ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第七章

第十一話 神殿を守護するモンスターにもボコボコにされた

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~フェルディナン視点~



 俺ことフェルディナンは、神殿を守護するモンスター、ラープロテクションに向かって突っ込み、大剣を振り下ろす。

「喰らえ!」

 しかし俺の動きよりも早く、神殿を守護するモンスターはドラゴンのような翼を羽ばたかせて後方に下がり、俺の一撃は空を斬った。

 くそう。外してしまったか。思ったよりも動きが早いじゃないか。

 大剣は威力が大きいが、その分動きが鈍くなる。これが太刀などの軽い武器であれば、きっと当たっていたはずだ。

「スピードはやつのほうが上か。なら、あいつの動きを見極めて先に動くことができればダメージを与えることは可能だ」

 大剣を握ったまま動いては、重みでワンテンポ遅れる。ここは一度鞘に収めてから、間合いに入ったときに一気に抜いて勢いで斬りつけた方がいいだろう。

「今度は絶対に当ててやるからな!」

 そうだ。この大剣は以前使っていたものよりも攻撃力も切れ味も上だ。

 当てることさえできれば、相当なダメージを与えるに決まっている。

 一度大剣を鞘に戻すと、俺は巨大な鳥のモンスターに突っ込む。

 やつは翼を羽ばたかせて空中に浮くと、強風を生み出す。

 風の抵抗を受けた俺は走る速度が落ち、ラープロテクションに近付くことができなかった。

 くそう! 近付くことができない! これではダメージを与えることができないじゃないか!

 歯を食い縛ってモンスターを睨むと、腕に痛みが走る。

 痛みを感じた場所を見ると、腕の皮膚が裂けていた。

鎌鼬かまいたちというやつか」

 俺は近付くことができないのに、やつからは余裕で俺を攻撃することができる。本当に化け物だ。

 これならリュシアンは依頼に失敗する可能性は高い。だけどまだ確信はできない。もっとこいつの実力と言うものを見定めさせてもらうぜ。

 一瞬だけサウザーを見る。やつは岩の陰に隠れ、身を隠していた。

 戦闘には本当に参加してくれないな。あの爺さん。本当は強いはずなのに隠しやがる。

 サウザーが手を貸してくれればもっと楽なのにな。

『キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェ!』

 ラープロテクションの鳴き声が聞こえ、俺はモンスターの方に顔を向ける。

 俺が生んだ一瞬の隙を突いて、やつは地面スレスレの低空飛行で俺に接近してきた。

 巨体が低空飛行をすれば、回避する隙間なんてものは存在しない。

 巨大な鳥の翼が頭に当たり、俺はその場で転倒した。

 くそう。まるでラリアットを喰らったみたいだ。だけど頭だったのが不幸中の幸いだ。

 もし首に当たっていたら、最悪の場合は呼吸困難を起こしていたかもしれない。

 頭がクラクラする。まるで鉄製の武器で殴られたような感じだ。

 やつの翼はドラゴンのような形だからな。竜種のように強固なのかもしれない。

 頭痛のようなものを感じながらも、ゆっくりと立ち上がる。すると、もう一度ラープロテクションは低空飛行をして俺を狙ってきた。

 こうなれば一か八かだ。俺の跳躍力に賭けるしかないが、思いっきりジャンプをすれば回避することができるかもしれない。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 雄叫びを上げると、思いっきり地を蹴って飛ぶ。

 跳躍力がモンスターの体格を上回り、ラープロテクションの背中に乗ることに成功した。

 いいぞ! 背中に乗ることができればほぼ無双状態だ。安全圏から攻撃してやる!

 鞘から大剣を抜いた瞬間であった。

 巨大な鳥は背中に違和感を覚えたようで、体を反転しやがった。

 モンスターにしがみつくことができなかった俺は、そのまま重力に引っ張られて地面に落とされる。

 体全体を強打し、全身に痛みが走った。

「へへ、中々やるじゃないか。これならリュシアンもきっと勝てないはず」

 こいつは神殿を守るモンスターだけあって、他のモンスターよりも知性が高い。

 常に俺の一手先を読み、瞬時に対応して回避しやがる。

 この俺が一撃も与えることなくここまでボコボコにされたんだ。きっとあいつを失敗へと導いてくれるはず。

「もう十分だな」

 ポーチから回復ポーションを取り出して中の液体を飲み干す。

 これで体力は回復した。あとはここから逃げるだけだ。

「サウザー! 撤退するぞ! もう下見は十分だ!」

 執事の格好をした爺さんに声をかけ、俺は立ち上がると急いで隣の八番エリアに逃げ込もうとする。

 だが、走り出そうとした瞬間、周辺に赤い羽根が舞う。

 羽根が俺の腕に触れると、まるでナイフで斬られたみたいに鮮血が噴き出し、痛みが走った。

 その光景を目撃すると、俺は完全に動揺して鼓動が激しくなった。

 なんだよこの攻撃は、ふざけているのか。これじゃあ逃げ切れないじゃないか。

 周辺に舞う羽根一枚一枚が鋭利な刃物のようなもの。完全に逃げ道を塞がれたようなものだ。

 くそう! くそう! くそう!

「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 叫び声を上げると、空中に浮いている羽根が次々と俺に接触して全身を切り刻んでいく。

 俺は仰向けに倒れると、上空からラープロテクションが羽根を撒き散らしているのが見えた。

 これでは、回復ポーションがいくつあっても足りないな。

 俺は死を覚悟して瞼を閉じようとした。

『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォン!』

 どこからか聞きなれないモンスターの声が聞こえてきた。

 俺の視界には茶色い鱗を持った胴体の長い龍が視界に映ったが、その後意識が遠退く。





「あれ? ここは天国か?」

「お主が天国に行けるようなら、殆どの生物は天国に行くことができよう」

 隣からサウザーの声が聞こえ、俺は上体を起こす。そして彼を見た。

「運が良かったな」

「サウザー、これはどう言うことだ?」

「どう言うことだと言われても困る。お主は運よく生き残り、ワシがここまで運んだだけだ」

 サウザーはそれだけ言うと再び口を噤む。

 おそらく、またこの爺さんが不思議な力で俺を助けてくれたのだろう。本当にいったい何なんだよこの男は?

 たくさんの疑問が残る中、俺は以前に深入りをすると殺すと脅されたことを思い出し、彼の言葉に無理やり納得することにした。










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