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第一章
第九話 どうして俺のギルドに所属しているハンターはクズしかいないんだよ!
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~アントニオ視点~
くそう、くそう、くそう! どいつもこいつも役立たずめ!
俺様ことアントニオは、立て続けに聞かされる任務失敗の報告に苛立っていた。
フェルディナンの任務失敗はほんの序章にしか過ぎなかった。その後にも他を担当していたハンターが、まだ依頼を達成していないと依頼主からの報告が殺到している。
くそう。どうしてこうなってしまったんだよ。つい先日まではこんなことは起きなかったじゃないか。
頭を抱えていると、ギルドの扉が開いて複数人が入ってきた。武装をしていないので、この町に住む人々だ。
「おい、いつまで待たせるんだ! 俺の母ちゃんを殺す気か!」
「早くあのモンスターを倒してくれないと困るのだが!」
「いつになったら俺のところにハンターがやって来る!」
こいつら依頼主か。チッ、面倒なのが来やがった。こっちはお前たちを相手にしている時間はないって言うのに。
「も、もう少しだけ待ってくれないでしょうか? もうしばらくすれば他の依頼が終わったハンターが戻ってきますので」
「来るっていったいいつ来るんだよ!」
「そうだ! 具体的な時間を教えろ!」
「俺には時間がないんだ! 早く病気を治す薬草をハンターに取って来てもらわないと、母ちゃんが死んでしまう!」
どうにか落ち着いてもらおうとするが、依頼主は聞く耳を持ってくれない。
くそう。こいつらこの俺様が下手に出れば調子に乗りやがって! お前たちが平和な生活をしているのは、この俺様がハンターギルドを運営しているからなんだぞ! 感謝されても文句を言われる筋合いはない!
どうにかして、こいつらを黙らせられないか。
考えていると、再び扉が開かれて武装した集団がギルド内に入ってくる。
「ほら、ハンターたちが戻って来ました。今からこいつらに向かわせますので」
苦笑いを浮かべながら、俺様はチラリとハンターたちを見る。彼らは一斉に床に倒れた。
「どう見てもまともに動けそうもないのだが」
無様に倒れるハンターを見て、依頼主の一人が俺様をギロリと睨む。
「おい! お前ら! お客様がいるんだぞ! もっとシャキとしろ!」
羞恥心に見舞われた俺様は、感情的になって大声で叫ぶ。しかし彼らには聞こえていないようで、誰一人として起き上がろうとはしなかった。
「本当に大丈夫なんだろうな! 早くしないと俺の母ちゃんが死んでしまう!」
「わ、わかりました。彼らを少し休ませたら直ぐに向かわせますので、どうか今回だけはお引き取りくださいませ」
「チッ、確かにハンターが疲れているのなら、俺の依頼はムリだろう。今日は帰らせてもらうが、明日は来るようにしておけよ!」
「俺も今日は引くが、明日も来なかったらこの程度の苦情では済まさないからな」
二人の依頼主は帰って行くが、さっきから母ちゃん、母ちゃんとうるさい男だけは帰らなかった。
たく、お前もさっさと帰れ! このマザコン野郎が! そんなに時間がないのなら自分が行けよボケ。
「あなたの依頼は彼らを休ませた後直ぐに向かわせますので、家で待っていてください」
「本当だろうな。嘘だったら承知しないからな」
マザコン男は俺を一睨みするとギルドから出ていく。
ふぅ、どうにかこの場を凌ぐことができた。まずはどうしてこんなことになったのかを考えなければならない。
俺様が受注している依頼はこれまでも同じだ。今までこんなことが起きなかった以上、俺様の仕事には何も悪い点はない。つまり、依頼を受けるハンターの方に問題があると言うことだ。
