ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第四章

第七話 急げ! 砦の建設

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 翌日、俺は砦の建設の手伝いのために現場に来ていた。

「思っていたのより、ある程度は完成しているな。これなら思ったよりも早く完成させることができそうだ」

 えーと、現場の責任者は?

「おい! そこ! トロトロするな! 早く木材を運ばないか! 時間は残されていないんだぞ!」

 辺りを見渡していると、大声で作業員に指示を出している人がいることに気付く。

 きっとあの人だろう。

「すみません。俺は依頼を受けたハンターですが、まずは何からすればいいでしょうか?」

「おお、来てくれたか。ハンターの手を借りてしまって申し訳ない。他にも何人かのハンターに手伝ってもらっているから、彼女たちがやっているのと同じものをしてくれ」

「彼女たち?」

「あ、リュシアンさん! リュシアンさんもエレーヌさんから頼まれたのですか?」

 現場の責任者と話していると、茶髪のセミロングの女の子が、バリスタの弾を抱えながら俺のところに来た。

「ちょうど良かった。お嬢ちゃん、この小僧に仕事を教えてやってくれ」

「はい! 分かりました!」

「うん、良い返事だ。このお嬢ちゃんは本当にいい働きをしてくれると言うのに、あっちのお嬢ちゃんは足を引っ張りやがる。猫の手も借りたいとは言ったが、どうしてギルドマスターはあんな娘を派遣したのだか」

 エレーヌさんが運営するギルドに、足を引っ張るようなハンターはいないはずだぞ。いったい誰なんだ?

「歌姫ちゃん! どうしてここにいるの!」

「サインして!」

「歌って俺たちを癒してくれ!」

「だから! 今日のあたしはハンターとして来ている訳で、歌姫としては来ていないって何度も言っているでしょう! 誰か助けて!」

 首を傾げていると、作業員の男たちに追いかけられているテレーゼが見えた。

 彼女と目が合い。テレーゼは俺のところに来ると背中に隠れた。

リュシアンピグレット助けて! このブタども、全然話を聞いてくれないのよ」

「エレーヌちゃん! サインちょうだい!」

「握手して!」

「歌を歌って!」

 作業員たちが我を忘れて俺のところに駆け寄って来ると、現場の責任者の額に青筋が浮かび上がる。そして体が小刻みに震えていた。

「いい加減にしないか! もし完成が間に合わなかったら、お前たちのボーナスを全額カットするぞ!」

 現場の責任者が声を荒げると、作業員たちは一斉に顔を青ざめる。そして蜘蛛の子を散らすように走り出し、作業に戻って行った。

「まったく、あいつらときたら浮かれやがって。いいか! これ以上うちの作業員たちを籠絡させるな!」

「籠絡していないわよ! あいつらが勝手にあたしを見て、追いかけ回したのだから! だいたい仕事中に女の尻を追いかけ回すのは、責任者であるあなたの教育が行き届いていないからよ!」

 正論を言われ、責任者の男は顔を引き攣らせる。

「それに、意図的に籠絡しようと思っているのはリュシアンピグレットだけ何だからね!」

 テレーゼが俺の体に手を回すと、胸を背中に押しつけてくる。

「ふぅ、疲れたからリュシアンピグレットエネルギーを補充させてもらうわ」

 何だよ、ピグレットエレルギーって。

「テ、テレーゼさん。そんなことをしている時間はないですよ! 早くリュシアンさんから離れて仕事をしましょう!」

 テレーゼが俺に体をくっ付けて五秒も立たないうちに、ユリヤが彼女を引き離してくれた。

 彼女の言うとおり、今は一秒でも時間を無駄にすることはできない。

「もう! どうして邪魔をするのよ!」

「邪魔ではありません! 私は当たり前のことを言っただけです!」

 二人は互いに睨み合った。

 彼女たちがケンカ腰になるなんて珍しいな。普段は仲がいいイメージだったのに?

「まぁ、まぁ、この件に関しては取り敢えず置いておこう。それでユリヤ、俺は何をすればいい?」

「あ、そうですね。テレーゼさんがまともに仕事ができていないので、その分頑張らなければ」

「そんな言い方をすることはないでしょうが! あたしだって邪魔が入らなければ、ユリヤ以上の仕事ができるわよ!」

 ユリヤの言葉が癇に障ったのか、再びテレーゼは彼女を睨んだ。そして互いにそっぽを向く。

「こうなったら、どっちがより多くの仕事をこなせるか勝負よ!」

「いいですよ。どうせ勝つのは私ですけどね」

 二人は一斉に走り出して作業に取り掛かった。

「おい、俺の仕事は……これは聞こえていないか。まぁ、二人の仕事を見て覚えるしかないな」

 彼女たちの働きを観察していると、どうやらハンターの仕事は、バリスタの弾や砲弾などの遠距離攻撃をするために必要なアイテムの運搬だった。

 なるほど、大体の仕事は分かった。そろそろ始めるとするか。

「あの嬢ちゃんがあそこまでやる気を引き出すだなんて。あんた凄いな」

 現場の責任者に急に褒められ、その理由が分からない俺は困惑する。

「俺は何もしていないですよ。寧ろやる気に火をつけさせたのはユリヤだと思いますが?」

 彼の言葉に答えると、何故か責任者の男は小さく息を吐く。

「これだから無自覚なやつは。後で背中を刺されても知らないぞ」

 また意味の分からないことを責任者が言い、俺は首を傾げる。

 まぁ、今はそんなことよりも作業が先だ。急いでアイテムの運搬をしないと。

 彼から離れると、俺は急いでバリスタの弾が置かれているところに向かう。そして手に持てるだけ持つと、指定された場所に運んで行く。

 この砦で戦闘になったことを考えて、どこに何があるのか、今の内に把握しておいてもいいかもしれないな。

 アイテムを運びながら砦内を見ると、バリスタの弾を発射する発射台が五門、そして大砲が三門だな。

 そして砦の中心部には巨大な槍? と言っていいのか分からないが、それっぽいものが設置されている。

 なるほど、だいたいの攻撃手段と場所は分かった。忘れないうちに頭の中に叩き込んでおこう。

 ユリヤとテレーゼの働きを見て、作業員たちもやる気が起きたようだ。予定よりも早く、午前中で砦を完成させることができた。

「まさか。こんなに早く終わるとは思わなかったな。お嬢ちゃん、バカにしてすまなかった」

 責任者の男がテレーゼに頭を下げて謝る。

「分かればいいのよ。もう済んだことだから水に流してあげる。感謝しなさい」

「どうしてテレーゼさんは偉そうにするのですか」

「二人ともお疲れ、頑張ったね。ご褒美に今度食事にでも行こうか?」

「「デート!」」

 食事に誘った瞬間、二人は目を輝かせる。

 どうして、ただの食事に誘っただけなのにそんな発想に至る。

「と、頭領! 大変です!」

 頭を悩ましていると、作業員の男が血相を変えて俺たちのところにやって来た。

「どうした? 想像しいぞ」

「大変です! ハクギンロウが数体、砦の中に迷い込みました!」










最後まで読んでいただきありがとうございます。

【お知らせ】

本日『Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで彼女が押しかけ女房のようになって困る!』と言う作品を投稿しております。

まだ読んでいないと言う方は、1、2話だけでも良いので、読んでいただけると助かります。

アプリの方では検索していただくしかないかもしれませんが

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