ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第二章

第十一話 依頼主がこんなに暴動に出るとは思わなかった。

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~アントニオ視点~



 俺様ことブラックギルドマスターのアントニオは、机の下に隠れて縮こまっていた。

「ギルドマスター出て来い! いつになったら依頼を受けに来てくれるんだ!」

「約束が違うじゃないか! ハンターが来なかったせいで、俺の母ちゃんは天国に旅立ってしまったぞ! どう責任を取ってくれるんだ!」

「このままではモンスターに怯えながら生活することになる!」

「私のお肌が荒れているのも、ギルドマスターがハンターを派遣してくれないからよ! どう責任取ってくれるのよ! 男前ハンターエネルギーが足りないじゃないのよ!」

 ギルドの外では依頼主が集まり、さっきから俺様に向けて暴言を吐く。

 くそう。どうしてこうなってしまうのだ! 俺様の計算では、もう少し大人しくしてくれているはずだったのに。

 くそう、くそう、くそう。いったいハンター道具たちは何をやっているんだ! 男一人を連れ戻すのに、どれだけ時間をかけている!

 本当に使えない奴らめ。こうなるのなら、半分は残しておくべきだった。そうすればこんなに暴動が酷くなることはなかったというのに!

 さっきから扉が強く叩かれている。多分あいつらが体当たりしているのだろう。

「鍵はかけてある。きっと大丈夫だ。簡単には壊されない」

 だけど万が一のことはある。最悪の場合はこいつで脅すしかない。

 俺様は手元に置いてある愛用の得物をみる。

 これでも元はAランクハンターだ。現役のころは所属していたハンターギルドで二番目の実力を持っていた。

 過去を思い出すと、俺は歯を食いしばる。

 ああくそう! 思い出すとむしゃくしゃしてくる。あの女が常に俺の成績を上回っていたせいで、俺はそのギルドではナンバーツーに甘んじるしかなかった。

 そう言えば、あいつもどこかの街でハンターギルドを運営していると、風の噂で聞いたことがあるな。だけどまぁ、あいつはハンターとしての腕はあっても、経営者としてはきっと上手くいっていないはず。

 今頃潰れているに決まっているさ。何せこの俺様が運営しているギルドが現在ピンチになっているんだ。あんな戦闘バカのギルドなんて、一週間もたないに決まっている。

「そうだ。エレーヌが運営するギルドなんて、もう存在していないに決まっている」

 ドン、ドン、ドン!

「ギルドマスター出て来い!」

「隠れているのは分かっているんだぞ!」

「早くハンターを寄越せ!」

 くそう。扉が破壊されてしまった。このまま隠れていてもどうせ直ぐに見つかってしまう。こうなったら、俺様の方から打って出るしかない。

 俺様は隠れている机から出ると愛用の斧を構えた。

「いいか! それ以上俺様に近づくな! 近付けばこの斧でお前たちをぶった斬るぞ!」

 威嚇をすると依頼主たちは尻込み、一歩下がる。

 よしよし、このままこいつらが逃げ帰ってくれれば時間稼ぎになる。その間にハンター道具を呼び戻し、俺様の護衛&依頼主の依頼を受けさせれば、この状況を打破できるに決まっている。

 そうだ。俺様はなんて天才なんだ。どんな窮地に陥ろうと、瞬時に打開策を考えるなんて。

 俺様は思わず口角を上げる。

 よく見たら、こいつら全員武装していないじゃないか。つまり、どう考えても俺様の方が主導権を握っている。このまま押し切ってみせるぜ。

「俺様は本気だ! 一歩でも近付いて見ろ! 全員あの世に送ってやるからな!」

 思いっきり声を張り上げて牽制する。しかし、奴らはこの程度では引き下がろうとはしなかった。

 くそう。どうして引き下がってくれない。

「おい、おい、ギルドマスター落ち着いてくれ。俺たちを追い出したいのは分かるが、ハンターとしてのルールがあるじゃないか。モンスター以外に武器を使って人を傷付けてはいけない。それはギルドマスターにも当て嵌まる」

「そうだ。変な気を起こさないでそんな物騒なものはしまってくれ」

「俺たちは話し合いに来ただけだ」

 依頼主の一人がハンターのルールを言うと、自分たちのほうが有利だと思い込んだようだ。

 奴らは一歩、また一歩と俺様との距離を詰めて来る。

 そんな彼らに並々ならぬ恐怖を覚えた俺様は、思いっきり斧を横に振る。

 俺様の斧は依頼主の前を通り過ぎ、男の前髪を切った。

 彼は額に手を置き、顔を青ざめる。

「言ったはずだ! 俺様は本気だと! 近づくやつは誰一人として例外なく斬り倒す!」

「ギ、ギルドマスターは本気だ!」

「いやー! 殺される!」

「に、逃げろ! ここにいたら本当に殺されるぞ!」

 どうやら俺様の本気が伝わったようだな。依頼主は蜘蛛の子を散らすように一目散にギルドから出ていく。

 ふぅ。これでどうにかなったな。

 感情が昂っていたからか、動悸が激しい。

 年はとりたくないものだ。

 だけど、休んでいる暇は今の俺様にはない。早く出払っているハンター道具たちを呼び戻さなければ。

 俺様は連絡係用の鳥、リピートバードを複数羽用意した。

 こいつは頭がよく、人間と同じ声帯を持っているので、人の言葉を話すことができる。

「全ハンターに次ぐ! リュシアン捜索は一旦止めて戻って来い! あんなやつに構っている時間がなくなった! 一秒でも早く戻って来い! でないと減給だ!」

 鳥たちに伝えると、リピートバードは一斉に羽ばたき、ハンター道具のもとに向かって行く。










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