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第二章
第十話 ロックモグーラには勝てなかった
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~フェルディナン視点~
俺ことフェルディナンは、岩に擬態したモンスター、ロックモグーラと遭遇してしまった。
まさか休憩にちょうどいいと思って座っていた岩が、モンスターの背中だとは思わなかったな。
ロックモグーラは鼻をひくひくと動かすと、俺の方を見る。そして鋭利な爪のある前足を横に振って攻撃してきた。
敵のモーションから予想した俺は、後方に跳躍して一撃を躱す。
「もしかして背中に座ったことを根に持っているのか。心が狭いやつだぜ」
とにかく今は、こんなやつを相手にしている暇はない。どうにか撒いて、この森から脱出しなければ。
悪いがここは逃げさせてもらう!
俺はロックモグーラの方に敢えて走った。やつにとっては予想外の行動だったらしく、戸惑って攻撃のタイミングを逃す。
モンスターの股の間を潜り抜け、そのまま全力でダッシュした。
「逃げ足だけは誰にも負けねぇ! あばよ!」
ロックモグーラとの距離を離しながら考える。
この森に関して、俺は殆ど情報がない。森の構造からどのようなエリアに分けられているのかも知らないし、どのルートで進めば出口に辿り着くのかも分からない。
とにかく今は、がむしゃらに逃げるだけだ。
スタミナの続く限り走っていると、開けた場所に出た。
ここは何番のエリアだ? まぁいい。取り敢えずこの辺で休憩しよう。
限界を超え、俺はこれ以上走ることができなかった。両膝の上に手を置き、荒い呼吸を整える。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……こ、ここまで……くれば……大丈夫だろう」
失ったスタミナが回復するまで待っていると、急に地面が揺れ出す。
この揺れはまさか!
嫌な予感が的中してしまい、地面からロックモグーラが顔を出す。そして鼻をひくひくさせると這い上がって来た。
くそう。逃げきれなかったか。まだスタミナの方が完全に回復していない。瞬時に回復するアイテムがない以上、俺はこれ以上逃げることはできない。
「くそう。こうなったら、倒すのはムリでも追い返してやる」
背中につけている鞘から大剣を抜いて構える。
「さぁ、来やがれ!」
ロックモグーラが口を開けると、口内から岩石を飛ばしてきた。
こいつ、体内で岩を生成できるのかよ。
咄嗟に大剣の刀身部分を盾にして岩を弾く。
弾くことには成功したが、反動で俺は後方に下がってしまった。
もう一度構えながらゆっくりと距離を詰める。
やつが口を開けたらガードではなく回避に移る。そうしなければ、俺はやつとの距離を縮められない。
少しずつロックモグーラとの距離を縮めると、やつは再び口を開けた。
またあの岩石攻撃が来る!
