ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
32 / 171
第三章

第十二話 アントニオが死んでもブラックは終わらない

しおりを挟む
~フェルディナン視点~



 俺ことフェルディナンは、ようやく憎きアントニオを倒し、復習を果たした。

「あばよアントニオ! お前をモンスターの餌にでもしてやろうかと最初は考えたが、死んでもなお、屈辱を味わいたくはないだろう? だから今すぐに燃やしてやる」

 薄暗い小屋の扉を叩く。

 トントン、トン、トントトン。

 リズムよく扉をノックすると、外側から鍵が開けられ、俺は外に出る。

「今直ぐ燃やして証拠を隠滅しろ。俺はギルドに戻り、他のハンターや依頼主に事情を話してくる」

 手伝ってもらった二人に山小屋を燃やすように言うと、俺は町へと戻って行く。





「おい! いつまで隠れているんだ!」

「さっさと姿を現して説明しろ!」

「でないと、また扉をぶっ壊してやるからな!」

 もしかしたらと思っていたが案の定、こいつらは気付いていなかったみたいだな。まぁ、あれだけ大声を出していたら、ギルド内で暴れても聞こえないよな。

「依頼主の皆さん、これ以上の暴動は困ります。どうか怒りを納めください」

 近づきながら声をかけると、依頼主たちは一斉に俺の方を向いた。そして敵意剥き出しにしながら、俺のことを睨んでくる。

「お前、ここに所属しているハンターだな!」

「ギルドマスターはいつになったら姿を見せに来るんだ!」

「さっさと引き摺って来てくれ!」

 本当に頭に血が昇っているようだな。殺気立っている。

「待ってください。アントニオはこの町から逃げました」

「何だって!」

「どうしてそれを早く言わない!」

「早く追いかけるぞ!」

 やばいな。まだ火をつけて消化作業は終わっていないはずだ。そんな中、こいつらを山に向かわせる訳にはいかない。

「落ち着いてください。あの男はもう、この世にはいません。自殺をしました」

「何だと!」

「自殺とな」

 俺の説明を聞いた依頼主たちは、互いに顔を見合わせる。

「アントニオがこの町から出て行くのを見て追いかけたのですが、森の中で見失ってしまいました。ですが、煙が上がっているのが見えて現場に向かったら、山小屋が燃えていたのです。直ぐに消化作業に入ったのですが、山小屋は全焼。そして中から亡くなっているアントニオを見つけました」

「そうだったのか」

「俺たちはちゃんとギルドマスターとしての責任と取ってもらい、謝罪してくれればそれでよかったのに」

 依頼主たちは先ほどの殺気が嘘のように消え去り、顔を俯かせる。

 良いぞ良いぞ。俺の嘘を信じている。まぁ、嘘と言っても一部だけだけどな。

 男は嘘が苦手だと言うが、それは百パーセント嘘を言ってしまうからだ。逆に女性は嘘を吐くのが上手い。それは嘘の中に真実を混ぜているからこそ、バレにくいのだ。

 俺はそれを利用させてもらった。

「ですが、このままギルドがなくなってしまうのは皆さんもお困りでしょう。なので、俺が新たにギルドマスターとなり、明日から運営を再開させます。明日こそは依頼の受付、そしてハンターの派遣をしますので、今日のところは帰ってもらえないでしょうか」

「そうだな。何だか変な幕引きになって、どうでも良くなってきた」

「フェルディナンはこのギルドのナンバーワンハンターだ。きっと今以上によくしてくれるはずだ」

「それじゃあ明日依頼を持って来る。それまでに営業再開の準備をしてくれ」

 明日から営業を再開することを伝えると、依頼者はこの場から離れて行った。

 依頼者たちを見送り、俺はギルドの中に入る。

「くく、あはは、だははははは!」

 依頼者の前では我慢していたが、ギルド内に入ったことで緊張の糸が切れた。俺は大声で笑う。

「あははは! まさかここまで上手く行くとは、さすがの俺も思ってもいなかったぜ! このギルドは俺の物だ! あーはははは!」

 さてと、それじゃギルドマスター室に入らせてもらうとするか。

 俺はギルドマスター室に入ると、ギルドマスターだけが座ることを許されるイスに座る。

 良い素材を使っているじゃないか。ふかふかで尻の負担も少なく、座り心地は抜群だ。

「さて、今度はあのデブがどれくらい俺たちから金を搾取して溜め込んでいたのか、そのチェックをするか」

 イスから立ち上がると、引き出しなどを片っ端から開ける。すると鍵を見つけた。

「この鍵はまさか」

 部屋の隅に置かれた宝箱に顔を向ける。

 鍵穴に鍵をぶっ挿し、回してみるとビンゴだった。

 読みどおり、ロックが解除されて開けることができる。

「さて、中身はいったい何が入っているんだ? いい年してエッチな本とかが出てきたら笑えるが」

 宝箱の上蓋に手を置き、ゆっくりと開ける。

 中には金や銀の延べ棒、そしてたくさんの札束が入っていた。

「あのくそデブ。こんなに資産を隠し持っていたのかよ。まぁ、いい。ここにある金は全て俺のものだ」

 宝箱の中に手を突っ込み、両手で札束を握りしめる。

 きっと今の俺は、下卑た笑みを浮かべているだろう。だけど、これだけの金を目の前にして、真顔でいろと言うのが難しい。

「今夜はこの金を使ってパーっと遊ぶとするか。今まで頑張ってきた俺へのご褒美だからな」

 とにかく出払ったハンターたちも、明日にはほぼ全員が戻ってくるだろう。あいつらに事情を話し、俺が運営するギルドでこき使ってやる。

 俺はギルドマスターだ。このギルドで一番偉い。俺に逆らえるものなど、ここに所属するハンターはいないからな。

 とりあえず、俺の復讐に手伝ってくれたあの二人には、それなりの金をやるとしよう。だけど、俺が気に入らないあの男は減給だな。いちいち俺の癇に障ることを言ってくるからな。

 まぁ、俺に媚を売るようになったら考えてやるとするか。俺を持ち上げ、俺をいい気分にしてくれるハンターにだけ優遇し、それ以外のクソは道具のように扱ってやる。

 俺はこれまで酷い仕打ちをされてきたんだ。同じことをしても、誰も咎めることはできないだろうよ。

「さぁ、明日から新しくなった真ハンターギルド! フェルディナンズ営業開始だ! ハンターたちよ! 馬車馬のように働きやがれ! あーはははは!」










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントでも大丈夫です。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...