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第十一章
第十話 アイリス戦
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~テレーゼ視点~
あたしことテレーゼは、ユリヤとエリーザ姫と一緒に七番エリアに向かっていた。
二人は何が起きているのかも理解していないはず。それなのに、何も訊かないで付いて来てくれるのは、彼女たちなりに空気を読んでいるからなのでしょうね。
次第に七番エリアが見えてくる。すると視界に複数の小型の龍が映った。
赤い鱗に覆われた二足歩行の龍、ファランポスね。
あーもう! どうしてモンスターは空気を読んでくれないのよ! これではアイリスと決着を付けるのに邪魔じゃないの!
ここにはリュシアンがいない。もし、彼がここにいたらあたしたちに何て指示を出す?
大切な人の思考を想像して彼になりきる。
きっとリュシアンならこいつらを追い払うように言うはずだわ。
「ユリヤ、エリーザ姫、ファランポスを追い払うわよ! 手を貸して!」
「分かりました!」
「了解いたしましたわ。足元を狙いますわね」
二人に指示を出すと、エリーザ姫が弓を構えて矢を放つ。
彼女の狙いどおりに矢は、ファランポスの足元の地面に突き刺さった。
『グギャー! グギャー』
襲撃を受けたことを知ったモンスターは、あたしたちに顔を向け、両手を広げて威嚇してきた。
そしてこちらに向かって走って来る。
「どうして逃げないのよ! 面倒臭いわね!」
一体が跳躍しながら、あたしに鋭い爪のある腕を振り下ろそうとする。
「ユリヤ、エリーザ姫、耳を塞いで! アー!」
二人に耳を塞ぐように言い、ファランポスの一撃を受けるよりも早く、口を窄めて息を吸う。そして口を大きく開けて痛みを感じる音波を出した。
『グギャー!』
音波の直撃を受けたファランポスは地面に倒れ、痙攣したかのように体をピクピクと動かす。
目の前に倒れている以外のモンスターにも音波が届いたようで、この場にいた全てのファランポスが地面に倒れた。
「あれ? 力みすぎたかしら?」
そう思っていたけど、その心配は杞憂だった。直ぐに起き上がると、ファランポスたちは隣にエリアに一目散に走って行く。
直撃を受けたやつも遅れて正気を取り戻し、逃げてくれた。
「本当に手間を取らせないでよ」
小さく溜息を吐く。するとユリヤとエリーザ姫があたしを見た。
「どうにか撃退することができましたね」
「リュシアン王子が来る前に追い出せて良かったですわ」
どうにかステージの掃除を終わらせることができ、あたしたちはホッとする。
「みんな待たせたな」
リュシアンの声が聞こえ、隣のエリアに繋がる通路に顔を向ける。
短髪の黒髪の青年がこちらに向かって走って来ていた。
「リュシアンさん。良かった。上手く合流することが出来ましたね」
「まぁ、リュシアンならアイリス程度振り切って来ること何て造作もないわね」
「リュシアン王子、これからどうしますの?」
エリーザ姫がリュシアンに訊ねる。
「ここでアイリスを行動不能にさせる。俺に関しては八つ当たりのようなところがあるかもしれないけど、どうしてテレーゼの命を狙うのか問わないといけないからな」
リュシアンが方針を言うと、翼を羽ばたかせる音が聞こえ、上空を見る。
「見つけたわよ。あんな目眩しで見失うとでも思っていたの!」
アイリスに見つかると、彼女は翼を羽ばたかせながらゆっくりと地面に着地する。
きっと直ぐに戦闘に発展する。問い質すチャンスは今しかない。
「ねぇ、アイリス。どうしてあたしやリュシアンの命を狙うのよ。あたしたち、あんなに仲が良かったのに!」
半人半魔の彼女を見つめながら問う。
「仲が良かった? そんな勘違いをしていたの? あれはあなたを利用して一番を取るためにしていたことなのよ。あれは私の演技だっていうのに、まんまと騙されていたなんてね」
アイリスの言葉に耳を疑い、目を大きく見開く。
嘘よ、あの時のアイリスがあたしを騙していたなんて。
「私はお爺様に認められたい! 数百年前に暗黒龍にお仕えしていたサウザーお爺様に!」
「サウザーだって!」
隣でリュシアンが叫ぶ。