まったく、どいつもこいつも本当に使えない。人がせっかくこのギルドで働かせてやっているのに、その恩を返そうともしやがらない。
まともに仕事をこなせないのなら、報酬の減額だな。まぁ、いい。あいつらに払う分を少なくすれば、俺様の懐がもっと潤うと言うわけだ。
ハンターが全て悪いのは理解した。だけど、急に全員がポンコツになるのはおかしすぎる。何かもっと根本的な違いがあるはずだ。
俺様は頭の中にある記憶を引き摺り出して考える。
「そうだ! あの男がいなくなってから、急にこいつらに与える仕事量が増えたじゃないか」
くそう。どうして俺様はあんなに優秀なハンターをクビにしてしまったんだ。
そうだ。これも全てフェルディナンのせいだ。きっとあいつはリュシアンの働きぶりに嫉妬したんだ。そしてこのままではナンバーワンの座を奪われてしまうと思って、やつをクビにするように、俺様に嘘の報告をした。
本当に卑しい男だ。人間のクズだな。
とにかく、この危機を乗り越えるにはリュシアンが必要だ。一刻も早く、あの男を連れ戻さなければ、このギルドは破綻する。
「おい! お前ら! 十分に休んだだろうが! 今からリュシアンの捜索を始める! さっさと探しに行け!」
「そ、それでは、他の依頼はどうするのですか?」
「そうだ。それでは依頼主様が困ってしまいます」
「そんなものはリュシアンが戻ってからやつに全てやらせる! だから今すぐに探し出せ! 俺様の言うことを聞かないやつは報酬をなしにするからな!」
俺様は怒鳴り散らすと、ハンターたちはよろよろと立ち上がりながらギルドから出て行く。
依頼のことよりも、今はどうやってこのギルドを維持し続けるのかが大きな課題だ。これを乗り越えるには、リュシアンが必要。それまで全ての依頼は後回しだ。
なあに、依頼主がモンスターに困っても、俺様は何一つ困らないからな。赤の他人なんかどうでもいい。
一番大事なのはいかにして俺様が裕福な暮らしができるかだ。
「ハンターたちよ、俺様の道具として死ぬまで働き続けろ」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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くそう、くそう、くそう! どいつもこいつも役立たずめ!
俺様ことアントニオは、立て続けに聞かされる任務失敗の報告に苛立っていた。
フェルディナンの任務失敗はほんの序章にしか過ぎなかった。その後にも他を担当していたハンターが、まだ依頼を達成していないと依頼主からの報告が殺到している。
くそう。どうしてこうなってしまったんだよ。つい先日まではこんなことは起きなかったじゃないか。
頭を抱えていると、ギルドの扉が開いて複数人が入ってきた。武装をしていないので、この町に住む人々だ。
「おい、いつまで待たせるんだ! 俺の母ちゃんを殺す気か!」
「早くあのモンスターを倒してくれないと困るのだが!」
「いつになったら俺のところにハンターがやって来る!」
こいつら依頼主か。チッ、面倒なのが来やがった。こっちはお前たちを相手にしている時間はないって言うのに。
「も、もう少しだけ待ってくれないでしょうか? もうしばらくすれば他の依頼が終わったハンターが戻ってきますので」
「来るっていったいいつ来るんだよ!」
「そうだ! 具体的な時間を教えろ!」
「俺には時間がないんだ! 早く病気を治す薬草をハンターに取って来てもらわないと、母ちゃんが死んでしまう!」
どうにか落ち着いてもらおうとするが、依頼主は聞く耳を持ってくれない。
くそう。こいつらこの俺様が下手に出れば調子に乗りやがって! お前たちが平和な生活をしているのは、この俺様がハンターギルドを運営しているからなんだぞ! 感謝されても文句を言われる筋合いはない!
