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第二章
第九話 村長のお願いなんか聞いてあげるか
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~フェルディナン視点~
「お願いします! 私を村に連れて行ってください!」
俺ことフェルディナンは、ストレス発散のために野盗をあの世に送ったあと、アリスから村に送れと頼まれた。
「お前を村に連れて行けだと?」
「はい」
「どうしてお前を村まで連れて行かないといけない。ここまで一人で来たんだ。帰り道くらい分かっているだろう?」
「それが……道に迷ってしまって」
チッ、本当に今日の俺はついていない。さっきから面倒ごとに巻き込まれてばかりだ。
「そんなこと俺には関係ない。いいから離れろ! 暑苦しいんだよ」
俺はアリスを振り離そうとするが、彼女は必死にしがみ付いて離れようとはしなかった。
「いい加減に離せ! 俺は忙しいんだよ!」
「どうして意地悪するのですか! 私を怖いおじさんたちから助けてくれたじゃないですか!」
「あれは気の迷いだ! 本当は引き返すつもりはなかったんだよ!」
くそう、いくら体を動かしても離しやがらねぇ。あーもう! 面倒くせぇ!
「分かった! 分かったから俺から離れろ!」
「ちゃんと私を村まで送り届けてくれますか!」
「送る! 送ってやるから俺から離れてくれ!」
こんなガキに本当は折れたくなかった。だけど彼女を村まで送ってやらないと、俺の仕事が先に進まない。
心からの叫びが届いたのか。アリスは俺の腰に回している腕を離す。
「それで、お前の村はどこなんだ?」
「ミリタ村です」
ミリタ村って、今から俺が向かう村じゃないか。くそう、そうならそうとさっさと言いやがれよ。時間のムダだったじゃないか。
「ミリタ村だな !ならこっちだ! さっさと行くぞ!」
「ま、待ってくださいよ!」
急ぎ足で歩くと、アリスが駆け足で追いかける。
「も、もう少しゆっくり歩いてくださいよ」
「どんな速度で歩こうが俺の勝手だろう。付いて来られないお前が悪い」
これだからガキは嫌いだ。文句ばかり言いやがる。
「そ、それなら……えい!」
「くっ、このガキ!」
アリスが俺の背中に飛び乗ると、そのままよじ登って俺の肩に跨った。
今の俺は彼女に肩車をしている状態だ。
「これなら楽ちんです」
「このガキ! 降りやがれ!」
「お兄さんがアリスに合わせられないのがいけないのです。女の子をちゃんとエスコートしないと男性として失格ですよ」
ガキの癖にそんなことは知っているのかよ。
もう嫌だ。こいつに関わっていると碌な目に遭わない。さっさと村に行って、このガキを引き渡そう。
「チッ、俺は忙しいんだ。急いで村に向かうから、しっかりと捕まっているんだぞ!」
歩くのを止めると、俺は走って村を目指す。
「わ、わ、速い! 風が気持ちいい!」
この俺のスピードを楽しんでいるだと! このガキ、意外と只者ではないのかもしれないな。
「わ、わ、落ちそうです。えい!」
「いてて、か、髪を引っ張るな! 抜ける! 髪が抜けるだろうが!」
あまりの痛さに、俺は一旦走るのを止める。
「おい! 確かにしっかりと掴まれと言ったが、髪を握れとは一言も言っていないだろうが!」
「ご、ごめんなさい。だんだん早くなって怖くなって」
それなら最初から肩に乗ってくるなよ。
「チッ、分かったよ。それなら次はもう少しスピードを緩める」
再び走り出して村へと向かう。しかし、彼女の嫌がる速度を出すと、髪を引っ張られる。なのでその度に速度を緩めることになった。
俺の髪はブレーキじゃねぇぞ!
