ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第三章

第三話 ロアリングフルート討伐戦 前編

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 俺とテレーゼは、任務中に湖で遊んでスローライフを過ごした後、ロアリングフルートの討伐を再開した。

「よし、たっぷりと昼寝をして体力も回復したし、任務を再開しよう」

「はーい」

 乾かしていた服に着替えるが、テレーゼは服に着替えようとはしなかった。

「どうした?」

「あはは。水着を着てきたから下着を持って来るのを忘れた」

「あるあるだな」

「まぁ、いいか。水着も下着のようなものだし、このまま上から着よう」

 水着の上から服を着直し、彼女も準備を済ませる。

「そう言えば、今更だけどテレーゼは武器を持ってきていないよな。どうやって戦うつもりなんだ?」

 まさか俺に蹴りを入れようとしたときみたいに、格闘戦をしようだなんて考えていないよな。それはあまりにも無謀な戦い方だぞ。

 そんなことを思っていると、テレーゼは自分の喉を指差す。

「あたしは歌姫なのよ。武器は声に決まっているじゃない」

「声って、もしかして歌ってモンスターの気を引かせようとしているのか?」

「まぁ、サポートの場合はそうなるかもしれないわね」

 サポートの場合?

 彼女の言っている意味が分からず、俺は首を傾げる。

「あ、そうそう。あたしが合図を出したときは、これを耳につけてもらえる」

 テレーゼがポーチの中から何かを取り出すと、俺に手渡してきた。

「これは耳栓?」

「そう、それは特別な素材で作った耳栓よ。つければ殆どの音を遮断してくれるの」

 なるほど、彼女なりに事前に対処方法を考えていたと言う訳か。確かに依頼に書かれてあった内容を思い出すと、今回の戦いの鍵となるのは【音】だ。

 耳栓をすれば音が脳に届かなくなり、依頼者のようにはならないかもしれないな。

「テレーゼの分もあるのか?」

「ないわよ。だって、それはリュシアンピグレット用で用意したものだから」

 一つしかないと言われ、これは貰えないと思った。

「これは貰えないって」

「どうしてよ」

「どうしてって。これでロアリングフルートの攻撃を防げるかもしれないだろう。テレーゼは世界中にファンがいる歌姫だし、何より女の子だ。モンスターの攻撃で傷付いたら、きっと悲しむだろうし、何より俺がいやだ」

 俺は正直に答えると、テレーゼの頬は朱色に染まる。

「そ、そうなんだ。そんなに心配してくれるんだ」

「当たり前だろう。仲間なんだから、依頼を受けるパートナの身を心配するのは普通だ」

「心配してくれてありがとう。でも多分大丈夫よ。あたしに音の攻撃を当てるのはムリだから」

 どこからそんな根拠が出てくるのか分からないが、テレーゼは堂々としており、本当のことを言っているように思えてくる。

「もし、あたしを信用できないのなら返してもいいわ。でも、その場合は一発殴らせてね。避けたりしたら帰りが怖いわよ」

 それって半ば強制じゃないか。まぁ、テレーゼは嘘を言っているようには思えないし、ここは彼女を信じることにしよう。

 貰った耳栓をポーチの中に入れ、俺は次のエリアがある方を見る。

「この先に洞窟がある。その中に入れば七番エリアだ」

「そうね。行きましょう」

 俺たちは七番エリアである洞窟に向かう。

 十分ほど歩くと、洞窟の入り口が見えた。この先にある少し広くなっている空間が七番エリアだ。そしてその先が八番エリアになる。

「それじゃあ入るぞ。もしかしたら七番エリアにロアリングフルートがいるかもしれないから気をつけながら進もう」

「そうね。そうしましょう」

 俺たちは警戒しながら洞窟の中に入っていく。

 洞窟の中は光を放つクリスタルが至るところにあり、そのお陰で洞窟内は常に明るい。

「あ、見て! あれってドラグーン鉱石じゃないかしら」

 テレーゼが洞窟の壁から飛び出ている緑色の物体を指差す。

「本当だ。こうなるのならピッケルを持ってくればよかったな」

 ドラグーン鉱石は装備品の素材にもなる。時々採取の依頼があるのだが、不思議と欲しいときに限って中々見つからないのだ。

 そしてどうでもいいときに限って簡単に見つけてしまう。

「仕方がない。今回は諦めよう。もしかしたら他のハンターが取って行くかもしれないけど、運が良ければ残っているだろうし」

 諦めようとテレーゼに言うと、彼女はドラグーン鉱石に近づく。

「ほら、取れたわよ」

「え?」

 テレーゼの背中で見えていなかったのだが、彼女の手には確かにドラグーン鉱石が握られていた。

 嘘だろう! 鉱石系は素手で取ることはできないんだぞ! 基本ピッケルで採取するのが普通なのに、いったいどうやって取ったんだ!

「な、なぁ? いったいどうやって採取したんだ?」

「それは乙女のヒ・ミ・ツ!」

 片目を瞑ってウインクをしながら、テレーゼはドラグーン鉱石を俺に手渡した。

 これをあげるから、見なかったことにしろと言いたいのか?

 まぁ、貴重なものだから貰えるのはありがたい。

 俺はドラグーン鉱石をポーチの中に入れる。

 しばらく歩くと七番エリアの広い場所に辿り着く。

 周辺を見渡して警戒するも、どこからもモンスターの気配を感じなかった。

「七番エリアにはいないみたいだな」

「そうね。早く八番エリアに向かいましょう」

 七番エリアをスルーし、俺たちは八番エリアに向かう。

 再び通路になり道が狭くなる。

 そこで俺はあることを思い出した。

 そう言えば、七番エリアと八番エリアを繋ぐ道は、俺がクイーンフレイヤーと戦った際に崩れたんだよな。通れるようになっているのか?

 心配しながら進んで行くが、崩れた道は既に修復されており、八番エリアに行くことができていた。

「八番エリアに到着したな」

 周辺を見て辺りを伺う。

 クイーンフレイヤーの死骸がなくなっているな。エレーヌさんが手配をしたと言っていたから、既に処分されているのだろう。

「ロアリングフルートがいないわね」

「そうだな」

 八番エリアにもいないとなると、他のエリアに移動しているのか? ここまでの道中で遭遇しなかったとすると、まだ行っていないエリアにいるのか、それともどこかで行き違いになっているのか。

 考えていると、真上から翼が羽ばたく音が聞こえてきた。

 顔を上げると、上にはサルの顔にゴリラの胴体、背中からはコウモリの翼が生え、手に横笛を持っているモンスターがゆっくりと舞い降りてきた。

「ロアリングフルート!」











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