ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第六章

第五話 サイズが小さいってどういうことなんだよ!

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「先手必勝!」

 俺は二足歩行のトカゲのようなモンスター、アルカイトに気付かれる前に接近し、握っているハンマーを思いっきり振り下ろす。

『ぐぎゃ!』

 ハンマーはアルカイトの頭部に直撃すると、やつは短い悲鳴を上げて地面に倒れる。

 頭部を攻撃したことで、モンスターは気絶したようだ。

 白目を向いて舌を出し、痙攣しているかのように手足をピクピクさせていた。

 このまま麻酔針を打ち込んで眠らせれば終わりだ。

 ポーチから麻酔針を取り出し、モンスターの肉体に打ち込もうとする。

「ちょっと待った!」

 針がアルカイトの肉体に刺さろうとしたタイミングで、チャプス王子が静止の声を上げる。

「そんなに小さいサイズを捕まえてどうする! そんなモンスターを捕獲して持って帰れば、王族として恥を晒すことになる。よってそいつの捕獲はやめだ」

「ちょと待ってください! そんなの、聞いていませんよ!」

「それはそうだろう。だって今言ったのだからな。ギャハハ!」

 くそう。最初から無駄足を踏ませるために、俺に捕獲をするように促したのか。

「なら、チャプス王子の言う大きいサイズとはどのくらいでしょうか?」

 同じ失敗を繰り返さないためにも、今度は事前に情報を聞かなければ。

「それはこんなに大きいやつだ」

 チャプス王子はニヤニヤと笑みを浮かべながら、両手で円を描く。

 子どもみたいなことをしやがって。それじゃあ全然分からないじゃないか。

「さて、僕が納得する大きさのモンスターが、愚民のお前に分かるかな? ギャハハ!」

 彼の態度に俺は怒りを覚える。

 くそう。落ち着け、ここでやつに殴り掛かれば全てが終わってしまう。我慢だ。

「リュシアンさん大丈夫ですか?」

「本当に嫌なやつよね。どさくさに紛れて攻撃しようかしら?」

 俺を心配してユリヤとテレーゼが声をかけてくれた。

「大丈夫だ。俺のことは気にしないでくれ。それよりもチャプス王子には手を出してはダメだ。何を言われようと、依頼が完了するまで我慢だ」

「おい、何こそこそしている! さっさと次の獲物を探すぞ!」

 俺たちが話していると、チャプス王子は森の奥へと進んで行く。

 確かあっちは二番エリアだったな。

リュシアンピグレットとユリヤは先に行って」

 森の奥を見ていると、テレーゼが先に行くように促す。

「どうしてですか? もしかしてお花を摘みたくなったのですか?」

「そんなわけないでしょうが! このアルカイトに止めを刺して、素材を剥ぎ取るのよ」

「おい、おい。そんなことしていいのか? 仮にもここは王族が管理している山だぞ」

「モンスターが一体いなくなったところで分からないわよ。これくらいしないと割に合わないわ。安心して。剥ぎ取った素材は全部リュシアンピグレットにあげるから」

 テレーゼが片目を瞑ってウインクをする。

「おい! いつまで待たせるんだ! さっさと来ないか!」

 中々来ない俺たちに苛立ったのか、先に進んだチャプス王子が声を上げた。

「ほら、早く行かないと依頼失敗になるわよ」

「分かった。だけどある程度で引き上げてくれよ。一応マーキング玉を使って目印をつけておくから」

 テレーゼをその場に残し、俺は急いでチャプス王子と合流した。

 二番エリアに移動すると、そこには巨大なイノシシであるドスブルボーアがいた。

 地面に落ちている木の実を食べているようで、俺たちには気付いていない。

 チラリとチャプス王子の表情を窺う。彼はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 ダメだな。チャプス王子の顔を見る限り、さっきと同じ展開になりそうだ。ここはやつをスルーして他の獲物を探したほうがいい。

「どうやらお気に召さないようですね。他のモンスターを探しましょうか」

「チッ、どうして分かったんだ。引っかからないから詰まらないじゃないか」

 チャプス王子は小声で呟くことなく、堂々と口にする。

「ほら、次の獲物を探すぞ!」

 俺たちはチャプス王子に振り回されながら山の中を彷徨う。途中で別行動をとっていたテレーゼと合流し、今は五番エリアで王子のお眼鏡にかなうモンスターを探している。

「チッ、どうしてこうも僕が持って帰りたいと思うようなモンスターが出て来ないんだ。僕は一秒でも愚民と同じ空気を吸いたくはないというのに」

 中々気に入ったモンスターが出て来ないことに対して苛立ちを覚えたようで、チャプス王子は地団駄を踏む。

 お前と一緒にいたくないのは俺も同じだ。

「くそう! さっさと出て来やがれ!」

 チャプス王子が地面に落ちている石を投げる。彼が投げた石は、地面から突き出ている岩に当たった。

 その瞬間、急に地面が揺れ動いた。

「じ、地震か!」

「いや、揺れているのはこの周辺だけだ。考えられるとすればそれは――」

 言いかけたところで地震の正体が姿を現した。

 岩石のような体に鋭い爪、そしてつぶらな瞳。その特徴を持つモンスターは、岩石土竜と呼ばれるロックモグーラだ。

「で、でかい! これだけ大きければ、きっと歴代王族の中でも一番になれるかもしれない!」

 ロックモグーラを見て、チャプス王子は目を輝かせる。

 どうやらこいつを捕獲すれば満足してくれるみたいだな。

「ユリヤ、テレーゼ戦闘準備! ロックモグーラを捕獲する!」

「はい!」

「了解したわ!」

 俺はハンマーを構えながらロックモグーラに接近した。










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