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第十章
第十話 姉妹格差からの婚約破棄
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~ヴィクトーリア視点~
「いやああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
わたくしことヴィクトーリアは、体を刃物で刺されたボブを見て、悲鳴を上げました。
「警戒もしないで不用意に扉を開けるとはバカなやつだぜ」
血だらけのボブの体が馬車の外に引き摺り下ろされ、代わりに見知らぬ男が入ってきます。
身に付けている服はボロボロで、無精髭が伸びて少し体臭がキツイ男です。どう見ても野盗にしか見えませんわ。
「ぐへへ、ターゲットを発見だぜ」
野盗の男がわたくしに手を伸ばしてきます。
このまま野盗なんかに捕まるわけにはいきません。
護身用に隠していた鞭を取り出し、男の手を打ち払いました。
「いって!」
「近付かないでください。一ミリでも近づいたらもう一度食らわせますわよ」
「このアマ! 調子に乗りやがって」
警告を無視して野盗の男が再び腕を伸ばしてきたので、もう一度鞭を放ちます。
「グハッ」
放った鞭が男の顔面に当たり、彼は体を仰け反らせました。
今ですわ!
馬車から出ようと、体勢を崩している男に蹴りを入れました。
ロングスカートを履いていたこともあり、高く足を上げることができず、ヒールの靴は男の股間に当たりました。
大事な部分を蹴られた男は、顔を顰めて涙を流しながら無言で馬車から落ちました。
今ならこの馬車から脱出することができそうですわ。
直ぐに馬車から飛び出し、現状を瞬時に確認します。
「チッ、女一人引き摺り出すだけなのに、返り討ちに合うとかダサすぎだろう」
「なぁに、あの男は俺たちの中でも最弱だ。今度は俺たちが捕まえてやる」
「それにしてもいい女だなぁ。依頼を無視して食いたくなってくるぜ」
野盗と思われる男たちがざっと見ても十人はいますわね。
「お……嬢様……お逃げ……く…………さい」
「ボブ! あなたまだ息がありますのね」
ボブが生きてくれていてなによりです。一刻も早く、この男たちを蹴散らしてボブを医者に見せなくては。
幸いにも町からまだそんなに離れてはいませんわ。直ぐにこいつらを追い払って、町に戻れば間に合うはずです。
「さぁ、来るなら来なさい! このヴィクトーリア・イグナイチェフが相手になってあげますわ!」
「威勢のいい嬢ちゃんだ!」
「その言葉後悔させてやる!」
「グヘヘ、どさくさに紛れて乳を揉んでやる!」
野盗たちが一斉に襲い掛かってきます。ですが、鞭は多人数にも有効な武器です。
鞭を横に振ると、襲い掛かってきた三人に当たりました。奴らは吹っ飛び、地面に転がります。
「これで三人」
「隙あり!」
「え!」
突然背後から男の声が聞こえ、わたくしの脇の間に男の腕が入ると、身動きが取れなくなりました。
「さっきはよくも俺のムスコを虐めてくれたな」
この男、馬車に乗り込んで来たやつですわ。さっきまで地面に倒れていたのに、もう回復しましたの!
