ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第三章

第一話 テレーゼと共同任務

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~リュシアン視点~



「それでは、リュシアン君が担当する今日の依頼はこれね」

 ギルドマスターのエレーヌさんから、本日分の依頼を受け取った。

「今日は一枚だけなのですか?」

「ええ、この前みたいなことがあるといけないから、これからは一枚ずつ渡すことにしたの」

 この前と言うのは、俺がユリヤと一緒にコモラを倒した後、テレーゼの手伝いをすることになったあのことだろう。

 本来俺がやるはずだった依頼は、ユリヤが肩代わりしてくれた。だから今度何らかの形でお礼をしようと思っている。

「エレーヌ! あたし、リュシアンピグレットと同じ依頼を受けるわ!」

 朝っぱらから元気な声を出し、テレーゼが俺の腕に自信の腕を絡めてきた。

「まぁ!」

 突然の行動に驚いたようで、エレーヌさんは片手で口を覆い隠す。

「どうしてそうなるんだ! 俺は基本的にはソロで依頼をやりたいんだ」

 テレーゼの絡めてきた腕を振り解くと、彼女と距離を離す。

 テレーゼのやつ、急に距離感を縮めすぎていないか? 俺は彼女の顔を見る度にあの日のことを思い出して、どう接してあげればいいのかが分からないって言うのに。

 前日、彼女は俺のファーストキスを奪い、俺をピグレットにすると言ってきたのだ。

 まだピグレットの意味が全然分かっていないが、テレーゼの顔を見ると鼓動が激しくなる。

「それにどうしてテレーゼがまだこのギルドに居るんだよ。この町でのコンサートは終わっただろう? 次の公演に向かわなくていいのかよ」

 心の整理をしたかった俺は、つい彼女をつけ離すような言い方をしてしまう。

「ああ、それね。歌姫の仕事は一旦お休みにしたわ。だって、あたしは世界のトップ歌姫なのよ。もう世界を完全制覇したようなもの。だから本業であるハンターの仕事でこっちもLレジェンドランクを目指そうと思って」

「歌姫の方が副業だったのかよ! 俺はてっきりハンターの方が副業だと思っていたぞ!」

「あたしと一緒にいられて嬉しいでしょう。リュシアンピグレット

 テレーゼが片目を瞑ると、俺に向けて可愛くウインクした。

「あたしがリュシアンピグレットと一緒に依頼を受けたいのは、個人的な気持ちだけではないの。レジェンドハンターを目指すには、Sランクハンターであるあなたと一緒に行動して戦いぶりを見て学びたいのよ。ねぇ、いいでしょう」

 上目遣いでテレーゼは俺に訊いてくる。

 くっ、噂には聞いたことがあったが、女の子の上目遣いがここまで強力なものだとは思わなかった。

「いいんじゃないかしら。二人で依頼をやってきなさい」

 エレーヌさんが許可を出した瞬間、テレーゼの顔が綻ぶ。

「ありがとうエレーヌ! さすが話がわかっているじゃない。伊達に年を取っていないわね」

 テレーゼが最後に余計なことを言った瞬間、エレーヌさんの表情が凍り付く。笑顔ではあるものの、寒気がするほどの殺気を放っていた。

「やっぱりリュシアン君一人にお願いしようかしら」

「あはは、今のは口が滑った……じゃなかった。言葉のあやよ。エレーヌは年を感じさせないほどの美しいお肌で羨ましいわ。それじゃあ、リュシアンピグレットちょっとの間だけ待っていて! 寮に戻って準備をして来るから!」

 エレーヌさんを怒らせてこの場に居づらくなったテレーゼは、猛スピードでギルドから出て行く。

「まったく、あの子ったら調子のいいことばかり言うのだから。あんな性格だから大変かもしれないけど、テレーゼをよろしく。リュシアン君」

 あ、やっぱりテレーゼと一緒に依頼を受けることになるのか。

 苦笑いを浮かべつつ、俺は依頼書に目を通す。

 討伐対象のモンスターはロアリングフルート。こいつは討伐したことはないが、外見は知っている。見かければすぐにわかるだろう。

 えーと、依頼者の一言は?

『この前深緑の森を歩いていたとき、美しい笛の音を聴いたんだ。いったい誰が吹いているんだろうと思って音がした方に歩くと、猿が笛を吹いていた。しかもやつの音色を聴いた瞬間、身体中が痛くなった。あんな危険なモンスターを野放しにはできない。頼むハンター! やつを討伐してくれ!』

 音色を聴いた瞬間に身体に痛みが走ったか。つまり音によるダメージを受けたと言うことだよな。音は目で見ることはできないぞ。どうやって対策を立てようか?

「お待たせ! リュシアンピグレット! 準備ができたから行きましょう!」

 音色を聴いてダメージを受けると言うことは、その音を遮断する何かがあればいいのか?

「どうしたの? そんなに難しい顔をして?」

 いや、そもそも音で脳にダメージを受けているとは限らないよな。音は目には見えないが、肌で感じることはできる。それを利用した攻撃の可能性だって十分考えられる。

「おーい! 聞いているの! 無視するな!」

「うわっと! びっくりした! テレーゼ、いつの間に戻って来たんだよ。いきなり顔を近づけられてびっくりしたじゃないか」

「一分ほど前に来たばかりよ。それにさっきから何度も呼びかけていたのに、全然気付いてくれなかったじゃない」

 テレーゼは頬を膨らませながら青い瞳で俺を見る。

「そうだったのか。それはすまない。考えごとをしていた」

「あたしとハネムーンに行く場所を考えていたの?」

「どうしてそうなるんだよ! ふざけないでくれ! 今回討伐するモンスターは特殊なんだ。だからどうやって倒すかを考えていた」

「だからさっきブツブツと独り言を言っていたんだ。でも、モンスターの討伐の方法を考えていたら息が詰まらない?」

「まぁ、正直頭が痛いところはある。だけど、効率的に考えて無駄なくモンスターを倒す方法を見出した上で、討伐に向かったほうがスムーズに終わらせることができる。だから――」

 テレーゼが俺の唇に人差し指を押し当てたことで、俺の言葉は途中で中断された。

「それ以上は言わせないわ。確かに効率的に動いた方がたくさんの依頼を受けられる。その分多くの依頼者を助けることになるわ。でも、だからと言ってハンターがムリをしてはいけない。今回はあなた一人ではないわ。一緒に力を合わせて、今回のモンスターを倒しましょう。さぁ、行くわよ」

 彼女は俺の手を握ると、強引にギルドから連れ出した。











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