俺は咄嗟に大剣を鞘に戻し、その場で前転して岩を避ける。
大剣が重い分、構えたときに走ることができない。だけどいちいち口を開けたタイミングで得物をしまっていては、それだけでムダに体力を消耗してしまう。
ここはギリギリまで大剣には頼らずに接近し、攻撃が届くタイミングで抜刀して斬りつける。こうするのがいいだろうな。
方針を決めると、俺は自然回復した分のスタミナを使ってロックモグーラに接近する。
だが、そんな俺の計画を嘲笑うかのように、ロックモグーラは地面の中に潜った。そして振動が俺のところに向かってくると、やつは地面から飛び出す。
「グアッ!」
下から突き上げられた俺は、空中に飛ばされた。
このまま地面に落下すればただでは済まない。運が悪ければ即死だ。だけどこんなところで死ぬ訳にはいかない。
「俺はアントニオを殺してギルドマスターの座を奪ってやると決めたんだ! こんなモンスターなんかに、俺の野望を打ち砕かれてたまるか!」
背中にある大剣を再び抜き、空中で体勢を整える。そして落下したタイミングで大剣を振り下ろす。
俺の攻撃は真下にいたロックモグーラに当たると金属音が響く。
くそう。やっぱり硬いな。だけどキングカルディアスに比べれば柔らかい。
その証拠に、俺の大剣は刃こぼれしていない。
モンスターの背に乗った状態となった俺は、力の限り大剣を振る。
刃と岩が触れる度に金属音が響いた。
「チッ、全然ダメージが通っている気がしない!」
だけどどこかにあるはずだ。硬い部分に隠された柔らかい箇所が。
敵の弱点を探っていると、ロックモグーラは再び地面に潜り出す。
やつは身体を左右に振り、振動で俺は振り落とされる。
「さっきから俺が何か行動しようとするたびに潜っていないか」
再びやつが地面から顔を出すのを待つ。すると十メートルほど離れた場所にロックモグーラが現れる。
「あいつ、この俺をおちょくっていないか?」
ああ、だんだんイライラしてきたぜ。モンスターではないが、俺も憤怒モードに入った気分だ。
ここからロックモグーラを見ていると、あることに気づく。
「あいつの胸にある隙間が大きくないか?」
ロックモグーラは全身岩に覆われたモンスターだ。だけど岩と岩との間には隙間が存在している。だけど胸の岩だけは隙間が大きく見えた。
確かめる必要があるな。だけど、それにはやつに近づく必要がある。はたして、近づいた途端にまた逃げられるだろうか。
考えていると、ロックモグーラは地下に潜ろうとはせずに、地面の上を這いずり回って俺の方に向かってきた。
こいつはラッキーだ。近づいてくれたお陰で確信したが、やっぱり胸の隙間が広い。
大剣を構え、間合いに入ったところで突きを放つ。
ガキーン!
だが、狙いが外れて大剣は岩の方に当たる。そればかりではなかった。普段やらないような攻撃をしたせいで、先端部分がかけてしまった。
「くそう。があああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
欠けた大剣に気を取られていると、ロックモグーラが俺を叩いた。
運よく爪には当たらなかったが、ゴツゴツした手が当たり、俺はぶっ倒れる。
やばい。今ので脳震盪でも起こしたか? 意識が朦朧としてきた。
このままでは俺は死んでしまうかもしれない。だけど、せめて最後はハンターらしく死にたいものだ。
俺は立ち上がると、もう一度構えて岩同士の隙間に狙いを定めて攻撃を放つ。
ガキーン!
やっぱりダメだったか。どうやら俺はここまでのようだ。
「ここは……どこだ?」
「おや、目が覚めたようだな」
「よかった。お兄ちゃん。目を覚ました」
「村長……それにアリス」
どうやら俺は、ミリタ村にいるみたいだ。だけどどうしてだ?
「どうして俺はここにいる?」
「森の中で倒れていたらしく、男の人がここまで連れてきたのです」
「本当にびっくりしたんだよ! お兄ちゃんボロボロで、今にも死にそうになっていたんだもの」
俺は助けられたのか。
「そうだ。ロックモグーラは!」
「そのモンスターはあんたを助けた男が討伐してくれた。ちょうどハンターギルドに頼もうとしておったからよかったわい。これで安全に森を行き来することができる」
あのロックモグーラを倒したのか! それに話だと一人じゃないか! もしかしてリュシアンか?
