推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
28 / 41
第三章

第八話 緊急時に助けるカーマちゃんって天才!

しおりを挟む
~カーマ視点~



「え、ちょっと待って! これってどう言うこと! どうしてゼウスがこんなに早くユウリの前に現れるのよ!」

 ワタシことカーマは、神力を使って水晶に映るユウリたちを見て驚きます。

 彼の背後には、黄金のように輝く金髪に紅蓮のように赤い瞳を持ち、そして自分以外の存在を見下すような態度がオーラとして溢れている男が立っていました。

 どうして彼がこんなに早くこの場所に来るのよ。おかしいわよ。

 信じたくない。だけどこの水晶に映し出される光景は、あっちの世界をリアルタイムで映し出している。

 今、彼が体験していることは夢でも幻でもない。

 ユウリが所有しているユニークスキルは【推し愛】【奴隷契約スレーブコントラクト】【瞬間移動テレポーテーション】【知識の本ノウレッジブックス】そして通常スキルは【氷柱アイシクル】【ウインド】【火球ファイヤーボール】【ロック】【肉体強化エンハンスドボディー】【俊足スピードスター】【音波探知エコーロケーション】の合計十一のスキルを保有している。

 だけどこれらのスキルを駆使しても、ゼウスには勝てない。それは【知識の本ノウレッジブックス】の影響下にあるユウリにも分かっているはず。

 ここは彼には逃げてもらうしかない。幸いにも【瞬間移動テレポーテーション】が使える。ゼウスがつい取り逃がしてしまうほどの隙を作り、遠くに逃げることができれば、まだ勝機はあるはず。

「そのためにも、一度こちらの世界に呼び出さないといけないわね」

 実は、最終手段としてラブとは別の愛をこっそりと預かっていたのです。今回はそれを使って彼に新たなスキルを与えましょう。

 ゼウスが現れた以上は、渋ってはいられません。多少不正をしても彼が生き残ってくれるのであれば、危険な綱渡りも喜んでやり遂げましょう。

 対ゼウス戦に有効であろうスキルを用意します。

「えーと、ゼウスの攻撃から逃れそうなスキルはっと」

 空中に無数のスキルを展開し、急ぎ吟味します。

「ゼウスの攻撃を逃れそうなものと言えば、【光の壁ライトウォール】に【氷の拘束シャクルアイス】あと彼なら上手く使ってくれると信じて【水球ウォーターボール】それに念のために【水の守りアクアガード】も用意しておきましょう」

 他にも多くのスキルを彼に与えたい。でも、急激に彼が強くなりすぎると、不正を疑われてしまう。

「このくらいがギリギリでしょうね」

 作業が終わり、水晶玉を注視していると、ゼウスが右手を上げて人差し指を上に突き出し、上空に巨大な火球が現れ始めるのが見えました。

「これって【死球デスボール】! ゼウスは完全にユウリをリタイアさせるつもりだわ!」

 お願い! 間に合って!

