ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第三章

第六話 こんがり上手に焼けました!

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「はい、これが今日リュシアン君にお願いする依頼ね」

 テレーゼとロアリングフルートを討伐した翌日、俺は本日最初の依頼を受け取る。

 依頼内容を確認すると、ドスブルボーアの捕獲だった。

 捕獲か。依頼としては珍しいな。えーと、依頼者のコメントは?

『今年もこの祭りの時期がやって来た! 大猪感謝祭! 今年も大盛り上がりで行くぞ! そこでハンターには、祭りの主役となるドスブルボーアの捕獲を頼みたい! できることなら、なるべく大きいのがいい』

 大猪感謝祭? そんな祭りをする村があるのか。

「リュシアンさん、今日の依頼はどこでするんですか?」

 依頼書を見ていると、ユリヤが声をかけてくる。

「また深緑の森だ。最近ここでの依頼ばかりのような気がする」

「確かにそうですね。何か理由があるのでしょうか? 因みに私も深緑の森で薬草採取です」

「そうなんだ。なら、一緒に行くか」

「はい」

 俺とユリヤが話していると、背後から視線を感じて振り返る。そこには世界のトップ歌姫が立っていた。

「ユリアは良いなぁ。リュシアンピグレットと一緒の場所だなんて。あたしはアラビン砂漠地帯でアルカイト鉱石の発掘よ」

 テレーゼが羨ましそうにユリヤを見る。

「ねぇ、ユリヤ! あたしのと依頼を交換しましょう。歌姫には、砂漠なんて暑苦しい場所は似合わないもの」

「いやぁ、それはさすがにムリですよ。エレーヌさんが決めた采配ですので」

「そうよ。この依頼はあなたにしかできないと思っているからこそ、わたしはお願いしているのだから」

 ユリヤが断ると、エレーヌさんがテレーゼにお願いした理由を言う。

「ちぇ、わかったわよ。こんな依頼、さっさと終わらせて次はリュシアンピグレットと依頼を受けるんだから」

 渋々と言った感じで、テレーゼがギルドから出て行く。

 まぁ、彼女の声があれば、ピッケル入らずで鉱石を発掘することができるからな。確にエレーヌさんの判断はある意味正しい。

「俺たちも深緑の森に行こうか」

「そうですね」

「運搬屋も雇わないと」

 俺たちもギルドを出ると、一旦運搬屋に向かってウサギのケモノ族を雇い、深緑の森に向かう。

 三十分ほどかけて森の一番エリアにたどり着いた。

「それでは気をつけてください。私たちは、この笛の音が聞こえましたら向かいますので」

「わかった」

 ウサギのケモノ族から笛を受け取る。

「それじゃ、先にユリヤの薬草採取からやろうか。俺の依頼はいつ出会でくわすか分からないからな」

「そうですね。もし、薬草の群生地に着くよりも早くドスブルボーアが現れたら、私もお手伝いします」

「ああ、その時は手伝ってもらえると助かる」

 俺の依頼内容は、ドスブルボーアの捕獲。今回は発見場所が分かっていないので、深緑の森を手当たり次第探すことになる。

 居場所が特定できない依頼が本当に厄介だ。運が悪ければ数時間、森の中を彷徨い続け、ようやく出会えるなんていうケースもある。

 ドスブルボーアはとにかく足が速い。見つけ次第にマーキング玉を当てないと、捜索だけで日が暮れてしまうかもしれない。

「薬草の群生地は三番エリアだったな。普通に順番どおりにエリアを移動して行くか」

「そうですね」

 移動ルートを決めると、俺たちは二番エリアに向かう。

「そう言えば、リュシアンさんはテレーゼさんと最近中が良いですよね。今日だって、私の依頼と交換しようだなんて言ってくるほどですし」

 二番エリアを歩いている最中、ユリアがテレーゼのことを話してきた。

「まぁ、それなりには仲が良くなったかな。最初の頃とは俺に対する態度が緩和された」

「もしかして、お二人はお付き合いをされているのですか?」

 予想外の言葉に、俺は驚いてしまった。もし、仮にも飲み水なんかを飲んでいたとしたら、口から噴き出していただろう。

「いやいや、テレーゼとは確に仲は良いが、付き合ってはいない。彼女は俺の大事な仲間だ。その中にはユリヤやエレーヌさんも入っている。逆にユリヤは好きな人とかいないのか?」