「その男はどこに行くか言っていたか!」
「ああ、確かこの森を抜けた先にある町に行くと言っておったな」
俺を助けた男が森を抜けた先にある町に向かった。リュシアンの可能性は低いかもしれないが、何も手がかりがないよりもマシだ。
「村長、アリス。礼は一応言っておく。だけどこの借りを返すつもりはないからな」
俺は起き上がると、身体はどこにも痛みを感じなかった。回復ポーションを使われたみたいだな。お陰で直ぐに行動することができる。
大剣は次の町で研磨するとしよう。どうせこんな田舎の村には鍛冶職人なんていないだろうからな。
「お兄ちゃん、もう行っちゃうの?」
「ああ、俺はリュシアンを探さなければならない。それじゃあな」
俺はアリスに別れの挨拶をすると建物から出た。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントでも大丈夫です。
何卒宜しくお願いします。
俺ことフェルディナンは、岩に擬態したモンスター、ロックモグーラと遭遇してしまった。
まさか休憩にちょうどいいと思って座っていた岩が、モンスターの背中だとは思わなかったな。
ロックモグーラは鼻をひくひくと動かすと、俺の方を見る。そして鋭利な爪のある前足を横に振って攻撃してきた。
敵のモーションから予想した俺は、後方に跳躍して一撃を躱す。
「もしかして背中に座ったことを根に持っているのか。心が狭いやつだぜ」
とにかく今は、こんなやつを相手にしている暇はない。どうにか撒いて、この森から脱出しなければ。
悪いがここは逃げさせてもらう!
俺はロックモグーラの方に敢えて走った。やつにとっては予想外の行動だったらしく、戸惑って攻撃のタイミングを逃す。
モンスターの股の間を潜り抜け、そのまま全力でダッシュした。
「逃げ足だけは誰にも負けねぇ! あばよ!」
ロックモグーラとの距離を離しながら考える。
この森に関して、俺は殆ど情報がない。森の構造からどのようなエリアに分けられているのかも知らないし、どのルートで進めば出口に辿り着くのかも分からない。
とにかく今は、がむしゃらに逃げるだけだ。
スタミナの続く限り走っていると、開けた場所に出た。
ここは何番のエリアだ? まぁいい。取り敢えずこの辺で休憩しよう。
限界を超え、俺はこれ以上走ることができなかった。両膝の上に手を置き、荒い呼吸を整える。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……こ、ここまで……くれば……大丈夫だろう」
失ったスタミナが回復するまで待っていると、急に地面が揺れ出す。
この揺れはまさか!
嫌な予感が的中してしまい、地面からロックモグーラが顔を出す。そして鼻をひくひくさせると這い上がって来た。
くそう。逃げきれなかったか。まだスタミナの方が完全に回復していない。瞬時に回復するアイテムがない以上、俺はこれ以上逃げることはできない。
「くそう。こうなったら、倒すのはムリでも追い返してやる」
背中につけている鞘から大剣を抜いて構える。
「さぁ、来やがれ!」
ロックモグーラが口を開けると、口内から岩石を飛ばしてきた。
こいつ、体内で岩を生成できるのかよ。
咄嗟に大剣の刀身部分を盾にして岩を弾く。
弾くことには成功したが、反動で俺は後方に下がってしまった。
もう一度構えながらゆっくりと距離を詰める。
やつが口を開けたらガードではなく回避に移る。そうしなければ、俺はやつとの距離を縮められない。
少しずつロックモグーラとの距離を縮めると、やつは再び口を開けた。
またあの岩石攻撃が来る!