 精神を集中させてユウリの魂をこの世界に呼び寄せます。すると目の前に光の粒子が集まり、人の形を作り出しました。

 ふぅ、どうにか間に合ったようですね。危なかったわ。

 人の形をしたものは、輪郭がはっきりとすると髪の毛が生え、眼球や鼻が現れるとユウリの姿へと変貌します。

「あれ? ここは?」

「カーマちゃんのスキルショップへ、ようこそ!」

 ユウリの意識が完全にこの世界に来たタイミングで、ワタシはいつものように振る舞い、元気よく彼に挨拶をします。

「って、カーマじゃないか! またなんて言うタイミングで呼び出しやがる! 今やばいんだからな!」

 戦闘中にも関わらず、呼び出されたことで彼はご立腹のようね。まぁ、事情を知らなければ、ワタシ自身も似たような態度を取るでしょう。

 でも、ワタシも精一杯だったのです。

「アハッ! ユウリに会いたかったから急に呼び出しちゃった!」

 片目を瞑ってウインクを彼に送り、通常どおりのワタシを演じます。

 もし、ワタシが慌てている姿を見せれば、彼も不安になるでしょう。いくらスキルを与えて強化しても、心に余裕がなくなれば失敗するリスクが高まってしまうものだからです。

「はい、はい。そう言うのはいいから、早く要件を言ってくれ」

「相変わらずワタシに対しての態度がドライって酷くない? カーマちゃんショック!」

 ワタシは泣いたフリをしてユウリの反応を伺いました。

「あのなぁ、お前がそんなのだから俺が調子を崩されて困ってしまうんだ。頼むから普通にしてくれ」

 ワタシの態度に彼は呆れた様子です。

 よしよし、どうやら彼は落ち着いてくれたみたいですね。少々ムリしてかまってちゃんを演じて正解でした。

「はーい。わかりました。それじゃ、本題に入るけど、このままだとゼウスに倒されてリタイアされちゃうよ?」

 現在進行形で戦っている敵に負ける。そう告げると、彼は少し俯かせていた顔を上げました。

「そんなことは分かっている。だからなんとかしてやつから逃げ出す方法を考えないといけない。まぁ、その時間を与えてくれたことには一応感謝するよ」

 彼は言い辛そうにワタシから視線を逸らして、言葉を吐き捨てるように言います。

 あれ? この反応ってもしかしてデレ期到来! ユウリのツンツンがなくなって、遂にワタシにデレてくれた!

 彼の態度に嬉しくなったワタシは、気分が良くなり彼にスキルの入った紙袋を見せます。

「何? そのたくさんある紙袋は?」

「これはスキルの福袋よ。中にランダムでスキルが入っているの!」

「本当か! でも、この前【奴隷契約スレーブコントラクト】をラブポイントと交換したばかりだよな? また溜まったのか?」

 ユウリの嬉しそうな表情に、ワタシは首を横に振ります。残念なことに、あれから溜まったカレンへの愛はゼロラブポイント。一つのスキルも交換することができません。

「何だよ。見せつけるだけ見せつけて、俺を揶揄いたいだけなのか?」

「ち、違うわよ、失礼な! これでも愛の神様なのですよ! そんな酷いことをする訳がないじゃないですか。ちゃんと説明をするから最後まで話を聞いてください」

 一度咳払いをして、ワタシは言いたかったことを彼に伝えます。

「実は、ワタシがスキルを交換できるのは、ラブな愛だけではないのです」

「ラブな愛だけではない?」

「ええ、ユウリのユニークスキル【推し愛】は、カレンへの愛がポイントとなってスキルを手に入れると言うものですが、愛にはラブ以外の愛もあります。カレンのために怒り、カレンのために泣くことも愛に変換されるのですよ。まぁ、これは本来別枠とするべきなのですが、今回は特別にこれらを使い、あなたに福袋を選ばせてあげます」

 軽く説明をした後、ワタシは五つの福袋をユウリに見せます。

 まぁ、中身は全部同じなので、どれを選んでも一緒なのですが。

 ユウリがしばらく吟味したあと、真ん中の紙袋を選びました。

「それですね。では、福袋の開帳!」

 袋が破け、中から四枚のカードが現れます。

「【光の壁ライトウォール】【氷の拘束シャクルアイス】【水球ウォーターボール】【水の守りアクアガード】ですね。中々いいスキルですね。大当たりとは言えませんが、当たり枠でした。スキルの使い道は【知識の本ノウレッジブックス】でわかるかと思います。なのでスキル説明は省いて、スキルの付与をします」

 ワタシはスキルカードを操作するとユウリの魂の中にスキルを付与します。

「これであなたは更に一段と強くなりました。これで、あなた次第でゼウスから逃れることができるでしょう」

「ああ、【知識の本ノウレッジブックス】のお陰でスキル内容が頭の中に浮かんでくる。ありがとう。これなら何とかなりそうだよ」

「それはよかったです。では頑張ってください。あなたはあなたの願いのために、ワタシはワタシの願いのために共に戦いますので」

 彼を安心させるためにニッコリと笑みを浮かべながら手を叩くと、彼はワタシの前から消えます。

「頼みましたよ。ユウリ」

 ワタシは、彼の魂が現世に戻った後も水晶玉で様子を伺います。

「うそ! まさかこんなことになるなんて!」










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた 思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。 だがしかし! そう、俺には″お布団″がある。 いや、お布団″しか″ねーじゃん! と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で とんだチートアイテムになると気づき、 しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。 スキル次第で何者にでもなれる世界で、 ファンタジー好きの”元おじさん”が、 ①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々 ②生活費の為に、お仕事を頑張る日々 ③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々 ④たしなむ程度の冒険者としての日々 ⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。 そんな物語です。 (※カクヨムにて重複掲載中です)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...