したときや、足の小指を箪笥の角にぶつけた痛みに近い。
さらに箪笥に小指をぶつけた件に例えるなら、「あれ? 小指破壊された?」くらいの痛みがあるときに、もう一回同じ場所を箪笥の角にぶつけたぐらいの容赦ない痛みだ。
一気に思考がフリーズして痛みしか考えられなくなる。
鋭い一撃に息が詰まり泣きたくなるが、涙は込み上げてくるけど、泣き叫ぶ余裕はない。
あらゆる感情は言葉にならなくなる。
人によっては頭痛や吐き気を感じることもあるのだ。
そしてこのときばかりは普段祈る神を持たなくとも、このときばかりは神様に謝りたくなる。
あらゆることを反省し、日々の行いを悔いる。
何でもいいから許されたくなるのだ。
この痛みを終わらせてくれるのなら何でもいいと思ってしまう。
この絶望感は本当に言葉で言い表しがたい。
例え事故であったとしても、犯人への怒りに目の前が赤くなるレッドアウトと呼ばれる現象が起きることもある。
それが大好きな子どもであったとしてもだ。
さらにワンランク上がると目の前が一瞬白くなるのだ。
例え一瞬であったとしても意識を失くすレベル。
仮に時速百六十キロの硬球が当たってしまえば、内出血は下腹部まで広がり、当たりどころによってはタマが潰れるだろう。
睾丸も簡単に言えば臓器なのだから。
そんな痛みは例え生きていても死んだに等しい苦しみ。
股間に当たった時の痛みを思い出すと、俺まで若干気分が悪くなった。
もう、この話から切り離さなければ。
「とにかく、フェルディナンとの勝負は終わったんだ。明日からは、またハンターとしての仕事に戻らないと」
暗黒龍が復活する満月も近い。そろそろ復活の儀式が行われると言う、天空の塔へと向かう必要もある。
今後はエレーヌさんにお願いして、天空の塔までの依頼を回してもらうようにお願いをしないと。
俺たちは闘技場を後にすると、寮へと帰る。
翌日、俺はギルドマスターであるエレーヌさんにお願いをすることにした。
「え? 天空の塔までの依頼を一通り受けたい?」
「はい。俺は天空の塔まで行かなければならい用事があるので、それまでの道のりにある依頼を受けようかと思っています。勝手なお願いであると十分承知ですが、お願いします」
エレーヌさんにお願いして頭を下げた。もし、彼女が許可を出してくれなければ、休暇を取って暗黒龍の討伐に向かうつもりだ。
「それは丁度良かったわ」
え? ちょうど良い?
予想外の言葉に、俺思わず下げていた頭を上げた。
彼女はニッコリと笑みを浮かべている。
「実はね、天空の塔への依頼が来ているのよ。それをリュシアン君たちにお願いしようと思って」
エレーヌさんが一枚の依頼書を手渡す。
紙を受け取り、内容を黙読すると、依頼主はベルトラムさんだった。
ベルトラムさん、もしかして。
『天空の塔にて、怪しい人物が活動しているとの情報が入った。そこで、Sランクハンターであるリュシアンを始め、ユリヤ、テレーゼ、エリーザ姫の四人にそいつらの野望を阻止してもらいたい』
依頼書を黙読し、内心でベルトラムさんに感謝する。
依頼であれば、俺たちは堂々と活動することができる。そのことを踏まえた上で、彼は依頼と言う形で、俺を天空の塔へと向かわせたのだ。
「分かりました。では、ユリヤたちに声をかけて、早速出発したいと思います」
「お願いね。天空の塔は遠いから、馬車の手配をしておくのよ。それとポーチの中に支給品のアイテムを入れるのを忘れないでね。特に非常食は絶対に入れておくこと。あと、旅先で何が起きるか分からないから、お金は余分に持って行くのよ」
仲間たちと共に依頼を受ける意思を告げると、毎回恒例であるエレーヌさんのありがたいお節介タイムが始まる。
もし、暗黒龍が復活するようなことになれば、こんな風に彼女から色々と心配されるようなことがなくなってしまうかもしれない。
絶対に暗黒龍の復活を阻止してみせる。
戦闘中に運悪く急所の攻撃を受けたフェルディナンが蹲り、苦悶の表情を漏らす彼を見て、俺は近付く。
正直に言って、俺も笑いを堪えるのに必死だ。だけど彼のことを思うと、笑う訳にはいかない。
「だ、大丈夫か? フェルディナン」
「だ、大丈夫な……訳が……ない……だろう。お前……も……この苦しみ……が……わかっている……はず」
ああ、だからこうして必死に笑いを堪えているんだ。
股間を両手で抑えているフェルディナンに救護班が近付くと、彼を担架に乗せて運び出した。
こんな展開になることなど、予想することすらできなかった。いや、誰もが予想していなかっただろう。
勝負が終わると、暴れ出したモンスターたちは急に大人しくなり、闘技場関係者に連れていかれる。
だけどまぁ、どんな形とはいえ勝利したことには変わりない。これでフェルディナンも諦めてくれるだろう。
闘技場のステージから出て控え室に戻る。すると、扉の前で三人組の女の子が待ち伏せしていた。
「お疲れ様ですリュシアンさん」
