ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第八章

第三話 マンダラグモとの戦い

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 俺はついにエリーザ姫を発見した。彼女は蜘蛛のモンスター、マンダラグモに襲われていたが、やつをお姫様から引き離すことに成功し、現在対峙している。

「リュシアン王子!」

「エリーザ姫はそこでジッとしていてください。直ぐに倒して助け出しますので」

 エリーザ姫に声をかけて太刀を構えるが、その瞬間、マンダラグモは尻を俺の方に向ける。

 そしてモンスターは、尻から白い糸を放出した。

 これに触れる訳にはいかない。

 横に跳んで巨大蜘蛛の攻撃を躱す。

 やつの糸に触れれば、身動きを封じられる。糸に触れた後のぐるぐる巻きは瞬くほどの一瞬の出来事であり、捉えられた本人は何が起きたのか分からないほど速さだ。

 子どもの頃、捕まえたアリを蜘蛛の巣に貼り付けたことがある。すると獲物が掛かったことを知った蜘蛛は、尻から糸を出して一、二秒ほどでアリを糸の中に閉じ込めたのを今でも覚えている。

 モンスターであるマンダラグモも同じだ。絶対にやつの糸に触れるわけにはいかない。

 敵のモーションに気を付けつつ、マンダラグモに近付く。やつの弱点は背中にある幾何学模様だ。そこを攻撃することができれば倒すことはできる。

 跳躍してモンスターの背中に飛び乗ろうとしたとき、やつは口から糸を出す。

 空中では身動きがまともに取れない。ここは太刀で斬って回避だ。

 得物を振り下ろして敵の攻撃を躱すことを試みる。

 糸と太刀が触れた瞬間、金属同士がぶつかり合ったような甲高い音が響いった。

「こいつの糸、メチャクチャ硬い!」

 攻撃を防いだことで、糸の軌道が変わり、まっすぐ地面に落ちる。糸と地面が接触した瞬間、地面が砕けた。

 そう言えば、マンダラグモの口から出す糸は鉄のような硬度を持つと聞いたな。

 その硬さから、武器の素材としても使われる。

 口から放たれる糸は攻撃用、尻からの糸は獲物を取られるための糸。それだけ分かればモンスターの攻撃パターンも読めてくる。

 一度地面に着地した瞬間、俺はマンダラグモに接近する。

 真正面から近付けば、やつは俺を捕らえるために尻から糸を出す。その時が完全に隙が生じるときだ。

 距離を縮めると、予想通りにマンダラグモは足を伸ばして高さを上げると、尻を前に持ってくる。

 そして粘着性の高い糸を放出するが、俺は横に跳んで躱す。そしてそのままぐるぐるとモンスターの周りを走った。

 いくらモンスターであっても身体の作りは蜘蛛と同じだ。俺がやつの周辺を回れば、獲物を捕らえようと照準を合わせるためにマンダラグモもその場で回る。

 やつの周辺を走りながら少しずつ距離を縮め、間合いに入ったタイミングでモンスターの側面を叩き切る。

 刃は足に当たり、鮮血が噴き出ると同時に足は吹き飛ぶ。

「ディノブレードの尻尾から作っただけあって、切れ味が格段に上がっている! これならこいつを倒すのにも時間は掛からなさそうだな」

 足を一本失ったことで、マンダラグモは怯んでいるようだ。動きが鈍く、今なら弱点を攻撃することができそうだ。

「さぁ、狩りを終わらせよう。残念だったな。獲物になるのはお前の方だ」

 地を蹴って跳躍すると、マンダラグモの背中に飛び乗る。そして太刀を振り下ろし、弱点の幾何学模様を切り付けた。

 その瞬間、モンスターはビクン、ビクンと痙攣を起こしたかのように動いたが、その後は足の一本も動かさなくなった。

「マンダラグモ討伐完了だ」

 モンスターを倒し、蜘蛛の巣に引っかかっているエリーザ姫を見上げる。

