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第十章
第四話 隠されたたくさんの罠
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~ユリヤ視点~
時は勝負が始まる数秒前に遡ります。
「はい負けません!」
私ことユリヤは、声を上げて負けないことを姉に宣言しました。
「ではスタートですわ!」
姉が勝負開始の合図を出し、彼女は駆け出して私から遠ざかって行きます。
そんな中、私は数日前にリュシアンさんが言っていたことを思い出します。
「まずは落ち着いて地図を見ることが大事でしたよね」
地図を開いて森のマップを確認します。
イグナイチェフの森は、入り口の一番エリアから入ってその上が二番、そして反時計回りに三番、四番、そして二股の道があって、中央が五番、四番を真っ直ぐ行って、六番、七番、八番エリアとなっていますね。地図を見る感じでは、二番と八番は繋がっていてもおかしくはないのですが?
「とにかく二番エリアに行って見ましょうか」
一番エリアを抜けて二番エリアに向かうと、道が左右に分かれていました。
地図だと右に進めば三番エリア、左に進めば八番エリアと言った感じでしょうか?
二番と八番エリアの境目が気になるので、まずはそっちから調べましょう。
左の道を歩き、二番エリアと八番エリアの境目だと思われる場所に辿り着くと、二つのエリアがつながっていないことに納得しました。
崖崩れが起き、ここからでは八番エリアに行くことができません。
「八番エリアに行こうとしたら、かなり遠回りをする必要がありますね。先に調べておいて正解でした」
周辺には獣の気配がしないので、三番エリアに向かうとしましょう。
『ガァー、ガァー、ガァー』
そう思った時、上空から鳥の鳴き声が聞こえて顔を上げます。
上空には漆黒の羽毛に包まれた鳥が飛行していました。
「あの鳥はガーラース!」
あの鳥は基本的には無害ですが、ゴミを荒らすなどして時々迷惑になる鳥です。早速退治してポイント獲得といきましょう。
ポーチから投げナイフを取り出して構えた時です。
あれ? そう言えば、ガーラースって何ポイント貰えるの?
討伐ポイントが分からず、困惑している中、私は姉の言葉を思い出します。
『勝負方法はイグナイチェフ家に伝わる伝統の狩りですわ。場所は我が家が管理する森で行います。獣を狩るのもよし、鳥を狩るのもよしです』
確かに姉は狩りで勝負と言い、獣でも鳥でも狩っていいと言いました。ですが、どの動物が何ポイント獲得できるのか、それに関して詳細なことは何一つとして言っていません。
ですが、明確に言っていたことが一つだけあります。
『実はあの森には、最近ジャッキーと言う小型のモンスターが徘徊しているのを、ボブが目撃しておりますの。もし、そいつを狩ることができましたら、その人が無条件で勝利と言うことでよろしいですわね』
つまり、姉は最初からジャッキーを倒した者が勝利と決めていたのです。
危うくミスリードに騙されて、無駄な摂政をするところでした。
「姉が一歩リードしているはず。早くジャッキーを探さないと」
ジャッキーの生態は確か、睡眠と食事のとき以外は常に動き回って、ジッとしていないことでしたよね。
先に二番エリアの奥に来たことは幸運でした。このまま順番でエリアを探せば、ジャッキーを見つけることができるはずです。
周辺にモンスターの気配がないか気をつけながらエリアを移動し、三番エリアに向かいます。
三番エリアは小川があり、太陽光に反射して水面がキラキラと輝いていました。森に住む鹿が水を飲んでいますが、ジャッキーはいません。
「三番エリアにもいませんね。次は四番エリアです」
足早に三番エリアを抜け、四番エリアに来ました。四番エリアは山道に沿って木が並んでいるだけの一本道です。
ですが、人が三人並んで歩けるほどの幅があるので、小型モンスターとの戦闘くらいはできそうですね。
一応警戒しておきましょう。
周辺を気にしながらエリア内を歩いていると、六番エリアから二足歩行の小型龍が現れ、私の方に駆けて来ました。
「ジャッキー!」
腰に差していた二本の短剣を取り、構えていつでも攻撃できる体勢に入ります。
まずはリュシアンさんがいつもしているみたいに、モンスタの観察をするところからです。
小型龍が接近すると、蛇のような目が血走っており、呼吸も荒い状態でした。
憤怒状態になっている! もしかして姉が先に攻撃を仕掛けたの?
