ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第一章

第五話 クイーンフレイヤーを討伐せよ

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 巨大な翼竜が爪を剥き出しにした状態で急降下してきた。

「あいつはクイーンフレイヤー! この巣はあいつが作ったものか!」

 きっと俺のことは、卵を狙う敵だと認識している。ここから直ぐに離れないとやつの爪の餌食になる。

 急いでカバンを掴むと、モンスターの巣から飛び降り、地面を転がる。

 立ち上がって巣の方を見ると、クイーンフレイヤーは着地を決めていた。

 危なかった。あともう少し気づくのが遅ければ、俺は奴の爪で身体を引き裂かれていたかもしれない。

 とにかくカバンを回収することはできた。このままゆっくりとこの場を離れて離脱しよう。

 この後の方針を決めていると、クイーンフレイヤーは俺の方を見る。

 そして両翼を広げると、口を大きく開けた。

 このモーションはマズイ!

 モンスターの動きから次の行動を予測した俺は横に逃げる。すると、クイーンフレイヤーの口から火球が放たれ、俺の真横を通過した。

 目標に命中することがなかった火球は地面に当たり、周辺を焦がす。

「マジかよ。もしかして俺は、クイーンフレイヤーから完全に敵として認識されてしまったのか」

 とにかく逃げなければならない。深緑の森を最短距離で脱出するには、来た道を引き返すのが一番だ。だけどそれには崖下に飛び降りなければならない。

 はっきり言って自殺行為だ。少し遠回りになるけど、八番、七番、五番、二番、一番の五つのエリアを移動して深緑の森を出なければならない。

 まずは七番のエリアだ。だけどそこに向かうには、クイーンフレイヤーの横を通る必要がある。

 逃げられる確率を上げるには、意表を突くしかない。

 そのためにも、一度攻撃に転じる。

 鞘から太刀を抜くと、構えながら走った。

 太刀を構えたことで、クイーンフレイヤーも戦闘に発展したと思い込んだようだ。俺に向かって突進してくる。

 やつの突進は、体力が有り余っているときは普通に突っ込んでくる。途中で転けるようなことはしない。そして突進の際は、足同士の間に隙間ができる。その間を抜ければ、一旦逃げられるはずだ。

 走りながらタイミングを伺い、ベストなタイミングでモンスターの懐に入り込んだ。そして太刀を鞘に収め、翼竜の足の間を抜ける。

「よし、上手くいった! あとはこのまま逃げきるのみ」

 全速力で走り、八番のエリアを出ると、七番のエリアに移動した。

 七番のエリアは広い洞窟だ。天井が空いているため、太陽光が降り注いでいる。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 全力疾走をしたせいで、スタミナの殆どを消費してしまったみたいだ。俺は両膝に手を置き、息が整うのを待つ。

「まさか、クイーンフレイヤーに目をつけられるとは思っていなかったな」

 ある程度息が整ったら七番のエリアから出よう。そう思ったとき、太陽光が遮断されて影が生じる。そして更に翼の羽ばたく音が聞こえてきた。

 まさか、もう見つかってしまったのか!

 顔を上げると、ゆっくりと降りてきているクイーンフレイヤーの姿が目に映った。

 くそう。もう見つかってしまったのかよ。とにかく、急いで五番のエリアに向かわないと。

 七番から五番のエリアに繋がる道は狭い。クイーンフレイヤーの大きさでは、通ることができない。そこに入れば、今度こそ逃げ切れるはず。

 地を蹴って、俺は再び全力でダッシュした。

 あと十メートル程で狭い道に入れる……あと八メートル……五メートル。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 クイーンフレイヤーの咆哮が聞こえた瞬間、後方を見た。翼竜も俺に向かって全力で走ってくる。

 俺とやつとでは足の歩幅が段違いだ。このままでは確実に追いつかれて、あの大きい口で頭から噛みつかれてしまう。

 こうなったら横に跳んで、モンスターの攻撃を躱すしかない。

 俺は走りながら横に跳ぶ。地面にダイブした後に起き上がると、クイーンフレイヤーが俺の横を通り過ぎて洞窟の壁にぶつかった。

 その時洞窟の一部が崩れて、五番エリアに繋がる道が岩で塞がってしまう。

 嘘だろう。退路をたたれてしまった。

 こうなってしまった以上、俺が生き残る道はただ一つしかない。

「クイーンフレイヤーを討伐して安全に八番エリアの崖を降りるしかない」

 もう一度鞘から太刀を抜いて構えた。

 クイーンフレイヤーの攻撃のモーションは頭の中に叩き込んである。

 その知識を上手く使い、モンスターの攻撃を一度も受けずに討伐してみせる。

「行くぞ!」

 地を蹴って駆け、翼竜との距離を縮める。

 やつが翼を広げて口を大きく開けた。火球を放ってくる。

 モンスターのモーションを見て横に飛び、敵の放った火球を避ける。しかし、やつの攻撃はこれだけでは終わらなかった。首を動かして俺に狙いを定め、再度火球を放つ。

 だけどクイーンフレイヤーの火球は一直線にしか進まない。やつの首と口の角度から計算すれば、どこに火球が跳んで来るのか容易に分かる。

「攻撃が来る場所さえ分かれば、避けるなんて簡単だ!」

 クイーンフレイヤーの攻撃を避けるとやつの懐に入り、太刀で足を斬りつける。刃が触れた箇所から鮮血が勢いよく噴き出した。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 痛みを覚え、クイーンフレイヤーは咆哮を上げると、足を軸にして回転した。

 この場合は下手に動かないで足元に隠れているのが一番安全だ。だけどそれでは時間がもったいない。

 今の内にもっと足を攻撃だ!

 腕に力を入れて太刀を振り、翼竜の足を斬っていく。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 再びクイーンフレイヤーが悲鳴をあげ、バランスを崩して地面に倒れる。

「今だ! まずはその邪魔な尻尾を切断だ!」

 跳躍して俺は翼竜の尻尾に目がけて太刀を振り下ろす。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 太刀が奴の尻尾に触れた瞬間、俺は雄叫びを上げた。

 これは別にかっこつけている訳ではない。人は瞬間的に大きな力を振るう際に声を上げることで、神経による運動制御の抑制を外し、自分の筋肉の限界に近い力を発揮させることができる。

 脳のリミッターを一時的に解除した俺の力により、クイーンフレイヤーの尻尾は切断された。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 尻尾を失ったことで翼竜は悲鳴を上げるも、やつはまだ起き上がることができていない。

「追撃するなら今だ!」

 今度は足の筋肉の収縮速度を速くすることを意識しつつ、翼竜の頭の前に移動。先ほどと同じように頭部に刃を叩き込む。

 さすがに頭は尻尾と違って固いな。首を狙っても切断することはできそうもない。そうなるうと、次に狙うとすれば胸か。

 攻撃する箇所を変え、俺はクイーンフレイヤーの胸に太刀を突き刺す。

 胸の皮膚は硬くなく、容易に突き刺さった。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 翼竜は悲鳴を上げると、それから動かなくなった。

「どうやら運よく心臓を貫いたようだな。よし、これでクイーンフレイヤーの討伐完了だ!」









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