ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第三章

第七話 ドスブルボーア捕獲作戦

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「ドスブルボーア!」

 こちらにゆっくりと近づく大猪の名前を俺は叫ぶ。

 ブルボーアは体長一メートルくらいだったが、あのドスブルボーアは五メートルくらいありそうだ。

 多分平均よりも大きいよな。これくらい大きければ、依頼主も満足してくれるだろう。

「ユリヤ捕獲開始だ」

「はい!」

 さて、どうやってやつにダメージを与えようか。

 捕獲の基本は、対象となるモンスターにダメージを与えて疲れさせたところで、麻酔針で眠らせる必要がある。

 だけどダメージを与える際には、刃物系を使ってはならない。斬ったりすると、出血多量で死んでしまう可能性がある。

 眠らせたところで、回復ポーションを使えばいいと言う考えもある。だが、できることならこの方法は使いたくない。

 手詰まりになったときに、最後の手段として使うとしよう。

「こうなるんだったら、ハンマーも使い熟せるようにしておけばよかった」

 ポツリと呟くと、ドスブルボーアは前足で地面を蹴り、助走をつけ始める。

 あいつも俺たちに気付いたか。瞬時に敵だと判断しやがったな。

『ブホッ、ブホッ、ブホオオ!』

 大猪が鳴きながら突進してきた。俺は横に回避すると、モンスターの行方を見る。

 あの先は木がある。ブルボーアのときみたいにそのまま激突だ。

 そう思っていたが、ドスブルボーアは木に激突する前に走りながらUターンしてもう一度襲ってきた。

「さすがブルボーアのボスだけあって、同じようにはいかないか。なら、あっちに誘導するとしますか。ユリヤ! こいつを七番エリアに誘導する。手伝ってくれ」

「わかりました」

 ユリヤが俺のところに来ると、彼女はポーチの中からマーキング玉を取り出す。

「えい!」

 ユリヤが投げたマーキング玉は、ドスブルボーアの頭に直撃する。

 これで仮に誘導に失敗したとしても、ある程度居場所を特定することができる。

「あれ? ドスブルボーアが私の方を見ていませんか?」

「そうかもしれないな」

 どうやら頭に液体をぶっかけられたことで、怒っているようだ。鼻息を荒くしているところを見る限り、憤怒状態になっている。

 だけどこれは逆にチャンスだ。憤怒状態はスタミナの消費が激しい。だから捕獲しやすい環境下ではある。

「ユリヤ、囮となって逃げ切ることはできるか?」

「む、ムリです! ブルボーアならともかく、ドスブルボーアのスピードから逃れる自信がありません!」

 彼女は顔を強張らせながら首を左右に振る。

 ユリヤが標的になっている以上は、彼女を必要以上に追いかける。だとすると、ここで俺が取るべき行動は。

「悪いユリヤ、しばらくの間我慢してくれ」

「え? きゃ!」

 俺はユリヤをお姫様抱っこすると、急いで隣のエリアに向かう。

「さぁ、追いかけて来い!」

 ユリヤを抱き抱えたまま五番エリアに来ると、背後を見る。

 よし、ドスブルボーアは俺たちを追いかけている。このまま七番エリアに向かおう。

 テレーゼと遊んだ湖を横切り、七番エリアに繋がる洞窟の中に入っていく。

『ブホッ、ブホッ、ブホ!』

 後方から大猪の声が聞こえる。計算通り、ここの通路はギリギリで入れるな。だけど隙間に余裕がない分、速度が遅くなっている。

 通路を抜けて七番エリアに辿り着くと、壁際で立ち止まってドスブルボーアと対峙する。

 やつは口から涎を垂らし、息が荒い。

 だいぶんスタミナが削られているみたいだ。これならあと一回か二回、ダメージを与えれば捕獲しやすくなるはず。

「ユリヤ、気分が悪くなったりしていないか?」

「は、はい。大丈夫です」

「それはよかった。あともう少しの辛抱だから我慢してくれ」

 彼女に我慢するように言うと、モンスターを見る。

 前足で地面を軽く蹴って助走をつけている。また突進攻撃がくるが、それは捕獲への第一歩だ。

 俺が一歩動こうとしないのを見てチャンスだと思ったのか、ドスブルボーアは全速力で俺たちに突撃してくる。

 やつとの距離が縮むと焦りが出てしまうが、まだ避けるには早い。ギリギリまで誘き寄せてから回避しないと、さっきみたいにギリギリでUターンされる。

 あともう少し……今だ!

 タイミングを見計らって横に跳ぶと、ドスブルボーアはブレーキが間に合わずにそのまま壁に激突した。

 そして数秒が経つとやつはそのまま地面に倒れる。

 その光景を見た俺は、ユリヤを腕から離すと大猪に近づいた。

「牙が折れてしまっているな」

 ドスブルボーアの二本の牙のうち、一つが折れていた。

 だけどまぁ、依頼書の内容には部位破壊不可とは書かれていなかったからまぁいいだろう。

 ポーチから麻酔針を取り出し、気を失っている大猪の体に突き刺す。

 これでやつはしばらく眠ったままだ。

「目が覚めて暴れないように縄で括ろう」

「手伝います」

 用意していた縄でモンスターを縛り上げると、ポーチから笛を吹いてケモノ族を呼ぶ。

 本当にこんな笛で一番エリアまで聞こえるのかな?

 そんな疑問がある中、しばらく待ってみる。すると、運搬屋のケモノ族が荷台を引っ張って七番エリアにやってきた。

 マジかよ。本当に聞こえていたのか。

「お待たせしました。では、契約どおりにそのドスブルボーアを運びますね」

 ウサギのケモノ族数人が協力しあってモンスターを荷台に乗せると、彼らは荷台を押して一番エリアに向かって行く。

「これで依頼は完了だ。彼らがこのまま依頼者のもとに持って行ってくれることになっているから、俺たちは報告をしにギルドに帰ろう」

 ギルドに帰ろうと言うが、ユリヤからの返事が聞こえない。

 ユリヤどうしたんだ? なんかボーとしていないか?

「ユリヤ大丈夫か?」

「ひゃい!」

 声をかけると彼女はびっくりしたようで奇妙な声を上げた。

「リュ、リュシアンさんいきなり声をかけないでくださいよ。びっくりするじゃないですか」

「ごめん、ごめん。ボーとしているようだから気になって」

「だ、大丈夫です。少し疲れただけですから」

「ならいいけど」

 少し心配ではあるが、彼女が大丈夫と言っている以上は信じてあげるしかない。

「それじゃあ今度こそ帰ろう」

「そうですね」

 依頼クリアの報告をするために、俺たちはギルドに帰った。

「おい、その情報は本当なんだろうな」

「分からない。だけど確認しなければ」

「もし本当だったら大変なことになるぞ」

 ギルドの扉を開けて中に入ると、いつも以上に慌ただしかった。

 いったいこのギルドで何があったんだ?










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