そう思っていたのですが、モンスターの体には外傷がありません。なのに、どうして怒っているの?
疑問が拭えないまま、ジャッキーは私に近づき、鋭利な爪がある両手を振り上げます。
この動作はそのまま腕を振り下ろして爪で切り裂いてくる。
モンスターの行動パターンを読んだ私は、後方に跳躍してモンスターの攻撃を躱します。そしてそのままバックステップの要領で後方に下がりました。
憤怒状態になっているモンスターは、とにかく凶暴で受けた時のダメージも半端ない。
ここはヒットアンドアウェイで、隙が生じたときに攻撃するに限りますね。
私はひたすらモンスターの攻撃を避け続け、攻撃をした際に生じた隙を突いて短剣で斬りかかろうとします。ですが、リーチが短い短剣では当てる前に避けられてしまいます。
憤怒状態になっているから、いつも以上に動きが機敏になっている。ここは怒りが収まるまでまった方が良さそう。
ひたすらモンスターの攻撃を避け続け、時が来るのを待ちます。ですが、いくら待ってもジャッキーの怒りが収まることはありませんでした。
これはおかしい。いくらなんでも憤怒状態の時間が長すぎます。
「ついに見つけましたわ! ボブ! やっておしまい!」
「了解しました。お嬢様」
え? どうしてボブさんがここにいるの? これは私と姉の勝負なんじゃ。
一瞬疑問に思ってしまいましたが、よくよく考えれば納得です。確かに姉は『ジャッキーを倒した人が無条件で勝利』と言っていました。
今考えれば、あの言葉はどう考えてもおかしいです。普通なら『私かユリヤがジャッキーを倒したらその時点で勝者になります』と言うはずです。
あの『倒した人』には私や姉以外にも含まれていたのです。
こんなことをしてまで勝とうとする人には、絶対に負けられません。あのモンスターを倒すのは私です。
『グギャー! グギャー!』
二人が現れた瞬間、ジャッキーは声を上げると体を翻して五番エリアの方に走って行きます。
「待て!」
「待つのですわ!」
逃げ出すモンスターを追いかけようと、二人は駆け出しました。その瞬間、急に地面が沈み、二人は地面の中に落ちてしまいました。
「しまった! 俺としたことがここに罠を仕掛けていることを忘れていた」
「おバカ! 早く抜け出しますわよ!」
どうやら自分たちが用意した罠に引っかかってしまったようですね。自業自得です。
それにしてもどうしよう。穴が大きくって、私の跳躍力ではギリギリ届きそうにないよ。
何か向こう側に渡る方法を見つけないと。
周辺に使えそうなものがないか調べると、落とし穴を登っているボブさんの頭が視界に入ります。
こうなったら一か八かです。ボブさんには悪いけど、落とし穴を作った責任を取ってもらいます。
「えい!」
落とし穴から離れて助走を付けて走り、力一杯跳びます。
予想したとおり届かない。でも、ボブさんの頭を踏み台にすれば届く。
男の頭に足が付いた瞬間、思いっきり跳びます。
ツルツルの頭で滑るリスクも考えましたが、直ぐに跳躍したので問題なく反対側に辿り着くことができました。
「グハッ!」
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
頭を蹴り飛ばされたことでバランスを崩したようで、背負っていた姉もろともボブさんは再び落とし穴の中に落下しました。
謝りませんよ。だって罠を仕掛けたのはあなたたちなんですから。
私は急ぎ五番エリアに向かいます。五番エリアは翼のないモンスターに取っては逃げ場がないエリアです。ここで仕留めさせてもらいます。
『グギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!』
私を見たジャッキーがもう一度口を大きく開けて吠えました。
その時、あの子の口の奥に黒い物体のようなものが見えます。
もしかしてジャッキーの喉に何かが詰まっているの?
