ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十章

第十五話 や、やめろ!謝るから命だけは助けてくれ!

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~ステルヴィオ視点~



 僕ことステルヴィオは、内心穏やかではなかった。

 サウザーとか言うジジイからモンスターを操るリングをもらい、ベッキーのキメーラを操ったが、思いどおりにならない。

 キメーラはリングのお陰で再生能力を得ているが、それでもリュシアン一人にボコボコにされている。しかも切り札であった毒の息ですら、逆に利用して僕を苦しめやがった。

 本当にムカつくやつだ。一刻も早くあの男を倒さないと、僕に明るい未来は訪れない。

 どうする? どうする? 何か方法を考えるんだ。

 必死になって思考を巡らせるも、焦れば焦るほど良いアイディアが思いつかない。

 くそう! 何かいい方法はないのか!

 考えていると、視界の端のヴィクトーリアの姿が見えた。その瞬間、この状況をどうにかする方法を思い付く。

 さすが僕だ。こんな土壇場になって逆転の策を思い付くなんて。

「キメーラ! ヴィクトーリアを捕まえろ!」

 モンスターに指示を出すと、キメーラは尻尾の蛇を使ってヴィクトーリアに襲い掛かる。

「ヴィクトーリアお嬢様!」

 リュシアンが元婚約者を庇おうとするも、距離が空いている。絶対に間に合わない。

「きゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 狙いどおり、蛇はヴィクトーリアの体に巻き付いて持ち上げる。そしてこちらに持って来るとリュシアンに見せ付けた。

「それ以上の抵抗は止めろ! 一歩でも動いたらこの女を殺す」

 人質を手に入れた瞬間、リュシアンは僕を睨み付けて来た。

「何だよその目付きは! まだ状況が分かっていない様だな! やれ!」

「あ、あああああああああ!」

 キメーラに命じると、尻尾の蛇がヴィクトーリアを更に締め付ける。その瞬間、彼女は苦悶の表情で悲鳴を上げた。

「もう止めてキメちゃん! どうしてこの男の指示に従うのよ! あなたはこんな酷いことをせずに、一思いに息の根を止めるじゃない!」

 ベッキーがキメーラに語りかけるがムダだ。首のリングがある限り、僕の制御化に置かれるのだからな。

「今から毒の息をもう一度吐かせるが、また風で跳ね返すなよ。跳ね返せば、この女も猛毒にかかって死ぬ!」

 僕の言葉に、リュシアンは顔を俯かせる。

 表情は見えないが、きっと悔しがっているだろう。本当にざまぁだ! 全て形勢逆転! きっとこの困難も、神が幸せを得るために与えた試練だったのだろう。

「さぁ、死ね! もがき苦しんで苦痛に顔を歪める姿を僕に見せろ!」

 叫んだ瞬間、ヤギと蛇の首が吹っ飛んだ。一瞬何が起きたのかが分からず、頭の中が真っ白になる。

「え?」

 何が起きたのかが分からず呆然としていた僕は、しばらくして我に返った。そしてヴィクトーリアがリュシアンのところに居ることに気付く。

「何が起きた! どうしてこうなってしまううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 思わず絶叫する。

「俺が顔を俯かせたことで勘違いしたか? あれはお前を油断させるための演技だ。お陰で隙が生じてヤギと蛇を同時に攻撃することができ、ヴィクトーリアお嬢様を救出することができた」

 何を言っているんだよ。あの一瞬で二体の首を吹っ飛ばしただと? 普通の芸当ではできっこない。

「その顔はどうして二つの首が吹っ飛んだのか理解できていないようだな。教えてあげよう。なぁに簡単なことだ。風の属性玉の力を使って真空を生み出し、カマイタチを発生させて首を切断しただけだ」

 カマイタチだと! ふざけるんじゃない。いくら風の属性玉を使ったところで、カマイタチを発生させることは不可能のはず。いったい何なんだよ、あの武器は!

 困惑と驚きが隠せない中、キメーラの再生が始まって行く。

 そうだ。まだ終わっていない。キメーラの首に嵌めているリングがある限り、こいつは無限に再生し続ける。

「キメちゃん、そのリングはどうしたの? 檻の中にいたときは、そんなもの身に付けていなかったでしょう?」

 ベッキーの言葉に、ハッとする。すぐにキメーラの首を見ると、モフモフの毛が刈り上げられてリングが丸見えだった。

 まずい! 気付かれた!

「はぁ? こんなもの最初からあっただろうが? 何勘違いしているんだ?」

 平静を装いながら嘘を吐くも、心臓はバクバクだった。

 頼む! 気にしないでくれ!

「それが全ての元凶か!」

 心の叫びは神には届かなかった。リュシアンがこちらに接近して来る。

「来るな!」

 少しでも遠ざけようとして前足で叩かせるも、リュシアンは横に跳んで回避する。

「来るな、来るな、来るなあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 とうとう声に出して叫ぶ。だが、僕の願いは虚しくも届かず、リュシアンが跳躍して首の位置に到達した。そして奴が太刀を振り下ろし、物が砕ける音が耳に入る。

 嘘だろう! どうしてこうなってしまう。

 リングが砕けたようで、キメーラが急に体を振り出した。まるで背中に乗ったノミを払うかのように。

 必死になってキメーラの毛にしがみつこうとしたが、手汗のせいで滑ってしまい、床に落ちてしまう。

「いてて……ぎゃあ!」

 床に落ちた瞬間、僕はキメーラに踏み潰されてしまった。どうにかして脱出しようとするも、逃げられそうにない。

 くそう! くそう! くそう!

 心の中で悔しがっていると、リュシアンたちがやって来る。

「なぁ、ヴィクトーリア。助けてくれ。ほんの気の迷いだったんだ。いや、そもそもモニカだ。全てあの女が悪い! あの女狐が僕を誘惑しやがったんだ! 寧ろ僕は被害者だ! 本当は君を愛している!」

 必死になって嘘を語る。このままでは確実に僕は殺される。少しでも生存の可能性があれば、どんな手でも使ってやるさ。

「そうですか。モニカがあなたを誘惑したのですの。それは災難でしたわね」

 ヴィクトーリアは慈愛の表情を見せる。
よし、この女はまだ僕に心残りがあるようだ。その隙を突かせてもらう。

「なんて言うと思っていますの! あなた、ワタクシに何度も死ねと言いましたよね! そして心からの言葉であるかの様に、女の価値は胸だと! そんな男のクズを助けようとは思わないですわ!」

 ヴィクトーリアの言葉に鼓動が激しくなる。きっと僕の顔色は悪くなっているはず。

「た、頼む。助けてくれ」

「リュシアンちゃんどうする? アタシは仲間を殺されたから許す気がないのだけど?」

「仮に俺が助けるに一票投じたところで、多数決で負ける」

 リュシアンが僕を見る。

「悪いが、ヴィクトーリアを攫った時点で、お前の運命は決まっていた。恨むのなら、私利私欲のために人としての道を踏み外した自分自身を恨め」

「と言う訳で、キメちゃん。美味しくないかもしれないけど、こいつを食べて良いわよ」

 ベッキーがキメーラに指示を出した瞬間、モンスターは僕を空中に放り投げる。

 僕の視界に入ったのは、大きな口を開けているキメーラだった。

「嫌だああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 死にたくないいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 
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