どうにかして、こいつらを黙らせられないか。
考えていると、再び扉が開かれて武装した集団がギルド内に入ってくる。
「ほら、ハンターたちが戻って来ました。今からこいつらに向かわせますので」
苦笑いを浮かべながら、俺様はチラリとハンターたちを見る。彼らは一斉に床に倒れた。
「どう見てもまともに動けそうもないのだが」
無様に倒れるハンターを見て、依頼主の一人が俺様をギロリと睨む。
「おい! お前ら! お客様がいるんだぞ! もっとシャキとしろ!」
羞恥心に見舞われた俺様は、感情的になって大声で叫ぶ。しかし彼らには聞こえていないようで、誰一人として起き上がろうとはしなかった。
「本当に大丈夫なんだろうな! 早くしないと俺の母ちゃんが死んでしまう!」
「わ、わかりました。彼らを少し休ませたら直ぐに向かわせますので、どうか今回だけはお引き取りくださいませ」
「チッ、確かにハンターが疲れているのなら、俺の依頼はムリだろう。今日は帰らせてもらうが、明日は来るようにしておけよ!」
「俺も今日は引くが、明日も来なかったらこの程度の苦情では済まさないからな」
二人の依頼主は帰って行くが、さっきから母ちゃん、母ちゃんとうるさい男だけは帰らなかった。
たく、お前もさっさと帰れ! このマザコン野郎が! そんなに時間がないのなら自分が行けよボケ。
「あなたの依頼は彼らを休ませた後直ぐに向かわせますので、家で待っていてください」
「本当だろうな。嘘だったら承知しないからな」
マザコン男は俺を一睨みするとギルドから出ていく。
ふぅ、どうにかこの場を凌ぐことができた。まずはどうしてこんなことになったのかを考えなければならない。
俺様が受注している依頼はこれまでも同じだ。今までこんなことが起きなかった以上、俺様の仕事には何も悪い点はない。つまり、依頼を受けるハンターの方に問題があると言うことだ。
まったく、どいつもこいつも本当に使えない。人がせっかくこのギルドで働かせてやっているのに、その恩を返そうともしやがらない。
まともに仕事をこなせないのなら、報酬の減額だな。まぁ、いい。あいつらに払う分を少なくすれば、俺様の懐がもっと潤うと言うわけだ。
ハンターが全て悪いのは理解した。だけど、急に全員がポンコツになるのはおかしすぎる。何かもっと根本的な違いがあるはずだ。
俺様は頭の中にある記憶を引き摺り出して考える。
「そうだ! あの男がいなくなってから、急にこいつらに与える仕事量が増えたじゃないか」
くそう。どうして俺様はあんなに優秀なハンターをクビにしてしまったんだ。
そうだ。これも全てフェルディナンのせいだ。きっとあいつはリュシアンの働きぶりに嫉妬したんだ。そしてこのままではナンバーワンの座を奪われてしまうと思って、やつをクビにするように、俺様に嘘の報告をした。
本当に卑しい男だ。人間のクズだな。
とにかく、この危機を乗り越えるにはリュシアンが必要だ。一刻も早く、あの男を連れ戻さなければ、このギルドは破綻する。
「おい! お前ら! 十分に休んだだろうが! 今からリュシアンの捜索を始める! さっさと探しに行け!」
「そ、それでは、他の依頼はどうするのですか?」
「そうだ。それでは依頼主様が困ってしまいます」
「そんなものはリュシアンが戻ってからやつに全てやらせる! だから今すぐに探し出せ! 俺様の言うことを聞かないやつは報酬をなしにするからな!」
俺様は怒鳴り散らすと、ハンターたちはよろよろと立ち上がりながらギルドから出て行く。
依頼のことよりも、今はどうやってこのギルドを維持し続けるのかが大きな課題だ。これを乗り越えるには、リュシアンが必要。それまで全ての依頼は後回しだ。
なあに、依頼主がモンスターに困っても、俺様は何一つ困らないからな。赤の他人なんかどうでもいい。
一番大事なのはいかにして俺様が裕福な暮らしができるかだ。
「ハンターたちよ、俺様の道具として死ぬまで働き続けろ」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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