ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
15 / 171
第二章

 第六話 これはファンを蔑ろにした報いなのね

しおりを挟む
~テレーゼ視点~



「くそう、勝手にしろ! どうなっても知らないからな!」

 あたしことテレーゼは、扉越しに聞こえるピッグの怒声を聞きながらイスに座っていた。

 何よ偉そうに。あたしは世界のトップ歌姫なのよ。あたしに説教しようだなんて百年早いわ。歌姫がどれだけ過酷なのかも知らないくせに。

「ちょっとだけ見直したあたしがバカだったわ。あんなことを言うようなやつだとは思わなかった!」

 あたしはテーブルを強く叩く。あまりにもイライラしすぎて、あたしの声でこの小屋を破壊したい気持ちになった。

「ああもう、どうしてこうなってしまうのよ! 今日は楽しいステージにして、いい気分で帰るつもりだったのに。最悪の気分だわ!」

 早くハンター寮に帰って、お風呂に入ってから紅茶を楽しみましょう。紅茶を飲めば、気分もスッキリするはず。

「そろそろあの男もいなくなっている頃よね。寮の前で待ち伏せしているなんてことは、さすがにないでしょう。あたしが同じ寮に住んでいるなんて知らないはずよ」

 あたしはコンサートの際に外していたポーチを腰に付け、鍵を開けて扉を開けると周辺を見る。

 どうやらピッグはいないみたいね。本当に帰ったみたいでよかったわ。

「さてと、あたしも帰るとしましょう」

 小屋から離れ、数歩歩いたところであたしは振り返る。

 気のせいかしら? なんか今後方から足音のようなものが聞こえたような気がするのだけど?

 しばらく後を見ていると、建物の陰から野良猫が顔を出した。

「なんだ。ネコちゃんの足音だったのね」

 足音の犯人がわかり、あたしはホッと胸を撫で下ろす。

 そして前を向き直したその時。

「キャ……」

 目の前には仮面を被った人物がいた。その人はいきなり布であたしの口を塞ぎ、声を出すことができない。

 何か反撃に出るものは……そうだマーキング玉!

 あたしはポーチの中からマーキング玉を取り出した。だけどそのあと、あたしは急激に睡魔に襲われ、そのまま意識を失ってしまう。





 うーん。ここはどこかしら?

 目が覚めると、あたしは見知らぬ場所にいた。どうやら手足を縛られているようで、まともに動くことができない。口の中に布を押し込まれ、口周りも縛られている。そのせいで声を出すこともできない。

「どうやら目を覚ましたみたいだね。ごめんね。本当はこんなことはしたくなかったんだよ。でも、テレーゼちゃんが悪いんだ。ボクの気持ちを無視し続けるテレーゼちゃんが」

 この声って、もしかしてあたしにファンレターを渡してきたあのブタ!

「ねえ、どうしてボクのラブレターを破いたの? 隠れて見ていたけど、あれはショックが大きかったよ。毎回ボクは手紙を書いてテレーゼちゃんに愛を語っていたと言うのに」

 男の言葉にあたしは鳥肌が立った。

 やっぱりこの男、あたしを変な目で見ていたとおりの変態!

「ボクの頭の中では、二人は既に結婚しているんだ。子供は二人で、男の子と女の子がいて、男の子はボクにそっくりのイケメンで、女の子はテレーゼちゃんみたいに可愛い。ハァ、ハァ、ハァ、そ、想像しただけで興奮してきちゃった」

 この男、やっぱり頭の中であたしのことを穢している。

「ねぇ、どうしてボクのラブレターを破ったりしたの? ボクの頭の中にいるテレーゼちゃんは、ちゃんとボクのことを愛してくれているのに。ねぇ、どうして? どうして答えてくれないんだ!」

 男が大声で叫ぶも、あたしは答えることができない。

 口を塞がれているんだから答えられる訳がないでしょうが! あんたみたいなキモオタのことなんか大っ嫌いだからよ!

「まぁ、もうそんなことはどうでもいいのだけどね。ボクはもう決めたんだ。妄想を現実にするって」

 男は自分が着ている服を脱ぎ出すと、パンツ一枚になった。

「さぁ、今から子作りを始めよう。大丈夫、優しくするから。ボクのテクですぐに気持ちよくなるよ」

 キモオタが近づくと、再びあたしの片方の足に縄を結び、反対側を柱の高い位置に結ぶ。

 そして最初に両足を縛っていた縄を外すと、あたしは両足を開いた状態となり、M字開脚を男に見せることになる。

「さぁ、始めようか。大丈夫だよ。テレーゼちゃんが大人しくしてくれれば、痛いことは何もしないから。だってボクは紳士だからね」

 男が鼻息を荒くしながらパンツの縁に手を置く。

 これはきっと、ピッグが言ったように天罰が下されたのね。ファンを蔑ろにした罰が。

 でも、初めてがこんなキモデブ男なんか絶対に嫌! ピッグ助けて!

「ここには誰も来ないよ。テレーゼちゃん、一緒にいたあの男とケンカ別れをしたよね? せっかく側に居てくれた人に、あんな態度を取ってはダメだよ。まぁ、そのお陰でボクはこうしてテレーゼちゃんを、ここまで連れて来ることができたのだけどね」

 そうだった。あたしはピッグとケンカして、彼を突き放してしまった。ピッグはここには来ない。あたしを助けに来るはずがないもの。

 キモオタがあたしのスカートに触れた瞬間、あたしは両の瞼を閉じる。

 誰か助けて! ピッグ!

「その子から離れろ! ゲス野郎!」

 心から助けを求めた瞬間、頭の中で思い描いた人物の声が耳に入ってくる。

 これってもしかしてあたしの幻聴なの? あまりにも求めすぎて頭がおかしくなった?

 あたしは勇気を振り絞って閉じていた両の瞼を開ける。

 そこには黒い短髪に黒目の青年が居た。

 ピッグ!










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントでも大丈夫です。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

処理中です...