ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第八章

第一話 二件の依頼を受けることになったけど多分なんとかなるよな

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 エリーザ姫が家出をしてことを知った俺は、現在所属しているギルドの町に戻っていた。

 隣国のお姫様のことが気になるが、隣国で起きた事件はその国で解決するものだ。俺は依頼でもされない限り、動くことはできない。

「今日はエレーヌさんから一日の休暇を貰ったから、溜まった素材で俺の太刀を鍛え直してもらおうかな」

 ディノブレードとの戦いで得た尻尾の素材を使えば、俺の太刀は更に強化できるはず。

 そう思い、俺はギルドの鍛冶職人であるベルトラムさんの工房に向かった。

「ベルトラムさん居る?」

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 本当に悔しいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 工房に入るなり、ベルトラムさんの悔しがる声が聞こえてきた。

 ベルトラムさん、いったいどうしたのだろう? あんなに声を荒げるなんて珍しいな。

「ベルトラムさん。どうしたのですか?」

 声をかけると、スキンヘッドの男が振り返る。

「おお、リュシアンか。聞いてくれ! ワシは騙されたんだ!」

「だ、騙された!いったい何に!」

 ベルトラムさんはあのエレーヌさんの師匠だ。簡単には人から騙されるようなことはない。彼を騙すなんて、その詐欺師は相当な実力を持っている。

「女の子だと思って尻を触ったら、男だったのだ!」

「はぁ?」

 予想外の言葉に、俺は間抜けな声を漏らす。

「この前、城下町に行ったのだがな。そこの酒場では女の子が接客してくれるというオプションがあったのだ。ワシは勿論それをお願いして、直ぐに尻を触った」

 このジジイ。本当に鍛治をしていない時はただのエロジジイだな。接客相手の尻を触るなんて普通はしないぞ。

「そしたら尻が硬かったんだ! ワシは驚いていると彼女……いや彼は、自分は男だと言ってきたんだ! 綺麗な顔立ちに騙された! 思い出すと腹が立ってくる!」

「ははは」

 俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 ベルトラムさんが女の子と思っていた相手は、実は男の娘だったと言う、どうでもいい話だ。

「すみません、そんなどうでもいい話は話す必要がないので、俺の太刀を鍛え直してください」

「どうでも良くない! これは大事件だ! すぐに訴え……うん? これはディノブレードの尻尾か」

 感情が昂って声を荒げていたベルトラムさんだったが、モンスターの素材を見た瞬間顔付きが変わった。

 さすが元ハンターだけあって、素材を見ただけで何のモンスターなのかが分かるな。

「ディノブレードとは珍しいな。この辺りには生息報告がないモンスターだが」

「ええ、偶然見かけて襲い掛かってきたので返り討ちにしました」

「ディノブレードを一人で倒したのか! いや、リュシアンはSランクハンターだ。当然と言えば当然か。それにしても偶然見かけたと言うのが気になるな。どこかのバカハンターが素材の回収を忘れて死肉に釣られて現れたのかもしれないな」

 やっぱりベルトラムさんも、その可能性が高いと思うか。

「分かった。こいつを使えば確かにその太刀はパワーアップするだろう。そうだ他にも素材を持っているなら見せてくれないか。隠さないで全てだ」

「分かった」

 彼に言われたとおりに、これまで剥ぎ取ってきたモンスターの素材をテーブルの上に並べる。

「ふむふむ。なるほど、ではこれとこれ、それにこれも使うから貰って行くぞ。料金は三千ギル頂こう」

 いくつかの素材を掴むと彼は料金を言ってくる。

 さすがに今回はタダと言うわけにはいかないか。まぁ、他の工房でお願いするより安い。

 三千ギルを支払い、ベルトラムさんが俺の太刀を受け取ると、彼は鍛冶職人の顔付きのまま作業に取り掛かる。

「今日中に完成するのは難しい。明日取りに来るがいい」

「わかりました。あとはお願いします」

 踵を返してベルトラムさんに背中を向けると、工房を出て行く。





 翌日、俺は仕事をするためにギルドに来ていた。太刀は本日の依頼を確認してから受け取りに行くつもりだ。

「リュシアン君にはまたフェルディナンズから委託依頼が来ているので、それをお願いしたいのだけど頼めるかしら?」

「はい。わかりました」

 ギルドマスターのエレーヌさんから依頼書を受け取り、まずはフェルディナンからの依頼書に目を通す。

『リュシアン、前回は世話になった。お陰で俺のギルドも軌道に乗りつつある。そこでまた、お前にこの依頼を頼みたい。これはお前にしかできないことだ。頼む』

 まぁ、前回は特に怪しいこともなかったし、今回も受けてあげるとするか。あいつもギルドマスターになって、丸くなったのかもしれないな。えーと、本当の依頼者のメッセージはっと。

『ワシはとあるお方にお使えする執事です。今度開かれる祭りに使う宝玉が、ガラン荒野の十番エリアにある神殿に納めてあるのですが、近づこうとするとモンスターが襲ってきて神殿に行くことができません。そこで腕に自信のあるハンターに宝玉の回収をお願いしたいのです』

 なるほど、ガラン荒野か。あそこにはまだ行ったことがないから、どんなモンスターがいるのかが分からないな。

 ひとまずは工房に行って、ベルトラムさんから太刀を受け取らないと。

 工房に向かおうとすると、ギルドの扉が開かれた。

 中に入って来たのは兵士の格好をした男だ。彼の着ている鎧には見覚えがある。隣国の兵士だ。

「ここにリュシアンと言うハンターがいると聞きましたが、居られますか!」

「リュシアンは俺ですが」

「あなたがリュシアンですね。こちら、バーンズ王様より指名依頼となります」

「何だって!」

「では、私はこれで」

 兵士は俺に依頼書を渡すとギルドから出て行く。

 驚きを隠せない中、直ぐに依頼書に目を通す。すると話を聞いていたのか、ユリヤとテレーゼまで俺のところに来ると依頼書を覗き込んできた。

『リュシアン王子。いや、リュシアン殿であったな。先日は世話になった。娘のエリーザだが、ガラン荒野で目撃情報があった。しかしあそこには現在龍の女王と龍の女帝が縄張り争いをしていて危険なのだ。リュシアン殿のことはレンナルト王から聞いておる。頼む! エリーザを見つけて連れ戻してくれないか。無事に娘を連れてきたのなら、私は何でもする』

「これって! どう言うこと何ですか!」

「どうして隣国のお姫様がガラン荒野にいるのよ!」

 事情を知らない二人が声を上げる。

 俺は簡潔にこの前のことを話す。

「なるほど、それでバーンズ王様からリュシアンさんに指名依頼が来たと言う訳ですか」

「でも、ガラン荒野はとても広いわよ。リュシアンピグレット一人では捜索は難しいわよ。エレーヌ!」

 テレーゼがエレーヌさんに声をかける。

「ええ、話は聞きました。ユリヤ、テレーゼ。あなたたちもリュシアン君の依頼について行きなさい。二人の依頼は他の人に頼みます」

 ギルドマスターの許可をもらい、俺はユリヤとテレーゼと一緒にお姫様の捜索に向かうことになった。
 









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