ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第八章

第八話 無駄、無駄、無駄!風は風で無効化することができる。

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 九番エリアで巨大な鳥のモンスターと出会でくわした俺たちは、やつと戦闘して憤怒状態になるまで追い詰めることができた。

 モンスターは息を荒くして、血走った赤い目で俺を睨み付ける。

『キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!』

 巨大な鳥は大きい鳴き声を上げると両翼を羽ばたかせる。だが、強風は発生せずにやつの羽毛から羽根が抜け、風に吹かれて俺に飛んできた。

 モンスターの考えは全く読めないが、何らかの攻撃に決まっている。

 体勢を低くして羽根を躱し、振り向いて羽根の行方を目で追う。

 すると後方にあった木を切り裂き、傷を付けていた。

「まるで小型ナイフじゃないか。あんなものに触れたら、回復ポーションがいくつあっても足りないぞ」

 羽根の威力に驚くも、あの攻撃を見た瞬間に打開策が思い浮かぶ。

 これまで何パターンかの攻撃を見てきたが、ある程度の戦闘スタイルは把握した。

 やつの攻撃は風を利用したものだ。強風を生み出して敵を近づけさせないようにしつつ、その隙を突いて先ほどの羽根や突進なんかで敵を倒すと言った戦い方をする。

 まだ他のパターンも隠しているかもしれない。だけどここまでのパターンが分かれば、こっちのものだ。

「ユリヤ! テレーゼ! 俺がやつの風を防ぐ! 隙ができしだい、総攻撃を仕掛ける」

「あの強風を防ぐのですか? でもいったいどうやって!」

 風を防ぐと言った途端に、ユリヤが疑問を口にする。彼女からしたら当然の疑問だ。やつの強風は並の風ではない。普通なら困難な発想だ。だけど俺には新しく手に入れた風の属性玉を持っている。こいつで巨大な鳥が生み出す風を妨害する。

「ユリヤ、余計なことは考えないの! リュシアンピグレットはできることしか言わないわ。ここは彼を信じて任せるのよ」

「そ、それもそうですね。リュシアンさんの言うとおりにします」

 ユリヤが信じてくれたところで、巨大な鳥は再び強風を生み出した。俺は柄に嵌められてある風の属性玉に意識を集中させる。

 すると俺の前から風が吹き、モンスターは二本の足で立つことができずに転倒した。

 よし、成功だ!

 風というものは、空気の密度の差によって生まれる。空気の密度が重い場所と軽い場所が発生すると、気圧に変化が起きる。気圧の高いほうから低いほうへ空気が押し出されて動くことにより風が発生するのだ。

 風の属性玉の力で俺の前の気圧を高くしたことにより、やつの生み出した強風がそのまま返ってきた。その結果やつは転倒したと言うわけだ。

「今だ! 全員で巨大な鳥を攻撃する!」

「分かりました! 了解!」

 俺たちは総攻撃を仕掛ける。だけどユリヤの短剣もテレーゼの槍も、このモンスターの硬さには敵わなかった。

「全然刃が通りません!」

「なんでそんなに固くなっているのよ! フニャフニャになりなさい!」

「俺の太刀はなんとか通るけど、あまり手応えを感じないな」

 どうやら憤怒状態になったことで筋肉が固くなったようだ。俺の太刀であっても、場所によっては弾かれる。

「ユリヤとテレーゼは最も柔らかい場所を探して攻撃するんだ!」

「分かりました」

「こいつオスなのかしら? オスならあれは柔いはず。でも、憤怒状態だからあそこも固くなっているのかしら?」

 テレーゼがどこを狙おうとしているのか非常に気になる。だけど今はそんなことに思考を巡らせている程の余裕はない。いつこのモンスターが起き上がるのか分からないからな。

 巨大な鳥の前に移動すると、太刀を振り下ろして頭部を攻撃する。

 時々弾かれもしたが、何度か切り裂くと嘴が欠け、頭部に傷が入った。

「これでこいつの攻撃力は少し落ちたはず」

「リュシアンさん! どうにかこの鳥さんの爪を破壊しました!」

「ユリヤよくやった! これで少しは楽になる」

 二ヶ所の部位破壊を完了したところで、巨大な鳥は立ち上がった。

 そして俺たちを引き離そうとして強風を生み出す。

 飛ばされそうにもなったが、巨大な鳥が何度か羽ばたくと、やつは足を滑らせて再び転倒した。

 ユリヤが足の爪を破壊してくれたことで踏ん張ることができなかったみたいだな。

 彼女のお陰でまたチャンスが生まれた。

 俺たちはもう一度近づき、モンスターを攻撃してダメージを与える。

『キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!』

 巨大な鳥の胸に太刀を突き刺した瞬間、モンスターは大声で鳴いた。そして一度立ち上がったかと思うと、再び倒れる。

「倒したのでしょうか?」

「どうだろうな。念のために少し様子を見よう」

 龍の女帝であるジャドーミストレスが、死んだふりをして俺たちを騙したこともあり、しばらく様子を見てみる。

 しかしモンスターは動き出すことはなかった。

「どうやら討伐完了みたいだな」

 俺はホッとすると、ユリヤとテレーゼはその場に座り込んだ。

 久しぶりの強敵だ。それにこの鳥と戦う前にジャドーミストレスとも戦ったんだ。ここにきて疲れが出たのだろう。

「二人は休んでいてくれ。剥ぎ取りの方は俺がやっておくから」

「お願いします」

「少し休んだらあたしも手伝うわ」

 俺はモンスターの死体に剥ぎ取り用のナイフを突き刺し、素材を剥ぎ取る。

 このモンスターは今まで見たことがない。きっと素材の方も中々入手できないだろう。ここはいつも以上に丁寧に剥ぎ取っていかないとな。

 しばらく剥ぎ取りに時間がかかってしまったが、途中からユリヤとテレーゼも手伝ってくれたのでどうにか全ての剥ぎ取りを終える。

 そして俺たちは遂に十番エリアにある神殿の前に来た。

 建物は白く、これぞ神殿といった作りをしていた。だけど長年手入れがされていないのか、建物には蔓など巻き付かれ、苔なんかも生えている。

「かなり古い神殿のようですね」

「うっわ、足元に苔が生えている。ツルツルして滑りそう。あ、でもこれを利用してリュシアンピグレットに抱き付く口実が作れるわね」

「テレーゼ、そうなったらユリヤの方に抱き付いてくれよ」

 そんな会話のやり取りをしつつ、俺たちは神殿の中に入った。

 神殿の外は荒れていたが、中は綺麗だった。もしかしたら神秘的な力のようなものが内部に働いているのかもしれないな。

 神殿の奥に進み、台座の上に置かれてある赤い色の宝玉を手に取っる。

「さすがリュシアンですね。まさかラープロテクションを倒して宝玉を手に入れてくれるなんて」

 突然後方から男の声が聞こえ、振り向く。

 そこには見覚えのない男が扉の前に立っていた。
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