「これでは自慢の鞭もまともに振れないよな。さて、どうする?」
油断してしまいました。とにかく考えるのです。何か必ず方法があるはずですわ。
「グヘヘ、ナイス! そのままそいつを抑えておけよ。俺の体を傷付けたお礼をたっぷりとしてやるからよ。さて、乳首の位置はどこかな?」
倒れていた男の一人が起き上がり、両手の人差し指を回しながら近付いてきます。
どうにかして逃げようと体を動かしますが、拘束している男の腕力が強く、身動きが取れません。
わたくしはこのままこいつらに穢されるのでしようか。こうなるのでしたら、変な意地を張っていないで、あの人を護衛につけていれば良かったです。
「さあて、乳首の位置はどこかな? この辺かな? それともここか?」
男の指が近づき、わたくしは目を瞑りました。
助けて……リュシアン。
「およしなさいよ。女の体で遊んで何が面白いのかしら?」
「お頭!」
聞き覚えのない声が聞こえ、閉じていた瞼を開きました。わたくしの視界には、人差し指を突き出していた男と、化粧をしている男の人が写っています。
「あの人との契約はこの女を捕らえることよ。それ以外をしたらダーメ! そんなに乳首当てゲームがしたいのならアタシがしてあげるわ」
化粧をした男が、乳首当てゲームをしようとした男の胸を、人差し指で差しました。
「あうっ!」
見事に命中したのか、男は気持ち悪い声を上げて地面に倒れます。
「ごめんなさいねぇ、アタシの部下がおいたしちゃって。怖らがせたことは謝るわ。だ・か・ら! 眠ってちょうだい」
化粧をしている男がわたくしの口に布のようなものを押し当てました。その瞬間、堪えられないほどの眠気に襲われ、視界がぼやけだします。
「さぁ、アジトに引き上げるわよ! この娘に手を出したら、今晩あなたたちのお尻の処女を散らすことになると思いなさい!」
「は……はい! すみませんでした!」
薄れる意識の中で、野盗たちの震える声が聞こえてきました。
「ここは……いったいどこなのでしょう?」
目が覚めたわたくしは、周囲を見渡します。
どうやら牢屋のようなところに閉じ込められたみたいです。鉄格子に阻まれ、逃げ出すことができそうにありません。
「わたくし、これからどうなるのでしょう」
あのまま連れ去られたとしたら、ボブは自力で町に帰ることはできないはずです。
「ごめんなさい。ボブ」
仕えてくれていた者に謝ると、足音が聞こえて来ました。
「誰!」
「グッドモーニング! どうやら目が覚めたようね。良かったわ。ごめんなさいねぇ、こんなところに閉じ込めてしまって」
現れたのは化粧をした男です。確か頭と呼ばれていましたわね。
わたくしは野盗の頭を睨み付けます。
「そんなに怖い顔をして睨まないでよ。女の子は笑顔が一番輝くのよ。このアタシみたいに!」
化粧の男が笑みを浮かべますが、見た目が男だけあって背筋に寒気を感じました。
「そんな引き攣った顔をしないでちょうだい。確かに体は男だけど、心は乙女なのよ。いくらアタシでも傷付くわ……とまぁ、ガールズトークはこの辺にして、あなたに会わせたい人がいるのよ。ステちゅわーん! もう来ていいわ!」
化粧の男がある人物をあだ名で呼ぶと、呼ばれた人物が牢の前に来ました。
緑色の髪が肩まである優男です。わたくしはこの男を知っています。何せわたくしの婚約者なのですから。
「ステルヴィオ!」
わたくしは彼の名を呼びます。
彼が助けに来てくれた。そう思い、一瞬だけ安心してしまいましたが、直ぐに疑問が浮上してきました。
どうしてステルヴィオと盗賊の頭が一緒にいますの? わたくしを助けに来てくれたのなら、二人がいるのは不自然ですわ。
「久しぶりだな。ヴィクトーリア。実は君に言いたいことがある。君との婚約の件はなかったことにしてもらいたい」
「え?」
婚約者の言葉に驚き、一瞬言葉が出なくなります。
「実は僕、とある女性に一目惚れをしたんだ。モニカ。こっちに来てくれ」
ステルヴィオが呼ぶと、一人の女性がやって来ました。その人を見て、わたくしは自身の目を疑います。
