ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十章

第一話 指名手配と言う名の依頼

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 港町での騒動も終わった数日後、俺たちはいつものように、ギルドマスターのエレーヌさんから依頼を受け取る。

「はい。リュシアン君はこれをお願いするわね」

「分かりました」

 依頼書を受け取り、本日分の依頼に目を通す。

 今回の依頼者は……男爵のご令嬢か。まぁ、王様から指名依頼を受けることもあったし、今さま貴族様からの依頼であっても驚かないな。

 えーと、依頼内容は?

「リュシアンさんはどんな依頼を受け取ったのですか?」

「とある貴族のご令嬢からだよ」

「そうなんですね」

 依頼者のことを教えると、ユリヤが依頼書を覗き込んだ。

「え!」

 依頼書を覗き込んだ彼女の動きが一瞬止まる。そして急に顔が青ざめた。

 ユリヤのやつ、急に顔を青ざめさせたな。そんなにやばい依頼だったのか。

 内容が気になり、もう一度依頼書に目を向けて黙読する。

『わたくしはイグナイチェフ男爵の娘、ヴィクトーリア・イグナイチェフですわ。この度は、とある女を探し出して来て欲しいのです。その女はイグナイチェフ家の面汚しなのですが、特徴としては外ハネしている茶髪のセミロングで、瞳の色も茶色。憎たらしいことに、胸がわたくしよりも大きいですわ。よろしくお願いしますわね。おーほほほほ!』

 最後の高笑いはわざわざ書く必要はないのではないか。それにしても人探しか。胸の件はともかく、外ハネのセミロングに茶色い目。この人、どこかで見たことがあるよな。

 そんなことを思いつつも、顔が青ざめたユリヤのことが気になり、彼女を見る。

 うん? ユリヤの髪は肩までかかる茶髪のセミロング。それに瞳の色も茶色だよな。確かユリヤの苗字もイグナイチェフ……まさか。

「なぁ、ユリヤ? お前ってもしかして――」

「ごめんなさい!」

 訊ねようとすると、ユリヤは一言謝罪をしてギルドから出て行く。

「ユリヤ!」

 思わず声を上げてしまったが、急いで彼女を追いかける。

 ギルドの扉を開けるとユリヤの後ろ姿が見えた。

 これなら追い付くことができる。

 地を蹴って町を駆け、全速力で走って彼女を追いかける。

 次第に距離が縮まり、手が届く範囲まで近付くと、彼女の手首を掴む。

「どうして逃げるんだよ。俺はただ質問しただけじゃないか」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

 逃げた理由を訊ねるも、彼女は顔色を悪くしたままひたすら謝る。

 いったいユリヤは、男爵家とどんな繋がりがあるんだ?

「ユリヤが話したくないと言うのならムリには訊かない。だけど良ければ話してほしい。もしかしたら力になれることがあるかもしれない」

 そのことだけを言って、彼女の返答を待つ。しばらく沈黙が続いたが、ユリヤは体を震わせながらゆっくりと口を開いてくれた。

「私……実は……一応……男爵家の娘なのです」

 やっぱりユリヤもご令嬢だったのか。でも、一応ってどう言うことなんだ?

 疑問が残るも、口出しをしないで彼女の言葉に耳を傾ける。

「私は腹違いの姉がいるんです。私の母は父の愛人でした。貴族の愛人……つまり母は平民です。昔は別々で暮らしていたのですが、三年前に母が亡くなり、私は一応父の娘と言うことで男爵家に引き取られたのです」

 なるほど、それで一応って言ったのか。でも、愛人の子とは言っても、父親は男爵なんだ。血の繋がりがある以上、ユリヤも男爵様の立派な娘だ。

「姉は私の存在を認めてくれませんでした。平民の血が流れている私が、イグナイチェフ家の苗字を名乗るのもおこがましい。そう言って私に酷い仕打ちをする毎日だったのです。姉の暴力といじめから逃れたいと思った私は、夜中に男爵邸を抜け出してエレーヌさんに拾われました」

 最後まで話きったようで、ユリヤは顔を俯かせると、それ以上のことは言わなくなった。

「そうか。話してくれてありがとう。ユリヤのことが少しでも知れて嬉しかったよ。それで、ユリヤはこれからどうする気なんだ?」

「私はエレーヌさんに、ギルドを辞めると言います。姉の捜索が始まった以上は、この町……いえ、この国にはいられませんので」

 彼女の言葉を聞いて、拳を強く握りしめる。

 これは彼女の人生だ。ユリヤがどんな選択肢を選んだとしても、それは彼女の自由。決して俺が何かを言える権利はない。

 だけど、その選択肢だけは絶対に選んではいけない。このまま逃げ続ければ、苦しみからは解放されるかもしれない。だけど、いつ追手が来るだろうかと怯える毎日を送り続けることになる。

 逃げると言うことは解決にはつながらない。一番大事なことは逃げることではなく、立ち向かう勇気を持つことだ。

「ユリヤ! それはダメだ!」

「え!」

「これは君の人生だ。俺なんかが口出しするのは場違いかもしれない。だけど逃げては何も解決しない。明るい未来を切り開くためには、お姉さんに立ち向かわないと!」

 声を上げ、自分の気持ちを打ち明ける。

「リュシアンさんは姉のことを何も知らないからそう言えるのです! 私がどれだけのことをされたか分からないでしょう!」

「当たり前じゃないか! 俺はユリヤじゃない! 逆に言えば、俺がブラックギルドでどれだけ酷い仕打ちを受けたのかも分からないだろう!」

 思わず感情的になり、つい口走ってしまう。だけど今の言葉が聞いたようで、彼女は何も言わなくなった。

「俺が解決に導いてやる! 何かあったら俺がユリヤを守る! だから恐怖から逃げてはダメだ!」

「本当に……守ってくれますか?」

「ああ」

「うっ……うう……ああーん!」

 ユリヤはその場で膝から崩れ落ちて座り込むと、声を出して泣き始めた。

 周囲からの視線を感じてしまうが、これも俺が選んだ選択肢による結果だ。甘んじて受け入れるさ。

「話は聞かせてもらったわ! あたしたちも協力するわ!」

 テレーゼの声が聞こえ、振り向く。そこには赤い髪を内巻きモテロングにしている女の子と、茶髪の長い髪の毛先にウエーブが掛かっている女の子がいた。

「テレーゼ、エリーザ姫。ああ、俺たちでユリヤを導いてやろう」

 俺たちは協力してユリヤのお姉さんに立ち向かうことを決断した。
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