サウザーって確か、ピッグコング討伐大会の最後で姿を見せたお爺さん。あの人がアイリスの祖父だって言うの? でも、暗黒龍は数百年前に封印された。その龍に仕えていたってことは、サウザーの正体は。
「私はあなたたちを倒してお爺様に認めてもらう! 特にリュシアンを倒せば絶対に褒めてくれるわ! だから私のために死んで!」
アイリスが口を窄めて息を吸う。そして口を大きく開けると火炎を吐き出した。
「避けろ!」
リュシアンが回避するように指示を出し、あたしはバックステップで後方に下がりながら炎を躱していく。
炎が当たらない安全圏まで避難すると、アイリスを見る。彼女は再び空に舞い上がり、リュシアンを見ていた。そしてもう一度攻撃しようとしているようで、口を窄めている。
今はあたしよりもリュシアンに執着している。なら、このチャンスを生かすべきよ。
「エリーザ姫、そこからアイリスを狙って!」
「分かりましたわ!」
エリーザ姫が弓を構え、矢を放った。彼女の矢はアイリスに当たるが、弾かれてしまう。
半分龍の力があるだけあって硬いわね。
「うるさい蚊がいるわね。だけどそんな攻撃、私には通用しない」
「ええ、別に構わないわよ。あたしの本当の狙いは、あなたにダメージを与えることではないのだから。リュシアン! 今よ」
「ナイス、テレーゼ! こいつを食らえ!」
リュシアンに合図を出した瞬間、この場に強風が吹き荒れる。
そう、あたしの狙いはアイリスの気をこちらに向けさせ、彼が反撃に出るチャンスを作ること。
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!」
強風が吹き荒れる中、アイリスは体勢を維持することができなかったみたいね。バランスを崩して悲鳴を上げながら地面に落下したわ。
彼女が尻餅を突いたと同時に強風が消えた。
「今だ! 全員で捕らえ抑えろ!」
リュシアンが合図を出し、あたしは地を蹴ってアイリスに接近する。ほぼ同じタイミングでユリヤとエリーザ姫も駆け、あたしたちは立ち上がったアイリスに得物を突き付けた。
アイリスは囲まれ、刃を突き付けられている。もう、彼女には勝ち目がない。
「勝負合ったわ。あなたの負けよ」
あたしことテレーゼは、ユリヤとエリーザ姫と一緒に七番エリアに向かっていた。
二人は何が起きているのかも理解していないはず。それなのに、何も訊かないで付いて来てくれるのは、彼女たちなりに空気を読んでいるからなのでしょうね。
次第に七番エリアが見えてくる。すると視界に複数の小型の龍が映った。
赤い鱗に覆われた二足歩行の龍、ファランポスね。
あーもう! どうしてモンスターは空気を読んでくれないのよ! これではアイリスと決着を付けるのに邪魔じゃないの!
ここにはリュシアンがいない。もし、彼がここにいたらあたしたちに何て指示を出す?
大切な人の思考を想像して彼になりきる。
きっとリュシアンならこいつらを追い払うように言うはずだわ。
「ユリヤ、エリーザ姫、ファランポスを追い払うわよ! 手を貸して!」
「分かりました!」
「了解いたしましたわ。足元を狙いますわね」
二人に指示を出すと、エリーザ姫が弓を構えて矢を放つ。
彼女の狙いどおりに矢は、ファランポスの足元の地面に突き刺さった。
『グギャー! グギャー』
襲撃を受けたことを知ったモンスターは、あたしたちに顔を向け、両手を広げて威嚇してきた。
そしてこちらに向かって走って来る。
「どうして逃げないのよ! 面倒臭いわね!」
一体が跳躍しながら、あたしに鋭い爪のある腕を振り下ろそうとする。
「ユリヤ、エリーザ姫、耳を塞いで! アー!」
二人に耳を塞ぐように言い、ファランポスの一撃を受けるよりも早く、口を窄めて息を吸う。そして口を大きく開けて痛みを感じる音波を出した。
『グギャー!』
音波の直撃を受けたファランポスは地面に倒れ、痙攣したかのように体をピクピクと動かす。
目の前に倒れている以外のモンスターにも音波が届いたようで、この場にいた全てのファランポスが地面に倒れた。
「あれ? 力みすぎたかしら?」
そう思っていたけど、その心配は杞憂だった。直ぐに起き上がると、ファランポスたちは隣にエリアに一目散に走って行く。