そんなことがありつつも、俺たちはようやく目的地に辿り着いた。
「あ、村長!」
「アリスじゃないか。村で見かけないと思ったら外に行っておったのか? そちらの方は?」
「このお兄さんがね。怖いおじさんたちから私を守ってくれたの!」
「そうでしたか。それはありがとうございました」
「爺さん、この村に元ハンターを名乗る男が来なかったか? こんな感じの男なんだが?」
ポケットから一枚の紙を取り出すと、それを村長に見せる。
「いや、ワシの知る限りではこの村を訪ねた旅人あんただけじゃ。それにこの似顔絵の人物も見たことがない」
「チッ、ハズレか。となると次に向かう必要があるな」
肩に跨っているアリスを下ろすと、この村から出ようと踵を返す。
「ちょっと待たれお若いの」
ミリタ村から出ようとすると、背後から村長が声をかける。
「なんだ? リュシアンの情報は何もないのだろう。なら、俺はもうこの村には用がない」
「あんたに用がなくともワシにはある。あんた、見たところハンターさんじゃろう? ならワシからの依頼を受けてくれないか?」
「悪いが俺は急いでいるのでね。その依頼は別のハンターにでも頼んでくれ。あ、ついでに頼むのであればブラックハンターギルド以外で頼むぞ。あそこは今、依頼を受けてもハンターが来ない状況になっているからな」
忠告をすると、俺はミリタ村を出る。
次の目的地に向かうために森の中を歩いていると、平な岩があった。
ちょうどいい。アリスのせいで疲れたから、一旦あそこに座って休憩するとするか。
ポケットから携帯食料を出して食事を始める。
「うめー! やっぱり同僚からパクった飯はサイコーだぜ!」
食事を終え、ゴミを地面に投げ捨てる。すると、いきなり地面が動き出した。
なんだ! 地震か!
驚いた俺は周囲を見る。だが、揺れているのは俺の周りだけで、先の方は揺れていなかった。
地面が盛り上がり、俺は座っていた岩から転落する。
地面の上を転がりながらも起き上がると、目の前には巨大なモンスターが現れた。
「岩石のような体に鋭い爪、そしてつぶらな瞳は岩石土竜、ロックモグーラじゃないか!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
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何卒宜しくお願いします。
「お願いします! 私を村に連れて行ってください!」
俺ことフェルディナンは、ストレス発散のために野盗をあの世に送ったあと、アリスから村に送れと頼まれた。
「お前を村に連れて行けだと?」
「はい」
「どうしてお前を村まで連れて行かないといけない。ここまで一人で来たんだ。帰り道くらい分かっているだろう?」
「それが……道に迷ってしまって」
チッ、本当に今日の俺はついていない。さっきから面倒ごとに巻き込まれてばかりだ。
「そんなこと俺には関係ない。いいから離れろ! 暑苦しいんだよ」
俺はアリスを振り離そうとするが、彼女は必死にしがみ付いて離れようとはしなかった。
「いい加減に離せ! 俺は忙しいんだよ!」
「どうして意地悪するのですか! 私を怖いおじさんたちから助けてくれたじゃないですか!」
「あれは気の迷いだ! 本当は引き返すつもりはなかったんだよ!」
くそう、いくら体を動かしても離しやがらねぇ。あーもう! 面倒くせぇ!