ピンク色のロングの髪に緑の瞳を持つ女性は、昔わたくしの屋敷で働いていたこともある元メイドでした。
婚約者は彼女を抱き寄せ、わたくしに見せつけるかのように目の前でキスを始めます。
「僕はこのモニカと結婚する。イグナイチェフ家の財産を狙って婚約者になったけど、彼女を見て気持ちが変わった。モニカはお前と違って大人の色気があって胸もでかい。女としていい体をしている」
「ステちゃん、あんまりそんなことは言わないほうがいいわよ。乙女は胸のサイズを気にするものなのだから」
「ハハハ! 男の体であるお前が言うと説得力があるな! まぁいい。そんな訳で、元婚約者である君がいると色々と面倒なんだ。だから僕の幸せのために死んでくれない? いや死ねよ! 死ぬべきだ! アーハハハハ! それじゃ失礼するよ。この後モニカとたくさんイチャイチャする予定があるのでね!」
高笑いを浮かべてステルヴィオが離れて行きます。
「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
足音が聞こえなくなると、わたくしは心の中で渦巻いている様々な感情が爆発して声を上げました。
「いやああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
わたくしことヴィクトーリアは、体を刃物で刺されたボブを見て、悲鳴を上げました。
「警戒もしないで不用意に扉を開けるとはバカなやつだぜ」
血だらけのボブの体が馬車の外に引き摺り下ろされ、代わりに見知らぬ男が入ってきます。
身に付けている服はボロボロで、無精髭が伸びて少し体臭がキツイ男です。どう見ても野盗にしか見えませんわ。
「ぐへへ、ターゲットを発見だぜ」
野盗の男がわたくしに手を伸ばしてきます。
このまま野盗なんかに捕まるわけにはいきません。
護身用に隠していた鞭を取り出し、男の手を打ち払いました。
「いって!」
「近付かないでください。一ミリでも近づいたらもう一度食らわせますわよ」
「このアマ! 調子に乗りやがって」
警告を無視して野盗の男が再び腕を伸ばしてきたので、もう一度鞭を放ちます。
「グハッ」
放った鞭が男の顔面に当たり、彼は体を仰け反らせました。
今ですわ!
馬車から出ようと、体勢を崩している男に蹴りを入れました。
ロングスカートを履いていたこともあり、高く足を上げることができず、ヒールの靴は男の股間に当たりました。
大事な部分を蹴られた男は、顔を顰めて涙を流しながら無言で馬車から落ちました。
今ならこの馬車から脱出することができそうですわ。
直ぐに馬車から飛び出し、現状を瞬時に確認します。
「チッ、女一人引き摺り出すだけなのに、返り討ちに合うとかダサすぎだろう」
「なぁに、あの男は俺たちの中でも最弱だ。今度は俺たちが捕まえてやる」
「それにしてもいい女だなぁ。依頼を無視して食いたくなってくるぜ」
野盗と思われる男たちがざっと見ても十人はいますわね。
「お……嬢様……お逃げ……く…………さい」
「ボブ! あなたまだ息がありますのね」
ボブが生きてくれていてなによりです。一刻も早く、この男たちを蹴散らしてボブを医者に見せなくては。
幸いにも町からまだそんなに離れてはいませんわ。直ぐにこいつらを追い払って、町に戻れば間に合うはずです。
「さぁ、来るなら来なさい! このヴィクトーリア・イグナイチェフが相手になってあげますわ!」
「威勢のいい嬢ちゃんだ!」
「その言葉後悔させてやる!」
「グヘヘ、どさくさに紛れて乳を揉んでやる!」
野盗たちが一斉に襲い掛かってきます。ですが、鞭は多人数にも有効な武器です。
鞭を横に振ると、襲い掛かってきた三人に当たりました。奴らは吹っ飛び、地面に転がります。
「これで三人」
「隙あり!」
「え!」
突然背後から男の声が聞こえ、わたくしの脇の間に男の腕が入ると、身動きが取れなくなりました。
「さっきはよくも俺のムスコを虐めてくれたな」
この男、馬車に乗り込んで来たやつですわ。さっきまで地面に倒れていたのに、もう回復しましたの!
