ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第五章

第九話 くそう!どうしてこうなってしまうんだよ!

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~フェルディナン視点~



「くそう! くそう! くそう! どうしてこうなってしまったんだ!」

 俺ことフェルディナンは、ギルドマスター室で感情を抑えきれずに声を荒げた。

 砦に向かっている間、ギルドのことを任せていたハンターが運営を失敗し、経営が再び傾きつつあったのだ。

「くそう。何をやっていたんだアイツは!」

 確かにあいつは運営経験がないと言っていた。しかし、初心者の俺でもこのギルドを乗っ取った際に、ここまで傾くようなことにはならなかった。

「あいつに頼んだのが間違いだった。こうなるのであれば、他のやつに頼めば良かった」

 一度失った信頼を再び取り戻すには時間がかかる。一日でも早くギルドとしての信頼を取り戻すには、多くの依頼を受け、依頼主からの信頼を取り戻さないといけない。

「こうなったら、もっと多くの依頼を受けてハンターたちにやらせる。あいつらはアントニオがギルドマスターだった時代を生き抜いたやつらだ。少し仕事の量が増えた程度でもなんとかやっていけるはず」

 そうだ。俺の運営方針は間違っていない。少なくともアントニオと比べればホワイト化しているんだ。少し仕事の量を増やしても何も問題はない。

 俺は口角を上げた。

「まずはこの俺自ら依頼主のところに出向き、依頼を請け負って仕事をもらおう」

 ギルドマスター室から出ると、俺はそのまま裏口から出てギルドを抜け出す。





 数日後、俺は多くの依頼者から仕事をもらい、それをハンターたちに分配する。

「それじゃあ、今日もケガは最低限にして頑張ってくれ」

「おい! これはどういうことだ!」

 踵を返してギルドマスター室に戻ろうとすると、背後からハンターの一人が呼び止める。

「何だ? 何か文句でもあるのか?」

「大有りだ! いくら何でもこの仕事量はおかしいだろう!」

 文句を言ってきたのは、ギルドの運営を任せたあのハンターだった。

 俺は彼を睨みつける。

「何を言っているんだ! このギルドが信頼を失いつつあるのは、お前が運営に失敗したからだろうが! その責任を負うのは当たり前じゃないか!」

「だからと言って、これを一日で終わらせるのはムリだって」

 ハンターの言葉に、俺は怒りを覚える。

「やる前からムリだと決めつけるな! 己の限界を自ら決めるな! 弱音を吐くのは仕事をしてから言え!」

 怒鳴り声を上げると、俺は他のハンターたちを見る。

「いいか! 今ギルドの仕事が忙しくなってしまったのは、こいつが大変なミスをしてしまったからだ! 恨むのであれば、こいつを恨めよ! こいつがギルドマスター代理の仕事をきっちりしなかったのが原因だ!」

「どうして俺のせいになるんだよ。こんなのおかしいじゃないか。マニュアルもないのに、どうやれと言うんだよ。このクソギルドマスター」

 ハンターは聞こえないようにポツリと漏らしたようだが、俺はセリフの一言一句を聞き逃さなかった。

 反省している素振りを見せていたら、少しは仕事の量を減らしてやろうかとも考えていたが、やっぱりやめだ。反省するどころか俺の悪口を言いやがる。こいつはしばらく地獄を見るほどの仕事を押し付けてやる。俺の悪口を言った罰だ。

 俺は聞こえなかったフリをして、そのままギルドマスター室に戻っていく。

 扉を開けて中に入り、イスに座った。

 さて、アントニオと違って俺は、一応あのバカハンター共の実力と言うのは把握している。単純に仕事の量を増やすだけでは、アントニオの二の舞となってしまう。

「やっぱり金儲けをするためには優秀なハンター道具が必要だな。こうなってしまうと、やっぱりどんな手を使ってでも、リュシアンを連れ戻さなければならない。何かいい方法がないだろうか」

「お任せください。私にいい方法があります」

「うわっ! き、貴様! いつの間に入ってきた!」

 俺の前には仕事に向かったはずのハンターの一人がいた。

「一応ノックはしましたが、返事がなかったので勝手に入らせてもらいました」

 いや、返事がなかったのならそのまま帰れよ!

 まぁいい。えーと、こいつの名前は確かペテンだったよな。

「ペテン、俺に何か用か? 仕事の量を減らせという要求はムリだからな」

「いえいえ、そのような用事ではありません。それよりも、リュシアンを連れ戻したいのですよね。それなら私に策がございます」

 こいつはハンターになる前、城の戦略家として働いていたよな。もしかしたら何かいい助言が聞けるかもしれない。

 物は試しだ。聞くだけ聞いてやろうじゃないか。

「ほう、では聞こうではないか。お前の考える策というやつを」

「はい。まぁ、簡単なことです。彼が所属しているギルドを潰す。ただこれだけですよ」

「それは物騒だな。そんなことをすれば、ハンターギルド協会のやつらバレたら俺のクビが飛ぶ」

「安心してください。そこは元戦略家である私を信じて欲しい。ハンターギルド協会にバレないように上手くやってみせます」

 ペテンはニヤリと笑みを浮かべる。

 正直に言って半信半疑だが、現状では他の方法は思いつかない。ここはギャンブルになるが、彼に託してみるのも一興だ。

「分かった。お前にお願いしよう。それで、具体的にはどのような方法であのギルドを潰すんだ?」

「はい。あのギルドに難易度の高い依頼を根回しするのです。たくさん難しい依頼を受けさせれば、いずれ失敗続きになります。そうすればハンターギルドとしての信頼を失い、勝手に倒産するでしょう。我々は仕事を委託しただけですので、ハンターギルド協会から目をつけられることはありません」

 なるほど、確かにその方法なら上手くいくかもしれない。

 いくらリュシアンが超優秀なハンターであったとしても、他のハンターたちは平均並だ。高難易度の依頼を送れば、彼の言うとおり失敗するだろう。

「なるほどな。確かにそれはいいアイディアだ。採用しよう」

「ありがとうございます。では、私は今から準備をしますので、私の仕事を誰かにお願いします」

 ペテンは机の上に俺が与えた依頼書の紙を置く。

 こいつ、自分が楽をしたいために俺に協力してくれたな。食えないやつだ。

 まぁいい。ペテンに頼めば上手く行くはずだ。リュシアンさえ戻れば、俺の心配事がなくなり、一生楽して生きていくことができる。

 ギルドマスター室から出て行くペテンの後ろ姿を見ながら、俺はそんなことを思っていた。











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