ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
73 / 171
第七章

第八話 どうして巻き込まれた俺がこんなに悩まないといけない

しおりを挟む
~リュシアン視点~



『すまない! 正式にワタシの息子になってくれ!』

 馬車の中で言われた王様の言葉を思い出しながら、俺はギルドの机に顎を乗せていた。

「たく、どうして無関係だったはずなのに、俺がこんなに悩まなければいけないんだよ」

「リュシアンさん大丈夫ですか? 何だか元気がなさそうですけど?」

リュシアンピグレットどうしたの? 何か悩みがあるなら、あたしが相談にのるわよ」

 悩んでいると、同僚のユリヤとテレーゼが声をかけてきた。

 どうやら二人に心配させたらしい。

 確かに彼女たちに話せば、解決方法を一緒に考えてくれるかもしれない。

「ありがとう。俺、レンナルト王様から正式に息子になってくれないかと頼まれた」

「す、すごいじゃないですか! 王族に養子として求められるなんて滅多にないことですよ! さすが国宝級の英雄ですね!」

 事実を話すと、ユリヤはとても喜んでくれた。しかしテレーゼは胸の前で腕を組み、青い瞳で俺を見てくる。

「それが悩みなのね。でもどうして王様はリュシアンピグレットを養子にしたいの? 王族と言うのは血統を大事にするわ。いくらあなたが国宝級の英雄であったとしても、所詮は平民でしかない。それなのに養子にしたいとはあまりにも不自然だわ」

 お、テレーゼは『俺が王様に養子になってくれと頼まれた』と言うワードだけで気付いたようだな。

「そう、テレーゼの言うとおりだ。王族は何より血統を大事にする。だからこんなことは本来あり得ない」

「そうなのですか。私、まだまだ勉強不足ですね。なら、どうしてレンナルト王様はリュシアンさんを養子として求めるのですか?」

 ユリヤに訪ねられ、俺は馬車の中での光景を思い出して溜め息を吐く。

「それは王様が、俺をこの国の王子として紹介したのが原因なんだ」

 前回の依頼内容のこと二人にを軽く説明する。

「どうやら俺が席を外している最中に、レンナルト王様とバーンズ王は話が盛り上がったらしいんだ。そして国の結束を高めるために、エリーザ姫がこの国に嫁いで婚儀を行うことになった」

「ステキな話ですね。あれ? リュシアンさんが王子として紹介されたってことは、それってやばくないですか?」

「そうなんだよ。バーンズ王とエリーザ姫は、俺こそがこの国の王子だと思い込んでいる。だから嘘を突き通すためにも、レンナルト王様は必死になんて俺を養子にしようとしているんだ」

