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第五章
第三話 バカンスからサバイバルへ
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「皆んなに悲しいお知らせがあるわ。食料を持ってくるのを忘れた」
「「えええ!」」
エレーヌさんが食材を忘れたと言い、ユリヤとテレーゼが驚きの声を上げた。
やっぱり嫌な予感が的中してしまったか。
「だ、大丈夫よ。この小島には魚もいるし、森の奥には飲み水に使える小川も流れているわ。一応獣もいるから肉にも困らないはずよ。ビタミンが心配なら、果物も探せばあるはず」
俺たちを安心させようとしているのだろう。エレーヌさんは食材を採取できることを教えてくれる。
「本当に大丈夫なんですか?」
「何だか心配になってくるわね」
しかし彼女が早口で捲し立てているせいで、ユリヤとテレーゼには余裕がないように映ったようだ。顔を俯かせ、表情が少し暗い。
ここは俺がどうにかして、この空気を変えないといけないよな。
「大丈夫だ。エレーヌさんが食材を調達できる保証があると言っている以上は、飲食に関しては問題ない。俺たちはハンターだぞ。採取系の依頼だと思ってやれば、直ぐに必要な食材くらいは揃うに決まっている」
俺はなるべく明るく振る舞い、自分たちで食材を集めようと皆んなに言う。
「そうですね。リュシアンさんの言うとおりです!」
「そうね。あたしたちはハンターよ。採取なんて何度もやっているから、こんなの余裕で集めてみせるわ」
二人が奮起してくれたことに対して、俺は心の中で安堵した。
これで少しはこの場の空気が明るくなっただろう。サバイバルだと思うから不安になってしまうんだ。採取の依頼と思えば、全然怖くない。
まぁ、せっかくのバカンスなのに、仕事と結びつけてしまうのは良くないけど、この際は仕方がないよな。
「それじゃあまずは必要な水だな」
「それならわたしが行くわね。小川の場所は知っているから、水を汲んでくるわ」
エレーヌさんが別荘に置いてあったバケツを掴み、家から出て行く。
きっと責任を感じているのだろうな。
「それならあたしは山菜や果物を探して来るわ」
「なら、私は魚でも釣りましょう」
テレーゼとユリヤが自分のすべきことを決めると、彼女たちも別荘を出て行く。
「さて、俺も何かをしないといけないけど、まずは何から始めようか?」
俺の脳裏には【ユリヤと魚釣りをする】【小川に向かい、エレーヌさんを手伝う】【テレーゼと山菜取りをする】【森の中で肉となる獣を探す】の四つの選択肢が現れた。
数秒間考えていると、まずは魚が必要だと考えに至った。
魚は栄養の宝石箱と呼ばれ、健康を保つ上で欠かせない栄養が豊富に含んでいる。
釣り竿とエサを持って、魚が居そうな場所に向かうと、先に別荘を出たユリヤが釣りを始めていた。
「ユリヤどうだ? 当たりはあったか?」
「リュシアンさん。いえ、まだ当たりはきていませんね。魚影は見えるので、ただエサに食いついていないみたいです」
「そうか。まぁ、釣りは気長に待つものだからな」
ユリヤの横に並び、水面を見る。
確かに魚影は見えるから、魚がいるのは確実だ。今のところは運が悪いだけのようだな。
ここはポイントとしても良さそうだし、俺もここで釣りをするか。
釣り針にエサを取り付け、俺は投げ釣りの要領で海に向かって針を飛ばす。
「お! いきなりかかった!」
「キャ!」
魚がエサに食い付いたと思った瞬間、ユリヤが悲鳴を上げる。
彼女の方を見ると、俺の投げた針がユリヤの水着のお尻部分に引っかかっていた。
魚ではなくユリヤが釣れた。
「ご、ごめん。直ぐに外すから」
慌ててしまった俺は、彼女に近付いて針を取って上げるという選択肢が頭の中から外れ、何を血迷ったのか竿を動かして針を取ろうとした。
くそう。どうして外れない!
