ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第二章

第一話 ユリヤと共同作業

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~リュシアン視点~



「それじゃあ、今日の分の依頼なんだけど、リュシアン君はユリヤと一緒にコモラの討伐に向かってくれないかしら?」

 ギルドマスターのエレーヌさんから、俺はユリヤと共同で依頼を受けるように言われる。

「わかりました」

「はい、それじゃあこれが依頼書ね」

 エレーヌさんから依頼書を受け取り、もう一度内容の確認をする。

 討伐モンスターはコモラ、そして場所はロックマウンテンか。あそこは殆ど岩山で、足場が悪いから気を付けながら歩かないといけないんだよな。

 えーと、依頼主の一言は?

『俺がこの前ロックマウンテンを歩いていると、偶然コモラを発見した。ロックマウンテンは仕事がらよく行く場所なので、早く討伐をしてほしい。因みにこの前、見慣れない影を見た。あれは竜種のようにも見えたのだが、勘違いだろうか? ハンターさんはくれぐれも気を付けてほしい』

 うーん、コモラも小型ではあるけど一応竜種なんだけどなぁ。まぁ、一応気を付けるとするか。

「リュシアンさん! 頑張りましょう!」

 依頼書を眺めていると、ユリヤが茶色の瞳で俺を見ながら声をかけてくる。

「ああ、依頼主のためにも頑張ろう!」

「はい! あのクイーンフレイヤーを一人で倒したSランクハンターのリュシアンさんと、一緒に依頼ができて光栄です!」

 ユリヤが尊敬の眼差しを向けて来るが、どうも俺には自覚がない。俺の中ではあれくらいできて当たり前だ。そうじゃないと、あの過酷な環境下では生き残れなかったからな。

 だけどまぁ、ブラックギルドに居たからこそ、俺は転職してSランクハンターになれた訳だし、その辺は一応アントニオに感謝するべきなのかもしれないな。

「俺と一緒だからと言って、あんまり緊張しないでくれ。ここではユリヤが先輩なんだから」

「そ、そうですね。私はリュシアンさんの先輩ですもの。何か分からないことがあればなんでも聞いてください」

 先輩と呼ばれて嬉しいのだろうな。ユリヤの顔が綻んでいる。

 そんな彼女を見ると、今度はエレーヌさんに顔を向けた。

「それでは行ってきます」

「ちょっと待って、支給品アイテムを忘れているわよ」

 ギルドマスターに声をかけてギルドから出ようとすると、エレーヌさんが支給品アイテムを忘れていることを教えてくれた。

 そうだった。このギルドでは出発前に支給品アイテムが貰えるのだったよな。すっかり忘れていた。

「はい。このポーチの中に必要な支給品アイテムは入っているから」

「エレーヌさん、俺をからかわないでくださいよ。このポーチにアイテムが入るわけがないじゃないですか」

 手渡されたポーチは腰に巻けるようにベルトが取り付けてあるが、はっきり言って小さすぎる。これでは一つ入れただけでパンパンだ。

 話では、一回の討伐でもらえるアイテムは、傷を癒す回復ポーションやモンスターを逃しても居場所が特定できるマーキング玉、それに携帯食料などと言う話だ。このポーチではマーキング玉を一つ入れるのがやっとだ。

 俺を騙そうとしてもムダだ。そう思っていると、俺の反応を見てエレーヌさんとユリヤはニヤニヤと笑みを浮かべてくる。

 なんだよ。二人してそんなにニヤニヤして。俺、変なことでも言ったか?

「ユリヤ、その中に入っているものを全部取り出して見せて」

「はーい」

 ユリヤが返事をすると、彼女はポーチの中に腕を突っ込む。そしてピンク色の玉を取り出した。

 マーキング玉だな。これくらいなら入っていて当然だ。

 一つのアイテムを取り出すと、再びユリヤがポーチの中に腕を突っ込む。すると今度は緑色の液体が入った瓶を取り出す。

 その光景を見た俺は、自分の目を疑った。

 うそだろう! どう考えてもあのポーチの中に、マーキング玉と回復ポーションが入る訳がないじゃないか!

 信じられないでいると、ユリヤは次々とポーチからアイテムを取り出す。

「はい。これで全部になります」

 ユリヤがポーチから取り出したのは、回復ポーション十個、マーキング玉十個、携帯食料が三食分入っていた。

 これは前に聞いた支給品アイテムの数と一致する。

「エレーヌさん、これはいったいどういうことなのですか?」

「うふふ、このポーチはね。アイテムボックスになっているのよ。だから入り口に入ってしまえば、圧縮して中に入れることができるのよ」

 アイテムボックスは名前だけは聞いたことがある。だけどそれは空想の物ではなかったのか? 実在しているなんて初耳だ。

「このアイテムボックスは時間停止型だから、素材なんかも新鮮なまま保存することができるわ。だから必要なときに取り出して、装備品に加工することができるのよ」

 へー、それは本当に便利だな。モンスターから剥ぎ取ったものは勿論鮮度がある。時間が経てば経つほど痛んで使い物にならないケースもあるから、これは本当に助かる。

「そんなこともできるのですね。本当に便利だ」

「はい、これがリュシアンさんのポーチです。失くすと大変なので、今のうちに腰に巻いてください」

 取り出したアイテムを全て仕舞うと、ユリヤが俺にポーチを渡してくる。

「分かった。ありがとう」

 ポーチを受け取るとベルトを使って腰に巻き。準備を終える。

 確かにこの大きさなら、戦闘中にも邪魔にはならなさそうだな。

「それでは、今度こそ行ってきます」

「はい行ってらっしゃい。怪我にはくれぐれも気を付けるのよ。あと、予定外のことが起きてもけしてムリをしてはダメよ。えーとそれから」

 エレーヌさんは人差し指を頬に持って行くと、俺たちに出発前の助言をしてくる。

 この感じ、遊びに出かける子供に言う母親みたいだな。なんだか懐かしい。本当に俺たちは、血は繋がっていないけど家族のように感じる。

「あはは、こうなるとエレーヌさんは話が長くなるから行きましょう」

 ユリヤが俺の手を握るとギルドから連れ出した。










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