ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十四章

第四話 事故とは言え、ムスコを攻撃するのはエグいだろう!

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空フェルディナン視点~



 俺ことフェルディナンは、闘技場でアナウンスが行われるのを待っていた。

『皆様、長らくお待たせしました。これより、Sランクハンターと元ギルドマスターによるモンスターがいる中の一騎打ちを行います。それでは、元ギルドマスターの入場です』

 戦闘フィールドに入るように促され、通路からゆっくりと闘技場内に出る。

 すると観客から歓声が飛び、俺の勝利を願う者の声がチラホラと聞こえた。

 正直、俺を応援する者がいるとは意外だ。もしかしたら何か賭け事でもしているかもしれないな。

『では、続いてこの町の代表するSランクハンターの入場です』

 もう一度アナウンスがあると、今度はリュシアンが闘技場に姿を見せる。やつが姿を見せた瞬間、会場にいる観客の殆どが声援を送っていた。

 まったく、たいした者だ。これだけの観客から応援させるとはな。やつがどれだけこの町に貢献してきたのかが直ぐに分かる。

 だけど、その歓声は気が付くと俺へと向けられているはずだ。何せ、この試合に勝つのは俺だからな。

 そのための根回しも当然している。

『では、ハンターたちの妨害モンスターを登場させます』

 三度アナウンスが入ると、鉄製の扉が開かれ、中からモンスターが二体現れる。

 一体は巨大な鶏のモンスター、クックルー。そしてもう一体は竜骨龍のスカルドラゴンだ。

 よし、よし、予定どおりだな。

 特別席にいる支配人に顔を向けると、彼と目が合う。支配人は無言で頷いた。

 ちゃんと俺の要望どおりになっている。まぁ、あいつを口車に乗せて思いどおりに動かしただけなんだがな。

「リュシアン、準備はいいか」

 背中に帯刀している大剣を鞘から抜き、構える。

「ああ、いつでもいいぜ」

 やつも鞘から太刀を抜いて構えた。

 勝負開始の合図は行われない。どちらかが仕掛けたら、それが試合の合図だ。

 緊張感が高まる中、我慢の限界に達した俺が距離を詰め、大剣を振り下ろす。だが、リュシアンは後方に下がり、力を入れた一撃は、躱されてしまう。

 だが、それでいい。これが本当の合図だ。

 大剣を振り下ろした直後、二体のモンスターが俺たちに向かって来る。クックルーは俺に、スカルドラゴンはリュシアンに突撃してくる。

『おっと! いきなりトラブルが発生してしまった! 軽く妨害する様に用意していたモンスターが本格的に襲い出した! 二人がピンチ!』

 アナウンスサーが大袈裟に語り、会場を温める。だが、これも予定内だ。

「チッ、なんてことだ。リュシアン、まずはこいつらを倒してからだ」

 彼に一時休戦を申し込むと、リュシアンは無言で頷き、スカルドラゴンに向けて突っ走る。

『コケー、コケー、コー!』

 巨大なニワトリが俺の前に立ち、鋭い嘴を突き刺そうとする。それをバックステップで躱した。

 クックルーの嘴は地面に突き刺さり、抜くのに時間がかかっているようだ。

 攻撃するなら今がチャンス。

 モンスターとの間合いを詰め、隙が生じている間に大剣を縦に振り下ろす。

 刃がモンスターの肉体に突き刺さり、鮮血が飛ぶと、クックルーは地面に倒れる。

 予定どおりに俺が担当するモンスターはザコだな。さて、起き上がるまでに時間があるし、リュシアンの様子を見るとするか。

 元同僚の戦い振りを鑑賞すると、やつはスカルドラゴンの攻撃を躱し、攻撃を当てている。だが、骨を攻撃してもモンスターは怯むことはなかった。

 スカルドラゴンは本当に謎のモンスターだ。ゾンビモンスターの部類に入るが、臓器がないので心臓に刃を突き刺して倒すことができない。

 やつを倒すには、存在そのものを消す様に、跡形もなく骨を砕く必要がある。

 いくらリュシアンでも、一人では倒すことが困難だろう。

 観客がリュシアンを応援している。Sランクハンターの戦いぶりを見られて観客たちは興奮しているようだ。

 だがな。お前らが応援しているやつはスカルドラゴンには勝てない。たとえSランクハンターであったとしても、たった一人で全ての骨を砕き切るのは困難だ。

 さて、そろそろクックルーが起き上がるころだな。俺も戦闘に戻るとするか。

 そう思ったとき、リュシアンがスカルドラゴンの指の骨を切断して弾く。

 弾かれた骨はこちらに向かって飛んで来る中、勢いが衰えることはなかった。

 この角度、間違いなく俺に直撃する。念のために弾いておくか。

 大剣でガードしようとしたが、俺の得物は重量があり、動きがワンテンポ遅れる。

 ガードが間に合わず、飛んで来た骨は俺のムスコに直撃した。

 その瞬間、下腹部に耐えられない痛みを覚え、大剣を手放して地面に蹲る。

「ガッ……ハッ……グッ……フウ」

 呼吸が一瞬止まり、あまりの痛さに涙が溢れ落ちる。

「ギャハハハハハハ! あいつ、股間にダメージ受けて倒れているぞ!」

「アハハハハハ面白い! 何やっているのよ」

 俺が倒れたのを見て、観客たちが一斉に笑い出した。

 テメーラ! 笑うんじゃねぇよ! 特に女ども! この地獄のような苦しみを知らないくせに!

 本当は声に出して訴えたかった。しかし、股間にダメージを受けたことにより、呼吸困難に陥ってしまった。

 まともに息を吸うことができずに、酸欠で苦しむ。

 肘をぶつけたときのジーンとした痛みが起き、頭痛や吐き気すら感じてくる。

 もう、痛いと言うことしか頭に残らねー! それ以外何も考えられない。

 鋭い一撃に息が詰まり、再び涙が込み上げてくるが、息の詰まりのせいで全ての感情は言葉にならない。

 なんでもいい! 誰かこの苦しみから解放してくれ!

『えー、フェルディナンが戦闘不能となりましたので、この勝負、Sランクハンターのリュシアンの勝利とさせてもらいます』
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