ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十二章

第十一話 頂上の天空龍 前編

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 属性玉の力を使い、岩を階段にして上がった俺たちは、ようやく頂上に辿り着く。

「ここが岩山の頂上か」

 頂上は予想よりも広く、闘技場二つ分はありそうな感じがした。

 どうやら俺が削った岩は、山にとってはほんの一部だったようだ。

 山頂だからか、雲が近くに感じられる。今は暗雲が立ち込めているせいで太陽が隠れていた。

 辺りを見渡すも、天空龍の姿はどこにも見当たらない。

「天空龍が見当たらないな。いったいどこにいるんだ?」

 モンスターの気配を探っていると、セシリオさんが歩き出す。彼が向かっている方を見ると、神殿らしき建物があった。

 あの建物、ガラン荒野の十番エリアにあった神殿に似ているな。

「俺たちもあの建物に行ってみよう」

 セシリオさんの後を歩き、建物に近付く。

 やっぱり、ラープロテクションが守っていた神殿に似ている。

 そんなことを考えていたときだ。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォォン!』

 思わず耳を塞いでしまうほどの甲高い音が聞こえ、上空に顔を向ける。

 暗雲を突き抜け、一体の龍が姿を現した。

 赤い鱗に覆われ、青い瞳を持っている翼竜だ。足の爪はとても鋭利で、あれに引き裂かれれば軽傷では済まないと直感でわかるほどに尖っていた。

 あれがスリシオ。

 初めて見る伝龍の姿に、俺は動けないでいた。

 そんな中、スリシオは長い尻尾を地面に叩きつけ、神殿への侵入を妨害する。

 こいつは何て威圧的なオーラを放っているんだ。キメーラが進みたくないと思うはずだ。

 ベッキーはキメーラが心配だと言い、下で待っている。

 なので、俺たち五人で伝龍の無力化を図らないといけない。

 モンスターの態度を見る限り、ここから離れることはないだろう。だからマーキング玉を使う必要性はない。

 まずは遠距離から攻撃して、やつの行動パターンを見抜く。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォォン!』

 ポーチからブーメランにすることのできる双剣を取り出そうとしたときだ。スリシオが甲高い声で鳴き、思わず耳を塞いでしまう。

 こいつの声、今までのモンスターの声とは次元が違う。

 耳を塞いでいる間に攻撃をされたら、咄嗟に回避することなんてできない。

 ダメージを受ければ最悪致命傷となってしまうだろう。

 でも、だからと言って怖気付いて逃げる訳にはいかない。俺はハンターなんだ。どんな強敵が待ち構えていたとしても、依頼者のために遂行して見せる。

「ユリヤたちは遠距離からのサポートを頼む。離れていれば、耳に届く音の量は小さい」

「わかりました」

「了解したわ」

「遠距離攻撃ならお任せくださいませ」

 三人に遠距離でのサポートを頼み、ポーチに腕を突っ込むとテレーゼからもらった耳栓を嵌める。

 完全には防ぐことはできなかったとしても、耳に届く音の量を減らすことは可能のはずだ。

 普通のモンスターが鳴く程度まで抑えることができれば、モンスターのモーションを見極めることができる。

 やつは空を飛んではいるが、地面を叩きつけた長い尻尾が地面と接触している。まずはあそこから攻撃だ。

 接近して太刀を抜き、尻尾に一太刀を浴びせる。刃が尻尾の鱗を切り裂き、肉に到達したことで、鮮血が噴き出た。

 よし、弾かれていない。ベルトラムさん良い仕事をしてくれる。

 伝龍相手でもこの太刀は通用する。その事実がわかっただけでも、やる気を引き出すには十分すぎる。

 このまま一気に尻尾を攻撃して部位破壊を試みようとしたときだ。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォォン!』

 モンスターの鳴き声が聞こえ、スリシオは上空へと上がった。

 テレーゼの耳栓のお陰で耳を抑えるようなことをせずに済んだが、攻撃のチャンスを逃してしまう。

 上空に逃げられては、攻撃手段に制限がかかってしまうな。こうなったら届くかわからないが、一応やってみるとするか。

 太刀を鞘に収めて耳栓も一旦ポーチに仕舞い、代わりに白銀の球体を取り出す。そしてエリーザ姫の元に向かった。

「エリーザ姫、こいつを弓に装着させてスリシオに当てることはできそう?」

「ええ、多分可能かと思いますわ。少々お待ちください」

 エリーザ姫が球体を矢に取り付け、天空龍に向けて放つ。

 彼女の矢は狙い通りにモンスターの頭部に当たり、その瞬間スリシオが慌てたように翼を羽ばたかせるも、山頂へと落下した。

「よし、これで爆音玉は効果があることが証明された」

 隣国のお姫様に渡した球体は、強く接触した瞬間に爆音を奏でる代物だ。

 どうやら自分の雄叫びには強くとも、空気を通して耳に入ってくる音には弱いようだ。

 山頂に落ちたスリシオは、気を失っているのか、動こうともしない。

 だけど伝龍がこんなにあっけないはずがない。直ぐに目を覚まし、立ち上がるはずだ。

 このチャンスを活かそうと、天空龍に接近する。俺と同じ考えに至ったのか、セシリオさんも駆け寄ってくれた。

「まずはあの鋭利な爪を破壊しよう!」

「分かりました」

 セシリオさんが爪に攻撃を集中するように提案し、俺は地面に倒れている翼竜に近付く。そしてポーチから通常よりも大きい双剣を取り出すと、二つのブレードを引っ付けて大剣へと姿を変える。

 部位破壊が狙いなら、太刀よりも大剣の方が破壊力はある。

 上段に持ち上げ、思いっきり振り下ろした。

 狙いどおりに刃は、モンスターの鋭利な爪に当たる。しかし接触した瞬間に金属同士がぶつかるような甲高い音が響いた。

 この武器では天空龍の爪を破壊することができない。

 セシリオさんの方を見るが、彼も同じだ。

 もしかしたら太刀の方なら部位破壊を可能にするかもしれない。だけどそうなった場合、切れ味が落ちることになる可能性が高い。

 天空龍相手に、攻撃を避けながら砥石を使う芸当は俺には難しい。

リュシアンピグレット! 爪の破壊ならあたしに任せて!」

 テレーゼがこちらに駆け寄って来ると、彼女は走りながら口をすぼめる。

「アー!」

 そして歌姫が声を上げた瞬間、スリシオの爪にヒビが入った。

 空気の振動が対象物の強度を上回れば、音で物を破壊することができる。

 その性質を利用し、声の力で爪の破壊を試みたようだが、完全に破壊するまでには至っていない。

 伝龍の防御力の高さに驚かされる。だけど、これで今使っている得物でも破壊可能となった。

「サンキュー! テレーゼ!」

「当たり前でしょう! リュシアンピグレットを一番にサポートできるのはあたしなんだから!」

「リュシアン、同時に攻撃だ!」

「はい!」

 テレーゼに礼を言い、セシリオさんと呼吸を合わせてもう一度大剣を振り下ろす。

 二つの刃が爪に当たると、ヒビが広がって最後は砕ける。

 これで前足の部位破壊は完了だ!

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォォン!』

 爪を破壊されたスリシオが吠える。

 耳栓を外した俺は、近距離で聞いてしまったことで、咄嗟に耳を塞いでしまった。

 その隙を突き、天空龍は再び両翼を動かして上空へと舞い上がる。

 上空に逃げられたか。だけど爆音玉が有効だと分かった以上、もう空にいる意味がない。

 これなら勝てる。そう思ったとき、上空から何かが落ち、頬に当たった。
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