ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
59 / 171
第六章

第五話 サイズが小さいってどういうことなんだよ!

しおりを挟む
「先手必勝!」

 俺は二足歩行のトカゲのようなモンスター、アルカイトに気付かれる前に接近し、握っているハンマーを思いっきり振り下ろす。

『ぐぎゃ!』

 ハンマーはアルカイトの頭部に直撃すると、やつは短い悲鳴を上げて地面に倒れる。

 頭部を攻撃したことで、モンスターは気絶したようだ。

 白目を向いて舌を出し、痙攣しているかのように手足をピクピクさせていた。

 このまま麻酔針を打ち込んで眠らせれば終わりだ。

 ポーチから麻酔針を取り出し、モンスターの肉体に打ち込もうとする。

「ちょっと待った!」

 針がアルカイトの肉体に刺さろうとしたタイミングで、チャプス王子が静止の声を上げる。

「そんなに小さいサイズを捕まえてどうする! そんなモンスターを捕獲して持って帰れば、王族として恥を晒すことになる。よってそいつの捕獲はやめだ」

「ちょと待ってください! そんなの、聞いていませんよ!」

「それはそうだろう。だって今言ったのだからな。ギャハハ!」

 くそう。最初から無駄足を踏ませるために、俺に捕獲をするように促したのか。

「なら、チャプス王子の言う大きいサイズとはどのくらいでしょうか?」

 同じ失敗を繰り返さないためにも、今度は事前に情報を聞かなければ。

「それはこんなに大きいやつだ」

 チャプス王子はニヤニヤと笑みを浮かべながら、両手で円を描く。

 子どもみたいなことをしやがって。それじゃあ全然分からないじゃないか。

「さて、僕が納得する大きさのモンスターが、愚民のお前に分かるかな? ギャハハ!」

 彼の態度に俺は怒りを覚える。

 くそう。落ち着け、ここでやつに殴り掛かれば全てが終わってしまう。我慢だ。

「リュシアンさん大丈夫ですか?」

「本当に嫌なやつよね。どさくさに紛れて攻撃しようかしら?」

 俺を心配してユリヤとテレーゼが声をかけてくれた。

「大丈夫だ。俺のことは気にしないでくれ。それよりもチャプス王子には手を出してはダメだ。何を言われようと、依頼が完了するまで我慢だ」

「おい、何こそこそしている! さっさと次の獲物を探すぞ!」

 俺たちが話していると、チャプス王子は森の奥へと進んで行く。

 確かあっちは二番エリアだったな。

リュシアンピグレットとユリヤは先に行って」

 森の奥を見ていると、テレーゼが先に行くように促す。

「どうしてですか? もしかしてお花を摘みたくなったのですか?」

「そんなわけないでしょうが! このアルカイトに止めを刺して、素材を剥ぎ取るのよ」

「おい、おい。そんなことしていいのか? 仮にもここは王族が管理している山だぞ」

「モンスターが一体いなくなったところで分からないわよ。これくらいしないと割に合わないわ。安心して。剥ぎ取った素材は全部リュシアンピグレットにあげるから」

 テレーゼが片目を瞑ってウインクをする。

「おい! いつまで待たせるんだ! さっさと来ないか!」

 中々来ない俺たちに苛立ったのか、先に進んだチャプス王子が声を上げた。

「ほら、早く行かないと依頼失敗になるわよ」

「分かった。だけどある程度で引き上げてくれよ。一応マーキング玉を使って目印をつけておくから」

 テレーゼをその場に残し、俺は急いでチャプス王子と合流した。

 二番エリアに移動すると、そこには巨大なイノシシであるドスブルボーアがいた。

 地面に落ちている木の実を食べているようで、俺たちには気付いていない。

 チラリとチャプス王子の表情を窺う。彼はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 ダメだな。チャプス王子の顔を見る限り、さっきと同じ展開になりそうだ。ここはやつをスルーして他の獲物を探したほうがいい。

「どうやらお気に召さないようですね。他のモンスターを探しましょうか」

「チッ、どうして分かったんだ。引っかからないから詰まらないじゃないか」

 チャプス王子は小声で呟くことなく、堂々と口にする。

「ほら、次の獲物を探すぞ!」

 俺たちはチャプス王子に振り回されながら山の中を彷徨う。途中で別行動をとっていたテレーゼと合流し、今は五番エリアで王子のお眼鏡にかなうモンスターを探している。

「チッ、どうしてこうも僕が持って帰りたいと思うようなモンスターが出て来ないんだ。僕は一秒でも愚民と同じ空気を吸いたくはないというのに」

 中々気に入ったモンスターが出て来ないことに対して苛立ちを覚えたようで、チャプス王子は地団駄を踏む。

 お前と一緒にいたくないのは俺も同じだ。

「くそう! さっさと出て来やがれ!」

 チャプス王子が地面に落ちている石を投げる。彼が投げた石は、地面から突き出ている岩に当たった。

 その瞬間、急に地面が揺れ動いた。

「じ、地震か!」

「いや、揺れているのはこの周辺だけだ。考えられるとすればそれは――」

 言いかけたところで地震の正体が姿を現した。

 岩石のような体に鋭い爪、そしてつぶらな瞳。その特徴を持つモンスターは、岩石土竜と呼ばれるロックモグーラだ。

「で、でかい! これだけ大きければ、きっと歴代王族の中でも一番になれるかもしれない!」

 ロックモグーラを見て、チャプス王子は目を輝かせる。

 どうやらこいつを捕獲すれば満足してくれるみたいだな。

「ユリヤ、テレーゼ戦闘準備! ロックモグーラを捕獲する!」

「はい!」

「了解したわ!」

 俺はハンマーを構えながらロックモグーラに接近した。










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽にしていただけると助かります。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...