ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第四章

第九話 チッ、今更砦の要請が合っても遅いんだよ

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~フェルディナン視点~



 遡ること数日前。

 俺ことフェルディナンは、ギルドマスター室で机の上に足を置き、ふんぞり返っていた。

 本当にギルドマスターの職と言うものは楽だぜ。俺は依頼主から依頼を受注してそれをハンターにやらせるだけで、金が入って来るんだからよ。

「さて、たまには部屋から出るとするか。イスに座りっぱなしと言うのもきついからな」

 部屋から出てギルド内の様子を伺う。すると一人の男が俺のところにやって来た。

「フェルディナン!」

「ギルドマスターだと何度も言っているだろうが」

 呼び捨てしてきた男を、俺は睨む。

 この男は昔から俺が毛嫌いしていた男だ。どうせろくにハンターとして使えないくせに、吼えるだけ吼えに来たのか。

「そんな細かいことはどうでもいい! おい、もっと仕事量を減らしてくれ! あまりにも仕事の量が多すぎじゃないのか!」

 何を言い出すかと思えば、また仕事の量を減らせだ? お前に割り振っているのは、どちらかと言うと雑用系の仕事がメインで、討伐などの危険な仕事はさせていないはずなんだが?

「多すぎる? どこが多い?」

「どこが多いって。この依頼書の束を見てもそれが言えるのかよ!」

 男は手に持っていた依頼書を俺に突きつける。

 紙の束を受け取り、俺は中身をチェックする。

 やっぱり薬草採取系の雑用ばかりじゃないか。討伐系の依頼は一つしか入れていない。

「別にこれくらい普通じゃないか。さすがにこれプラス討伐系の依頼が三件ほどあれば酷使しているが、討伐系をメインにしているハンターたちと比べると、さほど難易度の高いものを与えてはいないはずなのだが」

「それでも、この量はあまりにもおかしい!」

「なぁ、それをアントニオにも言えるのか?」

 目を据わらせてやつを見ると、男は顔を引き攣らせた。

「確かにお前の言うことにも一理あるかもしれない。だが、新しいギルドとして生まれ変わって、まだ日が経っていない。色々と改善をしている最中だ。だけどアントニオがギルドマスターをしていたときに比べればマシだろう?」

 俺の説明に、男は歯を食いしばって視線を逸らす。事実である以上、文句を言えないみたいだ。

 良いぞ。俺も含めてこのギルドで働いている者は、アントニオの時に地獄を見ている。あの時よりも仕事量が少しでも減れば、ハンターたちは少し楽ができる。楽ができれば以前よりもマシだと思い、己を奮起させる。

 こうすることで、少しずつ俺の言いなりにさせ、ハンターを道具として教育していくつもりだ。

 だけど、この男は昔から俺のことをよく思っていない。こんなやつが俺の野望に気づくと色々と面倒だよな。

「分かった。特別にお前には明日休暇をやろう」

「本当……か?」

「ああ。本当だ。だけど明後日は一日休んだ分、きっちりと働いてもらうからな」

「わ、分かった。だけど今言った言葉、絶対に忘れるんじゃないぞ!」

 男は依頼書の束を俺から奪うと、この場から離れていく。

 これから先、ああ言うやつをどうにかコントロールしていかないといけないな。

 まぁ、明日休む分はあいつに支払う金は発生しないからな。それに、一日休んだと言うことは、他のハンターよりも体力が有り余っているということだ。

 それなら、討伐系をメインにやらせてこき使ってやる。

「フェルディナン、ここにいたのか」

 ニヤニヤと笑みを浮かべていると、また別のハンターが声をかけてきた。

「だからギルドマスターと言えと何度も言っているだろうが!」

「あ、すまない。慣れないものでつい」

「たく、それで、俺に何のようだ?」

「ギルドマスター宛に手紙が届いていた」

「手紙?」

 ハンターから手紙を受け取ると、開封して中身を確認する。

『砦建設が滞っているらしく、手伝いとしてハンターの派遣を手伝ってほしい。他のハンターギルドにも声をかけているので、手伝いに向かわせるのは数人で構わない』

 砦建設と言えば、将来モンスターによる災いを、町中に持ってこさせないために作られた砦だよな。

 この手紙が書かれたのは三週間前じゃないか。今頃向かったところで、どうせ砦は完成している。

 だからと言って、誰も行かなければその分、このギルドの評判は落ちることになるだろうからな。

 とりあえず、ギルドマスターとして顔だけでも覗かせるか

「おい、俺は今から出かけて来る。俺が留守の間、お前に運営を任せた」

「ま、待ってくれ! 俺はただのハンターなんだぞ! 経営の経験なんてやったことがない」

「できなくともするんだ! 人間やればできる!」

 彼に無理やり任せると、俺はギルドから出て行った。









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