「エリーザ姫直ぐに助け出しますので、後もう少しだけ待っていてください」

「わ、わかりましたわ」

 彼女に声をかけ、俺はエリーザ姫がいるところに行くために岩壁を登る。

 岩壁を登り終えると、お姫様に近づき手を差し伸べた。

「エリーザ姫、俺の手に捕まってください」

「分かりましたわ」

 お姫様が手を伸ばして俺の手を握ると、太刀で蜘蛛の巣を切断する。蜘蛛の糸が切り離された瞬間に腕の力で引っ張り上げて、彼女を抱き寄せた。

「エリーザ姫、ご無事で良かったです」

 彼女に声をかけると、お姫様は俺に抱き付く。エリーザ姫の目尻からは涙が流れていた。

 声を出さないのは、お姫様としてのプライドのようなものがあるのだろう。

 それもそうだよな。こんな危険な目に遭ったんだ。ハンターではないのだから当然の反応だ。

「本当にご無事で良かった」

 彼女が落ち着くまで、俺はエリーザ姫を抱きしめる。

「あ、ありがとうございます。もう、大丈夫ですわ」

 落ち着いたらしいので、俺は彼女を解放すると、エリーザ姫は離れた。

 目が赤いのは泣いたからと言うのは分かるが、何故か顔まで赤い。本当に大丈夫なのだろうか? もしかしてマンダラグモの毒に侵されたりしていないよな?

 俺との戦闘では使ってこなかったが、マンダラグモは糸を吐く意外にも毒の粘液を吐き出すこともある。

 もし、毒に身体を蝕まれているのなら、直ぐに治療をしなければ命に関わる。

「本当に大丈夫ですか? 失礼ですが、熱を測らせてもらいますね」

 右手をお姫様の額に当て、彼女の熱を測定する。

「平熱ですね……いや、少し上がったか?」

「こ、これはあなたのせいです!」

 俺のせい!

 予想外のカミングアウトに、俺は動揺してしまう。

 俺のせいでエリーザ姫の熱が上がった。これはやばい!

「す、直ぐに責任を取って治療しますね! えーと、解毒薬と回復ポーション……あった!」

 ポーチから二つのアイテムを取り出すと、エリーザ姫がクスクスと笑う。

「冗談ですわよ。本気にしないでください。リュシアン王子、可愛いところもあるのですね」

「な、なんだ。冗談だったのですか。驚かせないでくださいよ」

 ジョークであったことを知り、俺は胸を撫で下ろす。

「リュシアン王子、助けてくださりありがとうございます。あなたには感謝しても感謝しきれませんわ。でも、どうしてこんなところにいるのですか?」

「それはこっちのセリフですよ。どうしてエリーザ姫さまは、家出をする先がガラン荒野なのですか!」

「リュ、リュシアン王子! ワタクシの手紙を読まれたのですね」

「あ!」

 俺は勢いのまま、口を滑らせてしまった。

「ワタクシ、婚約が決まったのです。相手は誰なのかは知りませんが、ワタクシはまだ婚約をするつもりはありません。お父様が考えを改めるまでは、帰るつもりはありませんわ」

 エリーザ姫は帰らない意志を伝えるが、俺はホッとした。

 既に彼女が帰らない理由は無くなっているのだから。

「それなら安心してください。婚約の件は白紙になりましたから」

「え! それは本当なのですか!」

 事実を伝えるとエリーザ姫の顔が綻び、喜びに満ちた笑みを浮かべる。

「でも、どうして急にそうなったのでしょう? お父様は簡単にご自分の決めたことを曲げる方ではないのですが?」

 エリーザ姫が首を傾げる。

 どうして婚約の件が白紙になったのか、それを教えるには俺の正体も明かさないと行けない。

「エリーザ姫、私……いや俺の正体はレンナルト王様の息子ではなく、あなたの嫌いなハンターなんです」

「え?」










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