 まさかレンナルト王様があんなにバカだとは思わなかった。チャプス王子があんな性格になってしまったのも、今なら分かる。

「俺は、王族になるつもりはない。内政や外政のことを考えて生活するなんて、俺には合っていないからな」

 王族にはならない意思を告げると、二人はホッとした表情をしていた。

「なら、話は早いわ! レンナルト王様にはきちんと断れば済む話じゃない。自分が蒔いた種なのよ。自分の力で刈り取らせばいいじゃない」

「そうなんだけど、断った後が心配なんだよ。俺はレンナルト王様のダメなところを目撃してしまったから、本当にやっていけるか心配なんだ」

「リュシアンさんって本当に優しいですね。そんなところが素敵です」

「本当にリュシアンピグレットは他人思いよね。あたしには真似できないわ。でも、あたしができないところを簡単にやってしまえるところに惹かれるのよね」

 三人で話していると、外が騒がしいことに気付いた。

「何だか外が騒がしいですね」

「本当ね。何かあったのかしら?」

「俺、ちょっと見てくる」

 騒がしい外が気になり、俺はイスから立ち上がる。するとギルドの扉が開かれ、数人が中に入って来た。

 彼らを見て、この人たちが外を騒がしている中心人物だと分かった。

 四十代後半といった容姿をしており、コールマンと呼ばれる口の上だけ短く生やした髭をしている。そして金髪の上には王冠が乗せられていた。

「レンナルト王様」

「リュシアン殿、返事が待ち遠しくてワタシ自ら赴いた。さぁ、返事を聞かせてくれ」

「すみません。養子の件は断らせてもらいます。俺には政治とかは向かないので」

「何だと! それは本当か!」

「はい。申し訳ないですが、断らせてもらいます」

「うーん。これは困ったな。どうやってバーンズ王に説明しようか。下手に言えば、彼を怒らせてしまう」

 悩むレンナルト王様の肩に手を置き、彼をジッと見る。

「謝りましょう。真摯に謝れば、きっとバーン王も許してくれるはずです。本当にいけないことは嘘を言い続け、騙すことです。一度失った信頼を取り戻すのは大変ですが、嘘だったとバレたときに信頼を取り戻すのはもっと大変になります」

「そうか。リュシアン殿がそう言うのであればそうなのだろう。分かった。バーンズ王には謝るとする」

 王様の言葉を聞き、俺はホッとした。

 まるで子どもに教育をしているみたいだ。本当にこの国の将来が心配になってくる。

「では、今すぐに向かうとしよう。リュシアン殿も来てくれないか」

 まぁ、レンナルト王様だけでは心配だからな。俺も付き合うとしよう。

「分かりました」

 レンナルト王様とギルドを出ると、目の前にあった馬車に乗り込む。そして隣国へと向かった。






 馬車で移動すること数日、俺たちは隣国に辿り着き、今はバーンズ王の御前にいる。

「レンナルト王、思っていたより早い再会だな。それで何の用だ?」

「ああ、そのう……なんだ」

 レンナルト王様は言葉を詰まらせ、視線を逸らした。

 まったく、世話が焼けるな。

 彼の背中を軽く叩く叩きカツを入れる。

「リュシアン……殿」

 俺は無言で頷く。するとレンナルト王様も頷き返す。

「バーンズ王、此度は謝罪と真実を告げるためにきた」

「謝罪だと?」

「ワタシの隣にいるリュシアン殿は本当の息子ではない。本当の息子……チャプスは己を見つめ直すために牢へ幽閉しているのだ」

「な、何だと!」

 レンナルト王様のカミングアウトが余程ショックを受けたのか、バーンズ王は開いた口が塞がらないでいる。

「バーンズ王、レンナルト王様はあなたを騙そうとしていた訳ではありません。息子を会わせないことで、あなたを悲しませると思ったのです。そこで私を息子役として抜擢ばってきしました」

 続けて俺が補足する。

「嘘をついてしまったことは本当にすまないと思っておる。バーンズ王が楽しみにしていたので、つい言い出せなかったのだ」

 レンナルト王様が深々と頭を下げた。彼は全力で謝っている。バーンズ王が許すかどうかは神頼みだ。

「レンナルト王よ、頭を上げよ。嘘を吐かれたことに対してはショックではあったが、お主なりに悩んだのだろう」

 いや、レンナルト王様は全然悩んでいませんよ。行き当たりばったりです。

 内心で思いつつ、俺はこれ以上何も言わないで見守ることにした。

「お主のことを許そう。しかし婚約のことは白紙とさせてもらう。私はリュシアンが本当の王子だと思ったから、エリーザを嫁がせてもいいと判断した」

「ありがとう。バーンズ王、チャプスが更生次第、本人を連れて行く」

 二人の王子は握手を交わした。

 ふぅ、もう王族関連で俺が巻き込まれることはないだろうな。またハンターライフを送れそうだ。

 そう思っていると、急に扉が開かれた。そして侍女と思われる女性が入ってくる。

「何事だ! 今は他国の王との謁見中だぞ!」

「王様、申し訳ありません。ですが、姫様の机の上にこれが」

 侍女から手紙を受け取り、バーンズ王は書かれてある内容を読む。

「なん……だと」

 動揺してしまったのか、バーンズ王は持っていた手紙を床に落とした。

 落ちた手紙は表になっており、内容を読むことができる。そこには綺麗な文字でこう書かれてあった。

『婚儀には納得できませんので、この城から出て行きます。エリーザ』











最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

処理中です...