直撃を受けたやつも遅れて正気を取り戻し、逃げてくれた。
「本当に手間を取らせないでよ」
小さく溜息を吐く。するとユリヤとエリーザ姫があたしを見た。
「どうにか撃退することができましたね」
「リュシアン王子が来る前に追い出せて良かったですわ」
どうにかステージの掃除を終わらせることができ、あたしたちはホッとする。
「みんな待たせたな」
リュシアンの声が聞こえ、隣のエリアに繋がる通路に顔を向ける。
短髪の黒髪の青年がこちらに向かって走って来ていた。
「リュシアンさん。良かった。上手く合流することが出来ましたね」
「まぁ、リュシアンならアイリス程度振り切って来ること何て造作もないわね」
「リュシアン王子、これからどうしますの?」
エリーザ姫がリュシアンに訊ねる。
「ここでアイリスを行動不能にさせる。俺に関しては八つ当たりのようなところがあるかもしれないけど、どうしてテレーゼの命を狙うのか問わないといけないからな」
リュシアンが方針を言うと、翼を羽ばたかせる音が聞こえ、上空を見る。
「見つけたわよ。あんな目眩しで見失うとでも思っていたの!」
アイリスに見つかると、彼女は翼を羽ばたかせながらゆっくりと地面に着地する。
きっと直ぐに戦闘に発展する。問い質すチャンスは今しかない。
「ねぇ、アイリス。どうしてあたしやリュシアンの命を狙うのよ。あたしたち、あんなに仲が良かったのに!」
半人半魔の彼女を見つめながら問う。
「仲が良かった? そんな勘違いをしていたの? あれはあなたを利用して一番を取るためにしていたことなのよ。あれは私の演技だっていうのに、まんまと騙されていたなんてね」
アイリスの言葉に耳を疑い、目を大きく見開く。
嘘よ、あの時のアイリスがあたしを騙していたなんて。
「私はお爺様に認められたい! 数百年前に暗黒龍にお仕えしていたサウザーお爺様に!」
「サウザーだって!」
隣でリュシアンが叫ぶ。
サウザーって確か、ピッグコング討伐大会の最後で姿を見せたお爺さん。あの人がアイリスの祖父だって言うの? でも、暗黒龍は数百年前に封印された。その龍に仕えていたってことは、サウザーの正体は。
「私はあなたたちを倒してお爺様に認めてもらう! 特にリュシアンを倒せば絶対に褒めてくれるわ! だから私のために死んで!」
アイリスが口を窄めて息を吸う。そして口を大きく開けると火炎を吐き出した。
「避けろ!」
リュシアンが回避するように指示を出し、あたしはバックステップで後方に下がりながら炎を躱していく。
炎が当たらない安全圏まで避難すると、アイリスを見る。彼女は再び空に舞い上がり、リュシアンを見ていた。そしてもう一度攻撃しようとしているようで、口を窄めている。
今はあたしよりもリュシアンに執着している。なら、このチャンスを生かすべきよ。
「エリーザ姫、そこからアイリスを狙って!」
「分かりましたわ!」
エリーザ姫が弓を構え、矢を放った。彼女の矢はアイリスに当たるが、弾かれてしまう。
半分龍の力があるだけあって硬いわね。
「うるさい蚊がいるわね。だけどそんな攻撃、私には通用しない」
「ええ、別に構わないわよ。あたしの本当の狙いは、あなたにダメージを与えることではないのだから。リュシアン! 今よ」
「ナイス、テレーゼ! こいつを食らえ!」
リュシアンに合図を出した瞬間、この場に強風が吹き荒れる。
そう、あたしの狙いはアイリスの気をこちらに向けさせ、彼が反撃に出るチャンスを作ること。
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!」
強風が吹き荒れる中、アイリスは体勢を維持することができなかったみたいね。バランスを崩して悲鳴を上げながら地面に落下したわ。
彼女が尻餅を突いたと同時に強風が消えた。
「今だ! 全員で捕らえ抑えろ!」
リュシアンが合図を出し、あたしは地を蹴ってアイリスに接近する。ほぼ同じタイミングでユリヤとエリーザ姫も駆け、あたしたちは立ち上がったアイリスに得物を突き付けた。
アイリスは囲まれ、刃を突き付けられている。もう、彼女には勝ち目がない。
「勝負合ったわ。あなたの負けよ」
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