ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
39 / 171
第四章

第七話 急げ! 砦の建設

しおりを挟む
 翌日、俺は砦の建設の手伝いのために現場に来ていた。

「思っていたのより、ある程度は完成しているな。これなら思ったよりも早く完成させることができそうだ」

 えーと、現場の責任者は?

「おい! そこ! トロトロするな! 早く木材を運ばないか! 時間は残されていないんだぞ!」

 辺りを見渡していると、大声で作業員に指示を出している人がいることに気付く。

 きっとあの人だろう。

「すみません。俺は依頼を受けたハンターですが、まずは何からすればいいでしょうか?」

「おお、来てくれたか。ハンターの手を借りてしまって申し訳ない。他にも何人かのハンターに手伝ってもらっているから、彼女たちがやっているのと同じものをしてくれ」

「彼女たち?」

「あ、リュシアンさん! リュシアンさんもエレーヌさんから頼まれたのですか?」

 現場の責任者と話していると、茶髪のセミロングの女の子が、バリスタの弾を抱えながら俺のところに来た。

「ちょうど良かった。お嬢ちゃん、この小僧に仕事を教えてやってくれ」

「はい! 分かりました!」

「うん、良い返事だ。このお嬢ちゃんは本当にいい働きをしてくれると言うのに、あっちのお嬢ちゃんは足を引っ張りやがる。猫の手も借りたいとは言ったが、どうしてギルドマスターはあんな娘を派遣したのだか」

 エレーヌさんが運営するギルドに、足を引っ張るようなハンターはいないはずだぞ。いったい誰なんだ?

「歌姫ちゃん! どうしてここにいるの!」

「サインして!」

「歌って俺たちを癒してくれ!」

「だから! 今日のあたしはハンターとして来ている訳で、歌姫としては来ていないって何度も言っているでしょう! 誰か助けて!」

 首を傾げていると、作業員の男たちに追いかけられているテレーゼが見えた。

 彼女と目が合い。テレーゼは俺のところに来ると背中に隠れた。

リュシアンピグレット助けて! このブタども、全然話を聞いてくれないのよ」

「エレーヌちゃん! サインちょうだい!」

「握手して!」

「歌を歌って!」

 作業員たちが我を忘れて俺のところに駆け寄って来ると、現場の責任者の額に青筋が浮かび上がる。そして体が小刻みに震えていた。

「いい加減にしないか! もし完成が間に合わなかったら、お前たちのボーナスを全額カットするぞ!」

 現場の責任者が声を荒げると、作業員たちは一斉に顔を青ざめる。そして蜘蛛の子を散らすように走り出し、作業に戻って行った。

「まったく、あいつらときたら浮かれやがって。いいか! これ以上うちの作業員たちを籠絡させるな!」

「籠絡していないわよ! あいつらが勝手にあたしを見て、追いかけ回したのだから! だいたい仕事中に女の尻を追いかけ回すのは、責任者であるあなたの教育が行き届いていないからよ!」

 正論を言われ、責任者の男は顔を引き攣らせる。

「それに、意図的に籠絡しようと思っているのはリュシアンピグレットだけ何だからね!」

 テレーゼが俺の体に手を回すと、胸を背中に押しつけてくる。

「ふぅ、疲れたからリュシアンピグレットエネルギーを補充させてもらうわ」

 何だよ、ピグレットエレルギーって。

「テ、テレーゼさん。そんなことをしている時間はないですよ! 早くリュシアンさんから離れて仕事をしましょう!」

 テレーゼが俺に体をくっ付けて五秒も立たないうちに、ユリヤが彼女を引き離してくれた。

 彼女の言うとおり、今は一秒でも時間を無駄にすることはできない。

「もう! どうして邪魔をするのよ!」

「邪魔ではありません! 私は当たり前のことを言っただけです!」

 二人は互いに睨み合った。

 彼女たちがケンカ腰になるなんて珍しいな。普段は仲がいいイメージだったのに?

