ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第二章

第二話 コモラの討伐

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 俺はエレーヌさんから依頼を任され、ユリヤと一緒にロックマウンテンに来ていた。

「今回目撃されたコモラは七番エリアにいる。まずはそこを目指そう」

「エリアを移動している可能性もありますから、道中も気をつけましょう」

 警戒しつつ、エリアを移動していく。

「ここ、足場が悪いから気を付けて登って。ほら、手を貸すから」

「ありがとうございます」

 ユリヤに手を差し伸ばし、彼女は俺の手を握って山道を登る。

 今いるのは三番エリアだが、ここは斜面になっており、小さい小石なんかも転がっている。そのため歩き難く、こんなところでモンスターに襲われれば避けることも困難だ。

 三番エリアの斜面を上り、四番エリアに到達する。この辺になると平地の部分が多く、歩き易い。

「リュシアンさん! あれを見てください!」

 ユリヤが前方を指差すと、赤い鱗で覆われた子龍がいた。

「あれはレッドドラゴンの幼龍だな」

「ケガをしているみたいですね。私ちょっと行ってきます」

 ユリヤがレッドドラゴンの幼龍に近づく。だが、彼女が近づいた途端に子龍は尻尾を逆立てて唸り声を上げる。

 どうやら警戒されているみたいだな。ケガをしていることと何か関係があるのか? これ以上刺激するわけにはいかないし、俺は近づかないほうがいいかもしれないな。

 俺は遠目で事の顛末を見守ることにした。

「怖がらせてごめんね。私はあなたの敵ではないわ。そのケガを見せてほしいだけよ」

 刺激をしないように、彼女は優しい声音でレッドドラゴンの幼龍に話しかける。そして手を差し伸べるも、子龍は彼女の手に噛み付いた。

 まだ小さいがそれでも龍だ。噛まれた場所からは血が流れてしまっている。

「ほら、怖くない。怖くないよ」

 本当は痛みで苦痛を感じているはずなのに、ユリヤは強がりだな。レッドドラゴンの幼龍を怖がらせないように笑みを浮かべている。

 しばらく噛んだままだったが、彼女の気持ちがモンスターに伝わったようだ。

 子龍は口を離すと彼女の傷口をペロペロ嘗める。

「良い子、良い子。その傷を治してあげるからね」

 ユリヤがポーチから回復ポーションを取り出すと、レッドドラゴンの幼龍に飲ませる。するとモンスターの傷は癒え、ケガをする前の状態に戻った。

 完治した子龍はユリヤの肩に乗ると彼女の頬をペロペロと嘗めた。

 きっとお礼のつもりなんだろうな。

「ありがとう。次からは気を付けるんだよ」

 肩に乗っているレッドドラゴンの幼龍を地面に下ろすと、子龍は尻尾を振りながらこの場から離れて行く。

 幼龍がいなくなったところで俺はユリヤに駆け寄り、ポーチから回復ポーションを取り出す。

「ほら、俺の回復ポーションをあげるからこれを飲め」

「ありがとうございます」

 俺の回復ポーションをユリヤが受け取ると、彼女は一気に飲み干す。

「まったく、エレーヌさんから無茶はしないように言われただろう?」

「えへへ、ごめんなさい」

「子供のモンスターのケガを治すなんてユリヤは優しいな」

「だって、モンスターと言っても子供には罪がないですからね。まぁ、こんなことを言ったらハンター失格かもしれないですけど」

 ユリヤは俺に笑みを向ける。

 だけど、その優しさこそが彼女の美徳なんだと俺は思う。

「それじゃ早く七番エリアに、向かいましょう」

「そうだな。早くこの依頼を終わらせて次の依頼を受けよう」

 俺たちは先に進み七番エリアにやって来る。

「居た。コモラだ」

 七番エリアに足を踏み入れた途端、討伐対象のコモラを発見した。

 このコモラ、通常よりもデカいじゃないか!

 目の前にいるコモラは、平均的な大きさを遥かに超えていた。

 全長三メートルはないか?

 コモラは基本四足歩行で歩く。オオトカゲのモンスターだ。背中には翼が生えているも、飛ぶことはできない。憤怒状態になると、青い体表が赤くなり、二本足で立つこともある。

「まずは狩りの基本、討伐対象を発見したらマーキングです。私がマーキング玉を投げますね」

「ああ、頼んだ」

「えい!」

 ユリヤがポーチからマーキング玉を投げると、コモラに当たった。モンスターの体に当たった瞬間弾け、中に入っている液体が周辺に飛び散る。

 よし、これで逃げられたとしても落下する液体で、ある程度の居場所を見つけることができる。

 俺は飛び出すと太刀を抜いてコモラに斬り掛かる。コモラは竜種の中でも柔らかい。

 なので、俺の刃はやつの鱗を切り裂いて肉に到達し、傷口から鮮血が噴き出す。

『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 やつの肉体を斬り裂いたことで痛みが伝わり、モンスターは悲鳴を上げる。

「一発であれだけのダメージを与えるなんてさすがですね。私も負けていられません!」

 先制攻撃に成功したことでユリヤも飛び出すと、コモラの肉体を短剣で切り裂いていく。

 攻撃をする中、コモラは首を左右に振る。

 まずい! このモーションは!

「ユリヤコモラから離れろ!」

 彼女にモンスターから離れるように言い、俺も後方に跳躍してコモラから距離を開ける。するとコモラは横に転がりながら左右に動いた。

「さすがリュシアンさんですね。敵の攻撃がくることを予想したなんて」

「モンスターの攻撃にはパターンがある程度決まっている。攻撃する際に何かしらのモーションがあるから、それさえ見極めれば攻撃が当たることはない」

「なるほど、勉強になります」

 俺たちはやつの回転が収まるのを待ち、離れた場所から様子を伺う。

 攻撃を止めたコモラは、息を荒くしていた。口からは涎を垂らしている。

 どうやら今のでスタミナ切れを起こしたみたいだ。この状態のモンスターは、他のモンスターを捕食したり、水分を補給したりすることでスタミナを回復する。

 だけどここは岩山のロックマウンテンだ。そう簡単にはエサとなるモンスターは現れない。

「コモラは疲れている! 今の内に畳みかけるぞ!」

「はい!」

 俺たちはコモラを斬りつけてダメージを与える。するとやつの体表が赤くなった。

 憤怒になったか。これは少し危険だ。

「ユリヤ! また一旦引くぞ!」

「はい!」

 憤怒状態になったモンスターは攻撃的になる。しかもバカ力を発揮しているのか、通常時に比べて受けるダメージがエグい。

 基本的にはモンスターの怒りが収まり、通常に戻るのを待つのが一番の安全策だ。

 コモラから離れ、やつが落ち着きを取り戻すのを待つ。

 だが、モンスターの怒りはなかなか収まらず、暴れては周辺の岩に八つ当たりをする。

 怒っているからか脳の働きが弱くなっているな。自分で自分を傷付けていることに気づいていない。

 コモラが岩に激突する度に体表から血が噴き出し、地面を赤く染める。

 なんだか見ていて可愛そうだな。少し危険ではあるけど、ここで終わらせよう。

 俺は憤怒状態のコモラに突撃する。やつが怒っているせいでモーションが読み難いが、ギリギリのところで回避しつつやつの背中に乗った。

「この一撃で終らせる!」

 モンスターの心臓に目がけて太刀を突き刺し、コモラに止めを刺す。

『ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!』

 心臓を貫かれたコモラは悲鳴を上げるが、その後はピクリとも動かなくなった。

「討伐完了」








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