「分かった! 分かったから俺から離れろ!」
「ちゃんと私を村まで送り届けてくれますか!」
「送る! 送ってやるから俺から離れてくれ!」
こんなガキに本当は折れたくなかった。だけど彼女を村まで送ってやらないと、俺の仕事が先に進まない。
心からの叫びが届いたのか。アリスは俺の腰に回している腕を離す。
「それで、お前の村はどこなんだ?」
「ミリタ村です」
ミリタ村って、今から俺が向かう村じゃないか。くそう、そうならそうとさっさと言いやがれよ。時間のムダだったじゃないか。
「ミリタ村だな !ならこっちだ! さっさと行くぞ!」
「ま、待ってくださいよ!」
急ぎ足で歩くと、アリスが駆け足で追いかける。
「も、もう少しゆっくり歩いてくださいよ」
「どんな速度で歩こうが俺の勝手だろう。付いて来られないお前が悪い」
これだからガキは嫌いだ。文句ばかり言いやがる。
「そ、それなら……えい!」
「くっ、このガキ!」
アリスが俺の背中に飛び乗ると、そのままよじ登って俺の肩に跨った。
今の俺は彼女に肩車をしている状態だ。
「これなら楽ちんです」
「このガキ! 降りやがれ!」
「お兄さんがアリスに合わせられないのがいけないのです。女の子をちゃんとエスコートしないと男性として失格ですよ」
ガキの癖にそんなことは知っているのかよ。
もう嫌だ。こいつに関わっていると碌な目に遭わない。さっさと村に行って、このガキを引き渡そう。
「チッ、俺は忙しいんだ。急いで村に向かうから、しっかりと捕まっているんだぞ!」
歩くのを止めると、俺は走って村を目指す。
「わ、わ、速い! 風が気持ちいい!」
この俺のスピードを楽しんでいるだと! このガキ、意外と只者ではないのかもしれないな。
「わ、わ、落ちそうです。えい!」
「いてて、か、髪を引っ張るな! 抜ける! 髪が抜けるだろうが!」
あまりの痛さに、俺は一旦走るのを止める。
「おい! 確かにしっかりと掴まれと言ったが、髪を握れとは一言も言っていないだろうが!」
「ご、ごめんなさい。だんだん早くなって怖くなって」
それなら最初から肩に乗ってくるなよ。
「チッ、分かったよ。それなら次はもう少しスピードを緩める」
再び走り出して村へと向かう。しかし、彼女の嫌がる速度を出すと、髪を引っ張られる。なのでその度に速度を緩めることになった。
俺の髪はブレーキじゃねぇぞ!
そんなことがありつつも、俺たちはようやく目的地に辿り着いた。
「あ、村長!」
「アリスじゃないか。村で見かけないと思ったら外に行っておったのか? そちらの方は?」
「このお兄さんがね。怖いおじさんたちから私を守ってくれたの!」
「そうでしたか。それはありがとうございました」
「爺さん、この村に元ハンターを名乗る男が来なかったか? こんな感じの男なんだが?」
ポケットから一枚の紙を取り出すと、それを村長に見せる。
「いや、ワシの知る限りではこの村を訪ねた旅人あんただけじゃ。それにこの似顔絵の人物も見たことがない」
「チッ、ハズレか。となると次に向かう必要があるな」
肩に跨っているアリスを下ろすと、この村から出ようと踵を返す。
「ちょっと待たれお若いの」
ミリタ村から出ようとすると、背後から村長が声をかける。
「なんだ? リュシアンの情報は何もないのだろう。なら、俺はもうこの村には用がない」
「あんたに用がなくともワシにはある。あんた、見たところハンターさんじゃろう? ならワシからの依頼を受けてくれないか?」
「悪いが俺は急いでいるのでね。その依頼は別のハンターにでも頼んでくれ。あ、ついでに頼むのであればブラックハンターギルド以外で頼むぞ。あそこは今、依頼を受けてもハンターが来ない状況になっているからな」
忠告をすると、俺はミリタ村を出る。
次の目的地に向かうために森の中を歩いていると、平な岩があった。
ちょうどいい。アリスのせいで疲れたから、一旦あそこに座って休憩するとするか。
ポケットから携帯食料を出して食事を始める。
「うめー! やっぱり同僚からパクった飯はサイコーだぜ!」
食事を終え、ゴミを地面に投げ捨てる。すると、いきなり地面が動き出した。
なんだ! 地震か!
驚いた俺は周囲を見る。だが、揺れているのは俺の周りだけで、先の方は揺れていなかった。
地面が盛り上がり、俺は座っていた岩から転落する。
地面の上を転がりながらも起き上がると、目の前には巨大なモンスターが現れた。
「岩石のような体に鋭い爪、そしてつぶらな瞳は岩石土竜、ロックモグーラじゃないか!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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