「これでは自慢の鞭もまともに振れないよな。さて、どうする?」
油断してしまいました。とにかく考えるのです。何か必ず方法があるはずですわ。
「グヘヘ、ナイス! そのままそいつを抑えておけよ。俺の体を傷付けたお礼をたっぷりとしてやるからよ。さて、乳首の位置はどこかな?」
倒れていた男の一人が起き上がり、両手の人差し指を回しながら近付いてきます。
どうにかして逃げようと体を動かしますが、拘束している男の腕力が強く、身動きが取れません。
わたくしはこのままこいつらに穢されるのでしようか。こうなるのでしたら、変な意地を張っていないで、あの人を護衛につけていれば良かったです。
「さあて、乳首の位置はどこかな? この辺かな? それともここか?」
男の指が近づき、わたくしは目を瞑りました。
助けて……リュシアン。
「およしなさいよ。女の体で遊んで何が面白いのかしら?」
「お頭!」
聞き覚えのない声が聞こえ、閉じていた瞼を開きました。わたくしの視界には、人差し指を突き出していた男と、化粧をしている男の人が写っています。
「あの人との契約はこの女を捕らえることよ。それ以外をしたらダーメ! そんなに乳首当てゲームがしたいのならアタシがしてあげるわ」
化粧をした男が、乳首当てゲームをしようとした男の胸を、人差し指で差しました。
「あうっ!」
見事に命中したのか、男は気持ち悪い声を上げて地面に倒れます。
「ごめんなさいねぇ、アタシの部下がおいたしちゃって。怖らがせたことは謝るわ。だ・か・ら! 眠ってちょうだい」
化粧をしている男がわたくしの口に布のようなものを押し当てました。その瞬間、堪えられないほどの眠気に襲われ、視界がぼやけだします。
「さぁ、アジトに引き上げるわよ! この娘に手を出したら、今晩あなたたちのお尻の処女を散らすことになると思いなさい!」
「は……はい! すみませんでした!」
薄れる意識の中で、野盗たちの震える声が聞こえてきました。
「ここは……いったいどこなのでしょう?」
目が覚めたわたくしは、周囲を見渡します。
どうやら牢屋のようなところに閉じ込められたみたいです。鉄格子に阻まれ、逃げ出すことができそうにありません。
「わたくし、これからどうなるのでしょう」
あのまま連れ去られたとしたら、ボブは自力で町に帰ることはできないはずです。
「ごめんなさい。ボブ」
仕えてくれていた者に謝ると、足音が聞こえて来ました。
「誰!」
「グッドモーニング! どうやら目が覚めたようね。良かったわ。ごめんなさいねぇ、こんなところに閉じ込めてしまって」
現れたのは化粧をした男です。確か頭と呼ばれていましたわね。
わたくしは野盗の頭を睨み付けます。
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どうしてステルヴィオと盗賊の頭が一緒にいますの? わたくしを助けに来てくれたのなら、二人がいるのは不自然ですわ。
「久しぶりだな。ヴィクトーリア。実は君に言いたいことがある。君との婚約の件はなかったことにしてもらいたい」
「え?」
婚約者の言葉に驚き、一瞬言葉が出なくなります。
「実は僕、とある女性に一目惚れをしたんだ。モニカ。こっちに来てくれ」
ステルヴィオが呼ぶと、一人の女性がやって来ました。その人を見て、わたくしは自身の目を疑います。
ピンク色のロングの髪に緑の瞳を持つ女性は、昔わたくしの屋敷で働いていたこともある元メイドでした。
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「僕はこのモニカと結婚する。イグナイチェフ家の財産を狙って婚約者になったけど、彼女を見て気持ちが変わった。モニカはお前と違って大人の色気があって胸もでかい。女としていい体をしている」
「ステちゃん、あんまりそんなことは言わないほうがいいわよ。乙女は胸のサイズを気にするものなのだから」
「ハハハ! 男の体であるお前が言うと説得力があるな! まぁいい。そんな訳で、元婚約者である君がいると色々と面倒なんだ。だから僕の幸せのために死んでくれない? いや死ねよ! 死ぬべきだ! アーハハハハ! それじゃ失礼するよ。この後モニカとたくさんイチャイチャする予定があるのでね!」
高笑いを浮かべてステルヴィオが離れて行きます。
「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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