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第四章

第六話 完成!ドスケベミエール!

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 睡眠魚シープヴォンを討伐した俺は、報告するためにギルドに戻った。

「まだ戻って来ていないハンターは何人いますか?」

「おそらく半数ほどです」

 エレーヌさんがハンターと話している声が聞こえてきた。

 ギルドの中が慌ただしくなっているな。また何かあったのか?

「エレーヌさん。ただいま戻りました」

「リュシアン君が戻ってきてくれた。これならどうにかなってくれそう」

 俺の帰還に安心してくれたと言うことは、この前みたいな伝龍騒ぎなのか?

「あのう。何かあったのですか?」

「リュシアン君、急で申し訳ないけど、明日砦の建設を手伝って来てくれない!」

「砦の建設ですか?」

 砦と言うのは、この町の北に建設中のあの砦のことを言っているのだろう。

 確か、いずれ起きる大災害に備えて建設していたはずだけど、どうしてそんな依頼がハンターギルドに来たんだ?

「リュシアン君も知っていると思うけど、あの砦はモンスターによる大災害に備えて建設しているのだけど、隣町がモンスターの群れに襲われて、そのままこの町に向かっているらしいのよ」

「何だって!」

「だから急いで砦を完成させないといけなくって、ハンターも手伝うことになったのよ」

「分かりました。では、明日砦に向かいます」

「お願いね」

 砦建設の手伝いという依頼を受け、俺は一度ギルドを出た。

 さて、万が一に備えて、今日中にできることはやっておくか。

 俺は寮には帰らず、そのままベルトラムさんの工房に向かった。

「ベルトラムさんいるか?」

「ついに、ついに完成したぞ! ドスケベミエールが! ワシは感動しておる!」

 扉を開けて中に入るなり、ベルトラムさんの感極まる声が工房内に響いた。

「ベルトラムさん?」

「おお、リュシアンではないか。見てくれ! ついにドスケベミエールが完成したのだ!」

 声をかけると、彼は普段以上に高い声音で俺に話しかけてくる。そして手に持っているものを見せてきた。

「望遠鏡?」

「ただの望遠鏡ではない。ここにダイヤルがあるのだが、十から百まである。ダイヤルを回せば、最大百メートル先まで遠くを見ることができるのだ。ぐふふ、これで安全なところから、女の子の着替えを覗き放題だ」

 頭の中で女の子の着替えシーンを妄想しているのか、ベルトラムさんは下卑た笑みを浮かべていた。

 使い道はともかく、たいしたものだな。それがあれば遠くにいるモンスターを視認することができる。

 うん? これっていずれ起きる砦防衛戦で使えないか? エレーヌさんに後で報告しておこう。

「どうだ? すごいだろう?」

「こんなものを作れるなんて凄いですね」

「そうだろう。そうだろう。それで、ボウズは何しにここに来た? 武器の研磨にしてはまだ早いと思うが?」

「素材玉の材料が揃ったから、作ってもらおうと思って」

 ポーチから必要な素材を取り出して全てテーブルの上に置く。

「なんと! 短期間でもう必要な素材を集めたというのか! こりゃたまげた」

 テーブルの上に置かれた素材を見て、ベルトラムさんは目を大きく見開いて驚く。

 そんなに驚くことはないと思うけど、ベルトラムさんはいちいちリアクションが大きいな。

「分かった。なら今から作成に取り掛かろう。ドスケベミエールが完成して気分がいいからな。初回サービスということで、料金はタダにしてやろう」

 お、ラッキー! 前回も何やかんやで太刀を強化してもらうときに、金を払わずに済んだから運が良い。

「ありがとう。助かるよ。それでどれくらいかかる? 明日は砦に行って建設の手伝いをしないといけないのだけど」

「素材玉を作るだけだとしても、それなりに時間がかかる。今日中には完成しないが、出来次第届けてやる」

「分かった。それじゃ頼んだよ」

 ベルトラムさんに素材玉の作成を依頼し、俺はドスケベミエールのことを報告しに一旦ギルドに戻った。

「あら? リュシアン君。寮に帰ったんじゃないの?」

「寮に帰る前に、ベルトラムさんの工房に寄ったのですよ。そしたら百メートル先まで見ることができる望遠鏡を彼が作っていまして。いずれ起きる砦の戦いに役に立つかなと思ったので、報告しておこうかなっと」

 俺は望遠鏡の名前は伏せた状態で話した。もし、名前まで言ってしまえば、取り上げるだけではなく、破壊されてしまう可能性がある。

「そうなのね。報告ありがとう。後で没収しておくわ。多分ベルトラムさんのことだから、その望遠鏡を使って女の子の着替えを覗き見しようと思っているのでしょう」

 彼の野望を的確に当てたエレーヌさんを見て、俺は苦笑いを浮かべた。

 そう言えば、ベルトラムさんと初めて会ったあの日、エレーヌさんは彼と親しげだったよな。もしかして昔からの知り合いなのだろうか?

「あのう、ベルトラムさんのことをよくご存知のようですけど、古い知り合いなのですか?」

「古くわないわ。わたしはそんなに年はとっていないわよ」

 エレーヌさんがニッコリと笑顔を向けるが、俺の背筋に寒気がした。

 しまった。年を感じさせる『古い』もエレーヌさんにとってはNGワードだった。

 俺はどうすればいいのか分からず、ただ苦笑いを浮かべる。

「まぁいいわ。リュシアン君の働きに免じて今の失言は聞かなかったことにします。ベルトラムさんは、わたしのハンターとしての師匠だったのよ。現役を引退してからは、ハンターの手助けをしようと、鍛冶職人に転職したけどね」

「へぇーベルトラムさんって前はハンターだったのですか」

「そうそう。そして不思議なことに、彼がモンスターを追い回すと、メスは何故か逃げて行くのよ。当時『ハァ、ハァ、メス! 俺の一撃で絶頂させてやる!』と叫びながら追いかけ回していたわ」

 モンスターに対してもセクハラしていたのかよ。ある意味最強じゃないか。あの爺さん。

「彼に武器の使い方を教わったことで、わたしはAランクハンターになることができ、こうしてギルド運営も上手くいっているのだけどね」

「そうなんですね」

「さぁ、リュシアン君はもう帰って体を休めないさい。明日は力仕事になるから」

「そうですね。おやすみなさい」

「おやすみ」

 エレーヌさんに挨拶をして別れると、俺は寮に戻る。










最後まで読んでいただきありがとうございます。

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【重要なお知らせ】
前回お知らせしました通り、別の作品の投稿を始めました。

『Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!』

と言うものです。

現在6話まで投稿しております。
宜しければこちらの作品も読んでいただけると助かります。

何卒宜しくお願いします。
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