俺は咄嗟に大剣を鞘に戻し、その場で前転して岩を避ける。
大剣が重い分、構えたときに走ることができない。だけどいちいち口を開けたタイミングで得物をしまっていては、それだけでムダに体力を消耗してしまう。
ここはギリギリまで大剣には頼らずに接近し、攻撃が届くタイミングで抜刀して斬りつける。こうするのがいいだろうな。
方針を決めると、俺は自然回復した分のスタミナを使ってロックモグーラに接近する。
だが、そんな俺の計画を嘲笑うかのように、ロックモグーラは地面の中に潜った。そして振動が俺のところに向かってくると、やつは地面から飛び出す。
「グアッ!」
下から突き上げられた俺は、空中に飛ばされた。
このまま地面に落下すればただでは済まない。運が悪ければ即死だ。だけどこんなところで死ぬ訳にはいかない。
「俺はアントニオを殺してギルドマスターの座を奪ってやると決めたんだ! こんなモンスターなんかに、俺の野望を打ち砕かれてたまるか!」
背中にある大剣を再び抜き、空中で体勢を整える。そして落下したタイミングで大剣を振り下ろす。
俺の攻撃は真下にいたロックモグーラに当たると金属音が響く。
くそう。やっぱり硬いな。だけどキングカルディアスに比べれば柔らかい。
その証拠に、俺の大剣は刃こぼれしていない。
モンスターの背に乗った状態となった俺は、力の限り大剣を振る。
刃と岩が触れる度に金属音が響いた。
「チッ、全然ダメージが通っている気がしない!」
だけどどこかにあるはずだ。硬い部分に隠された柔らかい箇所が。
敵の弱点を探っていると、ロックモグーラは再び地面に潜り出す。
やつは身体を左右に振り、振動で俺は振り落とされる。
「さっきから俺が何か行動しようとするたびに潜っていないか」
再びやつが地面から顔を出すのを待つ。すると十メートルほど離れた場所にロックモグーラが現れる。
「あいつ、この俺をおちょくっていないか?」
ああ、だんだんイライラしてきたぜ。モンスターではないが、俺も憤怒モードに入った気分だ。
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「あいつの胸にある隙間が大きくないか?」
ロックモグーラは全身岩に覆われたモンスターだ。だけど岩と岩との間には隙間が存在している。だけど胸の岩だけは隙間が大きく見えた。
確かめる必要があるな。だけど、それにはやつに近づく必要がある。はたして、近づいた途端にまた逃げられるだろうか。
考えていると、ロックモグーラは地下に潜ろうとはせずに、地面の上を這いずり回って俺の方に向かってきた。
こいつはラッキーだ。近づいてくれたお陰で確信したが、やっぱり胸の隙間が広い。
大剣を構え、間合いに入ったところで突きを放つ。
ガキーン!
だが、狙いが外れて大剣は岩の方に当たる。そればかりではなかった。普段やらないような攻撃をしたせいで、先端部分がかけてしまった。
「くそう。があああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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運よく爪には当たらなかったが、ゴツゴツした手が当たり、俺はぶっ倒れる。
やばい。今ので脳震盪でも起こしたか? 意識が朦朧としてきた。
このままでは俺は死んでしまうかもしれない。だけど、せめて最後はハンターらしく死にたいものだ。
俺は立ち上がると、もう一度構えて岩同士の隙間に狙いを定めて攻撃を放つ。
ガキーン!
やっぱりダメだったか。どうやら俺はここまでのようだ。
「ここは……どこだ?」
「おや、目が覚めたようだな」
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「村長……それにアリス」
どうやら俺は、ミリタ村にいるみたいだ。だけどどうしてだ?
「どうして俺はここにいる?」
「森の中で倒れていたらしく、男の人がここまで連れてきたのです」
「本当にびっくりしたんだよ! お兄ちゃんボロボロで、今にも死にそうになっていたんだもの」
俺は助けられたのか。
「そうだ。ロックモグーラは!」
「そのモンスターはあんたを助けた男が討伐してくれた。ちょうどハンターギルドに頼もうとしておったからよかったわい。これで安全に森を行き来することができる」
あのロックモグーラを倒したのか! それに話だと一人じゃないか! もしかしてリュシアンか?
「その男はどこに行くか言っていたか!」
「ああ、確かこの森を抜けた先にある町に行くと言っておったな」
俺を助けた男が森を抜けた先にある町に向かった。リュシアンの可能性は低いかもしれないが、何も手がかりがないよりもマシだ。
「村長、アリス。礼は一応言っておく。だけどこの借りを返すつもりはないからな」
俺は起き上がると、身体はどこにも痛みを感じなかった。回復ポーションを使われたみたいだな。お陰で直ぐに行動することができる。
大剣は次の町で研磨するとしよう。どうせこんな田舎の村には鍛冶職人なんていないだろうからな。
「お兄ちゃん、もう行っちゃうの?」
「ああ、俺はリュシアンを探さなければならない。それじゃあな」
俺はアリスに別れの挨拶をすると建物から出た。
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