ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
96 / 171
第九章

第十話 操り人形のゴッドヒルフ

しおりを挟む
「くそう! どうしてこうなってしまう! 予定と全然違うじゃないか!」

 ゴッドヒルフの声が聞こえ、俺は声が聞こえた方に顔を向ける。

 彼は先を越されたことを悔しがっているのか、歯を食いしばってこちらを睨んで来ていた。

 そんなに睨まれてもなぁ。早い者勝ちなのだからしょうがないじゃないか。それにしてもゴッドヒルフのやつボロボロだな。体から異臭を漂わせているし、着ている服も破けたり焦げたりしている。

 俺がピッグコングと戦っていない時にでも戦闘していたのだろう。まぁ、運がなかったと思って諦めてもらうしかない。

「この大会の優勝者は俺だ。これで分かっただろう。目の前にいる男は、お前の知っている男ではない」

「くっ」

 親指を自身に向けて声を上げて言うと、ゴッドヒルフは更に悔しそうにする。だが、直ぐに表情が緩むと不適な笑みを浮かべ出した。

「フハハハハハ! まだだ! まだ終わってはいない!」

 こいつ何を言っているんだ? もう誰がどう見ても大会の決着はついているじゃないか。もしかしてここで俺を倒して横取りしようとしているのか?

「なぁ、もし俺から横取りしようと考えているのなら止めておいた方がいいぞ。どう見たってお前ボロボロじゃないか」

「フハハハハハ! お前、俺様が優勝商品の武器が目当てだと思っているのか? それなら見当違いだ。俺様はあんなものには興味がない。俺様が求めているのは、お前がモンスターにボコボコにされてざまぁされる姿だ!」

 ゴッドヒルフが声を上げると、ポーチから水晶のような球体を取り出す。

「さぁ! モンスターたちよ! ここに集まり、泣き虫リュシアンをなぶり倒せ!」

 彼が水晶を掲げたその瞬間、半透明の球体から紫色の煙が噴き出た。その煙はゴッドヒルフに纏わりつく。

「何だ! この煙は! 話が違うではないか! 俺様に纏わりつくな!」

 自身を覆い始める煙に彼は抗う。だが抵抗も虚しく彼は煙に包み込まれた。

「ゴッドヒルフ!」

 俺は咄嗟に彼の名を叫ぶ。すると煙は更に広がり、何かのシルエットをかたどる。

 やがて煙が風も吹いていないのに霧散すると、中から四足歩行のモンスターが現れた。

 馬のような顔に額から角を生やし、胴体には青白い炎を纏っている。

 モンスターの出現と同時に、ゴッドヒルフの姿は消えた。

「嘘だろう。ゴッドヒルフがモンスターになった」

『ヒヒーン!』

 馬型のモンスターが肢体を地面に踏み締め、力強い声で鳴く。

「何だあのモンスターは!」

「あんなのが居るなんて聞いていないぞ!」

 聞き覚えのない声が聞こえ、そちらに顔を向ける。そこには大会に参加していた一部の参加者たちがおり、モンスターと化したゴッドヒルフを見て驚きの声を上げていた。

『ヒヒーン』

 モンスターがハンターたちを見ると、彼らの方に走る。

「こっちに来たぞ!」

「迎え撃て!」

 弓を使うハンターが矢を放つも、馬形のモンスターはステップを踏むかのように左右に動き、放たれた矢を躱す。

「当たらない! く、来るな! ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 突進を食らったハンターたちは次々と吹き飛ばされた。運が悪かった人は鋭利な角に突き刺さり、風穴を開けて血を流している。

「こいつ、ピッグコングよりも強いぞ!」

「逃げろ! こんなやつに目を付けられたら命がいくつあっても足りない!」

 大会の参加者達は負傷した者を見捨てて我先にへと走って隣のエリアに逃げて行く。

「誰か……助け……ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ハンターが助けを求める中、馬形のモンスターが彼の背中に前足を乗せて踏み付ける。そして擦るように左右に動かし、ハンターは絶叫を上げた。

「酷い!」

「あのモンスターがゴッドヒルフとか言うブタであることは間違いなさそうね。あんなこと、普通のモンスターならやらないわよ」

「そうですわね。ゴホッゴホッ」

 三人がそれぞれ口に出す中、エリーザ姫が咳き込む。

 早く彼女を医者に見せないといけない。だけどモンスターと化したゴッドヒルフをあのまま放置しておく訳にもいかない。

「ユリヤ、エリーザ姫を連れて先に港町に向かってくれ」

「リュシアン王子! ワタクシは大丈夫……ですわ。ゴホッゴホッ」

「全然大丈夫じゃないだろう。ムリして悪化させるわけにはいかない。ユリヤ、頼んだ」

「はい。エリーザ姫行きましょう」

「わかりましたわ。これ以上ワタクシが居ては、リュシアン王子の足手まといになりますわね」

 ユリヤに手を引っ張られ、エリーザ姫はこの場から離れて行く。

「あいつを倒す! テレーゼ、サポートを頼んだ」

「任せて!」

 ユリヤとエリーザ姫がターゲットにならないように、俺は地を蹴ってモンスターに接近する。

『ヒヒーン!』

 俺の接近に気付いた馬形のモンスターは、鋭利な角を俺に向けて駆け出して来る。

 鞘から太刀を抜き、間合いに入ったタイミングで斬り上げる。角の側面に当て攻撃を受け止めた。

 腕に力を入れてそのまま振り上げる。モンスターは顔を強制的に上げられ、隙を生んだ。

 その隙に身体をかがめて奴の足を斬る。

 足は角ほど固くはなく、鮮血が流れた。

『ヒヒーン!』

 足を斬られたモンスターはその場で転倒した。

 その隙を逃さず、すかさず太刀を振り下ろして馬形のモンスターを切り裂く。

 攻撃をする中、俺の心はズキズキと痛む。

 くそう。俺はいつもどおりにモンスターを攻撃しているだけなのに、どうしてこんなに心が痛む。

 その理由を考えていると答えに辿り着いた。

 いくらモンスター化したとはいえ、こいつはゴッドヒルフなんだ。いくら嫌いなやつであったとしても、知り合いを攻撃するのは正直キツイ。

 だけど、このままこいつを野放しにしておくわけにはいかない。

 すまない。どうしてモンスターになってしまったのか分からないが、俺を許してくれ。

「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...