時は勝負が始まる数秒前に遡ります。
「はい負けません!」
私ことユリヤは、声を上げて負けないことを姉に宣言しました。
「ではスタートですわ!」
姉が勝負開始の合図を出し、彼女は駆け出して私から遠ざかって行きます。
そんな中、私は数日前にリュシアンさんが言っていたことを思い出します。
「まずは落ち着いて地図を見ることが大事でしたよね」
地図を開いて森のマップを確認します。
イグナイチェフの森は、入り口の一番エリアから入ってその上が二番、そして反時計回りに三番、四番、そして二股の道があって、中央が五番、四番を真っ直ぐ行って、六番、七番、八番エリアとなっていますね。地図を見る感じでは、二番と八番は繋がっていてもおかしくはないのですが?
「とにかく二番エリアに行って見ましょうか」
一番エリアを抜けて二番エリアに向かうと、道が左右に分かれていました。
地図だと右に進めば三番エリア、左に進めば八番エリアと言った感じでしょうか?
二番と八番エリアの境目が気になるので、まずはそっちから調べましょう。
左の道を歩き、二番エリアと八番エリアの境目だと思われる場所に辿り着くと、二つのエリアがつながっていないことに納得しました。
崖崩れが起き、ここからでは八番エリアに行くことができません。
「八番エリアに行こうとしたら、かなり遠回りをする必要がありますね。先に調べておいて正解でした」
周辺には獣の気配がしないので、三番エリアに向かうとしましょう。
『ガァー、ガァー、ガァー』
そう思った時、上空から鳥の鳴き声が聞こえて顔を上げます。
上空には漆黒の羽毛に包まれた鳥が飛行していました。
「あの鳥はガーラース!」
あの鳥は基本的には無害ですが、ゴミを荒らすなどして時々迷惑になる鳥です。早速退治してポイント獲得といきましょう。
ポーチから投げナイフを取り出して構えた時です。
あれ? そう言えば、ガーラースって何ポイント貰えるの?
討伐ポイントが分からず、困惑している中、私は姉の言葉を思い出します。
『勝負方法はイグナイチェフ家に伝わる伝統の狩りですわ。場所は我が家が管理する森で行います。獣を狩るのもよし、鳥を狩るのもよしです』
確かに姉は狩りで勝負と言い、獣でも鳥でも狩っていいと言いました。ですが、どの動物が何ポイント獲得できるのか、それに関して詳細なことは何一つとして言っていません。
ですが、明確に言っていたことが一つだけあります。
『実はあの森には、最近ジャッキーと言う小型のモンスターが徘徊しているのを、ボブが目撃しておりますの。もし、そいつを狩ることができましたら、その人が無条件で勝利と言うことでよろしいですわね』
つまり、姉は最初からジャッキーを倒した者が勝利と決めていたのです。
危うくミスリードに騙されて、無駄な摂政をするところでした。
「姉が一歩リードしているはず。早くジャッキーを探さないと」
ジャッキーの生態は確か、睡眠と食事のとき以外は常に動き回って、ジッとしていないことでしたよね。
先に二番エリアの奥に来たことは幸運でした。このまま順番でエリアを探せば、ジャッキーを見つけることができるはずです。
周辺にモンスターの気配がないか気をつけながらエリアを移動し、三番エリアに向かいます。
三番エリアは小川があり、太陽光に反射して水面がキラキラと輝いていました。森に住む鹿が水を飲んでいますが、ジャッキーはいません。
「三番エリアにもいませんね。次は四番エリアです」
足早に三番エリアを抜け、四番エリアに来ました。四番エリアは山道に沿って木が並んでいるだけの一本道です。
ですが、人が三人並んで歩けるほどの幅があるので、小型モンスターとの戦闘くらいはできそうですね。
一応警戒しておきましょう。
周辺を気にしながらエリア内を歩いていると、六番エリアから二足歩行の小型龍が現れ、私の方に駆けて来ました。
「ジャッキー!」
腰に差していた二本の短剣を取り、構えていつでも攻撃できる体勢に入ります。
まずはリュシアンさんがいつもしているみたいに、モンスタの観察をするところからです。
小型龍が接近すると、蛇のような目が血走っており、呼吸も荒い状態でした。
憤怒状態になっている! もしかして姉が先に攻撃を仕掛けたの?
