ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第六章

第四話 これはチャプスの儀式なのに俺が成人の儀を受けていないか?

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 翌日、俺たちはお城に向かっていた。

「またあのクソブタ王子の顔をみないといけないなんて、本当に憂鬱だわ。顔が良ければ少しはマシだったのに、リュシアンピグレット以下だし、本当のブタみたいに丸々太っていて性格も悪い。本当に救いようのないダメ王子よ」

 お城に向かいながらテレーゼがチャプス王子の悪口を言う。

「テレーゼさん。気持ちは分かりますが、堂々とチャプス王子の悪口を言うのは、やめたほうが良いですよ。どこでお城の関係者が見ているのか分かりませんから」

 散々悪態をつくテレーゼを見て、ユリヤがやめるように言う。

「分かったわよ。でも後で何かスカッとすることが起きないかしらね。あのクソブタ王子が民衆の前で大恥をかくとかだと最高なんだけど」

 もし、そんなことになれば、これまで溜まったヘイトが解消されるかもしれない。だけど現実的にはそんなことは起きない。そんな都合のいいことは、物語の世界でしか起きないものだ。

 そんなことを考えていると、お城の前に到着した。昨日の門番に挨拶をすると中に入れてもらう。

 お城の中を歩いて謁見の間に来ると、扉が開いていた。

 部屋の様子を伺うと、レンナルト王様とチャプス王子の姿が見えた。俺たちは謁見の間に入り、彼らに挨拶をする。

「レンナルト王様、チャプス王子、おはようございます」

「おお、リュシアン。来てくれたか。おはよう」

 レンナルト王様は挨拶を返してくれるも、チャプス王子は無言だった。

 前に所属していたハンターギルドでもこんなやついたよな。自分の嫌いなやつには挨拶を返さないで無視をする。

 挨拶を返すことができるかどうかで、その人の器というものが分かると言うのに。

 この時点で、チャプス王子の評価が更に下がった。

「ではリュシアンたちも来たことだし、チャプスよ、早速出発しなさい」

「分かりました父上」

 チャプス王子はレンナルト王様に一礼をした後、彼は俺の方を向く」

「何ボサっとしているんだ! さっさと外に出ないか! 王家が管理している山には馬車で移動する!」

 俺のところに近づくと、彼は右手を前に出してきた。そのまま俺の肩を掴んで床に倒そうとしているのだろう。

 彼の考えが読めた俺は、右足を引いて後方に下がろうとした。しかし、俺の動きよりもチャプス王子の方がワンテンポ早い。

 このままでは俺は押し倒される。

 そう思ったが、偶然にも俺の足がチャプス王子の足に当たり、バランスを崩した彼はそのまま顔面から床に倒れる。

「ぐぎゃ!」

 そんな彼の姿を見て、天罰って本当にあるんだなと思った。

「チャプス王子大丈夫ですか?」

 彼に手を差し伸ばすが、チャプス王子は俺の手を握ることはなかった。彼は自分の力だけで起き上がると、俺を睨みつける。

「おのれ! 貴様! 今のわざとだろう! わざと俺に足を引っ掛けやがったな!」

「いやいや、今のは偶然ですよ。確かにチャプス王子が押し倒そうとするのを躱そうとはしましたが、足を引っ掛けようとは思っていませんでした」

 事実を告げるも、彼は俺を睨みつけるのをやめなかった。

「絶対に後悔させてやる。王家の山でこき使ってやるからな」

 チャプス王子は不機嫌オーラを全開にして謁見の間から出て行く。

 わざとではないのに、これは困ってしまったな。

 先行きが怪しくなる中、俺たちも謁見の間から出るとお城の外に向かった。

 お城の外に出ると、ちょうどチャプス王子が馬車に乗り込もうとしていた。

「遅いぞ! 何チンタラしていたんだ!」

 いや、チャプス王子が出てから俺たちも直ぐに追いかけたのだけどなぁ。

 それにしても、どうしていちいち細かいことに対して悪態をつくのだろうか。そうしないと自分を保てないのだろうか。もし、そうならなんて哀れな人なのだろう。

「なんだ! その憐れむような顔は!」

 いや、憐れむようなではなく、本当に憐れんでいるのだけど。

 本当はそう言いたかったが、心の中に止めるだけにしておく。

 だって、口に出したら余計に彼の機嫌を損ねてしまうからな。

「くそう! いいか! お前たちのような平民には僕が乗る馬車に同乗することは許さない! だからお前たちは走って追いかけて来い! 御者! 出発しろ!」

 チャプス王子が馬車の扉を閉めると、御者は馬を走らせる。

「仕方がない。俺たちも追いかけるか」

「そうですね。あれくらいのスピードなら、追いかけることは可能です」

「本当は汗だくにはなりたくないけれど、これもハンターとしての仕事だから割り切るしかないわね」

 俺たちは走って馬車を追いかける。これくらいのロードワークなら、普段の仕事に比べれば全然きつくない。

 一時間ほど走っただろうか。どうやら王家の山に着いたようで、馬車が止まった。そしてチャプス王子が馬車から降りてくる。

「ハハハ! 汗だくではないか! そんなので僕の護衛ができるのか? ああ?」

「全然問題ないですよ。俺たちはこの三倍の時間、休憩なしで走ったこともありますので」

 息一つ乱さないで言葉を連ねると、チャプス王子は歯を食いしばった。そして拳を握り振るわせている。

 どうやら自分の思いどおりにいかなかったことに対して怒りを感じているみたいだな。

 俺たちを舐めすぎだ。

「くっ、まぁいい。これが捕獲に必要なアイテムだ。お前に渡しておく」

 チャプス王子が馬車の中からハンマーと捕獲に必要なアイテムを取り出し、俺に渡してくる。

 今度は荷物持ちか。ハンマーの方は俺が持つとして、他のアイテムはポーチの中に入れておくか。

 受け取ったアイテムをポーチの中に入れ、俺はハンマーを握る。

 このハンマー、思っていたのよりも重いな。扱うのが難しそうだ。

「ほら行くぞ! ボサっとするな!」

 チャプス王子は手ぶらな状態で歩き、山の奥に進んで行く。

 しばらく歩くと二足歩行のトカゲのようなモンスターを発見した。

 あのモンスターはアルカイト。体内でなぜかアルカイト鉱石を生成することができるモンスターだ。

「チャプス王子! 居ましたよ!」

「そうかそうか。なら、お前がやれ」

 はぁ? 何を言っているんだこいつは? これはお前の試練であって、俺がする必要はない。

「何を言っているんですかチャプス王子。これはあなたの成人の儀ですよ。あなたがしないと意味がないではないですか」

「お前がやらないと言うのであればそれでいい。だけどそのときは成人の儀は失敗だ。もしそうなればお前の護衛に問題があったとされ、依頼は失敗。ダメダメなハンターを送った責任をギルドマスターは負わされるだろうよ。キシシ」

 下卑た笑みを浮かべながら、チャプス王子は脅してくる。

 チッ、なんて最悪な男なんだ。こんなのが次期王となるなんてこの国の将来が心配になる。

 だけどここで指示に従わなければ、ギルドが存続できなくなる。

「分かりました。やれば良いんでしょうが!」

 俺は声を上げるとハンマーを振り上げ、アルカイトに獲物をぶつける。










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