「い、いません! 好きな人なんて」

 お返しに彼女が好きな人はいるのかと訊ねると、ユリヤは頬を赤くして首を左右に振り、全力で好きな人はいないと言う。

 ちょっとからかいすぎたか? そんなに全力で否定されるとは思ってもいなかった。

 軽く恋愛話をしていると、三番エリアに辿り着く。

「あ、見てください。あそこに薬草の群生地がありますよ!」

 ユリヤが指を差すと、彼女は薬草の群生地に駆け寄る。そしてその場でしゃがみ、必要な分の薬草を摘んでいく。

「これでユリヤの依頼は完了だな。どうする? 先にギルドに帰るか?」

「いえ、ここまで同行してもらったので、私もリュシアンさんの依頼に協力しますね」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」

 彼女に礼を言うと、茂みの方からガサガサと音が聞こえてきた。

 風は吹いていない。そうなると、あの動いている茂みに何かが居る。

 警戒して、いつでも太刀が抜けるようにしていると、隠れていたものが姿を現す。

「ブルボーア!」

 出て来たのはイノシシ型のモンスター、ブルボーアだ。だけど、俺が捕獲しなければならないのはドスブルボーアの方だ。

 やつは俺たちを見ると、前足で軽く地面を蹴り、助走をつけようとしている。

 突進攻撃が来る!

 そう判断した瞬間、ブルボーアは俺たちに向けて突撃してきた。やつは一直線にしか進めない。だから横に逃げれば簡単に避けられる。

 一度攻撃を躱すと、イノシシ型のモンスターは木に激突した。

 標的を外して自滅したことで、やつは頭にダメージを受けたのか、首を左右に振る。

 隙だらけだ。攻撃するならチャンス!

 こいつは討伐対象ではない。だけど野放しにしておけば、この山を通る人に被害が出るかもしれない。ついでに討伐しておこう。

 俺は跳躍すると、ブルボーアの頭部を一刀両断した。

 首と胴体が切り離され、周辺に血が広がって行く。

「討伐完了。取り敢えずこいつを解体して、素材を得るか」

 一応ブルボーアの肉は臭みがあるものの、食べることは可能だ。血抜きして肉を剥ぎ取って保存食にするか。

 作業をしていると、俺のお腹が空腹を知らせる音色を奏でる。

「急にお腹が空いてきたな。ブルボーアを見たからか。肉が食いたくなってきた」

「ありますよ」

 ポツリと言葉を漏らしたつもりだったのだが、どうやらユリヤには聞こえてしまったようだ。

 彼女はポーチの中から生肉を取り出す。

「小型の肉焼セットも持っていますので、今から焼きましょう」

 今から肉を焼くと言い、彼女はポーチから部品を取り出して手早く組み立てる。そして肉をセットすると火をつけてレバーを回し始めた。

「ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふふふん、ふふふん、ふん、ふふふん! 上手に焼けました!」

 彼女の鼻歌に気を取られていたが、いつの間にか肉が焼けており、こんがり焼けた肉が完成していた。

「はいリュシアンさん。熱いので気をつけて食べてくださいね」

「わかった」

 ポーチから断熱手袋を取り出して、ユリヤから肉を受け取ると、俺は骨を持って肉に齧り付く。

 焼き立ての肉はとても柔らかく、咀嚼そしゃくするたびに肉汁が口内に広がっていく。

「美味しい。絶妙な焼き加減だ」

「そうですか。喜んで貰えて何よりです」

「ユリヤは優しいし、料理は上手。きっといいお嫁さんになるんじゃないか?」

 ユリヤを褒めると、彼女は頬を赤らめる。

「な、何言っているんですか! 褒めたって何も出ませんよ!」

 照れ隠しなのか、ユリヤは俺の背中を軽く叩く。これも彼女の優しさなんだろうな。テレーゼだったら本気でビシバシと叩いてきそうだ。

「ごちそうさま。とても美味しかった」

 ユリヤに礼を言うと、こちらに大型の猪型のモンスターが歩いてきた。

「ドスブルボーア!」










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