ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第四章

第十二話 砦内での防衛 前編

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 俺はフェルディナンを安全の場所に連れて行った後、直ぐにユリヤたちがいるところに戻った。

 彼女たちは大砲やバリスタの弾を使って応戦しているが、ライトニングロウにはあまりダメージを与えていないような気がする。

 やっぱりガタイが良い分、防御力は高いみたいだな。

 だけど、人間に急所があるように、モンスターにも弱点がある。その場所を探し出して集中攻撃だ。

「ユリヤとテレーゼはそのまま攻撃を続けてくれ! 俺は接近戦でこいつの気を引く!」

「分かりました!」

「了解したわ!」

 二人が比較的安全な場所で攻撃をしている中、俺はライトニングロウに近づく。

 そして鞘から太刀を抜くと、モンスターの前脚を切り裂く。

 フェルディナンの大剣では鱗の硬さに弾かれていたが、俺の持つ太刀の方が切れ味は上だったみたいだ。

 刃が敵の前脚を切り裂き、鮮血が噴き出す。

『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 ライトニングロウが咆哮を上げた瞬間、やつは跳躍して空中に跳んだ。

 何だか嫌な予感がする。

 直感的にこの場にはいないほうがいいと思った俺は、バックステップで砦の端にまで移動した。

 モンスターが体を反転させると背中から床に倒れ、やつは体を左右にくねらせて擦り付ける。

 まるで犬が匂いを擦り付けているみたいだな。

 そんなことを考えていると、今が攻撃のチャンスだと気づく。

 直ぐにモンスターに駆け寄り、ライトニングロウの尻尾を切り裂いた。

「尻尾にも刃が通る。これなら切断することも可能だ」

 しばらく尻尾を攻撃していると、モンスターは立ち上がり、俺は距離を開ける。

『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 再びライトニングロウが咆哮を上げるが、この咆哮は先ほどのものとは違った。

 モンスターの体毛がより逆立ち、背中には静電気が溜まっているようで、パリパリと音が聞こえていた。

 もしかして憤怒状態に入ったのか? もしそうなら距離を空けたほうが良い。

『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 再びモンスターが顔を上げて上空に向けて咆哮を上げる。すると雷雲から落雷が落ち、バリスタの球を発射する装置に落ちた。

 運よくユリヤたちが使っている装置には当たらなかったが、あんなものが当たってしまっては、運が悪ければ即死だ。

 やつの攻撃を目の当たりにした俺は、歯を食いしばる。

 ライトニングロウが顔を上方へと向けて吠えたことによって風が舞い上がり、上昇気流へと変化すると上空の雲に到達。中にある小さい氷の粒と、霰や雹に成長した大きい氷の粒が衝突を繰り返すことでこの時摩擦が起き、静電気が発生すると蓄えきれなくなった電荷が大地の正電荷に誘導され、大地に目がけて放電を起こしたのだ。

 尋常ではない肺活量で上空にまで届く風を生み、意図的に落雷を引き寄せることができるモンスター。これがライトニングロウと呼ばれる所以ゆえんだ。

「ユリヤとテレーゼは装置から離れろ! 装置に直撃したら即死だぞ!」

「分かりました!」

 ユリヤは素直に離れてくれるも、テレーゼはなかなか離れてくれない。

「おい! なにをやっている! テレーゼもその場から離れろ!」

「大丈夫よ。今の攻撃を見る限り、あいつが吠えない限り落雷は落ちない。吠えてから離れてもまだ間に合うわ」

 俺の指示を無視して、テレーゼはライトニングロウに向けてバリスタの弾を発射し続けた。

 確かに彼女の言うことにも一理ある。だけど、だからと言って命の危険を冒してまでする戦法ではない。

「良いから離れるんだ!」

「大丈夫よ! あたしならやれる!」

 テレーゼの言葉に、俺は歯を食いしばる。

 どうして彼女はあそこまで必死に戦おうとする。君には、多くのファンがいるんだぞ。敵の攻撃でやられてしまっては、多くのファンが悲しむことくらい分かっているはずなのに。

「ユリヤ!」

「分かっています。テレーゼさんは、私が責任持って装置から離します。なので、リュシアンさんは目の前の敵に集中してください」

 ユリヤに声をかけると、彼女は俺の言いたいことが分かっているようで、直ぐに返答してくれた。

 彼女がいて本当によかった。俺だけだったら、テレーゼのことを気にしながらライトニングロウと戦わなければならなかったからな。

「ボウズ!」

 ベルトラムさんの声が聞こえ、声がした方に顔を向ける。

 そこにはスキンヘッドの頭に、揉み上げと顎髭がつながっているジャンボジュニアと呼ばれる髭を生やしているお爺さんが立っていた。

「ベルトラムさん!」

「遅くなってすまない。だけどある意味良いタイミングであったとも言えるな。頼まれていた属性玉だ! 受け取れ!」

 ベルトラムさんが年を感じさせないほどの声量で叫ぶと、俺のところに属性玉を投げた。

 しかしコントロールが悪く、俺の頭上を通り過ぎようとする。

 投げるならもう少し正確に投げてくれよ。

 跳躍して片手でキャッチすると、柄にある穴に属性玉を埋め込む。

「剣を握って念じろ! そうすれば、ボウズの強い意志に玉が反応する!」

 ベルトラムさんが説明するが、ようはイメージってことだろう。

 俺は頭の中でイメージを膨らませる。

 流石に剣先から水が放出されて、遠距離攻撃ができるなんてことにはならないよな。

 戦闘最中にも関わらず、俺はそんなふざけたことを考えてしまった。しかしその瞬間、俺の妄想は現実のものとなる。

 空中に漂う水分子が剣先に集まり、知覚できる量にまで集まると、直径一ミリの細さになった。

「これってまさか!」

 試しに突いてみると、剣先の水が一気に放出され、ライトニングロウの右肩に直撃した。

 モンスターの右肩から、ポタポタと血が流れ落ちる。

 水が触れた場所の肉を抉って吹き飛ばしたのか。

「これなら、相手が憤怒状態であっても遠距離からダメージを与えることができる!」

『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 そう思った瞬間、ライトニングロウは咆哮を上げる。

 直ぐにテレーゼたちがいる方に顔を向けると、彼女たちはまだバリスタの弾を発射する装置のところにいた。

「良い加減にしてください!」

「良い加減にするのはユリヤの方よ! あたしはぎりぎりまでリュシアンピグレットのサポートをするの! 雷程度でこの場から離れる訳にはいかないわ!」

 テレーゼたち、まだ言い合いをしているのか。

 俺はライトニングロウの方を見ると、やつはユリヤたちを見ていた。まずい。二人が標的になってしまった。

「くそう! 間に合え!」

 俺はやつの落雷から二人を守ろうと瞬時に動く。











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