そう思っていたのですが、モンスターの体には外傷がありません。なのに、どうして怒っているの?
疑問が拭えないまま、ジャッキーは私に近づき、鋭利な爪がある両手を振り上げます。
この動作はそのまま腕を振り下ろして爪で切り裂いてくる。
モンスターの行動パターンを読んだ私は、後方に跳躍してモンスターの攻撃を躱します。そしてそのままバックステップの要領で後方に下がりました。
憤怒状態になっているモンスターは、とにかく凶暴で受けた時のダメージも半端ない。
ここはヒットアンドアウェイで、隙が生じたときに攻撃するに限りますね。
私はひたすらモンスターの攻撃を避け続け、攻撃をした際に生じた隙を突いて短剣で斬りかかろうとします。ですが、リーチが短い短剣では当てる前に避けられてしまいます。
憤怒状態になっているから、いつも以上に動きが機敏になっている。ここは怒りが収まるまでまった方が良さそう。
ひたすらモンスターの攻撃を避け続け、時が来るのを待ちます。ですが、いくら待ってもジャッキーの怒りが収まることはありませんでした。
これはおかしい。いくらなんでも憤怒状態の時間が長すぎます。
「ついに見つけましたわ! ボブ! やっておしまい!」
「了解しました。お嬢様」
え? どうしてボブさんがここにいるの? これは私と姉の勝負なんじゃ。
一瞬疑問に思ってしまいましたが、よくよく考えれば納得です。確かに姉は『ジャッキーを倒した人が無条件で勝利』と言っていました。
今考えれば、あの言葉はどう考えてもおかしいです。普通なら『私かユリヤがジャッキーを倒したらその時点で勝者になります』と言うはずです。
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こんなことをしてまで勝とうとする人には、絶対に負けられません。あのモンスターを倒すのは私です。
『グギャー! グギャー!』
二人が現れた瞬間、ジャッキーは声を上げると体を翻して五番エリアの方に走って行きます。
「待て!」
「待つのですわ!」
逃げ出すモンスターを追いかけようと、二人は駆け出しました。その瞬間、急に地面が沈み、二人は地面の中に落ちてしまいました。
「しまった! 俺としたことがここに罠を仕掛けていることを忘れていた」
「おバカ! 早く抜け出しますわよ!」
どうやら自分たちが用意した罠に引っかかってしまったようですね。自業自得です。
それにしてもどうしよう。穴が大きくって、私の跳躍力ではギリギリ届きそうにないよ。
何か向こう側に渡る方法を見つけないと。
周辺に使えそうなものがないか調べると、落とし穴を登っているボブさんの頭が視界に入ります。
こうなったら一か八かです。ボブさんには悪いけど、落とし穴を作った責任を取ってもらいます。
「えい!」
落とし穴から離れて助走を付けて走り、力一杯跳びます。
予想したとおり届かない。でも、ボブさんの頭を踏み台にすれば届く。
男の頭に足が付いた瞬間、思いっきり跳びます。
ツルツルの頭で滑るリスクも考えましたが、直ぐに跳躍したので問題なく反対側に辿り着くことができました。
「グハッ!」
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
頭を蹴り飛ばされたことでバランスを崩したようで、背負っていた姉もろともボブさんは再び落とし穴の中に落下しました。
謝りませんよ。だって罠を仕掛けたのはあなたたちなんですから。
私は急ぎ五番エリアに向かいます。五番エリアは翼のないモンスターに取っては逃げ場がないエリアです。ここで仕留めさせてもらいます。
『グギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!』
私を見たジャッキーがもう一度口を大きく開けて吠えました。
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