ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十四章

第一話 一方その頃チャプスは?

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~チャプス視点~



「くそう! くそう! くそう!」

 僕ことチャプスは、リュシアンをざまぁすることに失敗し、苛立っている。

「おや、おや。どうしたのですか? そんなに不機嫌な顔をして? トミトを食べ過ぎてお腹でも壊しましたか?」

 道を歩いている最中、男が僕に話しかける。そいつを見た瞬間、怒りを感じて彼を睨み付けた。

「お前! 話が全然違うじゃないか! ホラゾンウルフを使えば、リュシアンを倒せるって聞いたから話に乗ってやったんだぞ!」

 怒りの頂点に達した僕は、そそのかしたペテンに対して怒声を上げる。

「ハハハ! これは失敬、私もリュシアンがホラゾンウルフを倒せるとは思ってもいなかったので、予想外だったのですよ。これはお詫びです。どうか受け取ってください」

 青白い顔の男が僕に赤い果実を放り投げる。

 投げられた物は、最近好物になりかけているトミトだ。

 こんなもので僕のご機嫌を取ろうと言うのか。

 投げられた果実をキャッチすると、一口齧り付く。口の端からトミトの果汁がこぼれ落ち、腕で拭う。

「美味しいですか?」

「ああ、美味しい……って、こんなもので許すとでも思っているのか!」

「ですよねぇ、なのでトミト一箱分を用意しました。どうかこちらをお納めください」

 ペテンがトミトの入った箱を差し出す。

 こいつ、もしかしてわざとやっているんじゃないのか?

「お前、わざとだろう」

「あれ? バレました? いやーあなたの反応が面白いので、つい遊んでしまいました。ちゃんとお詫びも考えてあります。次はちゃんとリュシアンを倒せますよ…………あなた自身の手でね」

 うん? ペテンのやつ、最後に何か言ったか? 口は動いていたようだが、小さ過ぎて良く聞こえなかった。

 本当にこいつは何を考えているのか分からないやつだ。自称モンスターマスターとか名乗っているが、僕はそんな職業は聞いたことがない。

 だけどこいつがモンスターを操る能力は本物だ。やつから手解きを受ければ、僕でもあのホラゾンウルフを手駒にすることができるのだから。

 僕はあの日のことを思い出す。





「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 目の前に御伽噺おとぎばなしに登場するモンスターが現れ、僕は絶叫を上げる。

 恐怖のあまりに脳がパニックを起こして体を制御できないのか、僕のムスコは排泄を始め、下半身を濡らす。

 そんな中、腐った肉体のモンスターは一歩、また一歩とこちらに歩き、距離を縮めてくる。

「く、くるなああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 声を上げるも、モンスターは止まってくれない。

 こいつは僕があの犬を殺したことを知っている。だから罰を与えるために、僕の元に来たのだ。僕は殺される。このモンスターに食い殺される。

 嫌だ。死にたくない!

『ガアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!』

 ホラゾンウルフは声を上げながら大きな口を開け、鋭い牙を突き立てようとしてくる。

 ああ、僕は終わった。こうなるのなら、城下町から出なければ良かった。

 死を覚悟し、瞼を閉じる。だが、いくら待っても痛みを感じなかった。

 なんだ? いったい何が起きている? どうして痛みを感じない? まさか、痛みを感じないほど一瞬で殺されてしまったのか?

「大丈夫ですか? 危なかったですね? 偶然私が通りかかって、あなたはラッキーですよ」

 男の声が聞こえる。ってことは、僕は死んでいないのか?

 閉じていた瞼を開けると、目の前にはまだホラゾンウルフがおり、口を大きく開けたまま静止していた。

 だが、僕が目視したと同時にモンスターはゆっくりと動き、顔を遠ざける。

「おケガはないですか?」

 先ほど聞こえてきた声の男がゆっくりと近付いてくる。

「お前が助けてくれたのか?」

「はい。あのホラゾンウルフに隷従の輪を装着させましたので、もうあなたを襲うことはありません」

 この男の言っていることは本当なのだろうか? 俄かに信じられないのだが。まぁいい。ものは試しだ。

 僕はモンスターの足を蹴る。最悪の場合は男の背後に隠れるつもりだったが、ホラゾンウルフは蹴られても反撃しようとはしなかった。

 本当だ。いくら攻撃をしても、表情ひとつ変えない。なら、これならどうだ?

「おすわり!」

 ホラゾンウルフに座るように指示を出す。だが、モンスターは腰を落とすようなことはしなかった。

「プッ、アハハハ、アハハハハ!」

 僕の行動を見て、突然男がお腹を抱えて笑い出した。やつの笑っている姿を見て、僕は急に恥ずかしくなると顔に熱を感じる。

「わ、笑うことはないだろうが! もしかしたら僕の言いなりになってくれるかもしれないって思うじゃないか!」

「い、いえ。す、すみません。まさかモンスターにおすわりを言う人間がいるとは思わなくって。そんなにモンスターを操りたいのですか?」

「それはそうだろう。モンスターを操ることができれば、リュシアンを倒せるかもしれないからな」

 モンスターを操りたい動機を言うと、いきなり男は笑うのを止める。そしてジッと僕のことを見つめてきた。

 何だよ急に、そんなに見つめてくるなよ。気持ち悪いじゃないか。

「ほう、あなたはリュシアンに恨みを持っていると?」

「ああ、あいつのせいで僕の人生は絶望の淵に叩き落とされた。だからあの男にも僕と同じように合わせてやりたい」

「そうですか。では、あなたのその望み、私が叶えてあげましょう。私の名はペテン。どうぞお見知りおきを」
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