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第六章

第十話 Sランクの俺は、国宝級の英雄となりました

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「よし、剥ぎ取り完了! それじゃあ王様のところに戻るか」

 ロックモグーラの剥ぎ取り作業を終えた俺たちは、レンナルト王様に会うために城に戻ることにした。

 城下町は戦闘の爪痕が残されている。車道が陥没したり、建物の一部が壊れたりしていた。

 まさか息子の真偽を確かめるためにここまでするとはな。レンナルト王って少しサイコパスなところがないか? ある意味、この国の将来が心配になってくる。

 安全な道を選んで城の門に向かう。

「リュシアン殿とそのお仲間たちではないですか。話はレンナルト王から聞いております。お通り下さい」

 俺たちに気付くと門番の兵士が門を開けて俺たちを中に入れてくれた。

 そのまま城の中に入り、謁見の間に向かう。

 レンナルト王様は城に来いとしか言っていない。なので、玉座の間と悩んだのだ。だけど俺たちは、そこまでレンナルト王様と親しくない。だから謁見の間を最初に訪れることにした。

 謁見の間の扉は開いており、中を覗く。すると玉座にレンナルト王様が座っていた。

 ここで合っていたか。

 俺たちはそのまま謁見の間に入り、レンナルト王様に声をかける。

「レンナルト王様。此度このたびはお城に呼んでいただき、ありがとうございます」

「おお、リュシアン殿。良く来て下さった。先ほどは本当に助かった。城下町の被害が最小限で済んだのは貴殿のお陰だ」

 レンナルト王様はにこやかな笑みを浮かべながら俺を見る。

 そう言えばロックモグーラを倒してから、レンナルト王様が俺に対する態度が変わったような気がするな。

 少しは王様から気に入られたってことなのだろうか?

「誰か! 例の物を持って来てくれ」

「はっ!」

 近くで控えていた兵士にレンナルト王様が命令すると、一人が返事をして謁見の間から出て行く。そしてしばらくして戻ってくると、手に持っている箱を王様に渡した。

 箱を開けてレンナルト王様は中に入っている物を取り出すと、再び俺の方を見た。

「リュシアン殿、こちらに来るのだ」

 近づくように言われ、俺は王様に歩み寄る。

「リュシアン殿、貴殿の働きは目覚しい。寄って、リュシアン・プライムを国宝級の英雄と見做し、勲章を授ける」

 レンナルト王様は宣言すると、勲章を俺の服に取り付ける。

 予想外の展開に、俺は一瞬思考が止まってしまった。だが、控えていた兵士たちが一斉に万雷の拍手をしたことで、俺は我に返る。

「す、凄いですリュシアンさん! 王様から国宝級の英雄だと認めてもらえるなんて」

「うんうん。やっぱりリュシアンピグレットは世界のトップ歌姫である、あたしと釣り合いが取れるほどの男よ。あたしの隣には彼がふさわしいわ」

 こんなに大勢の人から拍手を送られた記憶がなかった俺は、なんだか気恥ずかしい思いに駆られる。だけど、自分は認められたんだと実感することができ、とても嬉しかった。

 勲章の授与が終わると、俺たちは今度こそギルドに返ることにした。

「ねぇ、リュシアンピグレット。帰る前にあのクソブタ王子に挨拶をしてから帰らない? さすがに挨拶もなしに帰るのはよくないと思うのよ」

「そうだな。確かにチャプス王子が反省しているのか気になるし、挨拶しておこう」

「確か牢屋に幽閉されているのですよね?どこなのでしょうか?」

 俺は近くに通り掛かった兵士に声をかけ、牢屋の場所まで案内してもらった。

「この先が牢屋となっております。では、私は仕事に戻りますので」

「わざわざありがとうございます」

 案内してくれた兵士に礼を言い、俺は扉を開けた。

 扉の先は地下に繋がる階段になっており、薄暗いが燭台には蝋燭に火が灯っていたので、足を踏み外す心配はなさそうだ。

「おい! ここから出せ! 僕はこの国の王子なんだぞ! もう反省しているのだからいい加減に出せ! あまりにも臭くて鼻が曲がりそうだ!」

 階段を降りていると、チャプス王子が声を荒げ出した。どうやら俺たちのことを兵士だと勘違いしているみたいだな。

 彼の言葉を聞く限り、全然反省していないみたいだ。これなら当分の間出してもらうことは無理そうだな。

「ブタが豚小屋に入れられてブヒブヒ鳴いているわね」

 テレーゼがポツリと言葉を漏らすが、彼女のセリフを聞いた瞬間に笑いが込み上げてきた。

 チャプス王子は小太りだ。だから体型からしてブタと言う表現はある意味間違ってはいない。

「おい! ここからだ……チッ、お前らだったのかよ」

 牢屋に近づくと、兵士ではないことに気付いたようで、彼は舌打ちした。

「チャプス王子、ご機嫌はいかがですか?」

「最悪に決まっているだろうが! どうしてこの僕がこんなところに閉じ込められなければならない! これは誰かの陰謀に決まっている! 未来の王が牢屋にぶち込まれるなんてあってはならない!」

 彼の言葉を聞いた俺は苦笑いを浮かべる。

 チャプス王子はどうして自分が牢屋に入れられたのか理解していないみたいだ。これでは反省することは難しいだろう。

「お、お前! その勲章は!」

 俺の胸に付いている勲章に気付いたようだ。チャプス王子は声を上げると、食い入るように勲章を見てくる。

「さっき王様からもらったんだ。国宝級の英雄なんて言われて何だか気恥ずかしいけれどな」

「どうして父上はこんな愚民に勲章なんか授けたんだ! 僕はお前を認めないからな!」

 別にお前に認められようとは思っていない。

「あーあ、あんたが反省しているようなら、リュシアンピグレットが王様に頼んで出してもらえるように便宜を図ってあげようかと考えていたのだけど、その様子じゃムリね」

 突然テレーゼが嘘を言い出す。

「テレーゼ、何を言っているんだ」

「大丈夫よ。あたしに任せて!」

「それは本当か! どうすれば反省したことになる」

「土下座よ。ど・げ・ざ。頭を地面に擦り付けて、すみませんでしたと謝れば考えてあげてもいいわよ」

 土下座させておいて、それでも考えるだけかよ。テレーゼのやつ、土下座させた後何もしないつもりだな。

「貴様! 王子であるこの僕にそんなことをさせると言うのか!」

 チャプス王子が歯を食い縛りながら俺たちを睨みつけてくる。

 まぁ、彼からすればそんな態度を取るよな。

「なら、あんたは一生この中よ。たった一回、地面に頭を擦り付けて謝るだけで解放されるかもしれないのに」

「ぐぬぬ! わ、わかった。一秒でも早くここから出たいのは本当だ。こうなれば一瞬だけ王子のプライドを捨ててやる」

 チャププス王子は苦虫を噛み潰したような顔をしながら両手を地面につけ、頭も地面に擦り付けた。

「すみませんでした……ほらこれでいいだろう」

「全然ダメよ! 気持ちがこもっていないわ! もっと心の底から謝罪しないさい」

「すみませんでした!」

「まだよ! 言葉が足りないわ」

 こうしてチャプス王子は、何度も土下座しながら謝罪の言葉を連呼することになった。

 最終的には『この僕が愚かでした! リュシアン様は世界一のハンターです。そしてテレーゼ様のような世界一のトップ歌姫は、リュシアン様がピッタリのお相手です』と泣きながら叫ばせるところにまで発展した。

 ここまでさせたら、さすがに牢屋に居る時間を短縮できるように、レンナルト王様に便宜を図った方がいいよな。










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