上 下
133 / 171
第十二章

第六話 因縁のモンスターとの再会?

しおりを挟む
「――と言うわけで、俺はセシリオさんから命を助けてもらい、その後は彼の持ってきた解毒草で俺の親は命が助かったってわけだ。再会したときにセシリオさんから太刀を貰って、その剣に見合うハンターになれと言われたんだ」

 過去話を語り終え、閉じていた瞼を開ける。すると彼女たちの目尻からは、少しの涙が流れていた。

 あれ? そんなに感動するようなことを言ったっけ?

「幼い頃のリュシアンさん、苦労していたのですね」

「ご両親のために働く優しいリュシアンピグレット、もし過去に戻ることができたら、優しく抱きしめてあげたい」

「ええ、そしてわたくしの国から支援して裕福な生活を送らせたいですわ」

 ああ、幼い頃の俺に同情してくれたのか。

「まぁ、俺とセシリオさんとの出会いはこんなところだな。俺は彼に命を救われたし、ハンターとしての才能があると言うことで、色々と教わった。だから俺にとっての憧れの存在というわけ」

 話がひと段落すると、馬車が止まった。

 どうしたのだろうか?

 疑問に思っていると、扉が開かれてセシリオさんが顔を出す。

「悪いが、ここから先は徒歩で歩いてもらう。このオーチャッカの森には、モンスターもいるからな。馬車では進めないんだ」

 馬車から降りるように促され、俺たちは馬車から出た。

「ほら、これが地図だ」

 セシリオさんからこの森の地図を渡され、目を通す。

 この森は全部で八番エリアになっているのか。そして森の出口は八番エリアだ。最短で行こうとするなら、二番を通って四番の洞窟を抜け、八番の出口を目指すのが最短となる。

 だけど、四番エリアにはバッテンが付いているな。これは通行できないって意味なのだろうか?

「セシリオさん、このバツ印は何ですか? 通行できないって意味なら遠回りをする必要がありますよね?」

「ああ、そのことだな。別に通行できないわけではないさ。そこにはちょっとしたモンスターが巣を作っている。だから危険なので入るなって意味だ」

 なるほど、そういう意味なのか。どんなモンスターなのか分からないけど、戦闘に発展してしまうことを考えると、時間のロスになってしまう。ここは少し遠回りをしてでも、別のエリアを経由して進んだ方がいいな。

「わかりました。では、遠回りをするルートで行きましょう」

「いや、最短ルートで行く。俺にお前の実力を確かめさせてくれないか?」

「分かりました。では、そのルートで。みんなもそれでいいよな」

 ユリヤたちに尋ねると、彼女たちは頷いた。

「はい。私たちならどんなモンスターでも直ぐに討伐できるので、そんなに時間はかからないかと思います」

「そうね。あたしとリュシアンピグレットがいるのだもの。どんなモンスターが相手でも、二人のコンビネーションで討伐してあげるわ」

「まだまだわたくしは弱い方ですが、リュシアン王子のために精一杯サポートさせてもらいます」

 俺たちは今いる一番エリアから二番エリアに移動する。二番エリアは一番エリアと変わらず、等間隔で木が並んでいるだけだ。

 小型のモンスターや野生動物の姿も見えたが、俺たちの方から仕掛けない限り、襲ってくる様子がない。

 ムダな戦闘を避けるために、小型モンスターを刺激しないようにしながら先に進む。しばらく歩くと、洞窟の入り口が見えてきた。

 洞窟の前に来ると、中の様子を伺う。四番エリアにつながる細い道には、光を放つクリスタルがあった。そのお陰で松明を用意する必要はなさそう。

 洞窟の中に入り、狭い通路を抜けて四番エリアに辿り着く。

 四番エリアは広い空間になっており、中央には紫の鱗に覆われたオオトカゲが眠っていた。

 ポイズンリザード!

 思わず声が出そうになるところを必死に我慢する。

「ポイズンリザードが、このエリアを縄張りにしているモンスターですか?」

 モンスターを起こさないように、小声でセシリオさんに尋ねる。

「ああ、そうだ。お前からしたら、ある意味因縁のモンスターだろう」

 彼の言葉に無言で頷く。

 確かにある意味では因縁の相手だ。だけど直接恨みを持つポイズンリザードは、セシリオさんが倒してくれた。

 どうやら今は眠っているようだし、起こさないように細心の注意を払えば、戦闘を回避することができるかもしれない。

「セシリオさん。やつが眠っている間にここを通り抜けましょう」

 小声で彼に話しかけたときだ。セシリオさんは懐から投擲用のナイフを取り出すと、ポイズンリザードに向けて投げつけた。

 彼の投げたナイフはオオトカゲに命中し、モンスターが目を覚ます。

『ギャオオオオオオオオオオォォォォォォォン!』

 ポイズンリザードが吠えると、俺たちの方を見る。

「セシリオさん、いったいどうして!」

「さっきも言っただろう。お前の実力を確かめさせてくれと」

 セシリオさんはニヤリと口角を上げる。

 最初から俺とこいつを戦わせるつもりだったのか。でも、今の俺ならこんなやつは倒せる。みんなもいるし、そんなに時間はかからないだろう。

リュシアンピグレット、あたしたちも加勢……きゃ!」

 テレーゼの短い悲鳴が聞こえ、振り返る。するとセシリオさんが背中の大剣を抜き、彼女たちに刃を向けていた。

「お前たちは余計なことをするな。こいつは最終試験だ。リュシアンが本当に昔の俺と同じ領域に達したのかを確かめるためのな。リュシアン、一人でポイズンリザードを倒せ。もし、こいつらの力を借りようとしたり、逃げたりしたらこいつら全員殺すからな」

 セシリオさんの言葉に歯を食い縛る。

 最初から俺のことを信じていなかった。だから本当に強くなったのかを確かめるために、わざわざこの森を選び、因縁の相手であるポイズンリザードと戦わせようとしたのか。

 彼の気持ちはわからなくもない。だけどやりすぎじゃないか。

「さぁ、行け! 俺を失望させるなよ」

 セシリオさんがモンスターを相手にするときの眼差しを送ってくる。

 こうなったら、俺一人でポイズンリザードを倒してやる。

 鞘から太刀を抜き、刃先をモンスターに向ける。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

処理中です...