俺は思い切って竿を引っ張った。その瞬間、針は外れてくれたが、彼女の水着に穴を空けてしまった。
破けた布から、少しだけ彼女のお尻の割れ目が見えてしまう。
「もう、次から気を付けて投げてくださいね」
怒られると思っていたが、どうやらユリヤは気付いていないようだ。
まぁ、少し破けてしまった程度だから気づかれなかったのだろう。
不幸中の幸に安堵しながらも、俺はある意味ドキドキとしながら釣りを再開する。
今度は上手く投げ、海の水面に釣り糸が落ちた。
しばらく様子を伺っていると、魚が食い付いたようで、竿が引っ張られる。
「ヒットした!」
俺は力の限り引っ張り、どうにかして釣り上げようとするも、魚の抵抗も激しい。一人では中々釣り上げられない状況に陥っていた。
「リュシアンさん! 私も手伝います!」
「すまない。お願いする」
俺の体に腕が回され、二人の力で釣り竿を引っ張る。
ユリヤの柔らかい腕や胸が俺の体に伝わってくるも、ラッキースケベを堪能する暇など、今の俺にはない。
「せーの!」
声をかけ、俺とユリヤは力の限り竿を引っ張った。
すると魚は吊り上げられ、空中に跳んだ。体を左右に動かし、ピチピチと空中を泳ぎながら地面の上に落下する。
「やりましたね! リュシアンさん! 大物が釣れましたよ!」
「そうだな。これで一応夕飯には困らないかもしれないけど、念のためにもっと釣っておこう」
「そうですね」
俺たちはもうしばらく釣りを続け、その後も三匹の魚が釣れた。
魚釣りを終え、釣った魚を別荘に運ぶと俺はテレーゼを探しに山に向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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何卒宜しくお願いします。
「「えええ!」」
エレーヌさんが食材を忘れたと言い、ユリヤとテレーゼが驚きの声を上げた。
やっぱり嫌な予感が的中してしまったか。
「だ、大丈夫よ。この小島には魚もいるし、森の奥には飲み水に使える小川も流れているわ。一応獣もいるから肉にも困らないはずよ。ビタミンが心配なら、果物も探せばあるはず」
俺たちを安心させようとしているのだろう。エレーヌさんは食材を採取できることを教えてくれる。
「本当に大丈夫なんですか?」
「何だか心配になってくるわね」
しかし彼女が早口で捲し立てているせいで、ユリヤとテレーゼには余裕がないように映ったようだ。顔を俯かせ、表情が少し暗い。
ここは俺がどうにかして、この空気を変えないといけないよな。
「大丈夫だ。エレーヌさんが食材を調達できる保証があると言っている以上は、飲食に関しては問題ない。俺たちはハンターだぞ。採取系の依頼だと思ってやれば、直ぐに必要な食材くらいは揃うに決まっている」
俺はなるべく明るく振る舞い、自分たちで食材を集めようと皆んなに言う。
「そうですね。リュシアンさんの言うとおりです!」
「そうね。あたしたちはハンターよ。採取なんて何度もやっているから、こんなの余裕で集めてみせるわ」
二人が奮起してくれたことに対して、俺は心の中で安堵した。
これで少しはこの場の空気が明るくなっただろう。サバイバルだと思うから不安になってしまうんだ。採取の依頼と思えば、全然怖くない。
まぁ、せっかくのバカンスなのに、仕事と結びつけてしまうのは良くないけど、この際は仕方がないよな。
「それじゃあまずは必要な水だな」
「それならわたしが行くわね。小川の場所は知っているから、水を汲んでくるわ」
エレーヌさんが別荘に置いてあったバケツを掴み、家から出て行く。
きっと責任を感じているのだろうな。
「それならあたしは山菜や果物を探して来るわ」
「なら、私は魚でも釣りましょう」
テレーゼとユリヤが自分のすべきことを決めると、彼女たちも別荘を出て行く。
「さて、俺も何かをしないといけないけど、まずは何から始めようか?」
俺の脳裏には【ユリヤと魚釣りをする】【小川に向かい、エレーヌさんを手伝う】【テレーゼと山菜取りをする】【森の中で肉となる獣を探す】の四つの選択肢が現れた。
数秒間考えていると、まずは魚が必要だと考えに至った。
魚は栄養の宝石箱と呼ばれ、健康を保つ上で欠かせない栄養が豊富に含んでいる。
釣り竿とエサを持って、魚が居そうな場所に向かうと、先に別荘を出たユリヤが釣りを始めていた。
「ユリヤどうだ? 当たりはあったか?」
「リュシアンさん。いえ、まだ当たりはきていませんね。魚影は見えるので、ただエサに食いついていないみたいです」
「そうか。まぁ、釣りは気長に待つものだからな」
ユリヤの横に並び、水面を見る。
確かに魚影は見えるから、魚がいるのは確実だ。今のところは運が悪いだけのようだな。
ここはポイントとしても良さそうだし、俺もここで釣りをするか。
釣り針にエサを取り付け、俺は投げ釣りの要領で海に向かって針を飛ばす。
「お! いきなりかかった!」
「キャ!」
魚がエサに食い付いたと思った瞬間、ユリヤが悲鳴を上げる。
彼女の方を見ると、俺の投げた針がユリヤの水着のお尻部分に引っかかっていた。
魚ではなくユリヤが釣れた。
「ご、ごめん。直ぐに外すから」
慌ててしまった俺は、彼女に近付いて針を取って上げるという選択肢が頭の中から外れ、何を血迷ったのか竿を動かして針を取ろうとした。
くそう。どうして外れない!
俺は思い切って竿を引っ張った。その瞬間、針は外れてくれたが、彼女の水着に穴を空けてしまった。
破けた布から、少しだけ彼女のお尻の割れ目が見えてしまう。
「もう、次から気を付けて投げてくださいね」
怒られると思っていたが、どうやらユリヤは気付いていないようだ。
まぁ、少し破けてしまった程度だから気づかれなかったのだろう。
不幸中の幸に安堵しながらも、俺はある意味ドキドキとしながら釣りを再開する。
今度は上手く投げ、海の水面に釣り糸が落ちた。
しばらく様子を伺っていると、魚が食い付いたようで、竿が引っ張られる。
「ヒットした!」
俺は力の限り引っ張り、どうにかして釣り上げようとするも、魚の抵抗も激しい。一人では中々釣り上げられない状況に陥っていた。
「リュシアンさん! 私も手伝います!」
「すまない。お願いする」
俺の体に腕が回され、二人の力で釣り竿を引っ張る。
ユリヤの柔らかい腕や胸が俺の体に伝わってくるも、ラッキースケベを堪能する暇など、今の俺にはない。
「せーの!」
声をかけ、俺とユリヤは力の限り竿を引っ張った。
すると魚は吊り上げられ、空中に跳んだ。体を左右に動かし、ピチピチと空中を泳ぎながら地面の上に落下する。
「やりましたね! リュシアンさん! 大物が釣れましたよ!」
「そうだな。これで一応夕飯には困らないかもしれないけど、念のためにもっと釣っておこう」
「そうですね」
俺たちはもうしばらく釣りを続け、その後も三匹の魚が釣れた。
魚釣りを終え、釣った魚を別荘に運ぶと俺はテレーゼを探しに山に向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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