「まぁ、まぁ、この件に関しては取り敢えず置いておこう。それでユリヤ、俺は何をすればいい?」

「あ、そうですね。テレーゼさんがまともに仕事ができていないので、その分頑張らなければ」

「そんな言い方をすることはないでしょうが! あたしだって邪魔が入らなければ、ユリヤ以上の仕事ができるわよ!」

 ユリヤの言葉が癇に障ったのか、再びテレーゼは彼女を睨んだ。そして互いにそっぽを向く。

「こうなったら、どっちがより多くの仕事をこなせるか勝負よ!」

「いいですよ。どうせ勝つのは私ですけどね」

 二人は一斉に走り出して作業に取り掛かった。

「おい、俺の仕事は……これは聞こえていないか。まぁ、二人の仕事を見て覚えるしかないな」

 彼女たちの働きを観察していると、どうやらハンターの仕事は、バリスタの弾や砲弾などの遠距離攻撃をするために必要なアイテムの運搬だった。

 なるほど、大体の仕事は分かった。そろそろ始めるとするか。

「あの嬢ちゃんがあそこまでやる気を引き出すだなんて。あんた凄いな」

 現場の責任者に急に褒められ、その理由が分からない俺は困惑する。

「俺は何もしていないですよ。寧ろやる気に火をつけさせたのはユリヤだと思いますが?」

 彼の言葉に答えると、何故か責任者の男は小さく息を吐く。

「これだから無自覚なやつは。後で背中を刺されても知らないぞ」

 また意味の分からないことを責任者が言い、俺は首を傾げる。

 まぁ、今はそんなことよりも作業が先だ。急いでアイテムの運搬をしないと。

 彼から離れると、俺は急いでバリスタの弾が置かれているところに向かう。そして手に持てるだけ持つと、指定された場所に運んで行く。

 この砦で戦闘になったことを考えて、どこに何があるのか、今の内に把握しておいてもいいかもしれないな。

 アイテムを運びながら砦内を見ると、バリスタの弾を発射する発射台が五門、そして大砲が三門だな。

 そして砦の中心部には巨大な槍? と言っていいのか分からないが、それっぽいものが設置されている。

 なるほど、だいたいの攻撃手段と場所は分かった。忘れないうちに頭の中に叩き込んでおこう。

 ユリヤとテレーゼの働きを見て、作業員たちもやる気が起きたようだ。予定よりも早く、午前中で砦を完成させることができた。

「まさか。こんなに早く終わるとは思わなかったな。お嬢ちゃん、バカにしてすまなかった」

 責任者の男がテレーゼに頭を下げて謝る。

「分かればいいのよ。もう済んだことだから水に流してあげる。感謝しなさい」

「どうしてテレーゼさんは偉そうにするのですか」

「二人ともお疲れ、頑張ったね。ご褒美に今度食事にでも行こうか?」

「「デート!」」

 食事に誘った瞬間、二人は目を輝かせる。

 どうして、ただの食事に誘っただけなのにそんな発想に至る。

「と、頭領! 大変です!」

 頭を悩ましていると、作業員の男が血相を変えて俺たちのところにやって来た。

「どうした? 想像しいぞ」

「大変です! ハクギンロウが数体、砦の中に迷い込みました!」










最後まで読んでいただきありがとうございます。

【お知らせ】

本日『Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで彼女が押しかけ女房のようになって困る!』と言う作品を投稿しております。

まだ読んでいないと言う方は、1、2話だけでも良いので、読んでいただけると助かります。

アプリの方では検索していただくしかないかもしれませんが

ウェブ(スマホ)の場合は目次の下にある作者の他の作品のURLの下にあるタイトルをタップしていただけると作品を読むことができます。

ウェブ(パソコン)の場合は目次の下にある作者の他の作品のURLの下にあるタイトルをクリックするよりも、画面の左にある『仁徳の登録コンテンツ』の中にあるタイトルをクリックする方が早いです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...