「さすがリュシアン。あんな骨のモンスターに臆しないなんて、本当に最高ね」
「リュシアン王子、お疲れ様です。素晴らしい戦いでしたわ」
「みんな迎えに来てくれたのか」
ユリヤたちに近づき、彼女たちの前に立つ。
「それにしても、なんとも締まらない終わり方でしたね」
「まさか、股間にモンスターの骨が当たって戦闘不能になるなんて笑えるわ」
「まったくですわ。リュシアン王子を引き抜こうとした罰が当たりましたわね」
「「「あははははは!」」」
三人は思い出したようで、一斉に噴き出すと大笑いをする。
「笑ってやるなよ。あれは俺でも耐えられないほどだ」
「そうですの?」
「ああ、特にクリティカルヒットした場合が、途轍もなく痛みがエグい」
男の急所はとんでもなくデリケート。
幼女の手が不意に当たるくらいで下腹部に鈍い痛みが継続的に続く。
具体的には肘をぶつけたときのジーンとした痛みや脛を強打したときや、足の小指を箪笥の角にぶつけた痛みに近い。
さらに箪笥に小指をぶつけた件に例えるなら、「あれ? 小指破壊された?」くらいの痛みがあるときに、もう一回同じ場所を箪笥の角にぶつけたぐらいの容赦ない痛みだ。
一気に思考がフリーズして痛みしか考えられなくなる。
鋭い一撃に息が詰まり泣きたくなるが、涙は込み上げてくるけど、泣き叫ぶ余裕はない。
あらゆる感情は言葉にならなくなる。
人によっては頭痛や吐き気を感じることもあるのだ。
そしてこのときばかりは普段祈る神を持たなくとも、このときばかりは神様に謝りたくなる。
あらゆることを反省し、日々の行いを悔いる。
何でもいいから許されたくなるのだ。
この痛みを終わらせてくれるのなら何でもいいと思ってしまう。
この絶望感は本当に言葉で言い表しがたい。
例え事故であったとしても、犯人への怒りに目の前が赤くなるレッドアウトと呼ばれる現象が起きることもある。
それが大好きな子どもであったとしてもだ。
さらにワンランク上がると目の前が一瞬白くなるのだ。
例え一瞬であったとしても意識を失くすレベル。
仮に時速百六十キロの硬球が当たってしまえば、内出血は下腹部まで広がり、当たりどころによってはタマが潰れるだろう。
睾丸も簡単に言えば臓器なのだから。
そんな痛みは例え生きていても死んだに等しい苦しみ。
股間に当たった時の痛みを思い出すと、俺まで若干気分が悪くなった。
もう、この話から切り離さなければ。
「とにかく、フェルディナンとの勝負は終わったんだ。明日からは、またハンターとしての仕事に戻らないと」
暗黒龍が復活する満月も近い。そろそろ復活の儀式が行われると言う、天空の塔へと向かう必要もある。
今後はエレーヌさんにお願いして、天空の塔までの依頼を回してもらうようにお願いをしないと。
俺たちは闘技場を後にすると、寮へと帰る。
翌日、俺はギルドマスターであるエレーヌさんにお願いをすることにした。
「え? 天空の塔までの依頼を一通り受けたい?」
「はい。俺は天空の塔まで行かなければならい用事があるので、それまでの道のりにある依頼を受けようかと思っています。勝手なお願いであると十分承知ですが、お願いします」
エレーヌさんにお願いして頭を下げた。もし、彼女が許可を出してくれなければ、休暇を取って暗黒龍の討伐に向かうつもりだ。
「それは丁度良かったわ」
え? ちょうど良い?
予想外の言葉に、俺思わず下げていた頭を上げた。
彼女はニッコリと笑みを浮かべている。
「実はね、天空の塔への依頼が来ているのよ。それをリュシアン君たちにお願いしようと思って」
エレーヌさんが一枚の依頼書を手渡す。
紙を受け取り、内容を黙読すると、依頼主はベルトラムさんだった。
ベルトラムさん、もしかして。
『天空の塔にて、怪しい人物が活動しているとの情報が入った。そこで、Sランクハンターであるリュシアンを始め、ユリヤ、テレーゼ、エリーザ姫の四人にそいつらの野望を阻止してもらいたい』
依頼書を黙読し、内心でベルトラムさんに感謝する。
依頼であれば、俺たちは堂々と活動することができる。そのことを踏まえた上で、彼は依頼と言う形で、俺を天空の塔へと向かわせたのだ。
「分かりました。では、ユリヤたちに声をかけて、早速出発したいと思います」
「お願いね。天空の塔は遠いから、馬車の手配をしておくのよ。それとポーチの中に支給品のアイテムを入れるのを忘れないでね。特に非常食は絶対に入れておくこと。あと、旅先で何が起きるか分からないから、お金は余分に持って行くのよ」
仲間たちと共に依頼を受ける意思を告げると、毎回恒例であるエレーヌさんのありがたいお節介タイムが始まる。
もし、暗黒龍が復活するようなことになれば、こんな風に彼女から色々と心配されるようなことがなくなってしまうかもしれない。
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